【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第49話 えーんえん!

「あれ、母さん。薫いねぇの?」

「え? 薫なら千里ちゃんと遊びに行ったわよって、もういない……」

 

 

 

 

 

 千里に電話をかける。でない。薫に電話をかける。着信拒否。

 昨日に引き続き、千里と薫は俺に内緒で会っている。ふざけてやがる。昨日のは俺が焦って飛び出しちゃったみたいなところもあるから、もしかしたら一緒に遊ぶつもりだったのかもしれないと思えたが、今回は完全に除け者だ。悲しい。悲しすぎる。

 

 千里、お前がその気なら俺にだって考えがあるんだぜ。俺に妹がいるように、お前には姉がいる。お前が俺の妹に手を出すなら、俺もお前の姉に手を出してやる!

 

「聖さぁーん!! 千里が俺を見捨てたぁー!!」

「あらあら」

 

 なんて思っていたが俺には日葵がいるし、千里によく似ている聖さんを見たら泣けていたので、俺は今織部家、聖さんの部屋でよしよしされていた。ふぅ、やはり千里に似てるから落ち着くぜ。性欲なんてものは一切わかないし、俺にとっても姉さんみたいなもんだからな。

 ちなみに聖さんに泣きついたのは昨日みたいに朝日に連絡したらなぜかごちゃごちゃのめちゃめちゃになるからで、別に日葵と岸が怖かったからじゃない。

 

「聖さん、聖さん!」

「ん-? 恭弥くんに内緒で、千里と薫ちゃんが遊んでる? しかも昨日から? 恭弥くん仲間外れにされちゃったのね。かわいそう」

「エスパーかよ」

 

 俺「聖さん!」しか言ってないのに完璧に当てられてしまった。もしや俺の心の中を読めるっていう千里特有のスキルも持っているのか? 千里の姉ってだけで? 恐ろしいぜ。思わず甘えたくなっちまうくらいだ。別に聖さんが俺に対して警戒心も何もなくオープンだから甘え放題だぜぐふふってわけじゃない。

 

「千里が薫ちゃんのこと好きだってことは知ってたけど、突然ね」

「え、知ってたんですか?」

「もちろん。『僕は恭弥が姉さんに手を出したら許せないんだ。そんな僕が薫ちゃんに手を出していいと思う?』って一日三回相談されてたから」

「飯のペースで相談してんのかよ」

 

 まぁ聖さんの『甘えたくなってしまうオーラ』に甘えてしまうのはわかるが、同じ内容の相談を一日三回って地獄だろ。する方もされる方も。聖さんのことだから女神のような包容力で受け止めてあげたんだろうけどな。ったく、聖さんがいくら素敵だからって甘えすぎだろ。シスコンかよ。

 

「恭弥くんは薫ちゃんを渡したくないわけじゃなくて、ただ内緒にされるのが寂しいのよね?」

「そうなんですよ! 千里は俺の親友で薫は俺の妹なのに、俺に内緒で遊ぶなんて寂しい!!」

「ふふ、子どもみたいでかわいい」

「え、これがプロポーズですか」

「いいわよ? 私恭弥くん好きだし」

「よろしくお願いしまいや俺には日葵がいるんで」

「危なかったわね」

 

 くすくすと笑う聖さんに、額から流れた変な汗を拭う。危ない。聖さんが千里に似すぎていて危うくプロポーズをオッケーしてしまうところだった。今のがプロポーズかどうかも怪しいところだが、俺はイケメンで非の打ち所がないからプロポーズで間違いないだろう。

 って、俺千里が女の子だったら恋仲になるくらい好きみたいな感じになってね? 聖さんが千里に似てるからってつまりそういうことだろ。違うんです。ほら、メスだけど男の千里には色々とアレだけど、その色々とアレを聖さんに対しては色々とソレしていいってことになるから、無理ないよね?

 

「うーん、でも千里に限ってそれはないと思うなぁ。だって、千里は恭弥くんのこと好きだし、いくら薫ちゃんが好きだからって恭弥くんに内緒にするなんて考えられないもの」

「だって俺応援したいですけど、いざ二人がそういう雰囲気になったら全力で邪魔しますもん」

「それなら絶対内緒にするわね。だめよ? 人の恋路を邪魔しちゃ。薫ちゃんの相手がどうしようもない人だったらいいけど、千里はそんな人じゃないんだから」

「聖さん。どう間違えたらあなたみたいな姉からあんな弟ができあがるんですか?」

 

 聖さんがいい人すぎて千里の姉かどうか疑わしくなる。まさに聖人。聖さんの聖は聖人の聖。マジで聖さんの悪しき部分を抽出したのが千里なんじゃね? 千里のいいところは聖さんの名残、みたいな。ありえる。じゃないと聖さんみたいな姉がいるのにあんなクズに育つのはありえない。

 

 それはうちの薫にも言えることなのでこのことを考えるのはやめにしよう。

 

「ん-、そうだ。千里が恭弥くんに内緒で薫ちゃんといいことしようとしてるなら、恭弥くんも私といいことする?」

「い、いいことってなんですか、はぁはぁ」

「目に見えるくらい興奮し始めたわね」

 

 性欲わかないっていうのは嘘。こんなドチャクソ綺麗な人にそんなこと言われたら、男子高校生は誰だって興奮する。井原だったら「それセックスってことっスか!!?」ってびっくりしながらベルトに手をかけるに決まっている。俺は日葵がいるし鋼の精神を持っているからなんとか「はぁはぁ」と興奮するだけにとどめたがな。俺めちゃくちゃいい男じゃん。

 

「いいことってなんですかって、それは、ね?」

 

 聖さんがベッドに上がって、ぽんぽんと自分の隣を叩く。

 

「やってみたらわかるんじゃない?」

「……ま、まぁベッドに座るだけですよね。俺にとっちゃいいことなんで、ベッドに座るってのは」

 

 恐る恐る聖さんの隣に座る。一体今から何が始まるんだろう。そう思ってドキドキしていると、聖さんがそっと俺の耳に顔を寄せた。

 

「ちなみにね」

「は、はい」

「恭弥くんの動きを予測した朝日ちゃんが今この家にいます」

「おはよう氷室。楽しそうね?」

 

 聖さんの地獄の宣告とともにドアが開け放たれ、そこから魔王が降臨なされた。ご立派なおっぱいの下で腕を組んで、聖さんの隣に座っている俺を睨みつける。

 

「また落ち込んでるかと思ったら、随分元気そうじゃない。私の心配返しなさい」

「え? 俺のこと心配して、わざわざ行動予測して先回りしてたの? 俺のこと絶対好きじゃん。でもごめん。俺には日葵がいるんだ」

「聖さん。あとでクリーニング代渡しますね」

「ベッドが血まみれになるってことね。了解」

「朝日、待て! 今のは可愛い冗談じゃねぇか! そもそも俺は朝日が俺のこと好きになってくれたら嬉しいし、朝日って優しくて綺麗で可愛くておっぱい大きいし、でも俺には日葵がいるから諦めてもらおうと思って!」

「ふふ。腰を入れたパンチしてあげるわ」

 

 俺は朝日にボコボコにされ、聖さんのベッドに座った朝日の足置き台にされてしまった。ちょっとドキドキしてしまうのは俺が変態だからじゃないと思いたい。

 

「うふふ。恥ずかしがらなくていいのに。私が玄関のドア開けた瞬間、『氷室きてませんか?』って肩で息してたじゃない」

「あ、あれは、その……ちょっと、考えたんです。私から日葵が離れて行ったらって思ったら外面ではどう振舞ってても耐えられないだろうなって。それが妹まで離れていくってなったらって想像しちゃったら、今氷室の側にいてあげられるのは私しかいないかなって」

「おい、正直すぎるのもいい加減にしろ。見てみろ俺の頬を伝う涙を」

「そうなるくらいなら、冗談に聞こえないように『寂しい』って言いなさいよ」

「いやん。好きになっちゃう。結婚して」

「20後半になって、お互いいい人いなかったらいいわよ」

「じゃあダメだ。俺には日葵がいる」

「私も日葵がいるわ」

 

 どうやら俺と朝日は結ばれない運命にあるらしい。あーあ。今俺は一人の女の子と結婚できるチャンスを失った。まぁ俺は日葵と結婚できるし、朝日と結婚できないからって何も思うところはない。朝日にはどこかの知らない誰か……いや、いいやつと結婚してもらおう。

 ……日葵と俺が結婚して子どもができて、その長男を狙いに来る可能性も考慮しておこう。

 

 ぐすんぐすんと泣いていると、オレンジ色のハンカチがふわりと俺の顔にかけられた。誰のものかなんて聞かなくてもわかる。遠慮なくハンカチで涙を拭い、鼻をかんだ。体重をかけられた。内臓飛び出るかと思った。

 

「二人とも、すっごく仲いいわねぇ」

「聖さん。俺が泣きながら死にかけてるのが見えないんですか」

「私の足で死ねるなら本望じゃない?」

「あ? クセ―んだよカス。俺の服が腐ったらどうしてくれんの?」

「そう」

「顔! 顔を踏むな! クサくないクサくない! ってかむしろいい匂いする! なんか、なんだろう、この」

「言わなくていいわよバカ!」

 

 顔を蹴られて床をゴロゴロ転がった。借りたものだからとハンカチを握りしめ、汚さないようにしたことを褒めてほしい。俺の涙と鼻水でぐちゃぐちゃだけど、俺の涙と鼻水なんて死ぬほど汚いからいいだろう。死ぬほど汚いのかよ。

 

「ったく。あんたって顔いいから泣いてもカッコいいのね。面白いから写真撮っとくわ」

「バカっ、やめろ! 恥ずかしいじゃねぇか!」

「ノリノリのポーズと笑顔してるわよ、恭弥くん」

 

 まぁ朝日相手にそんな羞恥心ないし。千里なら多少恥ずかしい気もするけど、異性である朝日なら別に。多分こんな姿晒して恥ずかしくないのは朝日だけだと思う。クズだし、異性だし、強がる必要ないし、相手が日葵だったら男の背中ってやつを見せないとダメだから、泣くなんてもってのほかだ。

 いや、でも、私にだけ見せてくれる弱い姿っていうのもいいのかも? 今度日葵の前で号泣してみようかな。

 

「いや、悪い。ハンカチぐちゃぐちゃになったから、俺のものにするわ」

「洗って返しなさいよ。それがまかり通るならあんた私の靴下で涙拭こうとするでしょ?」

「なんで俺が一番欲しがるものを靴下だと思ったの? ド変態じゃん俺」

「あら、靴下が好きなの? 私のでいいならあげましょうか?」

「今履いてるやつでお願いします聖さん! ほらな? 俺はどこも変態な部分がない」

「二重人格なら早めにお医者さんの世話になりなさい」

 

 幼い時に両親が「流石にこの子ヤバくないか?」ってことで一通り病院には行ったからその疑いはない。あの両親マジで心無いだろ。普通息子のことを精神異常者だと思うか?

 

「まぁ、今後寂しくなったらすぐ連絡しなさい。あんなことになりたくないから、日葵と春乃にも連絡するけど」

「なんであんなことになったんだ……? 俺が色男だからか?」

「バーカ。そんなわけ……ん? そんなわけないでしょ」

 

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