【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第160話 それぞれの相談

 どうしよう。

 

「日葵とのデート明日なんですけどぉ!!!!」

「兄貴うるさい」

「いやん! ごめんねぃ! 薫ちゃん!」

「うわ、キショ」

 

 兄貴には妹の罵倒がよく刺さる。

 

 俺がリビングのテーブルの上で踊り狂っているのには理由がある。そう、明日。日葵とのデートが明日に迫ってきているのだ。なんだかんだ明日のために服も買ったし靴も買ったし家の鍵も変えた。ちなみに家の鍵は関係ない。

 ただ、心の準備がまったくできていない。夏祭りの時みたいに後で千里たちと合流するなんて予定はないし、最初から最後まで二人でデートだ。そんなことがあっていいのか? 実はデートなんてまったくの嘘で、俺は今日死ぬんじゃないか? デートが嘘なら俺が死ぬ理由がなくないか?

 

「こんなのが兄貴だと十数年間恥ずかしかっただろう、薫」

「んーん。確かに恥ずかしいこともあったけど、私にとってはいいお兄ちゃんだから」

「おい。なんでおじいちゃんとおばあちゃんにさらわれたのがお前じゃなかったんだ」

「攫われるのが罰ゲームみたいに言うなよ」

 

 いや、本来の親元で育てられないから罰ゲームか。

 

 テーブルが汚れるからと恭華に叩き落されつつ、明日どうしようと頭を悩ませ、悩ませすぎて首を90度傾けてしまい、薫に怖がられてしまった。ふふ、脅える薫ちゃん可愛いね……。

 

 いつも余計なことを考えるから話が進まないんだ。ちょっと一旦整理しよう。

 

 俺は日葵のことが好きで、日葵も多分俺のことが好きだ。そしてお互いがお互いを前にすると緊張でおかしくなる。ポンコツになる。日葵は可愛いけど俺は情けないことこの上ない。だからこそ、明日は俺が平気なフリしてリードする必要がある。

 

「……なぁ薫、恭華……恭華はいいや。女の子をリードするってどうすればいいと思う?」

「なんで私が選考漏れしたんだ?」

「恋愛経験っていう点で薫に敗北してるから」

 

 恭華がテーブルに突っ伏して泣き始めた。その背中を擦って薫が慰めている。だから選考漏れしたんだぞ。

 

「んー。私は好きな人と出かけられるならそれでいいって思っちゃうから、リードしてほしいとかもないかな。むしろ、リードしようって無理してほしくないかも」

「は? 何このいい子。なんでこんな子を千里にやらなきゃいけねぇんだ?」

「やらなきゃいいだろ」

「流石双子。天才」

「恐縮」

 

 怒りのあまり涙が引っ込んだ恭華とハイタッチ。今まで千里の殺害は一歩手前で踏みとどまってきたが、双子の恭華も殺せというなら殺すしかない。あれ? 今殺す殺さないの話してたっけ?

 

 ……まぁいい。千里は殺さなくとも、いざとなれば本気でメスにしてやればいいだけだ。そんなことより日葵だよ日葵。

 

「あながち薫の言ってることは間違いじゃないぞ。恭弥が日葵をリードするなんて、まぁいけないことはないが無理だろ。緊張してボロボロになるに決まってる」

「そうなるくらいならいつも通りが一番いいんじゃない? それに、兄貴ならリードしようとしなくても自然とそうなってるだろうし」

「薫って地味に俺への評価高いよな」

「うん。日葵ねーさんと同じくらい大事にしてもらってる自覚あるから」

 

 あまりにも可愛かったので抱きしめてよしよししてほおずりしてやると、「やめろ。ゴミ」と突き放されてしまった。照れてるのかなと思って顔を見てみても本当にゴミを見る目で俺を見ている。好意って難しいんだなぁ。

 

「だから、普通にいけばいいんじゃない? 緊張してても、意識してくれてるって思えるから大丈夫だよ。……まぁ、日葵ねーさんなら『恭弥がいつもと違う……やっぱり私と一緒にいると楽しくないんだ』って思いそうだけど」

「日葵って基本ネガティブだよな」

「周りがポジティブすぎんだよ」

 

 千里と光莉はちょくちょくネガティブ入るけど春乃はポジティブまっしぐらだし、むしろ日葵が普通なんだよ。最近、っていうか結構前から俺たちにあてられてまともじゃなくなってきてるけど、それでも普通の部類だ。まず暴力を振るわない。ほら、普通。

 

「うーん、やっぱり兄貴が素直に言うしかないのかも」

「素直に?」

「日葵ねーさんと一緒だから緊張しちゃうって」

「ばっ、薫! そんなプロポーズみたいなことを恭弥に言わせる気か!」

「薫。あとで恭華に異性関係のこと教えておいてやれ」

「承知しました」

 

 もう初心どころの騒ぎじゃねぇよ。どんだけ箱入りで育てられたんだこいつ。

 

 しかし、素直に言う、かぁ。なーんかそのまま流れで告白とかしちゃいそうで嫌なんだよなぁ。いや、嫌じゃないけど、その、うーん。とにかく今はそういう関係になりたくない、なりたくないわけじゃない。なるべきじゃない? もういいやわかんねぇ。とにかく目いっぱい楽しみつつ、カップルにならないようにしたい。

 

 ……今の俺と日葵じゃめちゃくちゃ難易度高くね?

 

「かくなる上は!」

「私行かないよ」

「私も行かないぞ」

「そんなぁ!」

「二人きりのデートなんだし、二人で楽しまなきゃダメじゃん」

「それに私が行ったところで役に立つ姿が想像できるか?」

「できない」

「だろう」

 

 二人にはいざというとき乱入してくれと頼もうとしたが、恭華は恋愛関係になるとポンコツなので、いざというとき……いい雰囲気になった時に乱入してきたら「……ぁ」と顔を真っ赤にしながらガッチガチになって口から空気を漏らすだけの置物になる姿しか想像できない。それはそれで邪魔はできてるけど。

 

「どうせ日葵ねーさんもヘタレだから告白とかしてこないよ。大丈夫。兄貴の心配してるよーなことはないから。多分」

 

 やはり薫はわかってくれている。俺が日葵と今カップルになりたくないのは、まだ春乃と決着がついていないからだということを。はっきりと口にはしていないが、俺クラスに薫が大好きになれば目を見るだけでわかる。あれは、情けない兄貴を心配してくれている目だ! ちなみに恭華は恋愛関係がさっぱりだから「まだ恥ずかしいんだろうなぁ」くらいにしか考えていないはずだ。アホめ。

 

 春乃なら、日葵と付き合うことになったって言えば「そっか!」って笑ってくれるだろうが、あんなにアプローチしてきてくれた子に対し、そんな幕切れなんて不誠実が過ぎる。いや、それなら日葵とデートに行くのもどうなのって感じだけどそれは……その、ねぇ?

 

「まぁ一人で頑張るしかないかぁ」

「うん。頑張って、兄貴」

「頑張れ恭弥。いや、お兄ちゃんって呼んだ方がいいか?」

「二人とも。俺の両隣にきて『お兄ちゃん頑張れ』って囁いてくれ」

「二度と話しかけんな、カス」

 

 薫が大きな舌打ちを残してリビングを去っていってしまった。なぜ?

 

「……恭華はやってくれるの?」

「……し、仕方ないな」

 

 言ってみたら本当にやってくれた。どうやら恭華は押しに弱いらしい。俺はこの瞬間、絶対恭華を飲み会に行かせないでおこうと心に誓った。

 

 

 

 

 

『織部くん! 明日! 明日だよ! 明日恭弥とデートに行くの!』

「夏野さん。僕の着信履歴に夏野さんの名前が刻まれることの重大さにそろそろ気づいてほしいんだ」

 

 そういえば明日は恭弥と夏野さんのデートの日だなぁと家でのんびりしていたら着信音。スマホを見れば夏野さんから。胸の前で十字を切って出てみれば、案の定明日のこと。思わず文句を言ってみたけど、スマホの向こう側からは『?』。そろそろ夏野さんと僕が話してると僕が殺されるってことに気づいてほしいんだけどなぁ。

 

 まぁスマホの着信履歴見せなければいいだけの話だ。どっちにしろ何かやらかして殺されることが多いんだから、その要因が増えたところであんまり関係ない。

 

「それで、何で僕に連絡を?」

『あのね……その、ちょっと勇気が出なくて』

 

 なるほど。朝日さんと岸さんはダメで、薫ちゃんと恭華さんに電話したら恭弥が一緒にいるだろうから僕ってわけか。まったく。つくづく思うけど僕ってめんどくさい位置にいるよね。ほんとに。

 

「勇気が出ないって?」

『うん。ほら、恭弥と二人きりでデートでしょ? その、し、下着とか、気合い入れた方がいいかなって』

 

 僕は思わず周りを確認した。よし、恭弥と朝日さんはいない。そもそもここは僕の部屋だからいたらめちゃくちゃ怖いけど、今夏野さんからとんでもないことを聞いてしまったからそりゃ警戒する。あの二人は夏野さんのことに関してとなるとどこにでも現れる化け物だから。

 

 いないと確定した今、その質問には快く答えることができる。なんか下着のこと聞いてくるって僕のこと男と認識してない気がしてなんだかなぁって思うけど……おい、もしかして僕のこと舐めてんじゃねぇか?

 

『こんなこと言ってごめんね? 頼れる男の子が織部くんしかいないから』

「仕方ないなぁ」

 

 頼れる男の子が僕しかいないならそりゃ仕方ない。なにせ僕は男の子だからね。

 

「夏野さんの中で下着がどういう位置にあるかによるんじゃない?」

『? 胸と……その、』

「あぁ待って言わなくていい。そういう意味じゃないから。えっと、下着に気合いを入れることによってやるぞ! とか心の準備ができるとかない?」

『……そ、そういうこと。え、えっと、今のはボケてみただけだから!』

 

 可愛いなこの人。

 

『うーん。うん、その、いつもとは違う気分になるかも』

「違う気分?」

『デートのあと、っていうか……その……先を、想像しちゃうっていうか』

「姉さーん!! 姉さーん!!」

 

 ダメだ。これは僕が聞くべきことじゃない。大体なんでそんなことを彼氏でもない男に対して言えるんだ。いや待て、もしかしてさっき僕は夏野さんに嘘をつかれたんじゃないか? だって夏野さんって僕のことナチュラルに女の子扱いしてくる筆頭だし。許せねぇ!!

 

「はいはーい。どうしたの?」

「夏野さんが性的な相談を僕にしてくるんだ!! 助けて!!」

『なっ、せ、性的じゃな……いこともない、です。ごめんなさい……』

「あらあら。そういうことならお姉ちゃんに任せなさい!」

 

 これ以上聞くと僕が危ないと思い、スマホを姉さんに押し付けて逃げ出した。

 

 逃げ出して、数分してから気づく。あれ? 姉さんって恋愛に関してまともだっけ……?

 急いで部屋に戻ると通話は終わっていて、姉さんに「何を吹き込んだの?」と聞いてみても微笑むだけ。

 

 僕は先手をとって恭弥に「ごめん」と送っておいた。「なんか知らねぇけど、殺す」と返ってきた。いや、許せよ。

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