「部屋割りの話だけど、僕は薫ちゃんと寝るからあとの有象無象は好きにしていいよ」
「俺は今から千里を永遠に眠らせてあげようと思います」
「許可します」
「助けて朝日さん! 岸さん! 恭弥と夏野さんに挟まれた!」
「ええなぁ」
「日葵に挟んでもらえて悪いことなんかあるの?」
光莉と春乃に見捨てられた千里を眠らせて、せめてもの情けで薫の隣に寝かせてやった。千里の頭の側に薫が座り込んで千里のほっぺをむにむにしているのが大変気に入らないが、あとで薫に頼んで俺もしてもらえばいいかと自分を納得させ、ひとまず許してやることにする。俺は心が広いんだ。
「しかし、部屋割りか。薫の部屋に四人は流石にきついよな?」
「いけないこともないけど、寝る時ぎゅうぎゅうになっちゃうかも」
「さぁいきましょう」
「光莉には廊下で寝てもらおう」
「え、更にぎゅうぎゅうになっちゃうじゃない。うふふ」
「テメェだけ廊下で寝ろっつってんだよ」
「……一緒に寝てくれないの?」
「おい千里。今夜は一人で寝てくれ」
「じゃあ廊下に恭弥と朝日さん、薫ちゃんの部屋に僕と薫ちゃん、恭弥の部屋に夏野さんと岸さんでいい?」
「……はっ、だめ!!」
「一瞬恭弥くんの部屋で寝れるからって妥協しかけとったな?」
千里の復活が最近早くなってる気がする……。
俺の部屋のベッドなら人二人くらいは平気で寝られる。それは薫の部屋も同じで、お互い来客用に布団が一セットずつあるから、薫の部屋に俺の来客用の布団を持って行って、俺と千里が同じベッドで寝るっていうのが一番いいんだろうけど……。
「うーん。親の寝室使うか。薫は日葵と寝たいだろうし、光莉と春乃は一階の寝室で寝てくんね?」
「は? 私から日葵を奪う気? あんたがそのつもりなら窒息死させるわよ」
「せめて楽に殺してくれ」
「胸で」
「今日が俺の命日だ」
「浅ましい人間だね……」
「千里が言うなや」
おっぱいで殺されるってさ、男の夢の一つだと思うんだよ。だから釣られても仕方ないというか、そんな目で見て欲しくないというか。おい日葵。「いけるかな……」って自分の胸触るな。いけるいけない以前に俺を殺すことを許容するな。あ、春乃は無理だから気にすらしなくていいぞ。どちらかというと脚で殺してくれ。
俺は変態か???
「私はええで。日葵と光莉を離すのが最優先やし」
「えー。でもいいの? 普段恭弥の両親がセックスしてるベッドで寝るのよ?」
「おい。息子娘の前であんまりそういうこと言うんじゃねぇよ」
「ははは。まぁ流石に中三と高二の子どもがいるからもうしてないでしょ。ねぇ薫ちゃん」
「……」
「あれ、恭弥?」
「……」
「私、おじさんとおばさんと次会ったとき目合わせられないかも……」
気にしないでくれ日葵。そう、あの、あの両親ならあり得るかなってだけで、実際に目撃したとかそんなんじゃないから。父さんがこの前「夫婦の仲良しの秘訣はセックスだ!!」って言ってたけどそんなことないはずだから。
……まぁそんなことないはずだけど、なんか両親の部屋で寝てもらうのは申し訳なくなってきたな。もしかしたら変な空気にあてられて光莉と春乃がいやらしくなって……元々いやらしいから問題なくね?
「もう私の部屋でいいんじゃない? 日葵ねーさんは私が守るから」
「恭弥ぁ。薫ちゃんが私を守るってー!」
「よしよし。嬉しいけど寂しいよな」
一瞬で感激して喜んで俺に抱き着いてきた日葵をよしよし撫でる。あんなに可愛かった薫が立派になって……。俺がとんでもなく変人なせいで変人ばっかりと会わせて申し訳ない。しかもそのうちの一人を好きになるなんて。まともに育ったように見せかけて、俺は薫の一部分を歪めてしまったのかもしれない。
「……もしかして、私のせいで部屋割りもめてたりする?」
「今気づいたん? 光莉が性欲の化身やからもめてんやで」
「え? 春乃も揉めてるの? 揉む胸ないのに」
「おい。なんで今この流れで喧嘩売ってきとんねん」
「あーあ、女の争いは醜いね。薫ちゃん。僕たちはベッドの上でいやらしく争うことにしよう」
「おっぱいおっきくないけどいいの?」
「岸さんより全然あるよ」
「ええ度胸しとるやないかお前ら!! 全員まとめてかかってこいや!!」
「春乃はすらっとしてるし、脚長くて綺麗だから胸なんて気にしなくていいと思うけどな」
「うん。モデルさんみたいだもん」
「いやんもう恭弥くんと日葵大好き!」
春乃が飛びついてきて三人そろって床に倒れ、春乃が三人密着するようにぎゅーっと抱きしめてくる。まってやめて! 俺が女の子だったらまだしも俺は男の子で、こんなことされたら俺の男の子の男の子が男の子になっちゃう!! 顔近いよ! 二人とも綺麗だし可愛いよ! キスしちゃおうかな?
「ごくり。僕も恭弥が大好きだからまざってこようかな」
「あんたいつか薫ちゃんに愛想つかされるわよ」
「千里ちゃんのこういうところはもう仕方ないので大丈夫です」
「薫ちゃん。こういうところを許しちゃうと調子乗っちゃうんだから、ちゃんと手綱握っとかないとだめよ? なんでも許すのがいい女ってわけじゃないの」
「……光莉の姐さん」
「あれ? 朝日さん背中に入れた墨、薫ちゃんに見せたことあるの?」
「はぁはぁ薫ちゃん。見せてあげるからお姉ちゃんと一緒にお風呂入りましょうね」
「待てや性犯罪者」
「薫ちゃんに何する気?」
「千里。今まで助けなくて悪かったわね。だから助けなさい」
「死になさい」
「おぼえてろ」
俺たちがくんずほぐれつしてる間に薫と一緒にお風呂に入ろうとした不届きものを日葵と一緒に成敗し、「日葵からの攻め……あんっ」と悦んでしまった光莉に日葵から軽蔑の目を……あれ? 「悪くないな」て顔してるぞ???
俺が知らない間に日葵が変態になってしまった……光莉のせいだ。いやでも変態の日葵も悪くないな。むしろいいな。光莉のおかげだ。花丸あげちゃう。
それにしても困った。いつものことだけど話が進まない。もはや何の話してたっけってレベルで進まない。あとさっき女の子の柔らかさを教え込まれたから脳が働かない。いい匂いしたし。普段千里で慣れていなかったら俺は今頃脳がショートしていた。
「……なんか、光莉さんと一緒の部屋怖くなってきた」
「何も怖くないわよ薫ちゃん。流石に私も本気であんなことやそんなことするのも悪くないわね」
「だから怖い言うとんねん。少しは自制しろや」
「でも、ほんとにしないと思うよ? 今までされたことなかったし」
「夏野さん。多分それ夏野さんの純粋さにかこつけて色んなことしてると思うから、実はあてにならないんだ」
「は? 何余計なこと教えてんのよ」
「そして今あてにならないことが確定した」
とんでもない危険人物だな光莉。女の子同士なら何してもいいって思ってんのか? 男の子にも同じことしてくれ。いや、させてくれ。初めてだけど優しくするし、ほら、下着姿見た仲じゃん? あの頃はなんとも思って……なかったことはなかったかもしれないけど、見たことは事実だし。
……思い出すのはやめよう。うん。何がどうってわけじゃないけど、ナニがそうなりそうだし。そういえばあの時千里もいたよな。そっちのことを思い出して萎えさせ……萎えないな。どうしようもねぇや。
「じゃあ俺と千里が親の寝室で寝るか。別に気にしねぇだろ?」
「うん。恭弥と一緒のベッドってところがちょっと怖いけど」
「おいおい。俺が千里を襲うとでも思ってんのか? おい薫、確か父さんと母さんの部屋に縄あっただろ。あれで俺を縛ってくれ」
「余計怖くなったしそもそもなんでご両親の部屋に縄があるの? しかもなんで縄があることを知ってるの?」
「普段縄使ってるんだ……」
「日葵ねーさん。非常時用に使えるかもしれないってお父さんがこの前買ってきただけだよ」
「薫ちゃん。事実でも時に言うてええ時とあかん時があるんやで」
日葵が頭を抱えてうつぶせになってしまった。めちゃくちゃ恥ずかしかったんだろう。両親の部屋、縄って聞いただけでそういうプレイをしてると勘違いしちゃったんだから。でも俺たちくらいの年齢になると普通そういう発想になるし、そういう発想してしまうような話の流れだったから仕方ないと思うけどな。普通だよ普通。しかも日葵がそういう発想したっていうのが可愛すぎるからむしろいいことだ。恥ずかしいことじゃない。でも恥ずかしがってくれると可愛いから恥ずかしいことだと思っておいてほしい。
「でも私うまく縛れないよ?」
「仕方ないわね。私が縛ってあげる。結構得意なのよ」
「なんで得意なんだお前」
「シミュレーションしてたの」
「犯罪者がおるな」
「優しくしてね……?」
「まずい、恭弥が興味津々だ」
「よくも悪くも性に対してまっすぐすぎんねん全員」
性とかそういうのじゃない。もし万が一を考えて縛ってもらうだけで、別に俺は縛られて興奮するタイプでもないし、あわよくば縛られている時に誘惑されてお預けされたいタイプの変態でもない。ちなみに今俺はほぼ自白している。
冗談は置いといて、俺と千里が両親の部屋で寝るってことでいいだろう。男はそういうのあんまり気にしない、というか俺と千里がそういうのを気にしないタイプだし、両親がそういうことをしているっていう事実はそりゃちょっと変な感じはするけど、男と女だから仕方ないって思えるし。薫はめちゃくちゃ嫌だろうけどな。
「じゃあ薫の部屋に日葵と薫、俺の部屋に光莉と春乃でいいだろ。俺と千里は両親の寝室な」
「じゃあ次はお風呂入る順番を決めましょうでも今日人数多いから何人かは一緒に入った方がいいわねさぁ日葵行きましょう」
「え、あ、ちょっ、待って!」
「あまりにも早業……」
「なるほど、僕もあぁすればいいのか」
「薫はお兄ちゃんと一緒に入ろうな」
「やだ。春乃さんと入る」
「お、一緒に入ってくれるん? やった!」
じゃあ俺と千里が一緒に入るか。と言ってからおかしいことに気づき、気が動転した俺たちはお互いを殴った。なんでだ。