ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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半月以上遅れてしまった……。
そ、その分ボリュームは増していますよ!?


小さな英雄

「っ――はぁああっ!!」

 

 裂帛の気合と共に放たれる銀閃、激しい火花を散らしながら雄鹿の剣の表面をなぞり、鉄臭い粉が宙を舞う。

 削れているは果たして、少年の武器の方だった。

 中層においても高い能力を持つソードスタッグの最大の武器、曲刀の様に反り返った双角はベル・クラネルの持つナイフを凌駕する性能を持っており、刃を交わすたびにナイフは消耗していく。

 未だその体に刃を届かせる事すら叶わず、ただただ守勢に回るベル。超至近距離からの突撃を石畳に身を投げ出すことで躱すと、その先には棍棒を掲げるトロルの姿。即座にスライディングでトロルの股を抜け、叩きつける圧倒的な暴力を回避する。

 

『ブルルル……!』

『アグァァァッ…』

「ハァ…ハァッ…!」

 

 一向に攻撃を当てられないからか、相当に苛ついた様子の二匹。目は血走り口腔から白い吐息を吐き出すものの、疲弊した様子は無い。

 対して、ベルは既に肩で息をしており、外傷こそ少ないものの万全かと言われれば、否だ。エンチャントにより能力を強化しているため、ある程度は張り合えるものの、それは精神力と体力を同時に消耗していることに他ならない。いくらスキルの効果によりそのどちらもが徐々に回復するとはいえ、今のこの状況では気休め程度にしかならないだろう。

 

(大丈夫だ…まだ避けられる)

 

 と、強がってはみるが、正直そんな余裕はない。持ってあと数分、それも一手間違えれば終わってしまうという制限付き。

 

 実際の所、ベルが相手に完全に劣っているとは言えないのだ。それこそ一対一に持ち込めば、その身に染み付いた技で張り合え、それでいて優位に立てる程の能力を持っている。

 しかし、この怪物たちはそれを許さない。どちらかが隙を晒せば、それを補うかのように割り込むこのだ。知性を持たない迷宮の、それも別種のモンスターの連携など聞いたこともない。だが、現に今そうとしか思えない現象が起こっている。

 最も、それは彼らにとっては意図していない層への命令だったのだが……結果として、ベル・クラネルは窮地に陥っていた。

 

『ブルォオオォォォッ!』

「うっ――!?」

 

 そして今、疲れからか構えるソードスタッグの真正面に位置してしまった。

 頭を深く下げ、その大きくしなる刀身を『突き』の形に転換した。浮く片脚を何とか制御し、渾身の突撃(チャージ)を逸らそうと刃を当て――

 

―パキッ

 

「――っあ」

 

――折れた。この怪物共に対抗する力が。半ばから折られたナイフの刀身は宙へ跳ね、ベル・クラネルにはナイフを振るエネルギーが空回り、大きく姿勢を崩す。

 

「ぅぐ…、ああぁああああああああああぁぁぁぁっ―――!!」

 

 鮮血が舞う。激痛が走る。思考が加速し、この刺激を脳に焼き付ける。腕に突き立てられたソレは、未だ神経の通う腕の内部に異物感を確かに残し、痛みを拒絶する体に無遠慮に蹂躪する。

 

「ッガ…ハッ…!?」

 

 それだけではない。腕に根本まで突き刺さったままに、背後の岩壁へと打ち付けられる。

 

――じゅぐり。

 またもや穴が広がり、その傷跡には冷風と埃が入り込み、苦痛を与える。

 

『――ブルルッ!?』

 

 この中に一つ、予想外の事があるとすれば、刃を交わした瞬間、剣の様な角はひび割れ、岩壁に衝突した時点でぽっきりと折れてしまった事だろう。そのお陰で壁に縫い付けられず、追撃を食らうことは無かった。

 広場に踊り出て、構図がリセットされる。が、ベルの顔には苦痛の表情がありありと表れ、脂汗を垂らしながら必死に歯を食いしばっていた。

 

「―ふうっ…!ふぅっ……!!ぃぎ…ぁ…」

 

 折れた角の刺さる腕はバランスも悪く、ほんの少し動くだけでより一層穿たれた孔を拡げていく。あまりの痛みに震える膝を叱咤し、一息に角を引き抜く。

 

「―――ッッ!?!??!!」

 

 刃は少しの抵抗を見せたあとすんなりと抜け、軽い音を立てて石畳へと落ちる。力なく垂れ下がる右腕の損傷は激しいもので、丁度腕の中央、肘関節を貫き通しており、そこから先の部位はぴくりとも動かない。

 モンスターたちはその様子を眺め、顔を愉悦に歪める。

 

 まさしく絶体絶命。そんな時、背後から甲高い声が響いた。

 

「ベルくうぅぅぅぅ〜〜〜んっ!!」

 

 突然の乱入者にベルは勿論、モンスターとて動きは止まる。何やら袋を抱えて走ってくるのは、髪をツインテールに纏め、その小さな体とは正反対の豊かな胸部を揺らす神物。

 そう、ベルの主神――ヘスティアだ。

 

「か、神様っ!?な、なんで…」

「ベル君を助けに来たに決まってるだろう?なんたって僕は君の主神なんだから」

「で、でも…」

「うわぁっ、その傷…大丈夫なのかい!?えーっと、ポーションポーション…」

 

 問い詰めようとし、言葉に詰まるベルと、それに気づかないのか、どんどんと話を進めていくヘスティア。

 そんな隙をモンスターは見逃さず、咄嗟に主神を抱えて離れる。

 

「っ!神様っ、まずは逃げてください!今の僕でも、逃げに徹すれば少しは時間を稼げます!神様はその間に!!」

 

 切羽詰まった声を上げ、警告しても、神ヘスティアからの返事は無い。

 

「神様ぁっ!!」

「……このモンスター達は、強いのかい」

「へ?」

 

 抱えられる小さな女神は、ひと目で分かる情報を口にした。その語気には恐怖や怯えといった感情は読み取れず、何か覚悟を決めた人間の顔であった。

 今までに見たことのない主神の真剣な顔。気圧されたベルを置き去りにし、鈴のような声音で一つの提案をした。

 

「ボクに考えがある」

 

 

◆◆◆

 

 

「うおおぉぉおおぉおぉっ!!?…ふっ、ハッ……神様無事ですか!?」

「うおおぉぉ…。な、何とか……。……ごめんね、もう少し掛かりそうだ」

「いえ、大丈夫です。……っ来ます!」

 

 砕け散る街路を尻目に、跳び上がったベルは更に距離を取る。その背には一柱の神がしがみついており、ベルが激しく動くたびに振り回され、今にも剥がれ落ちてしまいそうな危うさを感じさせる。その奇妙な光景は、ヘスティアの作戦の骨子となるものだった。

 

―――…

 

『――まず、今の君は僕を背負って、あるいは背中にしがみついている状態で攻撃を回避する事は出来るかい?』

『え、まあ…神様に気を使わなければ…。まさか…?』

『そう、そのまさかさ。君が逃げている間に、僕が隙を見てステイタスを更新、及びレベルの昇華を行う』

『……分かり、ました。やってみます』

『…ああ、信頼してるよ!』

 

―――…

 

 よく視ろ、大きく躱せ。今の自分はただそれだけの機構。背負う期待は命の重さ、僅かなりとも掠ることなく、見て跳んで翻し駆けて身命を賭せ――!

 

(出来た――)

「―ベル君!」

「はいっ!」

 

 ベル・クラネル

 Lv.1

 

 力:SS1200→SSS1366(+166)

 耐久:SSS1451→EX1594(+143)

 器用:SS1209→SSS1427(+218)

 敏捷:SSS1462→EX1621(+159)

 魔力:S912→SS1241(+329)

 

(全アビリティ上昇値トータル1000オーバー…?…評価EX!?いや、それは後だ。ここにランクアップを……!)

 

「発展アビリティはどうするんだい!『狩人』『耐異常』『幸運』!幸運だけは知らない!」

「じゃあ幸運にします!今必要なのはその二つのどちらでもないですから!」

 

 ベル・クラネル

 Lv.2

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 幸運:I

 

 世界最速記録を軽く凌駕する程の規格外な成長速度。そして限界を超越した規格外のアビリティ。他の誰でもないベル・クラネルの特権。

 跳ね上がった身体能力に驚きを隠せないままに、ヘスティアをゆっくりと降ろす。

 突如動きが別人の様に変わったベルに、モンスター達の追撃が止む。

 

(…すごい。レベルが1つ上がっただけでこんなに違うのか)

「ベル君コレを!」

 

 何かを残った左手に握り込ませるヘスティア。

 その手触りはよく知っている。自分も今先程まで握っていた武器なのだから。

 

「神様、これは…」

「ヘファイストスのとこのヴェルフ君に作ってもらったナイフだ!それにはインファントドラゴンの牙と超硬金属が使われてる!レベル3でも通用する業物さ!」

「ヴェルフさんが?」

 

 道理で、手に馴染むはずだ。おそらくは前に整備してくれた時のことを覚えていたのか。ともかく、使いやすいのは有り難い。

 

 最近始めた二刀流を意識し、利き手ではない左手で構える。負傷によるバランスの悪化と血を失いすぎた事で、些か不格好に見えるが、その煌々と輝く赤い瞳はこれでもかと戦意を滾らせていた。

 

『ウゴオォォォオオッッ!』

「ッ!」

 

 痺れを切らしたトロルの強烈な一撃。今までのベルならば、受け止めた時点で骨がきしみ、肉が悲鳴を上げたであろう痛撃。

 

「ハアァァァァッッ!!」

『ゥガッ!??』

 

 それを受け止めた。これにはトロルも思わず声を上げる。腕を切り裂き、駆け上がった顔へ一閃。視界を喪失したトロルは、がむしゃらに腕を振り回し抵抗するが、その時既にベルはソードスタッグへと向かっていた。

 

「やああぁぁぁ!」

『ブモァァァッ!?』

 

 今までは追われるだけの獲物が、自らを刈り取る死神の鎌へと変貌した。高速で向かってくるベルに初動が遅れるソードスタッグ。駆け出すことすら叶わず、勢いよく首を貫かれたソードスタッグは灰と化した。

 

「次っ!」

 

 血を払い落とし、視界が回復したトロルへと跳ぶ。付与魔法により強化されたその動きは、トロルの予想を遥かに超えた斬撃となり、その豪腕から噴水の様に血を吹き出す。

 

『ウガアァァアァァァァァッッッ!!?』

(やっぱり、分厚いっ…!)

 

 その巨体を誇るトロルは、ぶくりと肥大した体通りに、刃が通りづらい。加えて、それを貫通したとして、相応のしぶとさを見せる。

 このナイフは容易くトロルを切り裂くことに成功したが、その長さまでもはどうにもならない。

 

『フーッ…!フーッッッ……!』

 

 今の攻撃で生命の危機を感じたトロルは攻めるのを中断し、鼻息荒くベルを見据える。こうなったトロルは守りを固め、持久戦へと持ち込もうとする。こうしている間にも、再生力の高いトロルに与えた傷は癒やされていく。現に、最初に与えた軽い火傷など、跡形すら残っていないのだ。

 対して、ベルは常に襲い来る痛みと、失い続ける血液。そして疲労と精神力の減少により、戦闘を長引かせる余裕は無い。

 果たして、今の自分にそんな決定的な一撃を放つことができるのか…?レベルが上がった所で、それまでの疲労が回復するわけでもないし、怪我も癒えない。つまりは限界が近い。

 既に視界はぼやけ、足も棒のように震えている。こんなコンディションでは、防御を剥がした上で、トロルを倒すまで削り切る事は不可能だろう。

 

(あと一手あれば…)

 

 そんな事を思った瞬間、英雄は現れた。

 

「おい、貴様。俺の部下に何をしているんだ?」

 

 トロルの背後、屋根から聞こえてくる男性の声。金髪の美丈夫の声音には苛立ちと怒りが感じられ、そのあまりの圧力にトロルは生存本能に従い、振り返った。振り返って、しまった。それは敵に背を向ける事に違わず。

 

――ここが好機!

 

 震える足を叱咤しろ!今だけの為に動かせ!なけなしの魔力を絞れ!狙うは胸、弱点である魔石。この投擲に全てを賭ける――!

 

 それは付与魔法の一極化。全身を覆っていた薄い蒼雷は、左肘から噴射放出。空気を弾けさせ、押される左手を全身の力で留める。自分の意志とは無関係に射出されようとするソレは、今の全体力を以てしても完璧には抑えきれず、とても狙いが定まるものではなかった。

 しかし、何故だか外れる気はしない。狙いは逸れていないのだから。…どうやら、幸運の女神はこちらに微笑んだらしい。

 

「『不滅の英槍(アルゴー・イロアピルム)』!!」

 

 放たれた剛槍。それは音すら置き去りにする瞬撃にして、全身全霊の必殺技。その威力は術者であるベルを地面に叩きつけ、一条の光が都市から打ち上がる。

 

『…ゥガ?』

「のわぁあぁぁぁっ!?」

 

 その矛先の向いたトロルは、攻撃されたという事実を認識出来ないまま、その魔石を()()()()()消し飛ばされた。ついでにイアソンは屋根から転げ落ちた。

 

 一瞬にして、その脅威を消し去った一撃。安全地帯から見ていた住民はその光輝の一撃を放った少年に次々と称賛の言葉を投げかける。都市の1地区を救った小さな英雄はというと、寝ているような姿で気を失っていた。

 

「ベベベっ、ベル君ー!死なないでおくれー!」

 

 今は健やかに眠っているように見えても、その有様は酷いものだ。左腕は内側から弾け、灼けた腕の一部は炭化しかけている。右腕は千切れかかっており、足も骨にヒビが入っているどころではないのだ。ヘスティアの心配も当然だろう。

 

「ベルの奴……気を失っているのか。…まあ、才能が無いなりにはよくやった方だな。そこだけは褒めてやる」

「ゔえぇ〜〜っ!イアソン君〜、ベル君が、ベル君がぁ〜」

「ええい煩いぞっ!さっきの凛とした姿はどうした!いいから貴様も手伝え!腕のいい医者を知ってる。運ぶぞ!」

 

 

◆◆◆

 

 

 付近の住民の協力もあり、即席の担架にベルを乗せてホームでもある教会を目指す金髪の男とロリ巨乳の女神。

 

 最短の道を駆け、いくつかの角を曲がった末に教会を目にした瞬間、何かが上から降って来た。

 

『ギシャァァアア―――ッッ!!』

 

「うひゃあ!?」

「んなっ!?」

 

 ソイツは到底まともな生物とは言えなかった。

 全身が黒い硬質な殻に覆われ、のっぺりとした目のない顔。鋭い鎌状に発達した多脚、そして異様に目立つ膨らんだ腹の怪物だった。

 

「モ、モンスター!?」

「何…?どういう事だ…!?」

 

 二人が驚愕している間にも、カサカサと生理的嫌悪を催す動きで這い寄ってくる。

 

「チッ…おい!さっさと教会に行くぞ!そこならどうとでもなる!」

 

 もう一度担ぎ直し、全力で振り払おうとするイアソン。が、目の前の存在がそれを許さない。ヘスティア諸共、その鉤爪が振るわれる。

 

『キュイエエェェェェッ!』

 

 その柔らかい頭を貫き、脳漿をぶちまけるかに思われたが、それは意外な人物により止められた。

 

 そう、イアソンだ。腐ってもセイバー。腐ってもサーヴァント。人間を遥かに超えた能力を持つのは当然。ならば何もできない神よりも武装もしているこちらが受ける方が合理的。…というよりは、今の攻撃は庇わなければベルが死ぬので、ある意味自分の為とも言えなくはない。

 

「ちくしょう!俺は指揮官だぞ!?前線に立つのが間違っているのだ!だいたいこんなに接近されるのもぐゎぱっ!?」

 

 無理だった。受け止めた剣ごと軽く払われ、見事に壁まで吹き飛んだのである。

 

「イ、イアソンくーん!!?」

『キェァアアアアアィアイエエッッ!!』

「ちょ、少しは待ってくれよぉ!」

 

 イアソンが一撃で離脱し、狙いはヘスティアへ。これがヘスティア一人だったら何とか逃げおおせることも出来なくは無い。が、彼女はベルを見捨てることは出来なかった。

 それが無意味な事だと知っても、客観的に見れば見捨てる方が良いと知って尚、子供を守ることを選んだ。それがヘスティアという女神の性質である。

 しかしそんな美しい親愛の形にも、平等に死は訪れる。倒れ伏すヘスティアの目と鼻の先。今にも鎌を振り下ろそうとするモンスターの姿が。

 

『キュイイエエエェェッッ!』

「うおぉぉ――っ!ごめんねヘファイストス!ロキは死ね!氏ねじゃなく死ね!ごめんよタケー!デメテルー!さよならイアソン君!さよならベル君!愛してたぜー!?」

 

 やけくそになり、滅茶苦茶な顔で今までの知己へ別れの挨拶を済ませたヘスティアは、最後にベルを庇うように覆いかぶさり、襲い来る痛みに耐える。

 

――…

―――…

――――…

 

「……?あれ、来ない?」

 

 いつまでたっても変化のない事を不思議に思ったヘスティアが恐る恐る目を開けると、そこには暗色のマントをたなびかせる一人の鎧騎士が立っていた。モンスターの鎌は、その鎧に傷一つつけることすら叶わず、勢いを失う。

 その男――オデュッセウスは言った。

 

「愛…愛か。俺に事情は分からんが、そう聞いて黙っていられる俺ではない!うおぉぉぉぉお!神体結界(アイギス)!」

「ひゅ……」

 

 「かふっ」と吐血したヘスティアを見て、オデュッセウスは驚愕した。アイギスで守っているにも関わらず、庇護対象が血を吹き出したからである。

 

「なっ…!?馬鹿な、アイギスは確かに…まさか、呪毒の類か…?くそっ、こうしてはいられん!」

 

 ガシャコン!

 

 こんな音を立て、彼の鎧は展開される。背部に8つのユニットが浮遊、片手を抑えて照準を合わせる。

 そして吹き荒れる魔力を循環させ、この聖鎧から射出する――!

 

「光に、消えろ!」

 

『……ッ!?』

 

 放たれた絶大の魔力砲。それは黒いモンスターだけを狙って放たれた一撃。並の英霊ですら耐えうるものでなく、当然、黒いモンスターは甲殻をひしゃげて吹き飛ばされる。20M程吹き飛んだそいつは力尽き、ぼろぼろと崩れていくのであった。

 

「ふう…」

「おい…オデュッセウス。お前、どっちだ?」

 

 いつの間にか戻ってきたイアソンは、庇うようにベルの前に立ち、その剣を首元に突きつける。

 その目はとても剣呑なもので、今にも人を射殺せてしまいそうな眼力である。普段のだらけた姿しか知らないヘスティアは、新たな一面を知ると共に、全てを教えてくれなかったことに幾許かの寂しさを覚える。

 

「ふっ…!くっくっくっ…どっちに見える?」

「あー、もういい。今ので分かった」

 

 何やら不穏に笑った瞬間、イアソンの纏う殺気は消え失せ、鞘にしまう。ヘスティアは(普通逆じゃないかな…?)と思っていたりするが、ことこの男に至ってはこちらの対応が正しいのだ。

 

「ふっ…イアソン、我が従兄弟殿。以前見たときよりも、いい面構えになったか?……なんてな」

「…取り敢えず、俺のマスターを運ばせろ。そこの教会にアスクレピオスがいる」

「む…酷い怪我だな…よし、分かった!手伝おう」

 

 ひとまずの脅威を排し、積もる話も後にし、テキパキと進め始める。

 

「……え。え?アイギス…?いや、でもそんな筈が……いや、でもこれ見たことあるし、神の力も…あれ?…オデュッセウス、オデュッセウスかあ〜……。何で?」

 

 ついていけない女神を置き去りにしたまま……。

 




ベル・クラネル
 Lv.2
 
 力:I0
 耐久:I0
 器用:I0
 敏捷:I0
 魔力:I0
 幸運:I

《魔法》
【エレクト】
・付与魔法
・雷属性
 
《スキル》
【英雄憧憬】
・早熟する。
・憧れの続く限り効果持続
・憧れる英雄の数に応じて効果上昇
・その英雄への理解が深い程効果上昇
【英雄(偽)アルゴノーツ】
・能動的行動アクティブアクションに対するチャージ実行権
・[イアソン]に心の底から認められる事で進化
【求めし英雄の影】
・任意発動。対象を回復後、弱体化状態をランダムで1つ解除
・使用後、6分のインターバルが必要
・魔力を消費して発展アビリティ「精癒」「治癒」の一時取得。持続時間は一日。


『不滅の英槍《アルゴー・イロアピルム》』

限界を超えた付与魔法を射出部位に一極化させ、ジェット噴射と自分の全力を込めて投擲する大技。
本来体に負担がかかることこそあれ、負傷などはしない筈の付与魔法であるにも関わらず、噴射した肘は内側から肉が弾け、周囲の肉は炭化し、半ばまで裂けた腕に火傷を負う捨て身の一撃。

あの状態では、あまり威力が出せなかったが、万全の状態で撃てば、威力だけならばレベル4魔導師の長文詠唱魔法にも匹敵する。

実はチャージ実行権の対象内

ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?

  • 文字数もテンポも丁度いい
  • 文字数はいいけどテンポが遅い
  • 文字数はいいけどテンポが早い
  • テンポはいいけど文字数が多い
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