ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
関係無いんですけどフェルズの詠唱載せときますね。
□ディア・パナケイア
【ピオスの蛇杖、ピオスの母光。治療の権能をもって交わり、全てを癒せ】
□ディア・オルフェウス
【未踏の領域よ、禁忌の壁よ。今日この日、我が身は天の法典に背く。ピオスの蛇杖、サルスの杯。治療の権能をもってしても届かざる汝の声よ、どうか待っていてほしい。王の審判、断罪の雷霆。神の摂理に逆らい焼きつくされるというのなら、自ら冥府へと赴こう。開け戒門、冥界の河を越えて。聞き入れよ、冥王よ。狂おしきこの冀求を。止まらぬ涙、散る慟哭。代償は既に支払った。光の道よ。定められた過去を生贄に、愚かな願望を照らしてほしい。嗚呼、私は振り返らない】
説明しよう!
パナケイアとはアスクレピオスの娘である癒しを司る女神である!
オルフェウスとは、嘗てハデスに自らの妻エウリディーケを蘇らせる様に冥界に単身突入したアルゴノーツの一員である!
サルスの盃とはアスクレピオスの娘であるヒュギエイアが持っている盃の事である!アスクレピオスの杖が医学のシンボルとされるのに対し、ヒュギエイアの杯は薬学のシンボルとして用いられる場合が多いのだ!
関係ないけど!
『うん、確かに魔力がSに到達しているよ』
昨日の夜に言われたその一言。それは自らの課題が達成したことを意味するもので、少年――ベル・クラネルは年相応に喜色いっぱいの顔を見せた。
『ほ、本当ですか!?書き間違いじゃなく!?』
『失礼な。キミは僕が簡単な読み書きも出来ないとでも思っているのかい?………間違いだったら、ここまで胃は痛くならないのさ』
何か言っていた様な気もするが、うまく聞き取れなかった。再度言うこともなかったので僕に伝えるべき内容では無かったのだろう。
それよりも今はイアソンの言う『いいもの』だ。
今いるここはダンジョン5層。あのミノタウロスを倒し、アイズさんと出会った思い出深い階層。人目につかない方が良いらしく、早朝―それこそまだ日も昇っていないような時間―に潜っていたのだ。
「あの…イアソン様。これって本当にダンジョンがいいんですか?僕まだ治ってないんですけど…」
「アホめ、だからこそだ。いつものセットは持ってきているだろ?」
目の前で飄々とした雰囲気を出す男は岩に腰掛けながら辺りを軽く見回している。
「…よし、ここらでいいか。ベル、今からお前の魔力を大幅に使う。気を張っておけよ?」
「は、はい」
イアソン様からそんな言葉を聞くのは初めての事だった。つまりは今回の事は結構に凄い事なのだろう。何がすごいかは分からないが、物語の英雄、それも数多の英雄を率いて旅をした船長からの忠告だ。
ごくりと唾を飲み込みいつでもマインド・ポーションが飲めるように折れていない方の手で構える。
「ではいくぞ――『
そう叫ぶと、目の前で強烈な光と共に僕の中の魔力がガクッと持っていかれるのが実感できる。思わず膝を着きそうになったがなんとか耐え、眼前の奇跡を見逃さないように目を見開く。
そこにはまるで大中小と並んだかの様な三つの影があった。
「――ハハハハハ!これが俺の栄光であり旅の結晶!こいつ等は正真正銘アルゴーの一員にして一人一人が名高き英雄!どうだベル!すごいだろう!ハハハハハ!!」
そのまま腕を組み高笑いするイアソン様。それはともかくとして、その言葉が本当なら、いや、感じられる気配や雰囲気は紛う事なくサーヴァントのものだ。いつもイアソン様を見ているからそこは分かっている。
「これが、英雄……!」
憧れの存在が目の前に居る。忘れもしない。何度も何度も読み返し、その都度心を踊らせた伝説の人。
筋肉が凄い人はもしかしてあのヘラクレスだったりするのだろうか。あの少女は?杖を持っているし魔法使い辺りだろうか。黒いフードとコートに嘴状のマスクをつけた人に至っては分からない。誰なんだろう?いや、待て待て僕。落ち着くんだ。目の前に居るのはどれも偉人。失礼の無い様に何か……!あ、自己紹介を…いや、挨拶しないと……。
「ぼっ、僕は僭越ながらイ、イアソン様にょマスターをさせてもらっているベル・クラネルと言いまひゅっ!」
「「………」」
……か、噛んだ……!!大事なとこなのに、あぁ〜!恥ずかしい!!穴があったら入りたい!
「■■■■■◼◼◼ーーー!!」
「うひぃっ!?」
「あの、イアソン様のマスターさん。えと…ベルさんでいいんでしょうか?初めまして。私はメディアです。サーヴァントキャスター……でいいんてしょうか?こちらはヘラクレス。見かけは恐いですが、大丈夫ですよ!」
そう言って、メディアと名乗った彼女はヘラクレスと紹介された彼を諌めるように言い、それに少ししょぼんとする大男には微笑ましい空気が流れるが、僕の心はもうはち切れそうだった。
(いい匂い……じゃなくて!メディアって…あのコルキスの王女の…!?魔法のエキスパートでイアソンの……こ、ここ恋人の……!!というか、やっぱりあの男の人はヘラクレスで……あのヘラクレスが目の前に…!!)
多分オラリオに来て一番興奮していると思う。あ、汗とか身嗜みって大丈夫かな…!?
「………待て、何故アスクレピオスがいる。私はヘラクレスとメディアしか呼んだ覚えが無いんだが……」
イアソンは予想だにしない船員の登場に驚きの声を上げる。アスクレピオスはその問いに応える事なくズカズカとベルに歩み寄っていく。
「な、何ですか…?」
急に無言で見つめられたベルは居心地の悪さを感じながらも、失礼に当たらないようにじっと耐える。
「お前、これはいつ何時どんな原因でどうやって出来た」
「え?」
突如語りだしたのはアスクレピオス。視線は左肩の包帯に固定され、その淡々とした口調と感情の伺えない瞳――顔の殆どが隠されている事でより一層怪しさに磨きが掛かっている――で問うてくる様子は何処か狂気を感じさせる。
「ぐずぐずするな、さっさと答えろ。僕は医者で、お前は患者だ。医療の妨害をすると言うのなら……」
剣呑な雰囲気を醸し出し始めた人物に慌てて答える。それを聞いたアスクレピオスは包帯を解き、腫れている部分に触れる。
「……殴打によるただの骨折か。それにほぼ完治しかけている。つまらん」
医者として何という態度だ、とベルは思った。こういうのってもっと優しくしたり献身的だったりするっておじいちゃんは言ってたのに……。更には触っただけで処置もしない。
「あの、治療とかってしないんですか?」
ベルはいざ勇気を振り絞って問いかける。すると、気だるげそうに振り返ったアスクレピオスは「はあ…」とため息をついた。
「何を言っている?もう終わっているし、お前は健康体そのものだ。分かったら返事をしろ」
頭に疑問符を浮かべた直後、左肩の痛みが消えている事に気づく。見ると、痛々しく腫れていた痕跡などどこにもなく、触っても何の痛痒も無く動作に何の支障も無い。
目にも止まらぬ早業にベルは目を点にして驚愕するのであった。
―――…
それから少し話した後に、傷の癒えたベルはそのままダンジョンへ、イアソンは地上へと戻ったのだが……。
「………おい」
「何だ船長。用がないなら話しかけるな」
「なんでお前だけ残っている?普通あの面子で残るとしたらヘラクレスかメディアだろう!?」
そう、アスクレピオスは他の二人が還った後も居座り続けたのだ。
今は廃教会の修復を再び呼び直したメディアと共に行っており、外壁を完全に直した後に元から備え付けられていた祭壇などはアスクレピオスの手により粉々に粉砕された。
なぜお前がと告げるイアソンに見向きもせずに言う。
「何故残っているか…だと?医療の発展の為に決まっている。どうやらここは僕の知る世界ではない。つまり、僕も知らない傷病があるかもしれない。いや、あるに決まっている。僅かに環境が変わるだけで流行る病などは変わる。それが世界丸ごと違うとなるとより顕著に出るに決まっている。更には種族まで違うとなるとそれ以上にバリエーションが豊かになる。それにこちら特有のポーションも面白い。僕の知る手順ではないが効果の程はどうなんだ?素材もモンスターの物か?はたまた薬草か?ああ…知りたい事が多すぎる…新たなる医の扉……フフッ、楽しみだ」
目を爛々と輝かせて矢継ぎ早に語るアスクレピオスの姿はダンジョンで見せたベルへ見せたそれとは比べ物にならない程の狂気、いや、狂喜。
「クソッ…相変わらず医術にしか関心のない奴め…。まあいい、他の奴らに比べれば燃費も悪くない、医者は必要だしな。……だが、呼び出したのは俺だからな…?俺が死んだらお前も消える。健康診断は常に私を優先しろよ?その次はベルだ。分かってるな!?」
「うるさい。お前は兎も角としてマスターはパトロンの様なものだ。それに僕が患者を放っておくとでも言いたいのか」
少々の怒気を込められたその言葉にイアソンは息が詰まる。
「チッ…分かっているのなら他は何も言わん」
「イアソン様、それでは私はここで」
「ん、ああ。良くやってくれた」
アスクレピオスは変わらず教会の内部を己の陣地へと変えていく。新たな医術への切っ掛けを得た彼は不敵な笑みを浮かべ、神殿に相応しい魔術処置を施す。
だがしかし、この男の現界理由は正しいとは言えない。無論、先程述べた医術の発展も彼の本意だし、この世界の医術に興味があるのも嘘ではない。ただ、言っていないだけなのだ。それは直感によるもので、理由等無く、説明も出来ない。けれど彼は確信している。理由は分からないが、
(――待っていろ。この世界に根付く悪性腫瘍め。今度こそ根絶してやるぞ)
各々の反応
◆ベル・クラネルの場合
ベ「うわぁ……何が起こったんだろ?壁も直ってるし……何か気分がいいような」
イ「帰ったか」
ベ「イアソン様。これは一体」
イ「アスクレピオスがやった。ああいや、修復はメディアがやったが、この設備を整えたのはアスクレピオスだ。まあ…悪い様にはならんだろう。あんな奴だが医療にかける思いは本物だ。怪我をした時はヤツに言え。下手に抵抗しなきゃ何だかんだ言いながらも治療はしてくれるさ」
ベ「って事は回復ポーションに使う費用が……」
ナ「……嫌な予感がする」
◆ヘスティアの場合
ヘ「たっだい…えぇ…?凄い綺麗になってる。あぁっ、祭壇が!…いや、そこはいい。良くないけど今はいい。中に入って分かったぞ…。神殿クラスの領域に……何で神性の気配が……」
イ「戻ったか」
ヘ「イ、イアソン君。これは…?いや、やっぱりいい。これ以上聞きたくない!」
ア「ヘスティア…。ヘスティアか。アテナ、アルテミスに並ぶ処女神にして不滅を司る神…。そしてゼウスの姉であり僕の婆さんか」
ヘ「きっ、君は!?というか、婆さんだって!?」
ア「ッフフ……婆さんと呼ぶのを辞めてほしければ、この薬にアンタの力をだな…」
ヘ「むっ、無理無理!今の僕たちは力を制限されてるんだ!」
ア「チッ…なら血でもいい。それで完璧には届かずとも限りなく近い蘇生薬が…!!」
ヘ「アアァァーーッ!聞こえないーーっ!!蘇生薬なんて何も聞こえないぞ僕はーーー!!!」
ア「さあ、早くしろ。医療の発展がかかっているんだ」
ヘ「待って!!近い近い恐い恐い!!ベル君助けてーーーーっっ!!」
《追記》
このヘスティアはちゃんと神回からの帰りです
ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?
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文字数もテンポも丁度いい
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文字数はいいけどテンポが遅い
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文字数はいいけどテンポが早い
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テンポはいいけど文字数が多い
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テンポはいいけど文字数が少ない