【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第169話 体育祭④

 昼。いくつかの競技を終え、それぞれの家族のもとへ言って弁当を食べる時間。

 

 家族じゃないのになぜか千里が俺と一緒に氷室家のところへ向かい、俺と千里は正座させられていた。俺たちの前でお冠なのは、腕を組んで冷ややか目を俺たちに向けてくださっている薫様である。

 ちなみに父さんはさっき母さんにどこかへ連れて行かれていた。南無三。

 

 俺と千里が正座させられて、薫がお冠で、その二組を交互に見て恭華が気まずそうにしている。こいつ、俺と双子の癖して結構常識あるっていうか、普通なんだよな。やっぱり田舎って心が綺麗に育ったりすんのかな?

 

「なんで正座させられてるかわかる?」

「おい、わかってんのか千里」

「兄貴」

「あ、はいすみません」

 

 いつもの調子でふざけようとしたら怒られてしまった。これはあまりふざけずにちゃんと真面目に聞いておいた方がいいかもしれない。毎回そうしろって言われるような気もするけど、そんなことができたら苦労なんてしてねぇんだよハゲ。

 

「察するに、僕たちに向けられてる視線が関係してると思うんだ」

 

 千里の言葉に、その場にいる全員が周りを見渡した。

 

 周囲の視線。全員ががっつり俺たちを見ているわけではないが、それでもかなり見られていることは間違いない。そしてちらほらと「あれが大胆告白の……」「お似合いカップルの……」「美少女に囲まれてうらやましいなあいつ、殺すか」と声が聞こえてくる。最近俺に対する殺意高くねぇか?

 

 そう。借り物競走で俺と千里、そして父さんが余計なことをしてから、ものすごい目で見られるようになってしまった。それが気持ち悪いとかじゃなくて祝福だとかプラス方面だからなおタチが悪い。だって、受け入れてもらえてるのに「実は嘘でノリでやっちゃっただけです」なんて言ったらとんでもなくバッシングを受けるに決まってる。まぁバッシングを受け続けた人生だからそれはそれで関係ねぇかと思ってしまうところもあるが、俺たちがバッシングを受けたら他のやつらにも迷惑をかける。

 

「そこまでわかっててなんでやっちゃうの?」

「思ってたこと言っただけなんだ……」

「僕が言うのもなんだけど、お義父さんが一番だめだと思うんだ」

「確かにお父さんもだめだったけど、発端は二人じゃん」

 

 返す言葉もなかった。

 

 俺たちが押し黙ったのを見てか、恭華が恐る恐るといったように薫に声をかける。「えっと……」と控えめにかけられた声に、薫はこてんと首を傾げて「どうしたの? 姉さん」と優しく答えた。は? かわいいんだけど。

 

「あの、二人も悪気があってやったわけじゃ……いや、悪気がないから一番駄目なんだが、ん? 考えれば考えるほど庇えないな。おい、猛省しろ」

「ミイラ取りかと思ったら最初からミイラじゃねぇか」

「はぁ、ほんとに恭弥の双子? 役立たずにもほどが……あぁ恭弥の双子だからか」

「おい。なんでお前は俺まで敵に回そうとしてんだ」

「癖で……」

「二人とも?」

「「はい」」

 

 クソ、いつもなら薫に見下ろされて怒られるなんてめちゃくちゃ嬉しいことなのに、事態が事態なだけに素直に喜べない。

 薫が怒ってるのは、色々原因があると思う。俺のことをよく思ってくれる人に対して不誠実だとか、千里が薫をフったくせに俺とあんなことをしたこととか、色々。そう考えたら俺たちめちゃくちゃとんでもないことしたんじゃねぇかって思ってしまうし、実際めちゃくちゃとんでもないことをしている。つづちゃんもさっき「号外! 号外です!」ってさっきのインタビューシーンを現像して記事にしてばらまいてたし。仕事早すぎねぇか?

 

「千里ちゃん。ほんとーに私のこと好きなの?」

「ぐっ!」

「がっ……」

「恭弥と恭華さんがものすごいダメージ受けてるけど……」

「シスコンのことは気にしないで」

 

 薫が、自分への気持ちを確かめるような発言をしただと? あまりの衝撃に俺と恭華はその場に倒れ込んだ。吐血もした。やるな、薫。俺たち二人を一瞬にして蹴散らすとは、流石俺たちの妹だぜ。

 

 倒れた俺たちを無視して、俺たちの頭上で会話が進んでいく。

 

「うん、好きだよ」

「みんなの前で、兄貴とあんなことしたのに?」

「それは、その、相手が恭弥だから」

「兄貴のことが好きなの?」

「……うん。好きだよ。でも恋愛的な意味じゃない」

「……だとしても、あぁいうこと他の人に言っちゃやだ」

「申し訳ございませんでした」

 

 千里が負けた。薫の可愛さに負けた。これは千里が悪い。むしろ千里しか悪くない。だから俺は悪くない。やっぱり頭がいいな俺。惚れ惚れするぜ。

 

 千里が倒れている俺たちの隣で土下座すると、薫はそっと千里の前にしゃがみ込んだ。そして俺の頭と千里の頭にぽんと手を置いて、静かに話し始める。

 

「兄貴と千里ちゃんが仲良しだっていうのはわかってるし、恋愛感情もないってわかってるけど、それでも周りは不安になっちゃうの。だって仲良すぎだし、千里ちゃんが女の子に見えるからってそれネタにしちゃうし。ふざけてるってわかってる。冗談で言ってるってわかってる。でも、好きとかそういう気持ちは、冗談でも他の人に言ってほしくないものなの」「……」

「……」

「ごめんね。信じてるけど、気になっちゃったから言っちゃった」

 

 薫の顔を見ると、本当に申し訳なさそうに眉尻を下げて笑っていた。恭華を見る。泣いていた。どうやら妹が立派に育ってくれていて感動したらしい。千里を見る。本当に申し訳なく思ってるのか、今にも腹を切りそうな表情をしていた。死は償いにならないんだぞ。

 

「ん、この話は終わり。ご飯食べよっか」

「……あの、僕は」

「聖さんに許可もらって引っ張ってきたから大丈夫」

「恭弥。私たちは席を外した方がいいだろうな」

「は? 薫と千里を二人きりにするわけねぇだろふざけんな」

「お前……」

 

 恭華から恐ろしいものを見る目で見られた。なぜだ?

 

 

 

 

 

 昼休憩が終わり、自分のクラスの席へと戻る。最初は出席番号中に並んでいたが、そんなことは知ったことかと好きに座り始めたクラスメイトに習い、俺たちは俺、春乃、千里、恭華、日葵、光莉の順で一列に並んでいる。出る競技が多い人が端っこに並んでいるので、俺が女の子に挟まれて周りから殺気を向けられることはない。なんだ? 女の子に挟まれるってめちゃくちゃエロいな。

 

「確か二人三脚ってこの競技の後やんな?」

「おう。ただ、普通の二人三脚かどうかめちゃくちゃ不安になってるけど……」

「まぁ玉入れもあんなんやったしなぁ」

 

 このクラスを放置してる時点でもうわかるが、この学校はちょっとおかしい。自由が校風とは言ってもこんなに自由なのは意味がわからん。校長も大体のことは「楽しそうならいいよ」って言うタイプだし、うちの担任も「俺に迷惑かかんないならいいよ」って言うタイプだし。

 だからこそ、普通の競技が続くわけがない。そんな俺の予想は今やっている競技が終わり、『少し準備しますのでお待ちください』というアナウンスの後、グラウンドに並べられ始めた様々な障害物を見て確信に変わった。

 

「……二人三脚?」

「いや、障害物競走に見えるな」

 

 平均台、地面に固定されたネット、並べられた麻袋、つるされたパン……どこからどう見ても障害物競走に使うようなものばかり。ただ、プログラムを見ても次の競技は『二人三脚』と書かれている。

 

「二人三脚障害物競走?」

「めちゃくちゃじゃん」

『準備が完了しました! 参加者の皆様はゲートにお集まりください!』

 

 不安に思いつつ、俺たちは立ち上がってゲートに向かい、並ぶ。並んでからしばらく立って、再びアナウンスがかかった。

 

『それでは、競技の説明をいたします! ただいまより行われるのは二人三脚障害物競走! 二人三脚の状態で様々な障害を乗り越えていただきます! おやおや、男女コンビもいらっしゃいますね? これはかなり密着する場面もありそうですので、色々期待ができそうです! が、二人三脚しながら競争というのは少し危険ですので、同じクラスの参加者が同時にスタートしていただき、全員で協力しながらという形をとらせていただきます!』

「大丈夫か恭華?」

「私より薫が心配だ……」

「僕は生まれ変わったんだ。恭華さんと密着しても、はぁはぁ。興奮しないよ」

「もうしとるやないか」

「恭華になんかしたらディープキスする」

「恭華さん。僕が何かしそうになったら遠慮なく殺してほしい」

「それはでぃ、ディープキスのほうがマシじゃないか……?」

 

 もしかしたら死んだ方がマシな可能性もあるんだよな……。薫にあぁやって言われた後に俺とディープキスとかもう死んだのと同じだろ。絶対めちゃくちゃ怒った上で悲しそうな顔するもん。

 

「うーん、ごめんね日葵。うっかり色んなところ触って絶頂しちゃうかもしれないわ」

「え……た、助けて恭弥」

「おい光莉。確かに色んなところ触って絶頂したい気持ちもわかるが、そういうのはちゃんとした手順を踏んでこそだろ? ところで俺とんでもない失言しなかったか?」

「日葵見たらわかると思うで」

 

 日葵を見る。めちゃくちゃ顔を真っ赤にして、もう競技できないんじゃないかってくらいふらついていた。まずい! このままだとふらついた日葵に対して光莉があんなことやこんなことをしてしまう!

 

「……それもそうね。ちゃんと日葵と愛し合いたいから我慢するわ」

 

 よかった。光莉がバカで。

 

『さて、それでは参加者の皆さん、入場してください!』

 

 アナウンスを合図に入場し、スタートライン、トラックの内側へと並ぶ。そして実行委員から足を結ぶ紐を渡され、それを受け取った春乃が何の抵抗もなく俺の左足と自分の右足にくくりつけた。

 

「……もうちょっと後でもいいんじゃねぇの?」

「んー? 照れとるん?」

「まぁそりゃあ、なぁ」

「……そか」

 

 なんとなく空気に耐えきれなくなり、そっぽを向くと日葵と光莉が視界に入った。めちゃくちゃ怖い目で俺を見ていた。

 千里と恭華を見た。千里は諦めたように首を横に振り、恭華は千里と密着しているからかそれどころじゃなさそうだった。

 

 ……この体育祭、どうしようかなって思うこと多くねぇか?

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