【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:とりがら016

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第30話 ウォータージェットペア

「ちなみに私は?」

「すんごいセクシー」

「せやろ? ふふん」

 

 岸がかわいい。

 

 しっかし、セクシーすぎないか? セクシーすぎて岸に周りの男の視線が集まるかと思いきや、なぜか千里がめちゃくちゃ見られている。この中で一番簡単そうだからかな?

 日葵はめっちゃくちゃしっかりしてるし、朝日は生粋のファイターだし、岸はノリが良さそうだが身持ちが堅そう。千里は押せばいけそう。なんか小動物感がすごい。

 でも残念ながら男なんだよなぁ。残念じゃないって人もいるだろうけど。

 

「とりあえず入りましょうか。さ、日葵。私の腕に絡みつきなさい」

「プールに突き落としたらこのバカも治るだろ」

「朝日さん。衝動を抑えなきゃ恭弥が朝日さんに抱き着くらしい」

「命拾いしたわね。私が」

「命なくなるくらいいやなの?」

 

 ぴゅー、と音が聞こえてきそうなくらい颯爽と逃げ出して、朝日が一番乗りでプールに入った。あいつ、大人びて見えて結構子どもっぽいよな。さっぱりしてるように見えて結構乙女だし、ギャップの化身じゃねぇか。

 

「このままあいつが流れていくところを見ておいてやろう」

「いじわる言わないの。行こ、恭弥」

「ぇ?」

 

 これが幻覚じゃなければ、日葵が俺の手を取ったように見える。うそ。柔らかい。千里と同じくらい柔らかい。なんで俺、手握ってもらえてるの? 今日死ぬことの暗示? あぁそうか、どうりで幸せ過ぎると思った。

 だって、水着姿の日葵が見れたし、美少女に囲まれてるし、ホテルは千里と同じ部屋だし。待って、千里は違う。いや、そうでもあるんだけどこの並びに入れるのはおかしい。

 

「ふーん。ほな私も」

「じゃあ僕も」

 

 俺の空いた手を岸が取って、俺の背中に千里が貼りついた。なんだこの状況。モテ期か? そういえば岸は俺のことが好きなんだった。じゃあ日葵は? いや、これはあれだ。幼馴染だからか。そうに違いない。じゃあ千里は? え、千里はなんで?

 

「親友を持ってかれたからなんかしなきゃと思って」

「まったく、お前は俺のことが大好きなんだな?」

「バカ。そりゃ親友なんだから好きに決まってるだろ?」

「美少女が手ぇ繋いでるのに男同士でいちゃいちゃせんといてくれる?」

「ふふ。私は仲がよくて素敵だと思うよ。ちなみに、本当に付き合ってないんだよね?」

「素敵だと思うって言いつつ何か思うところがあるんじゃねぇか。付き合ってない。ほんとに。俺も今疑ってるところだけど」

「日葵と手を繋いで、随分楽しそうね」

「今俺の明日があるかどうかも疑ってる」

 

 スロープを下りてプールに入ると、般若のような表情の朝日が待っていた。この世界がRPGなら確実にラスボスクラス。勝てるわけがない。俺はしがない村人Aだ。しかし俺には女神である日葵がついている。そしてこのラスボスは日葵にだけめっぽう弱い。他にはめちゃくちゃ強い。

 

「こ、こうでもしないと恭弥がプールに入らなさそうだったから」

「どうせ私を一人にしようと思ってたんでしょ? 罪二つね」

「あと氷室くん、この中では光莉に一番興味ないで」

「氷室と春乃に罪一つずつ」

「あれ?」

「残念だったね岸さん。朝日さんは夏野さん以外には平等なんだ」

「なんや。てっきり氷室くんだけ攻撃するもんやと思ってた」

「そう思って俺の罪をいたずらに増やそうとしたことは認めるんだな?」

 

 俺から目を逸らし口笛を吹く岸。無駄にうまい。口笛全国大会があったら上位入賞を狙えるレベルでうまい。こういう時ってへたくそな口笛吹くもんなんじゃないの? 口笛うまかったら注意しようにもできないじゃねぇか。

 

 残念なことに朝日と合流したことで日葵と岸の手が離れ、千里も俺の背中から降りる。よかった。日葵と手握ってるのもそうだったが、千里が柔らかい体押し付けて吐息が首筋に触れるもんだからちょっと限界だったんだ。あと岸は俺の指いじくって遊ぶし。エロイんだよド痴女が。

 

「あのボート乗るやつって何人までいけるんかな?」

「到着地点まで行ってみるか。日葵こういうの苦手だし、いけるかどうかも見といた方がいいだろ」

「はー出た出た幼馴染アドバンテージアピール。でも残念だったわね。私は日葵と一緒に遊園地に行って、無理やりジェットコースターに乗せて泣き顔見て果てしなく興奮したわ」

「最近気づいたんだけど、恭弥より朝日さんの方がヤバいよね?」

「今更気づいたか。こいつは本来なら近づかない方がいいタイプの人間だぞ」

 

 恥ずかしい過去をバラされた日葵が朝日をぺちぺち叩いているのが可愛すぎて死ぬ。そんな可愛い攻撃を最低のド級クズである朝日が受けているのが我慢ならん。あいつは今すぐ処刑するべきだ。俺が内閣総理大臣になったら朝日を真っ先に牢獄に入れ、檻の外に日葵の写真を貼り付ける拷問をしようと思う。

 

 日葵の可愛い攻撃を受けて「でへへ」とだらしなく笑っている朝日を「キショいな」と思いながら見ていると、岸がすいーっと優雅に近づいてきた。

 

「なーなー。氷室くんと織部くんって女の子とあぁいうの乗るの大丈夫なタイプ?」

「相手さえ嫌がらなけりゃな。朝日は嫌がっても一緒に乗って嫌がらせする」

「僕も恭弥と同じかな。どうして?」

「ん-、ほら。異性とやったら緊張して楽しまれへんっていう人おるかもせんやろ? それやったらもったいないなーって思って。ちなみに女子陣もオッケー! よかったな男子諸君!」

 

 岸がいい子すぎて好きになりそう。タイプの違う日葵じゃん。千里もクズだからいい子の岸が眩しすぎて目閉じてるし。わかる。眩しいよな。それに岸がまともだからいつもより暴走しちゃうところあるよな。つまり俺が何かやらかしたら岸のせいだ。まったく、困ったやつだぜ。

 

「つっても別に男同士で乗って女同士で乗ってってのでもいいんじゃね?」

「えー? 女の子と乗りたくないん? ハプニングあるかもせえへんで?」

「お子ちゃまめ。ハプニングに期待して俺が釣られるとでも? ところで岸。あとで一緒に乗らないか?」

「ええでー! 千里もあとで一緒に乗ろな!」

「助けて恭弥。岸さんが人から見られないことをいいことに僕をいじくりまわす気なんだ」

 

 水のジェットコースター、ウォータージェットというらしいそれは、途中筒に包まれたコースを進む。やろうと思えばその中で色んなことができるとは思うが、流石に水に流されながら、しかも浮き輪ボートの上でなんて無理だろう。

 でも、岸めちゃくちゃ運動できそうなんだよなぁ。もし岸が超人的な身体能力を持っていたら千里はやられるかもしれない。ふむ。

 

「朝日と乗っても地獄だから、千里が一緒に乗って安全なのって日葵しかいなくね?」

「恭弥と乗ると何か起こりそうだしね。そうと決まれば夏野さんを誘ってこよう」

「いい度胸ね。遺言は?」

「助けて恭弥」

「ちなみに俺は朝日の味方だ」

「もうだめだ。僕は今日ここで死ぬんだ」

 

 いつの間にか攻防を終えていた朝日が、背中に日葵を隠して千里を睨みつけていた。これは死んだな。

 

「日葵は私と乗って色々あって結婚するに決まってるじゃない。バカね」

「バカはお前だ大バカ。見ろ、日葵が困ってるだろ?」

「日葵が? 私と結婚するのが困るって? そんなわけないじゃない。ねぇ日葵?」

「えっと、男の子と結婚したいかな」

「春乃。私のおっぱいあげるから一緒に泣いてくれる?」

「私がおっぱいないことへの当てつけか? 別に気にしてへんわぶっ殺すぞ」

「あーあ。岸が殺意に芽生えちゃった」

「大丈夫だよ岸さん。僕にもないから」

「それもそか。胸だけが女ちゃうしな」

 

 いや、織部くん男の子やろ。と言われることを想定していたであろう千里はあっさり受け入れられたことが受け入れられないらしく、呆然として俺を見た。

 そりゃそうなるって。だってお前明らかにメスだもん。

 

 騒ぎながら移動していくと、ウォータージェットの到着地点についた。基本的にプールは道路のような幅の道をすいすい泳いでいくといった感じだが、到着地点は広く切り取られており、例えるなら駐車場。浮き輪ボートが到着するところと区切るようにコースロープが張られており、ボートを受け止める職員さんが数人いる。

 

 そしてちょうど、筒の向こうから浮き輪ボートに乗った人がかなりの勢いで滑り降りてきた。隣で「うわ」と声を漏らす日葵の可愛さにふやけ死にそうになる。

 

「持つところが三つ。最大三人乗りなんかな?」

「ってなると三人と二人に分けて乗るか。どう分ける?」

「えぇ……私乗れるかなぁ」

「乗れる乗れる。乗りましょう。ぜひ私と乗りましょう」

「はぁはぁ息漏れてるよ朝日さん。性犯罪者は人間ですらないってことを自覚したほうがいい」

「らしいわよ氷室」

「は? 俺は千里以外にいやらしいことしたことねぇよ」

「なんで織部くんならセーフ判定なん?」

 

 そりゃあれだろ。男同士だし親友だし。それに事故だし。

 

 さて、どうしようか。俺もできるなら日葵と乗りたいが、ここで日葵と乗りたいって言いだしても変になる。「え、なんで私と? キモ」って思われたら俺が立ち直れない。つまり、自然に日葵と一緒に乗れる流れに持っていかなければならない。

 

 全員ペアになれるよう何回も乗るってのが確実だが、ただでさえ怖がっている日葵が何回も乗るかってことを考えるとナンセンス。最初の一回目で日葵と一緒にならないと意味がない。

 

「……」

「……」

 

 朝日もそれがわかっているようで、俺を睨みつけていた。日葵と一緒に乗りたい朝日さえどうにかすれば、俺は日葵と一緒に乗れる。でもやつは強敵だ。日葵と一緒にいるためなら何でもするモンスター。一筋縄ではいかない。

 

「ん-、夏野さんは誰と乗りたいん? この人とやったら安心するー、みたいな」

「その聞き方されると答えにくいなー……」

 

 嘘だろ岸。これで俺が選ばれたら嬉しすぎる。しかしこれは博打。その聞き方なら日葵は男をまず選ばない。恥ずかしいからだ。ただ、俺には体重がある。俺と一緒に乗ると重心がしっかりする。まだ俺に勝ち目はある。俺に勝ち誇った目を向けてきている朝日に泡を吹かせてやる。

 

「岸さん、かなぁ」

「お、なら最初は私と乗ろか!」

 

 俺と朝日は泡を吹いて沈んだ。千里は爆笑していた。

 いや、まだ俺は諦めていない。日葵が楽しいと思えば、二回目があるはず!


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