【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:とりがら016

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第74話 しんぱい

「やぁ」

「あぁちょうどよかった。今心臓が欲しかったところだったんだよ」

「一つ質問なんだけど、君は僕を殺す気でいる?」

「答え合わせは必要か?」

「人間は話し合いができる生き物なんだ。少し落ち着こう」

 

 落ち着こう、だって? どの口がほざいてんだこいつ。

 

 俺が怒っている理由は一つ。誰の許可も得ずに日葵と二人きりでいたことだ。よく考えたら俺を途中で呼んでくれたし、あれのおかげでデートの約束もできたからナイスなサポートな気もするが、だからって日葵と二人きりでいていい理由にはならない。これはこれ、それはそれというやつだ。

 

 そんな俺の怒りを無視して、千里は「ただいま」と言って俺の家に入り、まるで自分の家かのような慣れた動きで二階に上がっていった。ぷりぷりと動くケツが艶めかしく見えるのは流石メスと言ったところだろうか。

 

「今日は薫いねぇぞ」

「ゆりちゃんと勉強だよね。知ってるよ」

「は? なんで知ってんだテメェ、答えろ」

「おたくの妹さんから聞いてもないのに送られてきたんだけど、君はそれをどう思う?」

 

 屍と化した千里を引きずって俺の部屋に入り、千里をベッドの上に放り投げる。ボロボロの千里がベッドに倒れていると妙なエロさどころかドストレートなエロさがあって大変マズい光景だが、今は千里のエロさよりも俺の千里に対する怒りが負けている。負けてるのかよ。

 

「ったく、今回はお前のエロさに免じて許してやる。今更お前と薫のことに関して怒っても仕方ないしな」

「ちょっとまて。じゃあなんで僕をボコボコにしたんだよ」

「は? ボコボコになる前となった後じゃなった後の方がエロいからだろ」

「えっち。やっぱり僕のことをそういう目で見てたんだね」

「おい、あんまりそういうこと言うなよ。うっかり興奮しちまったらどう責任取るつもりだ?」

「ほんとにごめん」

 

 こいつは自分が簡単に人の性癖を歪められる武器を持ってるっていう自覚がないんだろうか。俺が理性のない獣だったらどうするつもりだったんだ? まぁ俺が理性のない獣だったらそもそも親友になってないだろうけど。

 ベッドの上に千里といると危険なので、椅子を引っ張り出してそこに座る。千里が首を傾げて自分の隣をぽんぽんと叩いた。あまりにもメス過ぎるその行動を無意識でやってるんだから恐ろしいんだよお前。なんか俺の前だといつもより何割か増してメスなのはなんなの? もしかしてお前俺のこと好きなの?

 

「あ、そうそう。今日来た理由なんだけど」

「お、おう」

 

 ベッドの上でぺたん、と座る千里。両手の指を絡ませて自分の膝の上に置き、俺を見上げるその姿はメスとして完成されていた。本当にこいつに薫を任せていいんだろうか。いやでも流石に薫の前じゃ男らしいよな?

 ……今度薫に聞いてみよう。男らしくなくてもいいっちゃいいんだが、将来生まれてくる子どもが「なんでうちはお父さんがいないの?」って言われたら流石の千里も立ち直れないだろうから。俺は爆笑するけど。

 

「夏野さんとデート行くことになったんでしょ?」

「……おう」

「恭弥一人で大丈夫かなって思って」

「ついてきてくれるんですか!!!!!???」

「そこは『俺一人でも大丈夫だ』ってカッコつけようよ」

 

 なんて言いつつ俺に頼られていることが嬉しいのか、にこにこしている千里。恋愛的な意味じゃないけど、こいつ俺のこと本当に好きだよな。普段男アピールしようと必死になってるのに、俺の前じゃメス全開になるくらい気を許してるんだから。

 男友だちに使う表現じゃないけど、ドチャクソ可愛い。俺の性癖が歪んでいないのが奇跡かと思うくらいだ。

 

「いや、よく考えてみてくれよ。俺が日葵と二人きりだぞ? そうなったら俺はただのイケメンで頭がよくて運動ができる性格のいい男になっちまうじゃねぇか」

「悪いところが見当たらないんだけど」

「その代わり緊張で喋れない」

「ヘタレが。本当に玉ついてるの?」

 

 脱いでみる。

 

「ついてるぞ」

「確認させてくれって意味じゃねぇよ!」

「いや、俺も不安になって……」

「恭弥は僕なんかより男らしいんだからついてるに決まってるだろ!」

「お前もついてない可能性あるじゃん」

「ついてるわ!!!!!」

「待て!! 落ち着け!!」

 

 ベルトを解こうとする千里を必死に止める。何やってんだ俺は。下半身丸出しでメスみたいな女の子、いや男の子が脱ごうとするのを必死に止める。なんつー光景だこれ。見ようによってはベルトを解こうとしてる下半身丸出しで準備万端の俺と必死に抵抗する千里って図にならね?

 

 ふぅ、今日が平日でよかったぜ。両親がいたら絶対部屋に入ってきて「あ、結婚する?」って式場を用意されるところだった。

 

「兄貴、千里ちゃんきて──」

 

 ガチャ、というドアが開く音とそこから顔を覗かせる薫。下半身丸出しの俺。ベルトに手をかける千里。

 

「よう薫。ゆりちゃんはどうしたんだ?」

「……ん、気絶しちゃったから帰ってきた」

「あぁ、まだ慣れないんだね。薫ちゃんは可愛いから仕方ないけど」

 

 触れ合っている手を通して、千里と意思疎通。『ここは普段通り会話してこの姿を幻ということにしよう作戦』。それを決行し、自然に会話を始める。薫が俺の下半身をちらちら見て気にしているが、幻だと思っているはずだ。俺たちの作戦に隙なんてあるはずもないからな。

 

「えっと、なにしてたの?」

「あぁ、聞いてくれよ薫。俺今度日葵とデートすることになってさ。それの相談というかなんというか」

「恭弥が一人じゃ不安だって言っててね。どうしようかなーって思ってたところさ」

「……えっと、なにしてたの?」

「おいおい、聞いてなかったのか?」

「恭弥、仕方ないよ。薫ちゃんは勉強で疲れてるんだ」

「えっと、ナニしようとしてたの?」

 

 まさか、気づいてるのか? と千里の手を指で撫でると、いや、まだ大丈夫なはずだ、と千里が指で撫で返してくる。そうだよな。まだ薫は核心に触れていない。触れてた気もするけど。

 

「薫、疲れてるなら部屋に戻って寝ておけよ。勉強を頑張るのはいいが、やりすぎも逆効果だ」

「なんで兄貴は下半身丸出しで千里ちゃんのベルトに手をかけてるの?」

「おいおい、思春期か? 俺の下半身が丸出しだって?」

「ははは、そんなはずないじゃないか。やっぱり疲れてるんだよ薫ちゃん」

「写真撮って日葵ねーさんとつづちゃんさんに送っていい?」

「考えうる限り最悪の二人を提案してきてんじゃねぇよ」

「君は恐ろしい子だ、薫ちゃん」

 

 日葵に送られたら俺が死ぬし、つづちゃんに送られたら俺と千里が死ぬ。あの子は嬉々として夏休み明けに下半身丸出しの俺とベルトに手をかけた千里を一面にした新聞をばらまくことだろう。どっちにしろ日葵にバレるじゃねぇか。

 

「……そういう関係なら、言ってくれたらよかったのに」

「ち、違うんだ薫ちゃん! この光景を見られたら違うんだって言っても説得力皆無だけど、違うんだよ! 何が違うの? って言われても違うんだとしか言えないけど違うんだよ!」

「そうだ! 俺は自分に金玉がついてるか確認しようと思っただけなんだ!」

「そうだ! そして僕も自分に金玉がついてるか確認しようとしたら、恭弥に止められただけなんだ!」

「受精できるかどうか確認しようとしたってこと?」

「オイ、テメェか薫に受精って言葉教えたのは!!!??」

「そんなプレイまだしねぇよ!!」

「なに今後の可能性を示唆してんだ!!」

 

 こいつどういう状況で薫に受精って言葉教える気だ? とんでもねぇド変態じゃねぇかこいつ。流石の薫も引いて……引いてるよな? なんかぽわぽわしてるように見えるのは気のせいだよな? え、うそ。俺の後ろをてちてちついてきていた薫はどこに行ったの? 男の前で女の顔する薫なんか見たくないんだけど。

 

「あ、そうか。お前をメスにすればいいんだ」

「丸出しにした下半身の使い道を見出してる!? 落ち着くんだ恭弥! 君がその結論に至った理由はなんとなくわかるけど、僕をメスにしたって何の解決にもならないぞ!」

「薫。実は勘違いじゃないんだ」

「勘違いだ薫ちゃん! よく考えてくれ、恭弥と僕はどっちもおかしいけど、どっちの方が信用できるかを!」

「兄貴」

「よくできた妹だなチクショウ!!」

 

 千里のベルトを外そうとする俺のアソコを、千里が叫びながら蹴り上げる。一瞬俺は天国に行き、じいちゃんばあちゃんに挨拶してから舞い戻ってきたときには薫に慰められている千里の姿があった。

 

「妹の前で下半身丸出しにして床に倒れる気分はどうですか」

「暴走が過ぎました」

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさい」

「よし」

 

 薫の前で下半身丸出しで正座する俺、ベッドの上の薫と千里。なんだ俺は人権のない召使いか? 下半身丸出しにさせるなら上も脱がせろ。

 

「兄貴は暴走癖あるの自覚しなきゃだめだよ」

「してます」

「なおだめじゃん」

「だから日葵と二人きりになったら俺は暴走するかもしれないぞ。いいのか?」

「あれ、私いま脅されてる?」

 

 あれ、俺いま世界一情けない? 妹と親友の前で下半身丸出しで正座って、世界のどこにこんなやつがいるんだ? ここにいるわ。こんにちは。

 

「……ほんとは二人きりが一番いいと思うけど、兄貴がしんぱ……ん、日葵ねーさんが兄貴になにかされないか心配だし」

 

 薫は照れ臭そうに俺から目を逸らし、俺を警戒している千里の手を取った。

 

「私たちがついていってあげてもいい、よ?」

「え? なに? 僕?」

「……!!?」

 

 なんだ、どういうことだ? つまり俺は薫が千里と距離を詰めるために利用されたのか今? いやそんなことはないはず。薫は俺と日葵を心配してくれたんだよな?

 

 薫が頬を赤くして千里を見ていた。

 

「千里。薫に何かしたらわかってるな?」

「今日でよくわかったよ。二度と近寄らないでくれ」

「じゃあ薫とは結婚できないな」

「僕に近寄ってくれ」

「いいの?」

「こないで」

 

 薫に拒否されてしまった。俺下半身丸出しだもん、そりゃそうだ。


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