【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第164話 デート④

「……」

「……」

 

 とんでもねぇぜ、『ふたごボブカート』。

 

 『ふたごボブカート』は、前後に分かれてカートに乗って決められたコースを爆走するアトラクションだった。通常なら少し離れてカートに乗るらしいが、係員さんが「あっ、カップルの方ですね!」と有無を言わさずカップル専用カートに俺たちを乗せ、俺が後ろに乗って前に乗った日葵をほぼ抱きしめた状態で数分間爆走したもんだからそりゃもう、ねぇ。

 

 お互い顔真っ赤で顔も見れやしねぇんだよ。係員さん「やり切った」みたいな顔してるし。ふざけんじゃねぇぞよくやってくださいました。めちゃくちゃ柔らかくていい匂いがして好きが溢れ出てきました。ありがとうございます。

 

「……た、楽しかったね」

「おう。怖くなかったか?」

「そんな余裕がなかったと言いますか……」

 

 えへへ、と顔を真っ赤にしながら困ったように笑う日葵を見て俺はノックアウト。つまり死んだ。あーあ、こんな可愛すぎる生き物の隣にいて生命活動続けられるやついんの? いないだろ。だって幼馴染である程度耐性ついてる(ついてない)俺が耐えられねぇんだから。

 

「でも、すっごくドキドキしたけど、恭弥の腕の中って安心するね」

 

 目を見て言うにはめちゃくちゃ恥ずかしいからか、下を見ながらそう言った日葵を見てしまった俺は「何か悪いことしたかな?」と考え込んでしまう。だってそうだろう。今から死刑を受けるから、最後の幸せにこんな可愛い日葵とデートさせてもらえてるに違いない。そうじゃないと説明がつかない。

 

 もはや俺が現実逃避にも近い思考をぐるぐる回していると、ふと左手に柔らかい感触が。ちらと見てみれば、日葵の手。

 

「……ここでは繋いでおくって、言ったから」

「……そうだな」

 

 もしかして、日葵さっきから「キスして」って言ってる? 言ってるよな? 思いきり抱き締めてキスしてって言ってるよな? 俺は天才だから間違いないはずだ。というか日葵くらい可愛い子なら「キスして」って言ってなくてもキスする価値あんじゃねぇか? 俺は捕まるけど捕まってもいいだろもう。

 

 ……こうして犯罪者が生まれるのか。勉強になったぜ。

 

「次どうする?」

「んーと……早めに挑戦しておこうかなって思って」

 

 日葵が指したのは、乗っている人すべてが叫んでいるジェットコースター。レールはこれでもかと渦を巻いていたり、もはや落下してるんじゃないかというくらい急角度がついていたりと、とても絶叫系が苦手な人が乗るものだとは思えない。

 

「ほんとに無理しなくていいぞ? 乗れるもんで楽しめりゃいいし」

「怖いけど、多分大丈夫」

 

 日葵は握っている手に少し力を込めた。

 

「恭弥が隣にいてくれるから」

 

 瞬間、俺の視界に変化が訪れた。人でごった返していたテーマパークは結婚式場へと変わり、更に俺と日葵の格好も新郎新婦へと変化している。

 

 そうか。俺は今、日葵からの一言で俺たちが結婚したんじゃないかと錯覚しちまってるのか。いや、錯覚じゃないかもしれない。だって遅いか早いかの違いだし。もうここでプロポーズしちまうか? 俺の一生を日葵に奉げちまうか?

 

 ……一旦ストップ。冷静になれ。俺はまだ、答えを出していい状態じゃないはずだ。単なる俺のワガママっていうか自業自得っていうかそれはもうほんと面倒くさいと思われることかもしれないけど、ゴールインするには準備が終わっていない。

 

「それじゃ、いこ!」

「おう」

 

 ただ日葵からしたら知ったこっちゃねぇしこの気合いの入りよう、もしかしたらもしかするのかもと思うと、今からその答えをどうしようか考えておかないといけない。

 

 ったく、モテる男って本当に辛いんだな。

 

 

 

 

 

「そういえば、薫ちゃんは大丈夫なわけ?」

「何が?」

 

 何が? と首を傾げる純度100%のメスの鼻をつまんで成敗。少し鼻が赤くなったことすら可愛さをプラスする要素にしかならないのは本当どうにかした方がいいと思う。

 

「私とこんなところにきて、よ」

「それって僕と朝日さんがどうにかなるってこと? 考えられないくらい面白いんだけど」

「考えられないくらい不快なんだけど。殺すわよ?」

「あっ、出店がある! 女王様に献上いたしますね!」

 

 一瞬にして奴隷を獲得した私は、奴隷からチュロスとココアという甘ったるい組み合わせを受け取り、なんで甘いものを見ながら甘いものを食べて飲まなきゃならないのよと思いながらも、折角買ってくれたんだからと文句も言わず口へ運ぶ。ふっ、私がいい女過ぎて日葵以外の女が霞んじゃうわね……。

 

 千里はちゃんとコーヒーにしたらしく、可愛らしくちゅーちゅー吸いながら私がチュロスを食べているところを凝視して、更に私の胸に視線を寄越す。

 

「考えられないくらい面白い割には、随分熱烈な視線じゃない?」

「性欲は沸くけど恋愛対象としては見れないみたいな。そういう感覚だよ」

「あんた、薫ちゃんいい子だからほとんど黙っててくれるけど、安心させなきゃダメよ」

 

 私でさえ恋愛ってなると不安になっちゃうんだから。私がよ? 可愛い生物以外はほぼ生きる価値無しって断定する私が、他人の評価なんて一切気にしない私が、好きな人のことになったら不安でいっぱいになる。だったら、普通の子である薫ちゃんがどれほど不安になるかは容易に想像がつく。

 

「私もあんたとどうこうなるなんて微塵も思ってないけど、客観的に見てる側はそうは思わないの。というか、そう思ってても『もしかしたら』を考えちゃうのよ。女の子と二人でいる状況も、『いいよ』って言っててもほんとは嫌だし、自分だけを見てほしい! って思うものなの。恭弥が大事なのはわかるけど、もうちょっと薫ちゃんを優先してあげなきゃダメよ?」

「あの、ぐぅの音も出ないこと言うのやめて。朝日さんが全面的に正しいなんて耐えられないから」

 

 だって、あんたおかしいもの。好きな子から告白されたのに、『親友の恋路が大変だから待って』って。それ、普通の子なら「は?」って言われて終わりよ? 私なら「じゃあ一緒にどうにかしましょ」って言っちゃうし。なのに薫ちゃんはちゃんと待って、しかも千里をずっと想い続けてる。それなのに千里が傍目から見たらちゃらんぽらんなんだから、そりゃちょっとは言いたくもなるわよ。

 

「でも僕が大事だって思ったのは、みんなだよ。中心にいるのは恭弥だけどさ。ほら、恋愛どうこうであの関係が崩れるのは嫌だなって思ったから、それなら薫ちゃんに愛想つかされたとしても優先したかったんだ」

「ばっかじゃないのあんた。はぁ? 愛想つかされたとしても? 薫ちゃんの前で絶対言うんじゃないわよそんなバカなこと。あと恭弥と日葵の前でも」

 

 ほんっとムカつく。『僕はみんなの輪を守る重要サポートキャラです』みたいな顔しちゃって。全員があんたの助け必要だと思ってんのかしら。私は、まぁ、助かったところがなくもないけど。

 

「言わないよ。朝日さんが相手だから言ったんだ」

「なにそれ、プロポーズ?」

「冗談は乳だけにしろよ」

 

 千里の口にチュロスをぶち込み、そのまま出し入れしてやった。「んっ、んぐっ、ぷぎゅっ」と言葉として意味をなさない音を発する千里に男の視線が集まり、次いで千里が男であることに気づいた女の子からも視線が集まる。

 

 これこそ、千里に疑似的にいやらしいことをさせて周囲にそれをアピールすることで、千里の尊厳を破壊する最終奥義! ちなみに私は身近で千里のいやらしさに晒されるため、ダメージは重大。

 

 流石にこれ以上やると警察が「大変だぁ!」と言って走ってきちゃうからやめておく。「ごめんなさい……」と酸欠気味になったからか頬を紅潮させ、はぁはぁ言いながら謝ってくる千里に性欲をこれでもかと刺激されつつ、私はこの最終奥義を封印することに決めた。地球が持たねぇやこんなの。

 

「ひどいめにあった」

「あんたの周りの方がよっぽどひどい目に遭ってるわよ。どれだけ性癖歪めれば気が済むの?」

「朝日さんのせいでしょ」

「そもそも、あんたが性的じゃなかったらこんなこと起きないわよ」

 

 ちなみにこんなこと、というのは千里に熱い視線を向けていた男どもが彼女に怒られるという惨劇のこと。何組かは「まぁあれは仕方ない」って許してくれてるけど、やっぱり自分の彼氏が他の女……男に目移りしているのは面白く思わない。

 っていうのを遠回しに伝えたつもりなんだけど、ちゃんと伝わってるのかしらこいつ。ちなみにこれは嘘。

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