【本編完結】ただ、幼馴染とえっちがしたい   作:酉柄レイム

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第93話 祭りの終わり

「今思ったんだけど、花火より私の方が断然美しくない?」

「今思ったんだけど、花火より私の方が断然美しくない? って聞こえたぞ。正気か?」

「光莉はどっちかっていうと可愛いもんねー」

「そういうことちゃうんやでー」

 

 首を傾げる日葵に、春乃が優しく説明する。日葵は時々天然ぶちかますから可愛くて油断ならない。ただでさえ可愛いのに天然なんて必殺すぎる。俺を何回殺せば気が済むんだ?

 

 花火が終わって。俺たちは展望台から降りたところで千里と薫を待っていた。二人に気を遣って先に帰ろうかと思ったが、千里と薫から合流しようという連絡がきたのでこうして待っている。なるほどな。清い交際をアピールしておいて油断させようっていう手口か。日葵は騙せても俺は騙せないぜ。ふふふ。

 

「ねぇ、薫ちゃんが顔真っ赤にして千里に寄りかかりながら現れたらどうする?」

「ははは」

「そんなことしたら腕と脚を引きちぎって位置を逆にして、この世に生まれたことを懺悔させながら水責めする? エグいこと考えるわねあんた」

「今そんなに喋っとったか?」

 

 正しく俺の気持ちを理解してくれた光莉と握手し、「いきなり手握るな!」とブチギレられて殴り飛ばされる。前肩組んでもなんともなかったじゃん。なんで? 汗かいてるから? 別に気にしないのに。女の子って汗かいてても不思議と臭くないんだよな。うそ。人による。ちなみに千里はエロくなる。

 

「織部くんなら大丈夫だよ。普段えっちだけど、ちゃんと女の子だから」

「ちゃんと女の子大事にするとかやなくて、千里が女の子やから大丈夫ってことか。なるほどな?」

「日葵ってナチュラルに千里のこと女の子扱いするわよね」

「まぁわかるけどな。あんなに可愛くて男って方が信じらんねぇし」

 

 でも男なんだよなぁ。あれが男って、俺千里の千里見るまで信じられなかったし。あいつもうダメだろ。何人の性癖歪めれば気が済むんだ? 教師なんかもう完全な被害者だろ。女子生徒だけじゃなくて千里にも気をつけないと懲戒免職の可能性があるんだから。あれ? もしかして千里が一番向いてるのって詐欺師?

 

「てか、遅い」

「人が多いから仕方ないよ。でもちょっと心配かも……」

「千里はともかく薫ちゃんが心配ね」

「むしろ薫ちゃんはしっかりしてるから心配いらんけど、千里が心配やろ。あんな弱い生き物見たことないで」

 

 それだけは言ってやらないでくれって思っていたその時、「うぅ……ぐすんっ、ひっ」と泣いている千里と、その千里の手を引く薫の姿が見えた。お前さ……。

 

「遅れてすみません」

「多分聞かない方がいいんだろうけど、何があったの?」

「私がトイレ行ってる間に千里ちゃんがナンパされて、無理やり連れて行かれそうになったところを私に助けられて、安心と情けなさで泣いてる」

「いや、千里。お前悪くねぇって。な? ナンパしてくるやつが悪いんだよ」

「うぅ、いいよ。僕は男の皮を被ったメスなんだ」

「は? 剥き出しのメスよあんた。何勘違いしてるの?」

「やめたれや! 友だちに刺さったナイフ目掛けてハンマー振り下ろしてどうすんねん!」

 

 千里が大泣きし始めた。あーあ。お前が大泣きしたら周りの男女がお前の涙をぺろぺろしたくなるからやめろっていつも言ってるのに。仕方ないから、俺が千里を抱きしめて周りから隠す。ついでに頭を撫でて慰めると、俺の服をきゅっと握って少し落ち着き始めた。はいメス。

 薫が慰めるのが一番いい、なんてことはない。今千里は好きな女の子に助けられて情けなくて号泣してる。あと自分のメス加減に絶望してるから、女の子に慰められると余計惨めになる。俺が慰めてもどっちにしろ惨めだしメスなんだけどな。

 

「よしよし。可愛いなぁお前は間違えた。千里にも男らしいところあるって」

「裏切ったな」

「いや、だってさ。お前らこんなのに抱きつかれて泣かれて可愛いって言わない自信ある?」

「ない!」

「ないね」

「ないわな」

「あるわけないでしょ」

「きらいだ!!」

 

 俺から離れていこうとする千里の背中に「一人になったらまたナンパされるどころか攫われるぞ」と声をかけると、千里は「まぁ、僕が君たちを嫌いになるはずないんだけどね???」と周りを警戒しながら帰ってきた。あまりにもメスすぎて誇らしさすら感じる。

 

「あ、薫ちゃんが千里に嫌いって言われて泣きそうになってる!」

「ぐすん。ひどい、千里ちゃん……」

「演技だね。薫ちゃんがこの程度で傷つくはずがない」

「お前恥ずかしげもなくそういうこと言えるの、素直にすげぇと思うよ」

「でしょ? もっと褒めてもいいんだよ」

「貶しとんねんアホ。思い上がんなやクソメスが」

「やめときなさい春乃。こいつは罵倒すれば罵倒するほど悦ぶタイプのクズよ。ちなみに私もだから日葵、ちょっと罵倒お願い」

「光莉ってどうしてそんななの?」

「そういうタイプの罵倒はやめてくれない?」

 

 日葵、さっきなんか自分はまともだ、みたいなツラしてたけどお前もちゃんとまともじゃないって。人に対して「どうしてそんななの?」って言えるやつがまともなわけがない。俺たちと一緒にいると比較的まともに見えるだけであって、他の人といたら……いや、日葵は他の人に合わせることができる社会適合者だから、俺たちみたいな我が強い社会不適合者とは違うか。ちなみにここでの社会不適合者は俺と千里と光莉を指す。

 

「もう。演技だけど、冗談でもきらいとか言っちゃだめ。嘘ってわかっててもちょっと傷つくんだから」

「薫をちょっと傷つけた罪として島流しに処そうと思います」

「異議なし」

「ちょっと傷つけただけでこの仕打ち……?」

「女の子はちょっとでも傷つけたらだめなんだぞ」

「男としての正論ぶつけてくるのはやめてくれ」

「でも千里はメスやからええんちゃう?」

「これから二度と女の子を傷つけないと誓います!」

「ちなみに傷つけなくてもあんたはメスよ。残念だったわね」

 

 身も蓋もないことを言ってやるな。千里がどこで何をしようがどこで何を言おうがメスに変わりはないけど、本人にその事実を突きつけてやるのはあまりにもかわいそうすぎる。こいつだって男になろうと努力してるんだ。無駄な努力だけど。こいつマジで何やってんだろうな。無駄っていう言葉の意味知らねぇのか?

 

 ここでだらだらしていても仕方ない、と言うにはだらだらしすぎたがこれ以上だらだらしたらここで夜を明かしそうになるので、これ以上だらだらしないために「これ以上だらだらしてても仕方ないから行こうぜ」と言うと、光莉が「確かに、これ以上だらだらしてても仕方ないわね」と返してくれた。これ以上だらだらこれ以上だらだらうるせぇよテメェ。

 

「千里と薫は何やってたんだ?」

「それは僕がナンパされたことをいじってる?」

「普通に屋台の話だよ。被害妄想甚だしいな」

「君たちがいじってくるから……えっと、蜂の巣の西区」

「あれ西区あったんだ……」

 

 屋台がどういうシステムで設営できるようになるかは知らないけど、申請とか出さねぇのかな? もし申請、許可制のシステムだとしたら、蜂の巣の東区と西区を誰かが許可したってことになる。もしかしたら『面白そうだからオッケー』っていう俺たちみたいなやつがいるかもしれない。俺が許可出す側なら絶対許可出してるし。

 

「結構おいしかったよ。蜂の巣初めて食べたけど」

「あれ本当に蜂の巣出てくるんだ……。うーん、食べてみたらよかったかなぁ」

「店主が完全に狂ってたからやめといて正解だろ」

「そんなに狂ってたの?」

「話が全く通じない、年を重ねた上にイケメンでもなんでもない俺を想像してくれ」

「悪やん」

 

 俺もそう思う。要するに、会話能力がないどころか話しかけても意味の分からないことを喋って恐怖を植え付ける中年。意味の分からないことを喋って恐怖を植え付けるまでは俺もやるが、俺はイケメンだしスタイルいいし頭もいいし会話はできるから許されているところもある。俺も善か悪かで聞かれたら圧倒的に悪だろうけど。

 

「でも恭弥なら蜂の巣の屋台出してそうだよね。営業というか、集客も上手だろうから売り上げもありそう」

「去年の文化祭のときすごかったもんなぁ。見た目がええのもあるけど、千里使ってじゃんじゃん人集めとったし」

「あれは千里を使った漁だから、俺の手柄はまったくない」

「織部くん可愛かったねー。薫ちゃんも見たことあったっけ」

「ある。あれは正直女の子として自信無くすレベルで可愛かった」

「おい。僕は今男としての自信を無くしてるところなんだが?」

「まだ自信あったの? 図々しいわね」

 

 お前ら、もしかして千里のことが嫌いなのか……? そうならそうだと言ってやってくれ。千里があまりにもかわいそうだ。嘘。俺たちに言われる分には本気で傷つくことはないはずだから別にいいだろう。なんかさっきすごい泣いてた気がするし、今も口をきゅって閉じてプルプル震えてるけど、これはパフォーマンスだ。本気で傷ついてはいない。多分。きっと。

 

「これからどうする? そのまま帰るなら送ってくけど」

「そう? じゃあ死んでもらおうかしら。あ。お願いしようかしら」

「お前、俺に対して死んでもらうとか殺すとか言いすぎてクセになってんじゃねぇか」

「あ、言ってるとこ見慣れ過ぎて今の別になんもおかしないって思ってたわ」

「俺そのうち無実の罪で殺されんじゃね?」

「罪はあるでしょ」

 

 それは言わない約束でしょ。

 

「千里は絶対一人で帰しちゃだめだから、絶対送ってくぞ」

「お祭りの夜ってテンション上がった人いっぱいおるからなぁ」

「私は殴り倒して、春乃はアスリート並みの身体能力で逃げ切れるけど、日葵と薫ちゃんと特に千里が危ないわね。忌々しいことに日葵と薫ちゃんは恭弥がいるから大丈夫でしょうけど」

「忌々しいことに?」

 

 そりゃ光莉からすりゃ忌々しいだろうけどさ。むしろ感謝してほしい。光莉が送れないから俺が送るんだ。俺がいなきゃ光莉が送ることになっていて、結果光莉は一人で帰ることになる。いくら訳の分からない強さがあるからと言って、夜女の子が一人で歩くのは危険すぎる。なんだかんだナンパされてたし、光莉を狙う男なんていっぱいいるからな。

 

「そんじゃ、送ってくか。日葵、薫。帰るの遅くなるけどいいか?」

「大丈夫! 恭弥と薫ちゃんがいるし!」

「大丈夫。日葵ねーさんがいるし」

「大丈夫。薫ちゃんがいるし」

「おいメス。まさかまた俺の家に泊まろうとしてないよな?」

「だめ?」

「『もう布団用意してるぞ』だってさ。ようこそ」

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