【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

158 / 192
第155話 作戦会議……?

 日葵とのテーマパークデートが迫ってきている。

 当然ながら完璧かつスマートな俺は素晴らしいデートプランを完璧に準備し、当日着ていく服もおニューのものを用意した。数年間話していなかったにも関わらず日葵の好みを完璧に理解している(キショキショポイント80000点)俺の目に狂いはない。きっと俺の姿を見て「カッコいい! 結婚した!」といつの間にか結婚していることだろう。

 

「ってなってたらいいなって思ったんだが、どう思う?」

「先輩がいつも通りで安心しました!」

「つまりそうなるようなプランを考えてってことだね」

「反吐になったわ」

「反吐が出すぎてんじゃねぇか」

 

 登校が始まり、朝の文芸部室。迫ってきた日葵とのデートに緊張しすぎている俺は、何か準備しなきゃと思いつつ、日葵に嫌われたくなさすぎて考え込んでしまい、結果何も準備できていない。

 

「んー、夏野先輩と氷室先輩のツーショットを撮って、『ついに浮気か!?』っていう新聞を作ればいいってことですか?」

「『いいってことですか?』の文脈が全然わからねぇんだけど。あとついにって何? 俺そんな女の子にだらしなくねぇぞ」

「ちなみに僕とも付き合ってない」

「ちなみに私と日葵は結婚してる」

「光莉の戯言は置いといて、真剣に考えてくれないか?」

「人の好きって気持ちを戯言って……」

 

 俺もお前のその気持ちが不純じゃなかったら戯言なんて言わねぇよ。でもお前普通に興奮してるじゃん。日葵を前にしたらよだれ垂らすじゃん。何? だからって不純とは言えないでしょって? 確かに。俺もよだれ啜ってるし、人のことは言えなかった。

 

「ごめんね?」

「いいわよ」

 

 いいわよと言いながら俺の手を握り、力いっぱい潰されたような気がするけど気のせいだろう。

 ぷらぷらと感覚を失った手を振りながら、うーんと考え込む。ダメ元で相談してみたけどやっぱり駄目だったか。つづちゃんはナチュラルに倫理観欠如してるし、千里は一対一だと結構真剣に話聞いてくれるけど、大人数だとふざけるし、光莉はさっきから俺に殺気振りまいてるし。まだ怒ってんのかよお前。日葵の初めて奪って悪かったよなんて一ミリも思ってませーん!! やーい年中胸だけ雪だるまー!!

 

「今私のこと年中胸だけ雪だるまって思ったわね?」

「殺せ」

「最近恭弥は逃れられないって気づいて無抵抗を覚えたんだ。賢いでしょ?」

「罵詈雑言をやめればもっと賢いですねー」

 

 殺された俺を興味深そうにパシャパシャと撮ってくるので、死にながらキメポーズ。ふっ、今日も俺がカッコいい。こんな俺のことを好きにならない人間なんているのか?

 

「あっ、そういえば! 気持ちの悪い顔してるところすみません! 氷室先輩、双子の妹さんを犠牲にしていいですか?」

「新聞の題材にしていいですか? って聞いてきたんだよな。つづちゃん自身が『犠牲』って思ってるんなら絶対だめだ」

「どうしてもですか?」

「あれでも大事な家族だからな。兄貴として守ってやんねぇと」

「5万……」

 

 スマホを取り出し、恭華に通話。1コールで出てくれた愛しの妹に「学校の新聞に出るなんて素敵だと思わないか?」と聞いてみれば、『地獄に落ちろ』と言われて切られてしまった。

 

「僕が今の会話をリアルタイムで恭華さんに伝えてました」

「このクズ野郎!」

「金チラつかされて一瞬で家族を売ろうとしたあんたとどっちがクズだと思う?」

「キスするから見逃してくれ」

「……そういうのは、ちゃんとしてほしいからいや」

 

 はいはい。俺が悪い俺が悪い。なんだよお前クソかわいいじゃねぇか。千里も「え? これが朝日さん……?」ってもはや恐怖を覚えて壁まで逃げてんじゃねぇか。やめてくれます? その軽率に可愛いやつ。つづちゃんが「今の一瞬撮っておきましたので、あとで差し上げますね!」って言ってくれてるじゃねぇか。君ほんとに優秀だね。

 

「ふ、ふん! いつも私を乙女だなんだってからかってくるから仕返しよ! ざまぁないわね!」

「顔真っ赤だぞ乙女」

「無理しない方がいいよ乙女」

「誰よりも乙女だと思いますよ乙女」

「胸、足、腕」

「砕く箇所だけを伝えないでくれ」

 

 そのキレたらバイオレンスになる癖さえなかったらほんとにただただめちゃくちゃいいやつで可愛い女の子なのになぁ。あとおっぱいが大きい。これ重要すぎて試験に出すぎてもはや一生でないレベルだから覚えておくように。

 

「話が逸れた。そうだよ。日葵とのデートを成功させるために策を用意してくれって話。お前ら脳腐ってんのか? まじめにやれよ」

「それが人にものを頼む態度だと思ってるなら、いくら策を考えたところで無意味だと思うよ」

「脳腐ってるならなんで今立ててるんですか?」

「真正面から論理で戦いに来るのはやめてくれ」

 

 俺ノリだけで喋ってるから、正論言われるともうおしまいなんだよ。もうおシュウマイなんだよ。ぷぷぷ。

 俺の思考がある程度読める千里と光莉から冷たい目で見られている。いいじゃん別に。何の糧にもならないクソくだらないこと考えたって。何? そんなこと考える暇があるなら自分でデートプラン考えろ?

 

「考えられたら苦労しねぇんだよなぁ……」

「恭華はどうなのよ。女の子だし頼れるんじゃないの?」

「昨日ちょっと相談してみたんだけど、『で、でーと!? え、あ、いや、その、えっと……』って言った後顔真っ赤にして黙り込んじまった」

「可愛すぎない? 人間国宝? ちょっと舐めまわして揉みしだいてくるわね」

「それが人間国宝に対する仕打ちか?」

「私はその場面を撮ればいいってことですか?」

「つづちゃん。あとでちょうだいね」

 

 もちろん俺は薫からの千里の評価を血の底に落とすためにボイスレコーダーを常時起動しているので、今のも薫に送ろうと思う。ふふふ、死ね。千里。

 

 薫に先ほどの千里の言葉を送ると、メッセージが返ってきた。何々? 『ちょっともやってするけど私は千里ちゃんのこと嫌いにならないし、あんまりこういうことやられ続けると兄貴のことがいやになっちゃうからやめて』だって?

 

「ひ、氷室先輩が血反吐吐きながら乱回転して壁に叩きつけられた!!?」

「ちょっと、部室が汚れるじゃない」

「あ、氷室先輩の状態は気にしないんですね……」

「どうせ自業自得だろうから」

「自業自得って辞書引いたら『擬人化すれば氷室恭弥になる』って書かれてるわよ」

 

 ふぅ、とため息を吐き、床に倒れる俺の隣に光莉がしゃがみ込んで俺の顔を覗き込む。

 

「でも一応聞いてあげるわよ。何があったの?」

「薫が千里のこと嫌いにならないって……俺のこといやになっちゃうって……俺は一体これから先なんのために生きればいいんだ!!!!!!」

「地獄を味わってるあんたにいいニュースよ。そのセリフ聞いた千里が薫ちゃんに『結婚しよう』って言って、『軽率にそんなこと言わないで』ってフラれてたわ」

「僕を殺せ」

「そうか! 千里を殺せばいいんだ!」

「なんでそんな笑顔で殺人を口にできるんですか?」

 

 視覚刺激的にマズいので体を起こし、肩を落とす千里をぽんぽんと叩く。まぁ殺すのはやめておいてやるよ。よく考えたらそれが一番薫に嫌われそうだし。放置するのが一番千里が薫に嫌われそうだし。こいつ軽率にべらべら愛の言葉囁くから信用まったくないんだよな。カスが。男の風上にも……うん。置けないな。メスだしこいつ。

 

「それで、デートプランはいいんですか?」

「俺たちってなんでこう話が進まないんだろうな」

「進める気もない」

「進んでほしくもない」

「おいおい。そんなに俺がカッコいいか?」

「……?」

「……?」

「……?」

 

 三人揃って本当に意味の分からなさそうな顔をされたので、俺は泣こうと思って泣いた。涙っていいよな。目のゴミと心を洗い流してくれるんだから。ちなみに俺の心はゴミすぎるので全部洗い流されて、結果心を失うことになる。

 

「もう失ってるよ」

 

 千里曰く、もう失ってるらしい。じゃあ泣き続けておこう。

 

「……このままだと埒が明かないから話進めるけど、あんたからのプレゼントなんでしょ? だったらあんた自身で考えないとだめじゃない」

「俺も最初はそう思ったけど、びっくりするくらい思い浮かばないんだよ。助けてくれ」

「清々しいほど情けないですね」

「はぁ、男として僕を見習ってほしいね」

「織部先輩、冗談がうまくなったんですね!」

「おい。言っていいことと悪いことの判別がつかないのか?」

「新聞部部長なので」

「御見それしました」

 

 失敗した。こんなやつらに相談しようと思った俺がバカだったんだ。かくなる上は両親に……ダメだ。絶対子作りさせようとしてくる。なら先生? いや、先生はめんどくさそうな顔をしてから「めんどくせぇな」って言うに決まってる。せめて顔だけで止めときゃいいのに平気で言ってくるんだあの人は。

 

「思い浮かばないってなりながら必死に考えてくれるのが日葵は一番嬉しいんじゃない? 私は日葵の親友よ。信用しなさい」

「……普段のお前ならまったく信用しないところだけど、日葵の親友としてのお前なら信用できるな」

「一言多いわよ、アホ」

 

 俺が罵倒されたタイミングで予鈴が鳴り響き、光莉がドアへ向かっていく。そして、俺たちに背を向けたまま一言。

 

「あと、今の私にその相談するの結構むかつく」

 

 と言って、部室から出て行った。

 

「……」

「……」

「……」

「……さ。光莉と仲直りするプランを考えてくれ」

「クズ」

「クズ」

「お前らもいつも通りだったじゃんかよぉ……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。