【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第26話 椅子になる男

「千里。修学旅行の部屋一緒の部屋にしといたぞ」

「そういうつもりじゃないんだろうけど警戒してしまう僕を許してほしい」

「俺も俺の名前の隣に千里の名前書くのなぜか緊張したからお相子だ」

「僕たちの友情はここまでだ」

 

 どうやらここまでらしい。

 

 修学旅行まで一週間を切った今日。自由に部屋割りを決めていいということで、俺は真っ先に飛びつき俺と千里の名前を書いた。

 クラスの人数は40人で、男子が22人に女子が18人。当然男子と女子の部屋は分かれており、男子の部屋が5つ、女子の部屋も5つ取っているらしい。

 

 貼りだされた男女別の部屋割り表に気づいたクラスメイトたちが次々に名前を書いていく中、ちょんちょんと可愛らしく肩をつつかれた。千里か日葵だろうなと振り向いてみると、そこにはクズ、いや朝日。

 

「どうしたクズ」

「死ねゴミ。あんた、とんでもないことしたわね」

「俺にとんでもないこと言ったわね。何が?」

「真っ先にあんたと織部くんの名前書いたことよ」

「それの何がとんでもないんだよ」

 

 朝日が部屋割り表を指さし、つられて部屋割り表を見た。

 綺麗に俺と千里が避けられ、男子の他の部屋が完璧に埋まっている。あれ? 男子22人で俺と千里が一部屋で他が全部埋まってるってことは、俺と千里二人きりじゃね?

 

「おい、とんでもないことしてるぞ俺」

「とんでもないことしてるのよ」

「とんでもないことしてくれたね……」

 

 周りを見れば、男どもが歯を見せて「こういうことだろ?」と得意気に笑っている。俺たちに気を遣ったつもりかあのバカども。これじゃ「え、修学旅行に部屋で二人きりってもうセックスしてるよね?」という噂が流れてしまう。

 このままじゃマズいと、歯を見せて笑うどころかダンスまで始めた井原とかいうバカを誘うことにした。

 

「井原。俺たちの部屋にこないか?」

「3Pってこと?」

「地獄に落ちろ」

 

 バカの指を曲がってはいけない方向に捻じ曲げて、千里と朝日のところへ戻る。あいつを誘ったのがバカだった。バカだから乗ってくるだろうと思って誘ったが、想像以上にバカだった。何が3Pだよ。やるなら二人きりでやるっての。

 

 違う。やらない。俺はやらない。

 

「恭弥。君が僕をいやらしい目で見たその瞬間僕は君と縁を切る」

「そうなると開き直るからやめてくれ」

「ったく、ほんとあんたたちってバカね」

「光莉」

 

 天使の声が聞こえてきた。天使日葵は朝日の肩に手を置いて、顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。あれは、恥ずかしさと怒りがごちゃまぜになっている表情。話せていなかった時期、ずっと日葵を見ていた俺ならわかる。

 

 キショくね?

 

「あれ、何?」

「あれって?」

「部屋割り表」

「なんだ、お前も何かしたのか?」

 

 やれやれ、こいつも人のこと言えねぇじゃねぇかと呆れながら女子の部屋割り表を見ると、朝日の字で朝日と日葵の名前が書かれており、その二つの名前をハートで囲んで『仲良し♡』と書かれていた。

 

「なんであんなことするの!」

「ひどい。私と日葵は親友だと思ってたのに……!

「え、あ、違うの。私と光莉は親友だけど、あんなことしたら恥ずかしいって」

「私との友情は恥ずかしいんだ……」

「おい。日葵の優しさにつけこんで自分を正当化しようとするのはやめろ」

「ほんとにクズだね。ちなみに今君たちの愛の巣に岸さんの名前が追加された」

「じゃまするで」

「邪魔者は殺すに限るわね」

「お前そのバイオレンス癖どうにかしろ」

 

 目を真っ黒にして岸を殺そうとする朝日を俺と千里の二人で止める。俺も日葵に向ける愛情は大分キショいが、朝日の日葵に対する愛情も大分キショい。そんなとこまで似なくてよくない? お前外面取り繕わなくていいの? あんなことしたらお前の本性バレるぞ?

 

「ええやん友だちなんやから。仲良し♡やろ?」

「あんた私をいじくりまわすもの。嫌よ」

「夏野さん。私にいじくりまわされてる光莉可愛いよなー?」

「うん。すっごく可愛い」

「はぁ、私と春乃の仲を疑うなんてひどいんじゃない? 氷室」

「お前クズにパス出せばなんとかなると思ってんじゃねぇぞドチクショウが」

「有罪。よって恭弥と二十四時間密着の刑に処す」

「おい千里。俺何も悪いことしてないだろ?」

「私と密着できるなんてご褒美じゃない」

「は? お前本当にご褒美の意味知ってるのか?」

 

 朝日の椅子にされてしまった。椅子になるまでの記憶がまったくない。俺何されたの? 頭とお腹が痛いってことはわかるけど、それ以外がまったくわからない。朝日のお尻が柔らかいってことくらいだ。でも千里の方が柔らかい。

 

 あいつそろそろ男名乗るのやめた方がいいと思う。

 

「でも一部屋に氷室くんと千里だけってちょうどええな。遊びに行きやすいやん。な? 夏野さん」

「えぇ!? ダメだよ。女の子が男の子の部屋に行くのも、男の子が女の子の部屋に行くのもダメって先生に言われたでしょ?」

「そうよ。行くならあんただけで行ってきなさい」

「岸。性犯罪の匂いがするから絶対朝日も連れてこい」

「それはそれで性犯罪の匂いがするのよこの変態」

「恭弥見て。朝日さんの『変態』を聞いて蹲ってる男子がいるよ」

「残念ながら俺は今朝日の椅子になってるからまったく見えない」

 

 ていうかなんで朝日が俺を椅子にしてるのを誰も咎めないの? すごくみじめなんだけど。日葵くらいは止めてくれよ。俺椅子になってるんだぞ? 人間としての尊厳踏みにじられてるんだぞ? ここにいる全員この扱いが正しいって思ってんのか? ショックだ。神は俺を完全に見放した。

 

「それに、高校の修学旅行なんてもうないんやで? 怒られても楽しんだもん勝ちやろ」

「ん、んー……。そう、かも」

 

 神は俺を見守ってくれているらしい。うそ。俺の部屋……俺と千里の部屋に日葵がくるの? これは千里を朝日と岸の生贄に奉げて日葵だけを部屋に呼ぶしかない。申し訳ないが千里には死んでもらおう。あいつもあれで男だから、朝日と岸の美人可愛い二人の生贄になるのは本望だろう。さようなら千里。俺の幸せのために死んでくれ。

 

 いやしかし、これは本当にいいぞ。もし誰かにバレたとしても、俺と千里の部屋に女子三人がくるってことは俺と千里が付き合ってないってことを遠回しに証明できる。俺と千里が付き合ってるなら、女子がくるのを絶対に拒むはずだからな。これはいい。バレてもバレなくても天国だ。

 

 天国? もしかして俺は死ぬのだろうか。あまりにも幸せ過ぎる。

 

「タイミング的にお風呂の後? 最悪じゃない。お風呂上りを氷室に見せたら襲われるに決まってるわ」

「流石に風呂上りを殺そうとは思わねぇよ」

「殺人的な意味の襲うじゃないわよ。性的な意味よ性的な意味」

「あーっはっはっは! 面白いこと言うなぁ!」

「椅子になりながら笑ってる恭弥の方が面白いよ」

 

 千里はあとでぶっ飛ばす。お前は俺のなけなしのプライドを刺激した。最悪のタイミングで俺が椅子になってることに触れやがって。どうせ椅子になるなら日葵か千里の椅子がよかった。まって今のなし。日葵の椅子になりたかった。

 

「光莉、そろそろどいてあげたら?」

「日葵も乗りたいの? 言っとくけど乗り心地醜悪よ」

「最悪とかじゃねぇのかよ」

「まぁ光莉も醜悪な人間やからぴったりなんやろうなぁ」

「岸さん。君って何気に毒吐くよね」

「事実を吐くだけやで」

「そういや俺びっくりしてるんだよ。俺たちに絡む人間がまともな人間なはずないって思ってたのに、岸はまともだった」

「私も助かってます」

「私も助かってるわ」

「僕も助かってる」

「今二人犯罪者が紛れ込んでたな」

 

 千里と朝日が睨み合う。お前らだよお前ら。俺と同じく犯罪者予備軍のお前ら。俺と同じくクズで最低でどうしようもないお前ら。

 俺もとんでもなく最悪なやつだな。いつか日葵に捨てられるんじゃね? 拾われてもないけど。

 

 それにしても、風呂上がりの日葵か。この前泊まりに来たとき見たが、あれはやばかった。どれくらいやばいかって、どれくらいやばいんだろう?

 あれだ、千里よりもやばかったって言えば誰にでも伝わるか。同性の可愛い男、同性だから触っても全然いい男の風呂上り、いい匂いを漂わせながら頬を紅潮させてにっこり微笑む千里よりもやばかった。朝日はまぁうん。道端の石よりは綺麗だったんじゃね?

 

 なんてことを言っているが、日葵と朝日と岸の三人は文句なしに見た目がいい。中身もいい。そんな三人が風呂上りに部屋にきてくれるっていうのは男の夢だと言っても過言じゃない。そこに千里もいるっていうんだからとんでもない。俺はさっきから何で千里に性的な目を向けてるんだ?

 

「? どうしたの恭弥」

「千里。俺がお前と二人きりの時にお前に何かしそうになったら遠慮なくキスしてくれ」

「殴ってくれと間違えたんだね。殴るどころか締め殺すから安心して」

「ちょっと、私たちが行くんだから死体は隠しておきなさいよ?」

「夏野さん。こいつらかなりおかしない?」

「だから私がいるの。私がいないとこの三人社会に出られないから」

 

 そんなことはない。流石に俺でも社会に出ればちゃんと適応する。でも日葵にずっと一緒にいてほしいから社会に適応しないでおこうと思う。一人で何か事業を起こそう。でも一人じゃ寂しいから社会のはみだしものの千里と朝日を誘おう。俺たち三人が集まったらどうなるかわからないから、日葵も放っておけないに違いない。

 

「氷室、織部くん。私、日葵から愛しすぎて社会に出したくないって言われちゃったわ」

「耳にクソ詰めて喋ってんじゃねぇよクソ」

「この中では僕が一番マシだってことをわからせなきゃいけないみたいだね」

「この中で一番メスの間違いだろ?」

「女の私を差し置いてそれを言うってことはバトルするってことね」

「待て。俺はまだお前の椅子になってるってことを思い出せ」

「夏野さん。二人がいじめるんだ」

「え、えーっと。よしよし」

「「何日葵によしよしされてんだよ!!!!!」」

「これが『怒り』なんやな……」

 

 千里が椅子になっている俺に勝ち誇った目を向けてくる。もう怒った。お前を文化祭でアイドルにしてやる。俺がプロデューサーになる。そしてうっかりプロの目に留まって、俺とお前で芸能界デビューしてやる。

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