ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
後、ちゃんとここの神は神話してます。神秘の薄れた現代から逃れる為に隠れて、こっちの世界を創ったのがいたから来たみたいな。
「はあ…!はあ…!はあ…はあ…!クソッ、キリがない!!」
「うぎゃああああああっ!」
「っよくも仲間を!」
「あなた達!組を作るのを怠らないで!」
人が叫ぶ。女神が叫ぶ。眼の前の大蠍とその子供は獰猛に吼える。
ここは『エルソスの遺跡』。現在、アルテミス・ファミリアは眼前に狭る大蠍共を見据える。
――大蠍の名は、アンタレス。恐るべき脅威、嫌悪すべき災禍、狂しい程の憎悪。これら全てを併せ持つ魔物。
かつてアルテミスの眷属である古い精霊が封印していた存在。けれどその封印は解かれ、外界へと出ようとしていた。
それはさせまいとするのがアルテミス・ファミリアである。彼ら彼女らは全身全霊を用いてアンタレスに対抗する。
けれど、アンタレスはものともせずに蹂躙していく。
数多くの冒険者がいたが、それもまともに立っているのは後何人だろうか。辛うじて息がある者もいれば既に事切れた者もいた。
けれども未だに生きている者の方が多いのは神が憐れんだか、或いは、狙いが絞られているからか。
「ウオオオオオオォォォォッッッ!」
アンタレスを囲む冒険者は次々に己の獲物を突き立てるが、意に介した様子もなく吹き飛ばされ、戦線へ復帰できないほどの怪我を負う。
「アルテミス様!オラリオに救援を求めましょう!」
「くっ…!そうするしかないみたいね。みんな、撤退よ!今の私達では勝てない!」
「了かッガハァッ!」
迫るアンタレスに敗れていく彼ら。しかしなんとしてでも主神を逃がそうと決死の殿を務める。
しかし小蠍もいかんせん数が多い。単体ならともかく、無尽蔵に増え続けるそれらに注意を払わねばならず、救助に駆けるのが遅れているのが現状だ。
そんな冒険者たちを放り、アンタレスは冒険者達の包囲の穴を突き破り、女神アルテミスへと襲いかかる。
「アルテミス様ぁぁぁっ!」
「っしまった!?」
今、アルテミスには護衛は数えるほどしかいない。アルテミスも戦えるとはいえ、小蠍ならばともかく、この規格外の大蠍に通じるとはとても思えなかった。
「アルテミス様!逃げて下さい!!」
「うおぉぉぉ!アルテミス様を守れぇぇ!」
団員が次々と駆けつけ、またも包囲は為されるが、元の木阿弥。弱った冒険者は虫の様に吹き飛ばされる。殺す気が無いのか、はたまた障害とすら見なしていないのか知らないが追撃は無く、奇跡的に命を繋いでいた。
そして駆けているアルテミスを追うアンタレス。
引き剥がされた団員は小蠍に包囲され、追いつけない。
「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
(今私が死んだら、全員の
故に走る。走る。走る。――走る。――走る。――走る。――走る。――走る。――走る。――走る。――走る。
そして、とうとう追いつかれた。
アンタレスは待ちきれないとばかりに大口を開けてアルテミスを捕食せんとし――
チョロチョロチョロチョロチョロ……
(((アンタレスに雨が降っている…?)))
この瞬間、皆がそう思った。その雨がアンタレスの口に入ると、蠍は堪らずというか、反射的にというか、後ろへ下がる。
「はぁ…またこれかよ。何で俺は冠位を捨てたのに冠位で呼ばれてんだ?記憶も地続きだしよ〜。つうか、やっぱり催すのはおかしいだろ。よりにもよって冠位が催すのかー、そうかー。……はぁ……俺が何したって言うんだ…。あ、結構やらかしてたな」
確かに、人の声が聞こえた。
――馬鹿な、居るはずがない。何故ならば、この場所の封印がいかに危険かは知り合いの神にも伝えており、ここは立入禁止にしているからだ。
しかし、見上げれば吹き抜けの上、人影が確かに見える。
「なっ!?人!?」
「どういう事だ!?」
それに気付いた冒険者も声をあげる。それは警告でもあり、逃げてほしいという願望だった。
アルテミスも、これが武装した大勢の冒険者ならば増援を喜ぶところだが、数は一人。部外者を巻き添えにする訳にはいかない。
「っそこの貴方!逃げなさい!今すぐに!出来ればオラリオへ伝達を!アルテミス・ファミリアは全滅したと!ヘルメス・ファミリアに頼む!」
そう言い切るか言い切らないかの時、アンタレスは苦味を与えた人物へ怒りを顕にして突撃する。
「あぁっ!」
「駄目だぁーっ!」
この場にいる全員が予想していた。あの見知らぬ人物は殺されてしまうと。それは団員だけでなくアルテミスやアンタレスすら、そう信じて疑わなかった。
ドグンッ!
心臓へ直接響いたかの様な轟音。見慣れたはずの死がやけに新鮮味を帯びて訪れる。――ああ、守れなかった。そんな脱力感が襲ってきていた。しかし――
――何故、アンタレスは動かない?
ファミリアが絶望に暮れる中、あまりにも長い硬直に違和感を覚える。
――こちらには、向かってこないのか?
「うおおおぉぉっっ!?俺、蠍苦手なんだけどっ!」
その場に似つかわしくない陽気な声が聞こえてきた。
見れば、その男はアンタレスを受け止めているではないか。
ざわざわとどよめきだす。まさかこんな事になるなどと想定もしていなかったのだ。
「オラァ!」
その手に持った棍棒で殴りつけると、アンタレスは宙を舞い、壁へと激突する。
「嘘だろっ!?」
「あの魔物をいとも容易く!?」
団員達の困惑の視線が刺さる中、アルテミスはその人物を見つめていた。
「まったく、サソリは危ないからな…。さて、そこのお嬢さん。今アルテミスって聞こえた気がしたがそれはどういう………あれ、お前…アルテミス?」
「ダーリン!?」
またもや、疑問符の連続。
――おい、今アルテミス様がダーリンって。――確かにそう聞こえた。――どういう事だ?
「おいおい、こんなとこで何を……何だその姿?それに神核自体はまだしも、この神気……神性を封印でもしてんのか?」
「そ、それよりダーリン、まだアンタレスが…」
殴り飛ばされた事に困惑し、アンタレスは生まれて初めて最大限に警戒する。
「天蠍だあ?………あれが?マジで?えー、嘘だろ。だってアイツ如何にもな魔性じゃん。俺が知ってる天蠍ってのはあんな禍々しい奴じゃないんだが」
「それはギリシャの天蠍!私が言っているのはこの世界のアンタレス!もう、ダーリンったらよく考えもしないで…」
「え、今の俺が悪いの?むしろ俺ギリシャの天蠍しか知らないんだけど」
この危機的状況にも関わらず呑気に話す二人に一瞬呆気に取られるアルテミス・ファミリアのつれづれ。
それに、いつでも厳格な姿勢を崩さない主神のあの態度への戸惑いが脳内を駆け巡る。
「オオオオオオオォォォォッッ!!!!」
痺れを切らしたアンタレスは立ち止まる二人へ目掛けて数いる小蠍を指し向ける。どうやら自分を吹き飛ばした男を最優先に排除するべき障害だと判断した様だ。
「おい、アンタ!アルテミス様を連れて逃げてくれ!そいつ等は進化しながら無限に増殖し続ける!いずれはジリ貧になってしまう!」
ある冒険者が忠告する。それは並の…いや、超一流の冒険者であっても絶望的な話だった。
アンタレスは確かに強い。それこそ第一級冒険者が束になってもとても敵わないだろう。そしてそれが産み出す小蠍もまた厄介なものであった。
最初の方は、レベル1でも勝てる程度の強さだった。しかし、時が経つに連れ、アンタレスに近づくに連れ、その強さは格段に向上していった。
もしもこれが繰り返されたら?
そう、ダンジョンに比べて弱いモンスターの多い地上に、高レベルモンスターが大量出没することに違いない。
目下の脅威はアンタレス。アンタレスを倒したとて、将来的な脅威に小蠍はなり得る。
だからこそ、救援を頼んだのだ。
しかし、彼らは知らない。その男の名を――
「お願いダーリン!」
「おう!何がどうなってんのか分からねえし、色々と聞きたい事もあるが、愛する女にこうまで頼まれちゃあ、それに応えるのがイイ男ってなあ!」
「ウウオオオオオッ!!」
周囲を小蠍が取り巻き、行動を制限し、アンタレスのその巨大な尾が男目掛けて襲いかかる。
そんな時にも男は一歩も引かず、その眼で迫るアンタレスを見据える。
その逞しい豪腕は左手に握る弓を引き、その矢には恐ろしいほどの魔力が込められる。
「ただの蠍だったら、或いは今の霊基じゃなければ、もう少しはかかったかもな。いくぜ――」
限界まで引き絞られたそれは正に絶技。只人が永久の時を掛けても決して辿り着けぬ極地が一つ。
「
その輝きは、一条の幻想。尊き奇跡。命の炎にして、嘗ての祈り。人間の幻想を骨子に創り上げられた貴き幻想。彼らが生前に築き上げた伝説の象徴であり、物質化した奇跡である。
放たれた神域の矢は凄まじい輝きを纏い、アンタレスに直撃する。アンタレスは踏みとどまり、一瞬耐えたかのように見えたが…
パキッ…ピキピキッ…
「オ、オオオオオオオオッッッッ!!!!??」
アンタレスは、自らの装甲が削られていく事に驚愕を隠し得ない。いや、既にそんな余裕は無いだろう。
「オオオオオッッ!!!」
それはアンタレスの頭から尾までを真正面から貫き通し、およそ三メートルにも余る風穴を開ける。
「おおっ!?」
「な、なんという……!」
その桁違いの威力にアルテミス・ファミリアの冒険者達は恐れを抱く。
「いえっ!まだ終わってません!小蠍が外に!!」
親玉を失ったからか、我先にと遺跡から逃げ出していく小蠍。今はまだ繁殖は出来ないが、しないとも限らない。
「いや、終わりだ」
そう呟くや否や、矢は曲がり、蔓延る小蠍を片っ端から粉砕していく。
「し、信じられない……」
この男が現れて、たった数分足らずで全滅してしまった。ここまでの事を為せるのはオラリオでも数えるほど…いや、もしかするとあの猛者すらも超えているかもしれない。
だが、その様な実力があれば見たことも聞いたこともないというのは有り得ない。
つまり、目の前の男はオラリオを何かしらの理由で追放されたか、闇派閥、犯罪に関わっている可能性もあるのだ。
「助力、感謝します。アルテミス様とは知り合いの様ですし、悪人の類では無いでしょう……。しかし、その様な強さでありながら私達は見たことがありません。礼も含め、名と所属を教えてはくれませんか?」
ファミリアの団長、レベル4である女性、『変鹿猟犬』たるアクタイオンが声を掛ける。
「アクタイオン。紹介します。この人は私のダーリン!」
それに返すのはアルテミス。逞しい腕に両腕を絡め、処女神として色々駄目な気もするが、本人が幸せそうなので多分問題無い。
今までのやり取りで分かってはいたが、とても同じ人物には見えない。ファミリア内での色恋沙汰を禁止した厳格な神とは似ても似つかない。表情も大分柔らかくなっている。
流した血と合わさり、目眩がしてくる。
「アルテミス、それじゃあ紹介になってないだろ……。あー、そこのアルテミスが言った通りに、一応恋仲って感じか?所属は無い」
その言葉一つに、オラリオ全土を驚愕させる程の情報が入っているとは思いもしていないだろう。
「コホン…それじゃ、改めまして紹介を。我が名はオリオン!人の身を超越した感じの狩人だ!」
アルテミスはスイーツ。はっきり分かんだね。
まあ、今まではオリオンと離れてたから、と言う事で。オリオンの影響でこうなったと考えてくれれば…。
このアルテミスはオリオン関係ではスイーツになります。
ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?
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文字数もテンポも丁度いい
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文字数はいいけどテンポが遅い
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文字数はいいけどテンポが早い
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テンポはいいけど文字数が多い
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テンポはいいけど文字数が少ない