【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第53話 気づき

「日葵! やめときなさい! こいつとお祭りなんか行ったらママになっちゃうわよ!」

「ウッキキ、ウキキウキキウキウキキウキウキキ?」

「『まったく、俺を猿と勘違いしてないか?』って言ってます」

「千里すご。なんでわかるんや」

 

 そりゃ俺の言いそうなことなんて手に取るようにわかるからだろ。

 

 日葵が俺を祭りに誘った。この事実に俺はフリーズし、朝日は大暴れし、朝日が岸と聖さんに抑えられ、俺が薫にほっぺをつんつんされて起動。ようやく事態を把握した俺、そしていまだに暴れようとしている朝日、恥ずかしそうな日葵。どう見ても穏やかじゃない状況になっていた。

 

「ウキ、ウキキキキウキ、ウキキウキウキウキキウキキキキ」

「千里、なんて言うてるん?」

「『こんにちは』って言ってるね」

「猿語燃費悪すぎやろ」

「なにふざけてんのよあんたら! 日葵が氷室を祭りに誘うっていう腐れイベントが発生したっていうのに!」

「腐れて」

 

 朝日も日葵大好き人間だから、日葵が俺だけを誘ったのが許せないんだろう。まぁ日葵も、久しぶりに幼馴染二人だけで一緒にいたいって思ってくれたから誘ってくれただけで、そこにまったく男女のアレはない。

 

 なんて思えるほど、流石に俺は現実を見れない男じゃない。今までのことを考えるとこれは勘違いじゃ片付けられない領域にまで来ている。

 本当に信じられないが、これって、つまりそういうことだよな。

 

 日葵を見てみる。俺から恥ずかしそうに目を逸らし、薫に手をにぎにぎされている日葵。可愛さの化身。なんで恥ずかしがってるかを考えてみる。ただ単に恥ずかしがりやさんだから? それもある。でも、一番は。

 

 俺のことが好きだからじゃないかって、思ってしまう。

 

「恭弥、返事は?」

「おう、そりゃもちろん」

 

 行くぜ、と答えようとした時、暴れる朝日と、それを抑える岸が目に映った。結局演技だったが、俺から千里が離れた時に隣にいてくれた朝日と、俺を好きだと言ってくれた岸。いや、岸のことが気になるのはわかる。ここで日葵の誘いに乗ったら、岸はいい気しないだろうから。

 じゃあ、朝日が気になるのはなんでだ? 恋愛感情なんて一つもない。それは本当だ。自分が気づいていないだけとかそんなんじゃなくて、本当にこれっぽっちも。

 その答えは、千里を見た瞬間にわかった。

 

 そうだ。俺は多分、千里が俺から離れていった時と同じように、朝日から日葵を離れさせるのが嫌なんだ。

 

「……もちろん、みんなで行こうぜ。これって、そういうことだよな?」

 

 俺が今選べる、最適解。自分勝手で独りよがりだけど、勘弁してほしい。結局俺はヘタレでどうしようもない男なん、

 

「ぶっ!?」

 

 俺の答えに日葵の眉が悲しそうに垂れた瞬間、両側の頬をビンタされた。そして続けざまに頭を掴まれ、足払いをかけられて、床に叩きつけられる。死んだか? 俺。

 

 俺ぐらいになると手の感触でわかる。俺をビンタしたのは、千里と朝日。っていうか手の感触どころか、俺の腹に千里が座っていて俺の額を朝日が抑えつけているから間違いない。

 

「あんた、日葵からのお誘いを断るなんてどういうことよ!!!??」

「テメェはどうしてほしいんだよ! つかなんで千里は俺を殴ったんだ!」

「ノリで……」

「俺が悩んでたからとかじゃないの!?」

「何で悩んでたの?」

 

 にやり、と音が聞こえるくらい、千里は笑った。あーあ。こいつほんとにいやらしいよな。色んな意味で。

 この中で、俺が岸からの好意を知っていて、俺が日葵のことが好きだってことを知ってるのは千里しかいない。だからこそ、俺が悩むってことはわかってたんだろう。流石俺の親友。憎たらしくてむしろ好きだ。来世では俺をペットにしてくれ。

 

「……いや、ワリィな、と。ほら、最近いつも五人一緒だろ? だから、二人きりってのも、お前らを仲間外れにしてるみたいで」

「バカね。仲間外れでもなんでもすればいいじゃない。どうせ日葵とあんたが二人きりになるなんて私が許さないんだから」

「そうそう。君がここで素直に頷いたって、そんな面白そうな現場僕が放っておくわけがない」

「ま、二人で行ってもどうせ五人になるから別にええよ、ってこと!」

 

 朝日を俺から引きはがして放り投げ、俺をのぞき込んでにかっと笑う岸。そして、岸はそっと俺の耳元に顔を寄せて、俺にしか聞こえない程度の声でぽそりと囁いた。

 

「せやから、私のことは気にせんでええで」

 

 は?

 

 俺が何か言う前に岸は俺から離れて、先ほどのような元気な笑みじゃなく、綺麗な、女性らしい笑みを浮かべた。その頬が赤く染まっているのは俺の気のせいじゃないだろう。

 

 もっとも、『俺が岸からの好意に気づいていることを岸が知らない』ていうのは気のせいだったみたいだが。

 

「恭弥。女の子って怖いね」

「聞こえてたのか」

「ははは。君の返答で確信に変わったよ」

 

 またカマかけやがったのかこいつ。将来ロクな死に方しねぇぞ。

 

「で、ここまで言われて『よし、みんなで行くか!』って言うほど、君はヘタレでもバカでもないよね? クズ」

「クズは消えねぇのかよ」

「それが君じゃないか」

 

 俺の腹から降りて薫に投げキッスをかました千里を庭へ放り出してから、日葵のそばに座る。薫がそそくさと距離をとるのを見てできた妹だと頷きつつ、聖さんとつづちゃんに『薫を井原から守ってください』とアイコンタクトを送り、二人から敬礼が返ってきたのを見て日葵に向き直った。

 

「日葵」

「はい! なんですか!」

「そんな畏まられても……」

 

 俺が名前を呼んだ瞬間、姿勢を正して目を死ぬほど泳がせ始める日葵に思わず笑ってしまう。これがついこの前まで会話すらできなかった男なんて、誰が信じるだろう。

 思えばいつもそうだった。俺は日葵に対して思い込みが激しいし、思い入れも激しい。もしかしたら今考えてることだって思い込みかもしれないし、もしそうだったらめちゃくちゃ恥ずかしい。この答え合わせは日葵としかできないだろうから、流石にすぐ答え合わせができるほど、俺に男らしい度胸はない。

 

「すぐに朝日が邪魔しにきて、なんだかんだでいつもの五人になると思うけど。それまでの日葵の時間、俺だけにくれないか」

「……!」

 

 日葵は泳がせていた目を俺に向けて、顔を真っ赤にしてぴしっと固まった。つづちゃんがフラッシュをたいて俺たちの写真を撮っている。空気読んでくれ。井原でさえ何か言いたそうにしてるのに、必死に口を自分の手で押さえて我慢してるってのに。いややっぱ井原もだめだ。気が散るんだよテメェら。聖さんもあらあらうふふしないでください。それはシンプルに恥ずかしいんで。

 

「……はぃ」

「アー!! 耐えたわよ! 日葵が返事するまで耐えたわよ私! 褒めなさい! あんたたち私を褒めなさいそして今から私の時間アイラブユー日葵ハッピーバースデー私!!!!!」

「日葵が光莉に飛びつかれておっぱいで窒息しとる!」

「なんだって!?」

「やっぱり千里ちゃん、おっぱいが好きなんだ」

 

 おっぱいで窒息というワードに反応した千里が庭から舞い戻り、本能に従ったがために薫から悲しそうな目で見られてしまう。ふはは、ざまぁみやがれ。

 

「ぶはぁーっ! 死ぬかと思った! しゃべっちゃだめだと思って息止めてた!」

「井原くん。別に息はしててもよかったのよ?」

「あっ、そうじゃん! 聖さんすげー! 頭やべぇ!」

「ふぅ、いい写真が撮れました! ところでこれを新聞の記事にしても」

「ダメに決まってんだろ」

「いち、にぃ、さん」

「つづちゃんが札を数え始めた! 恭弥の目を塞がないとあっさり堕ちる!」

「ふふん。なら私のおっぱいで氷室くんを窒息させるしかあらへんな!」

「ないもので窒息なんてできないでしょってしまった!!」

 

 千里が俺の家の庭に植えられてしまった。メスが生る木が育つと思うと少し楽しみな気もする。薫もじょうろを取り出して水をあげ始めた。なんだかんだたまってたんだな、薫。

 そろそろ千里のクズもどうにかしないとなと思いつつ、日葵が本気で窒息しそうなので朝日を日葵から引きはがす。やっぱりとんでもねぇ武器持ってんなこいつ。

 

「はぁ、はぁ、ちょっと氷室。顔真っ赤にして『はぃ』っていう日葵を前にして、私が少し我慢したことを褒めなさい」

「褒めるから少し落ち着け。顔赤くして制服乱れてはぁはぁ言ってるとめちゃくちゃエロいから」

「うーん、確かに」

「リビングデッドがいるわね」

 

 恐らく『制服乱れて』あたりで復活してきた千里を、あえて薫の隣に座らせる。これでおとなしくなるはずだ。

 俺の狙い通り効果はあったようで、薫にじーっと睨まれた千里が正座して縮こまっている。今薫の近くには聖さんもいるから、聖さんからもにこにこと見つめられるおまけつきだ。千里にとってあんなに恐ろしい場所はないだろう。

 

「って、そうよ! 私へのプレゼントは!? 私への、日葵からの、プレゼント!」

「あぁ、そういや日葵、光莉にえだまめ用意した言うてたで」

「えだまめ!!!!!???」

「ち、違う違う! 適当なこと言わないで春乃!」

「三つ入ってるかしら……」

「おい日葵。えだまめでもよさそうだぞ」

 

 もはや日葵からもらえるならなんでもいいんだろこいつ。まさか日葵があげるとも思えないが、ゴミでも喜びそうだ。「宝物にするわね」って言って、金庫まで買ってその中にゴミを入れるに違いない。

 

 わかる。

 

「えっとね、光莉には、これ」

 

 日葵が光莉に渡したのは、細長い黒い箱。ネックレスケースじゃないかと思って朝日の肩越しにのぞき込むと、案の定ネックレスケースだった。

 朝日が箱を開けると、銀のチェーンに、黒いパズルの装飾品がぶら下がっている。ってことはペンダントか。え? ネックレスとペンダントの違いってなんだっけ? わからん。ムカつく!

 

「……hikariって彫られてて、なんか、ハートの片側に見える空白があるんだけど、これってもしかしてお揃いのペンダントで二つ合わせるとハートができあがるよとかそういうこと? そういうことよね?」

「うんっ! かわいいなーって思って、ほら!」

 

 言って、日葵も同じペンダント、いや、色はピンクゴールドで、『himari』と彫られているパズル型のペンダントを取り出し、嬉しそうに身に着けた。

 

「光莉光莉。光莉もつけて、二人で合わせてハート作ったら? って、立ったまま死んどる……」

 

 あまりの幸福に、朝日が逝った。ただ、本望だろう。二つ合わせればハートが出来上がるアクセサリーを貰えたんだから。

 羨ましい!!!!!

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