「なんか俺知らない間に連行されたんだけど、これ普通に誘拐じゃね?」
「私と一緒におりたくないん?」
「いたいから誘拐じゃないな」
「んふふ」
なんだんふふって可愛いなお前。いくらでも誘拐してくれ。いやでも一緒にいたいから誘拐じゃない。でも今考えたら小さい女の子が他の男の人と一緒にいたいって言ってても、連れて帰ったら誘拐になるよな? じゃあ誘拐じゃね?
「しっかし、当たり前のようにルミナスにきたものの、日葵の誕生日プレゼントどうするか」
「まだ決めてへんかったんが意外やわ。恭弥くんのことやから数年前から考えてるもんやと思ってた」
「薫のは考えてるぞ」
「考えた結果があれやったん?」
「あれやったん? とはなんだ。俺の考え抜いた一品だぞ」
「恭弥くんのおやすみボイス入ったレコーダーが? あれキショかったで」
「おい。本当のことでもキショいとか言うのはやめろ」
シンプルに傷つくだろ。
いやでも、喜んでもらえると思ったのになぁ。薫はドン引きして「きも」って言ってたし、日葵と光莉と春乃は欲しそうにしてたし、千里は「僕も作ろうかな……」って言ってたし。千里は作ったらぜひ俺にくれ。
というか、欲しそうにしてたのにキショかったって酷くね? 春乃は妹にそれを送ることがキショいって言ったんだろうけど、それでも酷い。自分のことを棚に上げてる。それは人間としてどうなんだ?
「はぁ、春乃がキショいって言わなかったら俺のおやすみボイスレコーダーあげようと思ったのになぁ」
「直接言ってもらいたいからいらん」
「うぃっ」
照れてしまった俺は自身をグーで殴り、平静を取り戻す。直接言うってシチュエーションすごくね? それって同じベッドじゃね? 同じベッドでおやすみって言ってね? イケメンじゃね? ……なんか春乃と一緒のベッドに入ったら俺が春乃から「おやすみ」ってイケメンボイスとイケメンフェイスで言われる気がする。春乃イケメンすぎだろ。俺にイケメン度寄越せ。
「恭弥くんってさ。初心やから可愛えよな。いっつもどうしようもないことばっか言うてるしえっちやのに、いざ攻められたらたじたじやん」
「は? 俺がいつ攻められてたじたじになったんだ? 言いがかりはやめてくれよ」
「ほい」
「ひぎぃ」
春乃が腕をとってきた。そのまま腕を抱かれて、少し下から見上げられる。なんだこの可愛いイケメンは。俺が女の子だったら絶対今落ちてたぞ。春乃は女の子だけど、女の子の方が春乃のことを好きになりやすそうだ。同性だからこそ伝わりやすいイケメンさもあるし。
「春乃。付き合ってない男女がこの距離感はいけません!」
「光莉」
「おいおい。おいおいおい」
「私の勝ち」
「待って。今対抗策を考えてるから」
「無理やろ。恭弥くんと光莉の距離感ってバグってるし」
そんなつもりはないんだけど……。いや、光莉はさ、ほら。俺と似てるところあるし、なんか近しい感じがするんだよな。近くにいないと落ち着かないとまではいかないけど、めちゃくちゃ近くにいて違和感ないくらいには。でも抱きしめてたりしてるわけじゃないからいいと思うんだ。よくないか? よくないな。いやいいな。
「そういや光莉はプレゼント決めたんかな? 光莉のことやから決めてそうやけど」
「あぁ。あいつ水着姿で自分にリボン巻いて『さぁ、どうする?』って言うつもりだってよ」
「うわ、ほんまに? 相変わらず頭おかしいな」
「まさか先にやられるとは」
「お前もか」
いいと思ったのになぁ。いい体した俺が水着姿にリボン巻いてたら、老若男女問わず全員が俺を欲しがることだろう。ちなみに千里はそれを素の状態でできる。あいつはただ服を着て歩くだけで老若男女が欲しがる。ほんとあいつの性格が終わっててよかった。これで聖人だったらあいつのことを好きになっていたかもしれない。
まぁ今の性格でも好きなんだけどね? 友情的な意味で。
「春乃はプレゼント考えてるのか?」
「というかもう買ってるで。あとからドタバタすんの嫌やし」
「えら。ちなみに何かって聞いてもいい?」
「旅行先で渡すことになるやろうから、あんまりかさばるもんあげんのもあれかと思って」
「何渡すんだ?」
「水着。私プロデュースのかっわいいやつ」
「おいおい。紐はやめとけって」
「そうよ。興奮するじゃない」
「紐ちゃうし、いつのまにおってん光莉」
「さっきからいたぞ」
「春乃は私の気配を感じられないの?」
「クズにしかわからんのやろ」
俺と光莉はお互い目を合わせて、肩を竦めた。やれやれ、俺たちがクズだって? 大したお目目をお持ちだことで。大正解。めちゃくちゃデカい花丸をあげよう。
光莉がくるっていうのはなんとなくわかる。光莉なら追いかけてくるだろうし、俺に対して無意識に殺気を放つようなやつだからな。これで気づかない方がおかしい。
でも、不思議なのは千里がいないことだ。千里と一緒に殺されていたはずなのに、なぜ千里はいないんだろうか。もしかして追い打ちしてきてからきた?
「千里はどうしたんだ?」
「春乃の汗どうこうって言ってたら、薫ちゃんに見つかった」
「あほやん」
「ざまぁみやがれ。これで薫に嫌われずに『わ、私の汗はどう?』って言われてたら俺立ち直れねぇよ……」
「勝手に想像して勝手に落ち込むなんてバカね」
だって、薫ってちょっと俺に似てやらしいところあるし。ただ俺と違って積極的だから、そういうこともありえる。こわい。薫が俺より早く大人の階段を上るんじゃないかって想像したら怖くて怖い。どれくらい怖いかって言うと怖いから怖くて怖すぎるほど怖い。
「……もう、そんなに落ち込まなくていいじゃない。はぁはぁ。私が慰めてあげましょうか?」
「こんなに欲望丸出しの醜い人間がおるんやな」
「サングラス?」
「それは見にくい」
「背の高い人の後ろの席の映画?」
「それは観にくい」
「合衆国に加盟した21番目の州?」
「それはイリノイ」
「あー! 今ちょっと笑った! 見てみて恭弥!」
「なんやその言い方。赤ちゃんか私は」
「なんでお前らイリノイが21番目って知ってるの?」
21って聞いて思い浮かぶのは光速のランニングバックしかないんだけど。絶対一生使わない知識じゃんそれ。いや、今使ったんだけど。まさか二人とも、こういうおふざけの流れがあるって予想して、お互いに勉強していた……? やるな。俺も負けていられない。でもこんなやりとりしてると他人に変な目で見られるから負けてていいや。ふぅ、やれやれだぜ。変人のお守りは疲れるな。
「何『ふぅ、やれやれだぜ。変人のお守りは疲れるな』みたいな顔してんのよ。あんたが変人筆頭でしょ?」
「俺の考えてることを一言一句当てれる時点でお前の方が変人だろ? は? 『私みたいな可愛くておっぱい大きい女の子が変人なわけないでしょ』だと? アホか。おっぱい大きい上に可愛いから変人に決まってるだろ。 え? 『正面から褒められるとちょっと照れる』? いや、やめろよお前。なんかこう、いつも通りおかしな行動だけしててくれると助かるというか……」
「なんか意思疎通できてるように見えるんやけど、もしかして今夏らしく怖い話してる?」
光莉の考えてることなら手に取るようにわかるから仕方ない。だって俺が言いそうなことを言えば大体当たるんだから。この世界がバトル漫画だとして、俺と光莉が戦えばお互いがお互いの行動の先を読んで決着がつかないかと思いきや、俺が光莉の純然たるパワーで嬲り殺されて終わりだ。無慈悲。
「や、そんなことより。日葵の誕生日プレゼント決めな。こんなんやっとったらいつまで経っても決められへんで?」
「んなこと言ったってさぁ。一軒家かマンションかのどっちかで悩んでるんだから仕方ないだろ?」
「確かに。何LDKかにもよるものね」
「待てや。悩むスケールがちゃうやろ」
「でもLDKは欲しいだろ」
「リビングとかダイニングとかキッチンとかを指してスケール言うとんちゃうねん! 家はなし!」
「島?」
「バカね。国よ」
「あぁー」
「殺す」
「まって! 俺たちほんとにふざけてないんです!」
「そうよ! ただ真面目に言ってるだけなの!」
なんで殺されなきゃいけないんだ! 俺たちはただ真面目に日葵のことを想ってプレゼントを考えてるだけなのに! ただちょっと愛情表現が重たいだけで、いやむしろ日葵に対してなら軽すぎるくらいだけど一般と比べると重たいってだけだ! 決してふざけてないし、財力がちょっと心配だけどなんとかなるかって思ってるくらいで!
「大体、そんなん誕生日にもらって素直に喜べる人間おるわけないやろ」
「私はめちゃくちゃ喜ぶわよ」
「クズアホゴミカスのいうことは聞いてへんねん」
「え、それってもしかして私のこと?」
「ちゃうわ。飴ちゃんやるから黙っとけ」
「わーい!」
飴に夢中になったクズアホゴミカスを放っておいて、真剣にプレゼントを考えることにした。できれば手元に残るようなものにしたいけど、迷惑じゃないかなとか。食べ物あげたらなんか気持ち悪いって思われないかなとか。石油とか喜ぶかなとか。でもシンプルに石油あげても喜ばないだろうから掘り当てようかなとか。
そう考えているうちに、一つの名案が思い浮かんだ。これなら、俺が緊張するってことと他の色んな懸念事項以外は何の問題もない!
「あ、名案が思い浮かんだって顔してる。どうしたの?」
「名案が思い浮かんだ!」
「へぇ、名案が思い浮かんだんや」
「あぁ、名案が思い浮かんだ!」
「中身のある会話しましょうよ」
「誰が言うとんねんハゲ」
「ねぇ。私に対しての当たり強くない?」
ごめんな、と言って春乃が光莉の頭をなでると、「むふー」と言って満足気になっていた。チョロ。