【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第171話 体育祭⑥

「追いついたぜ光莉!」

「なっ、なんなのよその速さ! 人間じゃない!」

「息ぴったりやからこそできるんやで?」

「いっ、息ぴったり!!!??」

 

 日葵を抱えて爆走する光莉に並走する。正直俺も二人三脚で出せる速度じゃないって思ってるけど、俺と春乃ならまぁありえるんじゃないかって思ってしまう。あと息ぴったりに過剰反応する日葵かわいい。ふふ。お、俺と息ぴったりになりたいの、かな!?

 

「恭弥くん。隣でキモい顔せんといて」

「悪い。あまりにもイケメンすぎた」

「話が通じないのになんで息ぴったりなのよ」

「え? 恭弥カッコいいよ?」

「ぐわぁあああああ!!!」

「恭弥くん!!」

 

 不意に日葵から褒められたため面白いくらい動揺し、春乃とタイミングがずれてしまった。なんとか春乃が合わせてくれたから転倒はしなかったが、その間に光莉が日葵を抱えて走り去ってしまう。

 

「悪い春乃!」

「んーん。ちなみにそれどっちの意味で?」

「……ごめん!」

 

 動揺してタイミングがずれてしまったことと、春乃の隣で日葵の言葉に動揺してしまったこと。後者は触れないでいてくれると助かったんだが、そうもいかないらしい。春乃は不服そうに口をへの字に曲げ、そうしながらも俺にタイミングを合わせてくれている。

 光莉とのことがあったのになんで俺はこうやっちまうんだろうか。日葵のことが好きだからって言えば聞こえはいいが、だからって他の女の子をないがしろにしていい理由にはならない。

 

 ……ノリでどうこうならないのってあるんだな、やっぱり。

 

「恭弥くん」

「ん、わかってる」

 

 今は考えずに勝つことに集中、と言外に込められたそれを正しく受け取って、次の障害物に挑む。

 

 正面に見えるのは、吊されたパン。光莉は「いっぱい食べましょうねー」と日葵に赤ちゃんプレイを強要し、それを日葵が恥ずかしがって大幅なタイムロスをくらっている。何やってんだあいつ、クソバカか?

 

「恭弥くん、どっちが食べる?」

「あれ跳ばないと届かないよな?」

「光莉は日葵抱えてるから届いてるけど、通常は」

「なら俺が食う。俺のが背高いし」

「ん。なら任せるで!」

 

 俺たちなら間違いなくタイミングを合わせて跳べる。あのバカがタイムロスをくらっている間に俺がパンを食らってトップに躍り出る!! やば、ジョークうますぎ?

 

「待てー!!!」

「なにっ、このメス声は!?」

「誰がメスだ!!」

 

 背後からメス声と統率のとれた足音が聞こえてきた。振り向けば、そこには肩を組んで息ぴったりの二人三脚を見せる千里と恭華がいた。恭華の顔が赤くない異常事態を目にした俺は動揺し、少しペースが落ちてしまう。というか今さらっと春乃合わせてくれたよな? マジモンの化け物かこいつ。

 

「なんで恭華が恥ずかしがらんと千里と密着できてるんや!?」

「ふっ、滑稽だなお前ら」

 

 そのまま千里と恭華は俺たちを追い抜いて、「ふ、ふふふ。パンを食べ終わったらおっぱいあげるからねぇ!!!」と狂気に満ちあふれた光莉に怯えつつ、かわいらしくぴょんと跳び上がってパンにかじりついてもぎとった。そういえばあれその場で全部食べる必要ないんだよな……? 光莉、赤ちゃんプレイを強要するためだけにずっと立ち止まってんのかあいつ。抱えてることをいいことに……!! うらやましい!!

 

「むぐぐ!! むぐぐぐぐ!!!」

「なんかすごい作戦発表してるとこ悪いけど、パン食べたまんまやから何一つ伝わってへんで」

 

 こっちを振り向いて勝ち誇った表情の千里がむぐむぐ言っている。流石の俺でも何も伝わってこない。わかったことはむぐむぐ言う千里はかわいいということだけだ。

 どんな方法を使って恭華の羞恥心を取り除いたかはわからないが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。タイミングを合わせて跳躍し、涙目になっている日葵に興奮しながらパンをもぎ取って千里と恭華を追いかける。

 

「あ!!! 日葵に興奮してる間に追い抜かれてるじゃない!!」

「うぅ……色んな意味で恥ずかしい……」

「くっ、日葵! ゆっくり食べていいのよ!」

「光莉が食べてよー!!」

「えっ!!? いいんですか!!!!???」

「悪い日葵!! 食べきってくれ! 観客には子どももいるんだ!!」

「それに多分光莉が食べた方が時間かかってまうで!!」

 

 きっと光莉は日葵のかじった部分を「ここに日葵の唾液が……」とうっとりしながらべろべろ舐める。子どもに悪影響どころの騒ぎじゃないし、光莉の見た目を考えたら大人にも悪影響だ。悪いことを考えてる大人に撮られて変なことに使われたらしゃれにならない。

 ……なんかもう色々手遅れな気もするけど、気のせいだろう。

 

「えっ、僕らのことはもういいの!? ねぇ!! ほら、恭華さんが僕と密着しても平気そうだよ!!」

「どうせ千里は薫の夫になるから、じゃあ弟じゃんって思って平気なだけだろ」

「流石私の兄だな。私の思考はお見通しというわけか!」

「でも血がつながってないから普通に他人だし、千里はお前のこといやらしい目で見てるぞ」

 

 恭華が面白いくらいに動揺して千里を巻き込んで転倒した。その間に抜き去って次の障害物へ向かう。なんか今恭華だけじゃなくて千里も攻撃した気がするし、なんなら薫も不機嫌になったような気もしなくもないけど気のせいだろう。距離離れてるから聞こえやしないだろうし。

 

 なんにせよこれで千里と恭華は脱落した。『家族』と思い込む以上の手札があいつらに残されているとは思えない。後は、

 

「待ちなさい!!!」

「ね、ねぇ光莉。そろそろ下ろして……」

「日葵!! 私たちが勝つためにはこうするしかないの!! 勝てば他の四人を好きにできるのよ!!?」

「……」

「まずい!! 日葵が堕ちた!」

「俗っぽくてかわええなぁ」

 

 も、もしかして俺を好きにするつもり……!? 負けてもいいかもしれない。いや、ただそれは光莉に恭華が好きにされるということ。兄貴として光莉を一位にするわけにはいかない!

 ただ、このまま走っていれば俺たちの一位は確実だ。人一人を抱えた光莉と、息を合わせてほぼ全力疾走の俺たち。どっちが速いかは明白だ。

 

 次の障害物はピンポン球運び。スプーンにピンポン球を乗せ、数メートル先にあるプラスチックの筒にピンポン球を入れるだけのもの。全力疾走していると少しバランスが厳しいから少し速度を落として運び始める。

 少し遅れて日葵と光莉も到着。スプーンは二人で持たなければいけないため日葵は光莉を下ろし、俺たちに追走し始めた。

 

「はっ! 俺たちの勝ちは決まったみたいだな!」

「甘いわよ! 私には秘策がある!!」

「恭弥くん! 多分暴力や!! はよ逃げるで!!」

「光莉、暴力はだめだよ!」

「違うわよ!! 日葵がいるからそんなに危ないことできないし!」

「日葵がいなかったらやってたってことだよなそれ」

「うん」

「うんって……」

 

 日葵が光莉と一緒でよかったぜ。いや、よくないかもしれない。光莉と一緒にいるせいでめちゃくちゃ恥かいてるし。なんだあいつ、敵でも味方でも最悪じゃん。

 にしても、秘策? あいつに暴力以外の秘策なんてあるのか? あいつは口がうまい方じゃないし、表だった暴力の方が得意だったはず。そんなあいつの秘策なんて恐るるに足らん。

「マジックスペル! 『密着する日葵の温かさと柔らかさと甘い匂いと汗の匂い』!!」

「ひ、光莉!?」

「ぐっ!!」

「恭弥くん!」

 

 想像してしまう。日葵の温かさ、柔らかさ、そして匂い! 想像してしまったそのすべてが俺の脳を犯す!! このままではまずい! 想像してノックダウンすれば、日葵にも軽蔑されて春乃にも軽蔑される!!

 ……待て、春乃?

 

「ふーはっはっはっはっは!!!」

「なっ、何笑ってるのよ!!」

 

 一瞬ふらついた体を元に戻し、筒の中にピンポン玉を入れた。突然立て直した俺に春乃は不思議そうにして、光莉は焦って、日葵はまだ恥ずかしそうにしている。かわいい。

 

 考えてみれば、簡単なことだったんだ。確かにマジックスペルは効果的だった。しかし、今の俺にはそのマジックスペル以上の『リアル』を感じている!

 

「甘いな光莉!! 今俺は春乃と密着している!! つまり春乃の柔らかさ、体温、そして匂いをすべて感じることができるということだ!! 普段明るくイケメンな春乃がちゃんと女の子の柔らかさで優しさを感じさせる温かさで、ふわりと香る花の匂いが俺をその幻想から解き放ってくれる!! 『リアル』に勝る『幻想』など存在しなっ、アー!!!」

 

 声高々に勝利宣言をしていたその時、春乃と歩調が合わなくなり転倒。瞬時に春乃を引き寄せて抱き留め、自分を下敷きにする。春乃なら受け身をとれたはずだが、春乃が歩調を合わせられなくなったということは何か心の動揺があったということ! 庇っておいた方がいいはずだ。ふっ、俺がいい男すぎて困っちまうぜ。

 

「どうした春乃! お前がミスるなんて珍しい!」

 

 春乃は俺に抱かれたまま胸の手前でぎゅっと手を握り、ぽそっと呟いた。

 

「……はずい」

「……お、おう、ごめん」

「ふーはははは!!! 無様ね恭弥、春乃!! 私たちは先に行くわ!!」

 

 ピンポン玉を入れ終えた日葵と光莉が俺たちの隣を通り過ぎる。その去り際に、日葵が「いいなぁ」と呟いた瞬間、

 

「ウワー!!」

「ひ、光莉!?」

 

 光莉がその場で勢いよく一回転し、日葵を胸に抱きながら背中から転倒した。なにやってんだあいつ。

 

「何してるの!」

「え!? 私に抱きしめてもらいたいから『いいなぁ』って言ったんじゃないの!?」

「ち、あっ、ちがっ、えっと」

「じゃあなんでいいなぁって言ったのって言われることを恐れとるな……」

「それより春乃さん。俺たちそろそろ離れませんこと? グラウンドど真ん中でずっと抱き合うってよくないと思うんですよ、俺」

「恭弥くんが離してくれへんからやん」

「あ、はい」

 

 そっと離すと、俺からゆっくり離れて一緒に立ち上がる。騒ぎ過ぎたから千里と恭華が追いついてきているかと思ったが、ピンポン玉を運ぶときに手が触れあう度恭華が動揺しまくって全然進めていない。日葵と光莉は倒れながらどたばたしている。

 

 これは、勝った!

 

「よし、行くぞ春乃! ラストスパートだ!」

「うん」

 

 ちょっとしおらしくなっている春乃に気づかないフリをして、俺たちは再び走り始めた。

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