【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第57話 将来に向けて

 最近よくクラスメイトから、朝日と岸とお揃いのブレスレットをしていることを指摘される。千里と付き合ってたんじゃなかったの? とか、二股? とか、三股? とか。井原に聞いてみたところ、俺は『三人をたぶらかしている最低のクズ野郎』という結論で落ち着いているらしい。何落ち着いてんだぶっ飛ばすぞ。

 

「というか朝日。お前がそれ付けてきてるから俺が勘違いされるんじゃねぇか。外せ」

「は? あんたが外したら丸く収まるじゃない。別に、女の子同士お揃いのもの付けてるのは何もおかしいことないんだし」

「岸から貰ったプレゼントを外せって? 俺そこまでクズじゃねぇよ」

「ちょっと思ったんだけど、氷室って私以外の女の子への扱いめちゃくちゃよくない?」

「朝日に気を遣う必要なんてねぇだろ」

「……まぁ、いいわ」

 

 どうやら嬉しかったようで、恥ずかしがっているのを悟られたくないのか朝日は俺から離れて行って、日葵に駆け寄って行った。

 

 昼休み、屋上。いつものように五人で集まり昼飯を食べる時間。今日は「私もちゃんと料理できるんだから」と一人でも大丈夫アピールをしたかった薫に弁当を作ってもらっている。あいつそういうことするから俺が溺愛するのに、その辺りちゃんとわかってるんだろうか。

 

「氷室くん氷室くん。期末テストが迫ってきてることについてどう思う?」

「別に、普通にしてたら赤点取ることないから特に何も」

「恭弥こんなこと言ってるけど、赤点どころか70点以下はまず取らないんだよね。ムカつくと思わない?」

「日葵何てこの前の中間テスト赤点回避がギリギリだったくらいなのにね。いっつもそれくらいの点数なんだから二、三週間前には勉強しなさいよ」

「光莉が『勉強と私どっちが大事なの!!』って言うから……」

「お前のせいじゃねぇか。偉そうに説教垂れてんじゃねぇぞ」

「乳も垂らしてるくせにね」

「ハリあるわよ」

「言わんでええねん。セクハラに怒れや」

 

 朝日はもうセクハラで怒る次元にはいない。今だって胸を張って千里の視線を釘付けにしてるし、元々内に入った人間なら気にしないタチなんだろう。乙女なクセに「減るもんじゃないし、見られるくらいならいいわよ。それって私が魅力的だからってことでしょ?」って堂々と言いそうだ。揉んでやろうか?

 

「そういや岸はどうなんだ? 勉強」

「ん-、可もなく不可もなく。勉強したら70は超えるかなってくらいやなぁ」

「は? あんたみたいに金髪の元気っ子はアホでなんぼでしょ。どう見ても頭良さそうなのに勉強が苦手な日葵に謝りなさい」

「フォローすると見せかけて日葵を攻撃してんじゃねぇよ。お前が謝れ」

「朝日さんこそ、乳ばかりに栄養がいって成績よくないんじゃない?」

「あれ? じゃあなんで私と春乃は成績がどっこいどっこいなの?」

「ええ加減にしときや」

 

 朝日が「ひぃ」と小さく悲鳴を漏らし、日葵の後ろに隠れた。日葵が俺の隣に移動して朝日の壁の役目を放棄した。そりゃさっき攻撃されてたもんな。守る筋合いはないっていうかいきなり隣にこないでください。いい匂いするので。

 こう、なんて言うの? 少し動くだけでふわっと香ってくるこのいい匂い。男からは絶対にしないやつ。千里? あいつはメスだから話が違うだろ。

 

「せやったら、別に日葵が勉強苦手やとかやなくてそろそろ勉強しとかへん? ほら、二年の今頃って結構受験に響いてきそうやし」

「あー、考えてもなかった。受験、受験ねぇ」

「恭弥はまず間違いなく心配ないとして、三年生になってからひぃひぃ言うよりは今からやっておいた方がいいかもね」

「織部くんが当たり前のこと言ってるの久しぶりに聞いた気がするわ」

「そ、そんなことないよ?」

 

 は? 何日葵にフォローされてんだ千里コラ。まさか二人で話してた時に何かあったのか? いや、あったに違いない。こいつ日葵の前ではいいカッコするところあるからな。今日葵の前なのに朝日にセクハラしてたけど。

 

 にしても、受験、受験か。志望校なんて決まってないし、そもそも考えてなかったし夢もないし、正直クソバカ大学じゃなきゃどこでもいいんだよな。

 

「みんな志望校とかあるん?」

「日葵と同じ大学」

「恭弥と一緒の大学」

「氷室くん、日葵。罪深いとは思わへんの?」

「いやぁ……」

「えへへ」

「シンプルに照れとんちゃうぞ」

 

 俺もそうだったらいいなぁって思ってた。あわよくば日葵と同じ大学に行きたいなって思ってた。朝日がついてくるのがクソおまけアンハッピーセットだが、まぁいいだろう。

 

「春乃はどうなの? 志望校」

「氷室くんと同じとこ」

 

 俺と日葵が同じタイミングで咳き込み、千里は俺の、朝日は日葵の背中を同時に擦る。訓練されすぎだろこの親友ども。

 ってか岸、俺に好意がバレてるって知ってるからってガンガン攻めてくるなよ。日葵がいるんだよ? それで日葵ももしかしたら俺のこと好きかもしんないんだよ? というかこのタイミングで咳き込むってそういうことじゃないの?

 

 そろそろ誰かに相談するべきだろうか、これ。俺一人じゃ脳がパンクしそうだ。このままじゃ脳がパンクして溢れ出した俺の細胞を千里がかき集めて、いい値で売られてしまう。

 

「な、ななななななな」

「『なんで恭弥と同じとこなの?』って言いたいらしいわ」

「今やりたいことないし、とりあえず氷室くんと同じとこ入っとけば間違いないやろうしな」

「確かに。恭弥って何も考えてないように見えて堅実なところあるからね。将来苦労しないレベルの大学には行くと思うよ」

「……そういうことなら」

「じゃあ私も氷室と同じとこにしようかしら」

「えぇ!?」

 

 日葵、もうちょっとうまく隠してくれ。可愛すぎて俺が死ぬ。

 

「日葵もとくにやりたいこと見つかってないでしょ? それなら、みんな一緒に同じ大学でいいじゃない」

「で、でも恭弥のレベルでしょ? 大丈夫かな……」

「そのために今から勉強するんやん!」

 

 岸が日葵の背後に回り込み、そのまま後ろから抱きしめる。朝日が暴走しそうだったのであらかじめ取り押さえておいてよかった。後ろから羽交い絞めにしてるから絵面的にアレだけど。

 

 あ、こら、暴れるな。ちょっと色々マズいでしょうが。

 

「別に、毎日みっちりやるわけやなくて、ちょっとずつ。ほんまにやり通したいことがあるなら、それに対する努力は嘘つかへんよ」

「んん……」

「みんなと一緒の大学、行きたない?」

「……行きたい」

「ほな頑張ろ!」

 

 優しく日葵の頭をわしゃわしゃ撫でて、「きゃー!」と悲鳴をあげる日葵に「にゃはは」と笑う岸。

 

 それを見て突然朝日が抵抗を止めたかと思うと、俺に背を向けたまま見上げるようにして俺の胸に頭をこつん、と当てて、一言。

 

「マズくない?」

「あぁ、マズい」

 

 何がマズいかって、俺は『男として』朝日は『親友として』マズい。あんな気遣い完璧なイケメンに勝てる気がしない。なんだあのイケメンは。何食ったらあぁいう風になるの? 俺は何を食ってこんな風になっちゃったの?

 

 あぁ、あの母親の手料理食ったらそりゃこうなるわ。おのれ母親め。これからは毎日薫の手料理を食べてやる。羨ましいか千里、ベロベロバー。

 

「恭弥。偏差値的にはどれくらいのとこ行こうって思ってたの?」

「60くらいじゃね? そんくらいあったら十分だろ」

「ろくじゅっ……」

「日葵が絶句しとる」

「ふふ、ふふふ。あほかわいい日葵かわいい」

「恭弥、その羽交い絞めにしてる変態をどうにかしてほしい」

「どうにかなってるからこうなってんだろ」

「頭がどうにかなってるからとかじゃなくて」

 

 どうにかするったって、もう無理だろこいつ。日葵を見てるだけで栄養補給されるような変態だぞ? 日葵から意識を逸らすには俺がおっぱいを揉むしかないが、そんなことしたら俺は殺される。あと多分朝日からだけじゃなくて日葵と岸からも殺される。もしかしたら朝日からの制裁が一番軽いまである。

 

 岸が日葵を解放し、それを見た朝日が俺の手をぽんぽん叩く。もういい? 止めてくれてありがとう? あぁ、あのままじゃお前岸を葬りかねなかったもんな。いいってことよ。

 

「氷室くんが60くらいのとこいこーって思ってんやったら、今日この話して正解やったな」

「今から勉強しておけば安心だからね」

「私は安心じゃないんだけど……」

「私が手取り足取り胸取り股取り教えてあげるわよ」

「余計なもんが二つほど入っとるな」

 

 岸、許してやれ。そいつは日葵に対して欲望を抑えることができないどうしようもない羨ましいやつなんだ。俺はこんなに我慢してるってのに。

 

「それに、光莉が教えるよりも氷室くんが教えた方がええんちゃう? 正直自分の勉強なんかほとんど必要ないやろ?」

「流石に受験勉強ってなったら勉強いるけど、まぁ教えるのも自分の勉強になるだろうしな」

「……? 私が、恭弥に勉強教えてもらうってこと?」

「せやで」

「それってつまり、私が恭弥に勉強教えてもらうってこと?」

「うんうん」

「え、それなら私が恭弥に勉強教えてもらうってことだよね?」

「あれ、もしかして私の言い方が悪かったん?」

「そうよ。謝りなさい」

「夏野さんを甘やかしすぎだよ」

 

 千里が朝日に注意すると、朝日は本当に不思議そうな顔で首を傾げた。日葵を人類の頂点に置いている朝日のことだから、日葵は本当に何も悪くないと思っているんだろう。まったく、その通りだぜ。

 

 俺が日葵に勉強を教えるってことはつまり、近くにいってここはこうだよ、あ、ごめん手が触れちゃった、いいよ私こそごめんね、うふふってことになるってこと? なんだそれ最高じゃん。朝日がその場にいたら俺は殺されるだろうけど、殺されても悔いはない。

 

「まぁ日葵だけじゃなくて私も教えてもらうけど。この前一緒に勉強した時わかりやすかったのよね」

「は? 嫌だけど」

「そんなこと言ってても結局教えてくれるってわかってるわよ」

「え、本気で嫌なんだけど。図々しいんだよお前」

「人の殺し方を教えてあげるわ」

「俺は前から朝日に勉強を教えたいと思ってたんだ」

 

 いや、ほんとにね。でもこいつ距離がめちゃくちゃ近いから時々当たるんだよなぁ。恋愛感情がないって言っても性的な目で見ないってわけじゃないから、ちょっと困る。ほら、周りには日葵と岸がいるわけで、ね? 俺も嬉しがるだけじゃダメというか、誠実な対応を取らなきゃいけないというか。

 

 まぁ朝日は虫かなにかだとでも思えばいいか。うっかり叩いちゃうかもしれないけど別にいいだろう。俺の命が一つなくなるだけだ。

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