ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
ちょっと遅れたけど許して。何でもするから!(何でもするとは言ってない)
お詫びになるかは分かりませんが、いつもよりほんのちょっと長いです。
ガラテアちゃんかわいい……かわいくない?
◆◆◆
この2日間は様々な事があった。イアソンによる英霊召喚。ヘスティアの土下座。アスクレピオスのアスクレピオスによる医術の発展の為のダンジョン探索。ヘスティアの土下座。アルゴノーツの武器指南。ヘスティアの土下座。そして武器の作製開始等々…。
神会から三日。迷宮都市オラリオは今や祭りムードに染め上げられていた。
オラリオの治安を担う大規模派閥『ガネーシャ・ファミリア』主催の『
そしてこの日、ベル・クラネルは普段通りにダンジョンへ向かおうとしていたのだが、ある頼まれごとを引き受けた。
「シルさん、今頃財布が無くて困ってるだろうな」
僕が溢したその言葉に対する反応はない。それもその筈、アスクレピオスさんはそもそも祭りに興味が無く、イアソン様は財布の件を引き受けたら嫌そうな顔をして別行動になってしまった。やっぱりこういう事は相談した方が良かったかな…?まあ相談しても同じ結果になるだろうけど……。
「活気がすごい…」
僕の育った村はお世辞にも栄えていたとは言えないが、それでも今のオラリオの熱気には思わず飲み込まれてしまいそうだ。様々な色の旗が至るところから垂れ下がり、露天は増え人々の喧騒すらもこの街の一部となっているのだろう。
この中から探すのは骨が折れそうだけど、引き受けた以上は達成しなければ男が廃るって奴だろう
あっ、いい事を考えた。この人ごみの中から探すのはいくらなんでも時間が掛かる。それに背の低い僕では道行く人達に阻まれて見渡すことが出来ない。なら屋根から探しちゃえばいいんだ。
思い立ったが吉日、すぐに近くの家をステイタスに任せてよじ登り周囲を見渡す。
そしてあらゆる方位を見渡し、この付近にはいない事を確認した瞬間
「……ッッ!??」
―ゾクリ。まるで脊髄に灼けた鉄でもねじ込まれたかのような不思議でとても不快な感覚。実際にそんな訳は無いのだが、思わず背を確認して安堵する。肝が冷えた、とでも言うのだろう。今感じた何かは僕なんかでは計り知れないような高次元的な何かだと頭ではなく心で理解出来た。
流れる冷や汗すらも気にならず、咄嗟に出処を探ってみるもののそれ以降は何の反応も無い。周囲の人もいつもどおりで、何かを感じ取った素振りすらない。
(今のは…何だったんだろう…?)
「おい坊主!さっさと降りろ!いくら祭りとはいえ屋根は登っていい場所じゃあ無いはずだぞ!」
「わわっ、すみません今降りまーす!」
硬直していた僕に投げかけられた言葉に慌てて下に降りる。先の感覚は気になったが、今の所何も起きていない。僕からすれば強い相手でも第一級冒険者とも言われる人達から見れば雑兵だなんて事は珍しくもない。
それよりも今はシルさんに財布を届けなきゃ。もしこれが何かの予兆なら一般人の彼女にも注意喚起くらいは出来るかも知れないし。
「すいませーん、ちょっと通らせて下さーい!」
ひしめく人の群れを縫って時には減速し時には足を止めながら真っ直ぐ円形闘技場へと進んでいく。
「……?」
また何処からか視線を感じる。シルさんと出会った時と同じだ。……少し嫌な感じがする。殺気とか害意とかではないけど、視られていたようだ。それもただ注目されるような事とは違う。そう、何かに執着している様な粘っこい視線。でも何でそんなものが僕に?
「何かあるのかな…?」
嫌な想像が沸々と湧き上がり、自然と体は固くなる。……万が一にもありえないとは思うけど、すぐに戦えるように身構えておこう。…いざとなったら令呪も考えなきゃいけないかも知れない。
◆◆◆
同時刻、大通りに面する喫茶店の二階より、メインストリートを見下ろす影があった。もっとも、見下ろすと言っても目を軽く下に向けただけだが…この圧倒的な『美』の体現者からすれば些細な違いだ。
深くフードを被ってなおその美しさに疑いを持つことすら許さないと言わんばかりの美貌。僅かに覗く唇は柔らかな弾力を感じさせ、一所作毎にその新雪の様なきめ細やかな白磁の肌が見え隠れする。
これが美に魅入られた神、フレイヤ。彼女はある神物との話し合いをしていたのだが――何かを見て一瞬だけ驚愕したような顔を見せると、先の話などどうでもいいという様に切り上げる。
「ごめんなさい、急用ができたわ」
「はあっ?」
「また今度会いましょう」
ぽかんとするもう一方の神――ロキを置いてフレイヤは店内を後にする。
「何や、アイツ。いきなり立ち上がって」
怪訝そうな顔を浮かべるロキは暫くフレイヤの去った階段を見つめていたが、そこで自らの護衛として連れてきた――フレイヤへの牽制も含めて一時的に謹慎を解除された――アイズ・ヴァレンシュタインの異変に気がつく。
「アイズ、どうした?何かあったん?……というか、汗すごいけど大丈夫か?」
「……え?」
ある方角をじっと眺めていたアイズはその言葉に初めて気づいたかの反応を返す。自身の体の異常に驚きつつも、その金色の瞳は見覚えのある白い髪を追っていた。
「なあ、ホンマ大丈夫か?風呂入る?近くに風呂屋あるんやけど、そこで汗でも流してきい。あ、なんならうちが一緒に入ってやっても……」
「結構です」
「それには反応するんか…」
「でもそんなクーデレな所が萌えー!!」と宣う主神の事は意識の外に追いやり、汗を流しに向かうのだった。
◆◆◆
それから少し経った頃。―ヘスティアがベルと合流し、警戒しながらもオラリオを練り歩く程には進み、ギルド職員がまだ異変を知覚出来ていない、丁度隙間の時間の事。
薄暗く湿った一室。否、一室というには少し広く、広場とでも言うべきか。天井から吊るされる魔石灯はただ一つを残して沈黙し、散乱する木箱や立て掛けてある武器などの道具が大小様々な影を作り出している。
一見して倉庫の様に見えるこの空間には幾つもの『檻』があった。中には鎖に繋がれたモンスターが閉じ込められており、荒い息遣いや金属の擦れる音が止むことなく続いている。
地下部に設けられた大部屋は、闘技場の舞台裏であり、今現在モンスターの控室となっている。
モンスター達はここから担当の者によってアリーナへ檻ごと運ばれ、中央フィールドにいる調教師と相まみえるのだ。
遠くから反響するような歓声が響く中、この地下室へと近づく者がいた。カツカツと鋭い足音と共に扉が開かれる。
「何をしている、次の演目が始まるぞ!?何故モンスターを上げない!」
【ガネーシャ・ファミリア】の女性構成員が激しい形相を作って飛び込む。彼女は祭りの裏方を取り仕切る班長で、出番が間近に迫っているにも関わらず運ばれないモンスターに業を煮やし、大急ぎで様子を見に来たのだ。
しかし、そんな彼女の言葉に答える者はいない。
「な……お、おいっ、どうした!?」
部屋の中に広がっていたのは悉く床にへたり込む仲間たちの姿であった。驚き戸惑いながらも駆け寄ると息はある。外傷も無い。そして彼らの肩を掴むと示し合わせたかのように動き出す。
「ぅ、おお…」
「あああ〜!うぁ、ぁ、ぁぁ…ああああぅぅぅ〜!」
「いぎぃぃぃぃぃぃっっ!うっ、おぁぇ……っっ」
しかしその様子は明らかに可笑しい。ある者は焦点の合わない瞳を宙へと向け、口からは呻き声を時折零すだけの人形と化し、またある者は赤子の様な言葉を発し、指を加えて泣いている。そして一人は口元から泡を吹き出し体中を掻きむしりながらバタバタと暴れるも何故か掻いた傷は端から癒えていく。
(何だ……これは…!??)
明らかな異常事態。やもすれば都市でも有数のガネーシャ・ファミリアに仇なす敵がいることになる。
そうして直ぐに来た道を戻ろうとして――気づく。
(待て、一…二…三人。運搬役は四人居た筈だ。後一人は何処に…?)
「グルルル……」
「っ!」
奇襲を仕掛けてきたのは見慣れないモンスター。迫りくる鉤爪を何とか躱し、その鼻面に強烈な蹴りを叩き込む。
「グギャァッ!?」
怯んだ隙にすぐさま駆け出し、壁際の武器を手に取る。動きは速く、繰り出される爪撃をなんとか凌ぐ。
「くっ…!…せえいっ!」
今まで防御に徹していた武器を突き刺し、曲芸師じみた動きで上へと飛び上がる。四足獣の様な姿であるそのモンスターは一瞬敵対者を見失い……ごろん、とその首が地に落ちる。
「……ふう、なんだったんだこいつは」
今まで見たことも無いようなモンスターだった。ひょっとしたらこのモンスターが団員達をあのようにした手段を持っていたのかも知れない。一撃も食らわずに良かった、と安堵したその時。
「――」
不意に、背後の空気が揺れた。いや、それは嘘だ。気配すら分からなかった。何故分かったかと言えば光に照らされた自分の影の後ろに新たな影が現れたからである。
「しぃーーーーー」
「――ぁ」
そっと、耳の側で囁かれる。恐ろしく整った美しい声音だった。さら、とその声の主であろう白髪が横に垂れる。しかし、それも今の彼女には聞こえない。頭が真っ白になり、何も考えられなくなる。意識の糸は容易く千切られ、声をあげる暇すら無い。
ばたり、と女性も先程の彼らの様にぺたん、と臀部から崩れ落ちる。
下手人はその女性には興味も示さず、数多並ぶ檻を吟味するように眺める。
モンスター達は興奮しているのか四方八方から吠え声を浴びせかける。しかし、下手人がその人外の美貌を見せた途端にけたたましい声はピタリと止んだ。
そして眺めていた視線はある一点で止まる。
そのモンスターは真っ白な体毛を全身に生やしていた。大柄な人型で、そのごつい体つきの中でも肩と腕の筋肉はより一層の隆起しており、銀色の毛が背を流れて尻尾の様に伸びている。
鉄格子は開かれ、野猿のモンスター『シルバーバック』が一歩外へと踏み出す。下手人はそれだけに留まらず、そのままいくつかの檻からモンスターを解き放っていく。数々のモンスターに囲まれたにも関わらず、モンスター達はいずれも警戒心すら抱かない、抱けない。
そっ…とシルバーバックの顔にその真白の掌を添え、何事かを語りかける。
『フッ…フーッ…!!フーッ!』
『うおおおおぉん!!…ぅべぇぇい!!』
『グアアアォォォォォォッッ!!』
モンスター達は一様にこの存在から与えられた命を実行せんと勇み、腹の底から咆哮を轟かせ地上目掛け走り出し、それを見届けた下手人は少しその場に留まっていたが、ふっ…とまるで霞のようにこの場を後にした。
「……」
その人物が姿を消した後、何も居ないはずの檻の中に一つの影があった。
この惨状を見た彼は檻の強度など知らぬと鉄格子を捻じ曲げ外へと飛び出す。倒れる四人の状態を軽く確認し、出口と思われる扉へと歩みだす。四人を抱えているとは思えないほどの速さで進み、まるで重さを感じさせないフットワークは見事なものだろう。
『ガァアアアアアアアッ!』
「これは…」
自らのいるこの場より上から聞こえる遠吠えに一瞬戸惑うが、直ぐに己が為すべき事を理解した。
「ハッ!」
地上へと繋がる階段を登り終え、彼は四人の構成員をその仲間らしき人の目につく所に下ろし、強い魔力反応のする所へと一目散に駆け出す。
漆黒のマントをたなびかせ、脚鎧特有の衝突音を響かせ混乱するオラリオの街並みを疾駆する。
銀色のフルフェイスメットに濃い紫の鎧を身に纏う男。その様相を伺うことは出来ないが、兜の奥で
わー、いったいだれなんだこのひとはー
次から戦闘あるよ!多分!
ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?
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文字数もテンポも丁度いい
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文字数はいいけどテンポが遅い
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文字数はいいけどテンポが早い
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テンポはいいけど文字数が多い
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テンポはいいけど文字数が少ない