【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第59話 上か下

 土曜日。岸から一方的に取り付けられた約束の日。校区内にある大型デパートルミナスで集合とのことで、また朝日か誰かがいてナンパされてないだろうなと恐れながらルミナスに入る。

 ルミナスの中は大型と言っていることもあって色んな店がある。服、飯、美容室、雑貨、ペットショップなどなど、ここで一日潰すことなんて千里にメスを自覚させるくらい容易い。

 

 一階には円形のベンチがあり、その真ん中が花畑になっていたり木が植えられていたりと、夏に有難い涼し気な雰囲気だった。一階中央噴水付近にいるというメッセージを受けて、スマホをポケットにしまって岸を探す。

 岸は美人だから目立つだろ。俺の周りにいる人は特徴があって探しやすくて助かる。千里はメス、日葵はオーラ、朝日は胸、岸は美人。さらに俺はイケメンというもうテレビに出れるんじゃないかっていうくらいのオールスターっぷり。もちろんリーダーは日葵。

 

 ただ、俺以外がナンパされる確率が高い。その中でも千里が一際ナンパされるのは周知の事実。あいつ、歩いてるだけでうまそうに見えるからほんとどうにかした方がいい。

 

 噴水に向かって歩いていると、すぐに岸を見つけられた。黒色の肩だしカットソーに綺麗な脚を惜しげなく晒す短めのデニムパンツが超セクシー。声をかけたら遊んでくれそうなんて思うことなかれ。

 俺が見たのは、声をかけられたであろう女の子を男から守り、男を追い払う岸の姿だった。女の子を背中に庇って男が去ったのを見ると、少し屈んで女の子と視線を合わせ、小さく首を傾げて優しく微笑んだ。

 

 あーあ。女の子が顔真っ赤にして目ぐるぐる回し始めちゃった。お前そのカッコよさちょっとくらい千里に分けてやれよ。不公平だろ。

 

 とりあえずこのままだと岸がお姉さまと慕われそうなので、それもいいがこのままじゃ俺がみじめだから声を掛けに行く。

 

「岸、悪い。待たせた」

「ん-ん! 全然待ってへんでー」

「ほわぁ!? 美男美女!?」

 

 岸に声をかけると、女の子が奇声をあげて俺と岸がびくっ、と肩を震わせる。

 近くで見ると、結構幼い。前髪が長めのショートボブ、片側を耳にかけて少し大人っぽく見えるが、見たところ高校生になったばかりか、それともなっていないかくらいの年齢だろう。なんだあの男、ロリコンかよ。今度見かけたら千里って呼ぶことにしよう。

 

 女の子は俺たちがびっくりしているのに気づいたのか、手をわたわたと動かしてから頭を下げた。可愛いなこの子。

 

「し、失礼しました! あまりにもカッコいい女性に助けられたかと思ったら美男が登場したので、ここが楽園かと気が動転してしまい!」

「お、カッコいいか。ありがとうな」

「え、カッコよ……」

 

 なんかこの子俺たちのテンションと似たようなものを感じるな。もしクラスメイトだったら今の5人が6人になっていそうな、そんな感じがする。もしくは遠くから岸を眺めてきゃーきゃー言っているファン。今も顔を手で覆って、指の隙間から岸を見てきゃーきゃー言っている。

 

 俺は?

 

「ぐ、ぐぐぐ。あ、お、お礼! お礼しなきゃです! 助けてもらったお礼を」

 

 言葉の途中で、岸が俺の腕を抱いて女の子に向かってウィンクを一つ。

 

「ごめんな。私ら今日デートやから」

「あ、むり。ここを死に場所と見つけたり」

 

 イケメン可愛い岸の攻撃をもろに受けて、女の子は膝をついた。岸は楽しそうにけらけら笑っている。お前この子で遊ぶなよ。反応よくて面白いのはわかるけど。

 

「お、おなまえ、おなまえだけでも」

 

 膝をつきながら口をぱくぱくと動かして、必死に名前を教えてほしがっている女の子。女の子としてどうなんだそれと思ったが、まぁ朝日の方が女の子としてより人として終わってるから全然セーフだ。

 

「ん-、そやなぁ。そういうのんのために助けたわけちゃうから……」

 

 そっと俺の腕から離れて、岸が女の子を抱き起こす。それだけでショート寸前だった女の子は、次の岸からの一言で脳が爆発して死んだ。

 

「次会った時、いっぱい仲良くして?」

「あぁぁぁ……」

 

 女の子は「あ。あ……」と声を漏らすだけの人の形をした置物になってしまい、岸はその子をベンチにそっと座らせて、

 

「さ、行こか!」

「人の性癖を狂わせるのは楽しいか?」

「にひひ。ちょっとやりすぎてもうたかな?」

 

 哀れ。名も知らぬ女の子、強く生きてくれ。

 

 

 

 

 

「実際さ。岸のイケメン力大気圏突破してると思うんだよ」

「ん-? 氷室くんもイケメンやと思うけどなぁ」

「俺は大気圏で焼け落ちて地の底に突き刺さってる」

「行くところまで行きそうやけど結局いかれへんってことやな」

 

 俺の腕に抱き着いたのはあの子で遊ぶためにやっていたことらしく、今は普通に手をつなぐこともせず隣を歩いている。あんなことされたら誘惑に負けてしまいそうになるからちょっと安心するところもあるが、やはりそこは男の子。めっちゃくちゃ残念な気もするというかめっちゃくちゃ残念だ。胸がない胸がないと千里と朝日がよくバカにしているが、ちゃんと柔らかかったし。岸はそういうのを意識させるためにわざとやってきたりするから油断ならない。

 

「言うても私、動物とか好きやしかわいいとこあるんやで?」

「偏見で大変申し訳ございませんが、犬を見て『きゃーかわいいー!』じゃなくて『おいで』ってイケメンスマイル浮かべると思うんです」

「負けました」

「やはりか」

 

 しかも小型犬じゃなくてバチクソ強そうな大型犬の方が似合いそうだし。いや、小型犬も似合うといえば似合うし女の子と犬の組み合わせなんて可愛いに決まってるけど、それ以上にイケメンが強すぎる。

 

「や、ちゃうねん。もう無意識というか、庇護欲わいたらそうなってまうねん」

「根っこがカッコいいんだろ。俺と一緒で」

「さりげなく自分をええ風に言うなや。一本の芯で辛うじて耐えてるだけの腐りかけ根っこやろ」

「ちょっとふざけただけでサウザンドナイフ投げてくるな」

 

 刺さりすぎて死ぬ。こいつ、こんなこと言ってくるくせに俺のこと好きなんだぜ? 信じられるか? 俺は信じられない。あれか、好きな相手にだけあたりが強くなるみたいなやつ? それか岸にここまで言わせる俺がすごいとか? 多分後者だ。俺はすごいやつだからな。

 

「せやったらペットショップ冷やかしにいってみよーや。私のかわええとこ見せたるわ」

「可愛いとこって意識して出すもんじゃないと思うんだよ。ほんとに可愛い人って」

「正論で殴ってくんなや。殴るぞ」

「物理で殴るのはやめてくれ」

 

 いや、岸も可愛いぞ? ただ、そうやって可愛いとこ見せるぞーって言って出す可愛さより、自然と出る可愛さの方が絶対に可愛い。俺が時折出る朝日の可愛さにきゅんとくるのと同じだ。ちなみに日葵にはずっときゅんきゅんしている。胸が締め付けられて何度胸がなくなったかわからない。

 

 岸がどうしてもと譲らないので、ペットショップを冷やかしに行くことにする。俺もよく薫と一緒に行って、薫が無言で『飼いたい』とじーっと俺を見てくる激かわビームを撃ってくるからペットショップは好きだ。小さい頃なんか犬が入ってるケースの前に座って動かなくなる忍法激かわ地蔵の術使ったくらいだし。俺に訴えても飼えるわけないのにそれをやってしまうところがどちゃくそ可愛かった。

 

「私将来犬飼いたいねんなー」

「ドーベルメン?」

「なんでドーベルマン複数飼わなあかんねん。ポリスちゃうんやぞ」

 

 めちゃくちゃ似合うと思うんだよな。なんか岸って『正義』って言葉似合うし。ぜひドーベルマンを飼って千里を生け捕りにしてほしい。あいつ存在するだけで性癖歪めるからもう犯罪者みたいなもんだろ。

 

「ほら、もっとかぁいらしい犬おるやん。もこもこしたやつ」

「あぁ、ドーベルメン?」

「さっきからドーベルマン大量に納品してくんなや!」

「似合うと思って……」

「似合う言うてくれんのは嬉しいしドーベルメン、ドーベルマンもかわええやろうけど、やっぱ小型犬やなぁ」

 

 店員さんの「いらっしゃいませー」という元気な声とともに店内に入る。ペットショップは結構広く、爬虫類、鳥類は別の区画に、今俺たちが入ったところは哺乳類がいるところで、フロアの天井をぶち抜いて二階まであり、さらに触れ合いもできるという暇つぶしには最適な場所。

 

「……なんかケースの中のわんちゃんねこちゃんが騒ぎ始めたんやけど」

「なんか俺めっちゃ動物に懐かれるんだよな。触れ合いコーナーいくといっつも上に乗られるんだよ」

「下に見られてんちゃう?」

「うそだろ」

 

 そんなことある? いっつも満足げな顔で俺の上に乗るから、てっきり居心地がいいのかと思ってた。そうじゃなくて俺がクズで生物として下だから、自分より下がいることで安心してただけだったのか。許せねぇあいつら。千里をぺろぺろさせていやらしい光景を演出するための道具にしてやる。

 

 まぁそんなはずはない。ただただ俺に懐いてくれているだけだろう。岸は悔しくて俺が下だって言ってるだけだ。ふふふ、子どもっぽいところあるんだな。

 

 そんな子どもっぽい岸はゆっくりケースの方に近づく。すると騒いでいた犬がぴたりとおとなしくなって、また一歩岸が近づいた瞬間一斉におなかを見せた。

 

 服従のポーズである。

 

「……いや、こういうんちゃうねん」

「躾が楽でよさそうだな」

「ポジティブに考えればそうやな。でもなんか、ペットってもっと対等というか、家族みたいなイメージあるやん?」

「あるな」

「これどう見ても『上』と『下』やん」

「動物の本能で岸が『上』だと思ったんだろうな」

「……ん? ってことは私が氷室くんより上ってこと?」

「やってやろうじゃねぇか」

 

 二人並んで触れ合いコーナーに向かう。犬が服従せずに俺に乗ってきたら俺の勝ち、服従したら岸の勝ち。カフェでの奢りをかけていざ勝負!

 

 全員服従した。岸は勝ったのに微妙そうな表情で、「なんかちゃうんよな……」と呟いている。やっぱ警察犬とかが向いてるんだって。

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