【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:とりがら016

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第46話 この世で一番怖いもの

「めっっっっっちゃ怖かった!」

 

 ホテル、俺たちの部屋。今日も今日とて日葵と朝日と岸がやってきており、その口から出たのはやはり今日のテーマパークでのアレ。

 ちなみに当然といえば当然だが、あれはアトラクションの一種なので井原は生きていた。正直内容が内容だっただけに本気で死んだと思っていた。同じことを思っていたのか、千里が井原を見つけた瞬間飛びついたのを覚えている。おかげで俺と千里と井原の三角関係が疑われた。クソクソクソクソ。

 

「あはは。光莉、氷室くんにめっちゃ頼ってたもんなぁ」

「ふふふ。そうだね」

「氷室。あんたのせいで私の明日が危ないわ」

「お前のせいだろ」

「まったく。女の子のせいにするなんて男の風上にも置けないね」

「は? メスが吠えてんじゃねぇぞ。今日も大浴場で数人の性癖歪めたくせに」

 

 今日も大浴場は大騒ぎで、千里を見ないようにと男どもが必死になっていた。ただ、井原だけは様子が違っていて、何か千里と距離が縮まっているような、うーん。

 

「氷室がクズじゃなかったら危うく惚れるところだったわ。頼りになるし、顔はカッコいいし、運動できるし頭いいし、悪いところないじゃない」

「朝日さん。最初に一番のウィークポイント言ってるよ」

「でも、ほんとに頼りになったよ。恭弥も春乃も、織部くんだって助けにきてくれたときカッコよかったし」

「常識人の夏野さんがカッコいいって言ったから僕はオスだ。どうだ参ったか」

「常識人やから一番お世辞言うやろ」

 

 千里は俺たちに背を向けて布団にくるまってしまった。あーあ。千里が傷ついちゃった。

 

 タイミング的には完全にヒーローだった。窮地に現れるヒーロー。完璧なタイミングで、完璧なメスを晒したのが千里。カッコいい登場しても可愛くなるしメスになるってどんなポテンシャルだよこいつ。

 

「ふん。仲良く四人で一緒にいた君たちには僕の苦労がわからないんだ」

「おい。俺は朝日を背負ってたんだぞ。苦労も苦労だろ」

「朝日さんを背負うなんて、背中におっぱいむぎゅむぎゅじゃないか!!!!!」

「応!!!!!!」

 

 二人まとめて締め上げられ、床に放り出された。美人で可愛い女の子三人を見上げられるなんて、幸せですね俺は。へへへ。

 にやついた顔をひっぱたいて元のイケメンフェイスに戻し、さりげなく日葵の隣に座ろうとしたところを朝日に妨害される。お前今日は助けてやったんだから譲れや。何? それとこれとは話が別? 俺もそう思う。

 

 座っている位置的には、俺のベッドに日葵、朝日、俺の順。千里のベッドに岸、岸の膝の上に千里。膝の上に千里?

 

「恭弥。捕まった。どうか助けてほしい」

「よかったな。おっぱいぎゅむぎゅむだぞ」

「何言ってんの。ないじゃん」

「じゃかしぃわカス。ぶっ殺すぞ」

 

 千里が締め落とされた。あいつ今日一人きりになるわ殺されるわ大変だな。俺はああはならないようにしよう。もうなってる気もするけど。

 

「いや、今日一番すごかったのは岸だと思うんだよな。怖いだろうに、守るっていう気持ちだけでずっとついてきてくれたし。カッコいいし美人だし最強じゃん。ちなみにこれは千里を『ないじゃん』っていう発言するよう導いたから、殺されないように褒めてるわけじゃない」

「言わんかったらええのに。小さいのは嫌い?」

「いえ! 好きです!」

「だから織部くんのことが好きなのね」

「ひどい勘違いしてんじゃねぇよ逆絶壁」

 

 千里はあるとかないとかじゃないだろ。あったらそれはメスじゃない、女の子だ。千里はないからメスなんだよ。わかってねぇなこいつは。まだまだ千里のことを理解していない証拠だ。千里検定三級レベル。死んだほうがいい。

 

「っていうかあんたおっぱいならなんでも好きなんでしょ?」

「バカ言うな。バカ言うな」

「図星やん」

「おっきくなくてもいいんだ……」

 

 日葵がぺたぺたと自分のお胸を触っている。気にしてたのかな? 日葵ならどんな大きさでも愛せる自信がある。いや、愛す。暑い夏に食べたいのはアイス。うふふ。

 

 しかし、意外に女の子って胸の大きさ気にするんだな。胸が大きいと色々めんどくさいから気にしないと思ってた。いやでも、好きな人がいたら気にするもんなのか? 男=巨乳好きみたいなイメージあるし、薫も気にしてたし。え、ってことは薫に好きな人がいるってこと? それは千里? 死んでくれ千里。

 

 さっき岸に締め落とされてたわ。悪は去った。

 

「それより、私は氷室くんと光莉の距離の縮まり方に違和感があるんやけど」

「ん?」

「え?」

 

 隣にいる朝日を見る。確かに、昨日よりも近い気がした。距離が縮まるって精神的なことを指すのが多いのに、物理的な距離が近いのかよ。

 

「ん-、ずっとおんぶしてもらってたからじゃない? 別に、こいつなら気にすることないし」

「まぁそうだな。いやらしい目で見るけど恋愛対象にはまったくならない」

「え? こんな美少女なのに?」

「ははは」

 

 笑っただけなのに張り倒された。ここあの病院より危険じゃねぇか。化け物よりも元気な朝日の方がよっぽど怖い。怖いし痛い。

 

 でも、おんぶしていたときに背中に当たっていたおっぱいは確かに気持ちよかったし非常に興奮したが、いやらしい目で見るだけで恋愛感情は一切わかない。俺が日葵大好き人間だということもあるとは思うが、男って言う単純な生き物の精神構造を考えると、あんだけ密着してたらちょっとは恋愛感情わくと思うんだけどなぁ。

 

「朝日さん、恭弥と似てるからそういう風に思えないんでしょ。近すぎるからってやつじゃない?」

「生きてたのかメス」

「せめて千里って呼んでほしい」

 

 復活した千里が岸の隣にぽすん、と座る。

 俺と朝日が似ている。まぁ、それは否定しない。こいつクズだし、日葵大好きだし、クズだし。性別が変わっただけの俺じゃないかって思うことがある。怖いもの苦手じゃないけどね?

 

「や、わからへんで。そういうやつに限ってさらっと付き合ってたりするんやから」

「そうなの光莉?」

「ぜ、絶対付き合わないわ! なんで私がこんなカッコよくて運動できて頭のいい男なんかと!」

「千里。俺って超優良物件?」

「見た目はね? 中に入ると穴だらけのクソ物件だよ」

 

 これが俺と千里と朝日に当てはまるんだから恐ろしい。全員見た目はいいが、中身はとんでもなくクズでカスでゴミ。人類で一番のクズトリオ。へへ。人類で一番なんて、照れるぜ。

 

「光莉、知ってる? 光莉が恭弥に二股かけられてるんじゃないかっていう噂流れてるの」

「もしかしてその二股のうちの一股に僕が入ってる?」

「そらそうやろ」

「恭弥。そうらしい」

「俺は一股もかけてねぇよ」

「ほんと失礼ね。それ噂してるやつ連れてきなさい。引っこ抜いてあげるわ」

 

 何を?

 

 俺と朝日が噂されるってのは、ない話じゃない。朝日が話す男っていえば俺か千里で、千里はメスだからそんな噂にはならない。つまり自動的に相手は俺しかいないわけで、ってなると朝日は『俺と千里が付き合ってないっていう嘘を信じ込み、俺に手を出されているかわいそうな女の子』になるってわけだ。これが俺と千里が付き合ってないっていうことがわかっても、俺と朝日の噂は消えやしない。

 

「二人とも距離近すぎるからなぁ。そら無理もないで」

「そうだよ。それに光莉、お、おっぱぃ触っていいとか、そんな冗談ばっかり言うから」

「氷室、ティッシュある?」

「日葵のおっぱい発言で鼻血垂らしてんじゃねぇよ」

 

 ほんとどうしようもないやつだな。こんなやつと俺が噂になってんのか? 信じらんねぇ。俺は朝日と一緒になって鼻血を拭きながら、不名誉な噂に憤慨した。

 

「さて、噂を絶つには氷室を殺すしかないって話だったわね」

「俺の命を絶つ話なんてしてねぇよ」

「ほ、ほら。光莉も恭弥と噂になったら困るでしょ?」

「別に困らないわよ。言いたいやつが言ってるだけでしょ? 私たちが付き合ってないんだから、堂々としておけばいいじゃない」

「俺朝日のこういうところ好き」

「恭弥と似てるから僕も好き」

「つまり千里は氷室くんのことが好きってことやん。結婚おめでとう」

「え!? 恭弥と織部くん結婚するの!?」

「しないぞ?」

 

 よかったぁ。とほっと息を吐く日葵。安心するってことはつまり、俺と千里が結婚する可能性があるって思ってるってこと? 千里はメスだけど男だぞ? 結婚するわけないだろ。俺が結婚したいのは、日葵ただ一人だけなんだから……。きゃっ、恥ずかしい!

 

「あんたたちが同性での結婚っていう前例を作れば、私と日葵も結婚しやすいからぜひしなさい」

「僕には薫ちゃんがいるから、恭弥と結婚しないよ」

「俺は今から薫の千里に対する評価を下げる作戦に入ろうと思う」

「ちなみに僕は今朝から薫ちゃんとメッセージを送りあってる」

「わ、私の薫ちゃんが」

「私の妹をたぶらかすなんて、織部くん最低!」

「薫は朝日のじゃない。でも日葵の妹」

「それじゃあんたと日葵が結婚してるみたいじゃない。殺したわ」

「氷室くんが死んどる……」

 

 一瞬で殺されてしまった。こんな武力があるなら化け物なんて怖くなかっただろ。一撃で倒せただろ。なんならあの場で一番頼りになっただろ。ある程度は味方である俺に暴力振るいやがって、許せねぇ。ここは俺が男だってことを見せつけるために、ネット上での攻撃でねちねちと追い詰めてやる。

 

「うーん、私らから見たらただの制裁やけど、なんも知らん人から見たらいちゃいちゃに見えるんかもなぁ」

「つまり普通にいちゃいちゃしたら暴力に見えるってこと?」

「それは間違いない。精神的な暴力がすぎる」

「ねぇ恭弥。キスしましょ」

「ぐわぁああああ!!」

「恭弥が血反吐吐きながら死んだ……」

「日葵。私流石に泣きそうなんだけど」

「よしよし。あとで話があるからね?」

「あ、はい」

 

 気持ち悪すぎて血反吐を吐いてしまった。女の子にこの反応は失礼だと思いつつも、死ぬほど気持ち悪かったから仕方ない。

 

 それにしても、最近日葵と朝日はよく話してるなぁ。仲良しで羨ましい。


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