【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第78話 氷室テスト①

 夏休みのある日。宿題は早めに終わらせよう、じゃあどうせならみんなでやっちゃおうと俺の家のリビングに集まった今日この日。俺たちが集まれば宿題なんてできるはずもなく、千里が神妙な面持ちで五枚の紙を取り出した。

 

「恭弥理解度チェックテストです」

「待てや」

 

 大至急千里をリビングから連れ出して、女性陣に聞こえないようひっそり話す。

 

「何考えてんだテメェ。俺が言うのもなんだけどあの三人に俺の理解度チェックってヤバいだろ。修羅場になるとは思わねぇけど何か遺恨的なやつ残るぞ。お前最近サポートするフリして自分が面白けりゃいいと思ってないか?」

「これが意外なことに100%僕が楽しむためにやってるんだ」

「予想通りだわクソが。あと五枚ってなんで俺もやらないといけないの?」

「模範解答があったら喧嘩にならないでしょ。私の方があってる! みたいな」

「そもそも喧嘩の種になるようなもん持ってきてんじゃねぇよ。いいか? 今から戻っても『ごめん、さっきのはなし』って平気な顔して言え。俺は平和に暮らしたいんだよ」

「わかった。僕も君の親友だ。君が嫌がるようなことは絶対にしない」

 

 まっすぐ俺を見つめて頷いた千里を信用してリビングに戻り、「悪いな」と全員に謝ってから千里を見て「さぁ言え」と促す。俺の視線を受けた千里が「任せて欲しい」と頷いてから。

 

「制限時間は10分間。空欄はすべて埋めるように。もちろんカンニングはなし。これで今現在誰が恭弥を一番理解してるかがわかるね」

「待てや」

 

 大至急千里をリビングから連れ出して、女性陣に聞こえないようひっそり話す。

 

「何ルール説明しちゃってんの? 何やる気煽ってんの? さっき俺の言ったこと伝わってなかったのかよ。耳ついてんのかテメェ」

「見たらわかるでしょ」

「見りゃわかるけどそういうこと言ってんじゃねぇよテメェ鼓膜ぶち抜いてんのか頭がワリィのか? どうすんだよ三人ともペン握りしめて今か今かと答案用紙が配られんのを心待ちにしてるじゃねぇか」

「いや待って恭弥。これは僕が楽しむためっていうのもあるけど、他に狙いがあるんだ」

「聞こうじゃねぇか」

「それを説明するから、一旦リビングに戻ろう」

 

 疑いながらも、千里と一緒にリビングに戻る。千里が答案用紙を全員に配っているのを見ながら、「男同士でこそこそ何話してたの?」と聞いてきた光莉に「お前が今日もハンプティダンプティ二匹つけてんなって話してたんだよ」と返し、地獄を見せられた。

 

 そして千里がスマホでタイマーをセットし、全員を見てから。

 

「それでははじめ!」

「覚えとけよテメェ」

 

 そうなんじゃないかって思ってたけど「面白そうだから黙っとくか」って流されてた俺も俺だけどさ。

 まぁこのメンツなら修羅場にならないだろうなっていう安心感があるからだし、そもそも俺が模範解答になるなら誰もが外すような答え方すればいいだけだしな。

 

 でも俺は自分に嘘をつけないから真面目にやろうと思う。

 

 ところどころ訳の分からないところがある問題を10問答えてペンを置くと、俺以外の全員がまだ回答を終えてなかった。そんなに難しい問題があるとは思えないが、なんでこんなに時間がかかってるんだろう。あと問題作った張本人の千里がなんで頭抱えてんの? 自分で悩むような問題作んなよアホかよ。

 

「そんなに悩む問題あったか……?」

 

 あまりにも悩んでいるので思わず声に出して言うと、全員から頷きが返ってきた。

 

「恭弥くんってわかりやすいようでわかりにくい人やから、気分で答え変えたりするやろ?」

「ほんとに読めないのよね。決まりきった答えもあるといえばあるんだけど、『こう答えた方が面白そうだな』ってそれすらも変えてきそう」

「恭弥ってどんな人だったっけ……」

「僕が作っておいてなんだけど、題材がややこしすぎた」

「みんなして俺を異常者みたいに言うのやめてくれない?」

 

 お前らほんとに俺のこと好きなの? 実はスパンの長いドッキリで、実は俺のこと好きでもなんでもなくて、むしろゴミクズだと思ってるとかない? そっちのが納得できるぞこの仕打ち。やりたくもねぇテストやらされて異常者扱いされるって。俺がやらせてるならまだしも、勝手に吊るし上げられて攻撃されてるだけじゃねぇか。

 

 なんとか全員が回答を終わらせたところで終了を告げるアラームが鳴った。全員が自信なさげな表情でペンを握りしめてるのを見て俺は何を思えばいいんだろう。複雑すぎる。

 

「まったく自信ない……」

「これどういう風に採点するん?」

「恭弥に問題と答え言ってもらおうか」

「あとで恭弥の答案用紙も見せてもらうわよ。書いた答えと別の答え言いかねないし」

「俺どんだけややこしい人間なんだよ」

 

 そんなに変なことしないだろ俺。これまで真面目に真っすぐに生きてきたってのに。

 

「じゃあ行くぞ、一問目。『氷室恭弥のカッコよくてものすごく頼りになる親友は誰?』」

「まぁこれは僕だよね」

「存在しねぇよこんなやつ。自分を測る物差しブチイカレてんのか?」

「私は『いない』って書いたで」

「私も『いない』って書いたわ」

「私も『いない』って書いたよ」

「は? いじめか?」

 

 親友ってだけなら千里だったが、カッコよくて頼りになるっていう余計な枕詞がついてるから千里じゃない。どこにカッコいい要素あるんだよ。可愛さしかないじゃんお前。

 

「二問目。『氷室恭弥の好きな食べ物は?』せっかくだから全員の回答聞いていくか」

「僕は『わからない』って書いたよ」

「何で出題者が諦めてんだよ」

「私は『目玉焼き』って書いたで」

「私は『ハンバーグ』」

「私は『グレイビー』って書いたわ」

「春乃と日葵はわかるけど光莉はおかしいだろ。二人の回答と合わせてロコモコ作りにいってんじゃねぇか」

 

 いや、春乃と日葵の回答もわかんねぇよ。高二にもなって好きな食べ物『目玉焼き』とか『ハンバーグ』とか言うやついるか? いるだろうけど俺そんなやつじゃないだろ。ちょっとカッコよく見られたいからそんなザ・男の子な食べ物言わないだろ。

 

「正解は『薫が作ってくれるお弁当』でした」

「は? そんな単純な答えでよかったの?」

「考えすぎてもうた!」

「小さい頃狂ったようにハンバーグって言ってたからそうかと思ってた……」

「グレイビーが好きじゃないってどういうことよあんた」

「お前考えすぎとかじゃなくてまっすぐ俺がグレイビー好きだと思ってたの? グレイビーがどんな味かも知らねぇよ」

「ロコモコに使うのは知ってたんだ……」

「だって『groovy』と似てるじゃん」

「だって?」

 

 千里と光莉が「なるほど」と頷き、日葵と春乃が首を傾げたところで三問目。

 

「三問目。『氷室恭弥の嫌いなものは?』」

「『面白くないこと』」

「私も似たようなこと書いたなぁ」

「私は、『薫ちゃんに害のあるものすべて』って書いた」

「え? 『シャワーを出した時最初の方に出る水』じゃないの?」

「何正解してんのお前?」

「うそでしょ」

 

 光莉の答案用紙を見ると、確かに『シャワーを出した時最初の方に出る水』と書かれていた。怖いんだけど。なんで当てられるの? こんなん薫しか知らないと思ったのにっていうか薫にしか言ったことなかったのに。

 

「ほえー。なんで当てれたん?」

「あぁ、確かに恭弥のお風呂にカメラ仕込んでればわかるかもね」

「勝手に私を犯罪者にしてんじゃないわよ。まぁちょっとね」

「……悔しい!」

 

 ふふん、と得意気な表情の光莉に、感心する春乃、悔しがる日葵。それを見て千里は面白そうににやにやしている。お前好みの展開になってきたか? くたばれクズが。

 

「四問目。『道を歩いていると何か困っていそうなお婆ちゃんがいました。それを見捨てた後の氷室恭弥の行動は?』いやこれさ。なんで見捨てる前提なの? 俺見捨てるって思われるくらい心無いやつだと思われてんの?」

「僕は『見捨てたことが気になって、やっぱり戻って渋々助ける』」

「同じやで」

「同じよ」

「同じく……」

「正解だよテメェら。俺の小心者見透かしてんじゃねぇよ」

 

 恥ずかしすぎだろこれ。全員俺の小心者理解してるってとんでもない恥ずかしさだろ。『渋々』まで当てられてるのが恥ずかしすぎる。いや、なんかさ。罪悪感あるじゃん。一回見捨ててるし。だから『俺は優しい人間じゃないけど、仕方なく助けてあげますよ』感出さなきゃフェアじゃないじゃん。なにが?

 

「五問目。『氷室恭弥が今一番投げたい変化球は? 実際に投げられなくても可』誰がわかんだよこんなの。俺だって初めて考えたわ」

「僕は『高速スライダー』」

「私は『高速フォーク』」

「私は『高速シンカー』ね」

「私は『高速シュート』」

「なんでお前ら俺が高速投げたいと思ってんの? さてはお前ら俺のことバカだと思ってんだろ」

「正解は?」

「正解は『インハイにボール一つ分外れるストレートからアウトローへのチェンジアップ』」

 

 なんで全員「そっちか……!」みたいな顔してんの? 俺普段から『インハイにボール一つ分外れるストレートからアウトローへのチェンジアップ』投げたそうな顔してるってこと? 俺そんな技巧派エースみたいな顔してるかな……。

 

「いやでもほんと、わかりやすいようでわかりにくいよね。この問題だってみんな悩んだでしょ?」

「恭弥くん緩急好きそうやもんなぁ」

「性格悪いものね。でも『高速ってカッコよくね?』って思ってそうって考えちゃって……」

「素直に『インハイにボール一つ分外れるストレートからアウトローへのチェンジアップ』って書けばよかったなぁ」

「なんで素直に書けばそれが出てくるのかがわかんねぇんだけど」

 

 確かに最初の方はみんなあんまり悩むことなくて、中盤あたりから悩み始めたけどまさかこれで悩んでたとは。普通これって「わかんないから適当に書くか」ってやつだと思うんだけど。

 

「今は朝日さんだけが三問正解で、他は二問正解か」

「こっから巻き返すで!」

「でも正直ここからは運なのよね……」

「恭弥が回答するときどういう気分だったかによるもんね」

「今気づいたんだけど、これ新しいタイプのいじめだったりしない?」

 

 全員が首を傾げた。遠回しに「お前はわかりにくい人間だ」ってめちゃくちゃ言われてるような気がしたけど気のせいだったのかな……?

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