ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
こんなの初めて。たった一話しか投稿してないのに……。
期待が重い……。
…………すか。
(何だ、何を言っている?)
大……で…か。…丈夫……か。大丈……すか。
(大、丈夫……で…か、すか。…ああ、大丈夫ですか、か。何だ、この俺を心配しているのか。ふむ、中々悪くないな。アルゴノーツにいた頃はこんな声をかけるのはメディアくらいで………)
「大丈夫ですか!」
「ギャアアアアアッッッ!」
「うわあっ!」
「メディア!?まさかメディアなのか!?俺が寝ている間にどんな恐ろしい事を…ヒイッ!」
この男に声をかけ続けていた少年は、突如大声を上げて立ち上がった男に驚き、尻もちをつく。
しかし当の男は立ち上がると青ざめた顔で辺りを素早く見回していた。
「お、起きたんですね」
声をかけるとやっと気づいたのか、視線が止まる。180cmという高身長から見下された少年は少し怖気づくが、目を見て真摯に向き合おうとしている。
「…何処だ、ここ?そんでお前は誰だ?」
「え、えーと、水汲みをしていたらそこで倒れているあなたを発見して……あっ、場所でしたね。ここは僕達の村です。僕はベル・クラネルって言います」
ベル・クラネルと名乗った少年は、純真無垢といった言葉が服を着て歩いているような。とにかく、ギリシャにはほぼ全くといっていい程いない人間だということは、この僅かな交流だけでも直感的に理解した。
そこで、この少年が村を『村』という区切りで紹介し、個別の名称を話していない事を言及する。
「えっ………と…。すみません。名前はあると思うんですけど、誰も呼ばないので……ちょっと分かりません」
「は?おいおい、村の名前も言えないのか?じゃあ国でもいい。とにかく地域を言え」
イアソンは人が聞けばまず好感を抱かないような高圧的な語りで聞いた。しかし少年は悪い顔一つせずに疑問に答える。
「ここは確か、何処かの国とかには入ってないっておじいちゃんが…」
「ほう…無主地ときたか…。じゃあ大雑把でもいいから聞かせろ。色々あるだろ。ほら、ギリシャなり、タタールなりウェールズなり。ここは何処だ?」
イアソンにとって、記憶を引き継いでいるというのは初めての事ではない。現に特異点の記憶を持ちながら異聞帯に召喚されたのだから。
だからこそだろう。今の状況をただの再召喚だと思っていた。
「え…ギリシャやタタールって……物語の国ですよね?…あっ、もしかしてそういうジョークが外で流行ってるんですか?」
「は?おま、お前、それは本気で言っているのか!?」
―――…
「なる程…『迷宮都市オラリオ』、『ダンジョン』、『冒険者』………知らん!」
「ええっ!?」
ベルの家にて、現在イアソンは訪れていた。それは情報収集の為である。決してもてなすと言ったからではない。
しかし、得られた情報はどれも知らない事ばかりで、それはここでは常識らしい。
神が地上に降りてきているというだけで頭痛ものだが、それが冒険者を率いているだと?
「笑い話もいいとこだ」
「何か言いましたか?」
一人零した言葉はベルに届かない。
話を聞く限り、どうやらベルは今日の昼頃、オラリオとやらに行って、冒険者になりにいくらしい。
「ん…旨いな。この私の舌を唸らせるとは…いい酒だな。ふむ、神酒というのか」
「はい。おじいちゃんがたまに飲んでいるとっておきのお酒だって。いい人が出来たら飲みなさいって、前から言ってました」
(そのいい人の意味とは違うと思うんだが……)
そう、この場合のいい人とは、恋人やらのことであり、決して客の事ではない。しかしそれを指摘するつもりは無い。
「で?お前は何でそのオラリオとやらに行くんだ?戦ったことどころか鍛えたことすら無いだろお前」
そう聞くと、目を輝かせて食い気味に応える。
「それは勿論、女の子との出会いです!おじいちゃんも、男ならハーレムを目指せ、って!」
イアソンは、ウサギのような顔のこの少年がこんな事を言うとは思っておらず、呆気にとられる。
「やめとけやめとけ、ハーレムなんてロクな事にならないぞ?女どもの醜い争いに付き合い方を少しでも間違えたら直ぐに後ろから刺されるぞ?いやホントマジで。冗談じゃなく。……それ以外の理由は無いのか?」
バッサリ両断すると、少し悩み、ある本を持ってくる。
「実は僕、こういう物語の英雄とか、特に『アルゴノーツ』が大好きで……あ、恥ずかしいので秘密にしてくださいね?」
「ふむ、いいじゃないか」
「僕は、英雄になりたいんです。……その、無茶だとは思ってますけど…でも、強くなればその分女の子にもモテるって言ってたし」
「結局それか…」
その言葉を最後に、お互い黙り、気まずい沈黙が訪れる。イアソンは情報の照らし合わせと考察をし、ベルはこの間をどうにかしようと、話題を考えていた。
「あ、あの…あなたは冒険者なんですか?」
「はあ!?何故そうなった!?確かに俺は船で冒険をしたが、オラリオとやら等知らないと言っただろう!」
ベルは怒鳴られたことによりビクッとなるが、それでも言葉を知りすぼめに続ける。
「いや、そのぅ…とても凄そうな鎧や剣をしていたのでそうなのかなぁ…と」
どうやら、イアソンの装備から判断したらしい。
「ほう?中々いい目の付け所だな。この装備は俺だけの為に作られた技術の粋を込めた装備だ!他の船員に比べると遥かに見劣りするが、それでもそこらの剣なんぞには負けん!」
残った酒を流し込むと、鼻高々に装備を自慢しだす。
そして聞いてもいないのに自らの活躍を次々に語りだす。内容はどれも指揮官としてや船長としてのものだったが、それでも英雄譚好きなベルには刺さった。
聞いてみれば出るわ出るわ旅の話。まるで聞いたことのないものから何処かで聞いたことのあるような話まで。イアソンは話し上手で、退屈等はしなかった。
そして話しは一段落し、イアソンも一息つくと、ベルは顔を上げ、目の前のイアソンに頼み込む。
「あのっ、もし良かったら僕と一緒にオラリオに来てく「断る!」れっ……て、えぇっ!?」
「な、何でですか!行きましょうよ〜!」
まさかここまで食い気味に断られるとは思ってもおらず、困惑した様子で聞き返す。
するとイアソンは、非常に面倒臭そうな顔で首を振ると、ベルの胸を指差す。
「いいか!神なんてのは基本ロクでもない奴ばっかりだ!人を助けた神でも理不尽な殺害や人生を狂わせるのまでいる連中だぞ!しかも娯楽目的だと!?嫌な予感しかしないぞ!?」
ここまで否定されても尚折れぬベル・クラネル。彼は外へ出ようとするイアソンを必死に止める。
「お願いしますー!一人は寂しいんですよー!」
「ええい離せっ!纏わりつくんじゃないっ!!」
「『お願いします!ついてきてください!』」
そう言うと、ベルの左手は赤く発光し、強い魔力の光が迸る。
「え…今のは…?」
「お…」
「お?」
「お…」
「お前…お前が、マスターだったのかっ!?クソッたれ!令呪使いやがったな!?クソッ!行けばいいんだろう、行けば!」
やけくそ気味に言葉を捲し立てたイアソンは、未だ困惑しているベルに一連の事情を説明する。
「分かったなベル・クラネル!」
「え?え~と?サーヴァントっていうのは死後、認められた人で…座からクラスを……?」
取り敢えず最低限は説明したが、マスターや契約はこの世界でも魔法や使い魔等の話はよくあるので、ベルにも理解出来たが、サーヴァントはあまり分からなかったらしい。
……普通の人間はこんな事を話されても疑いの目を向け、距離を取るのだが、そこは白兎クオリティ。令呪やら云々の時点で、(外にはそんなのがあるのか〜、凄いな〜)位の反応であった。無知ってこわい。
「分からないなら死んだ英雄を復活させたとでも思っとけ」
「は、はいっ!」
完全にとまでは言えなくとも、大方説明し終えると、これが最も大事な事だが…と付け加える。
「お前は確かに俺のマスターだ。その令呪が証拠だ。しかし、お前の方が上だとは思わないことだ!くれぐれも注意しろ!」
一応、ベルに限ってそんなことは無いだろうがそう宣言する。
やはりというか、ベルは慌てて手を振り、否定する。
「そ、そんな!物語に出てくるような英雄にそんなこと言う訳ないじゃないですか!?」
「……ふん、まあいい。俺はお前に着いて行かざるを得なくなったからな。ただし、お前のに付き合うのだ。ある程度は俺の意見も通させて貰うぞ。そして、俺の事は様づけで呼べ。……ま、このくらいの条件で勘弁してやろう。私は寛大だからな」
何処かご満悦、といった表情で語るイアソン。もし、これが第三特異点、及びにアトランティスを経験していないイアソンだったならば、是が非でも妥協せず、条件も遥かに厳しかっただろう。
これも全てはあの色濃い記憶とお人好しのマスターのせいか、あるいは今のマスターに引っ張られたのか…。
それは本人にも分からないだろう。
「はい。……えーと…」
何故か言い淀むベルに、その端正な眉を顰める。
「何だ?まさか条件を呑まないつもりか?行っておくが、この条件は私でも甘過ぎると思っているくらいだぞ?」
「いえ、その条件で全然いいんですけど、そうじゃなくて……。僕、名前聞いてないと思うんですけど……」
確かに。そういえば説明やら聞くことがありすぎて自己紹介をしていなかった。
「そういえばそうだったな。では心して聞くがいい!セイバー、イアソン。何を隠そう、貴様が好きだと言ったアルゴノーツの船長その人だ!…どうだ、驚いたか?」
声高々に真名を叫ぶイアソン。しかし当のベルからは何の反応も無い。期待していた反応が無く、不機嫌そうにベルを見下ろす。まさか不満でもあるのか?と。
「え、えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!???」
違った。ただあまりにも予想外なネームに彼の脳が追いつかなかっただけであった。
期待していた反応よりもかなりオーバー気味だったが、無いよりも遥かに良い。
「ホ、ホントですか!?」
「嘘をついてどうなる。ヘラクレスと言って欲しかったのか?確かにヘラクレスは最強の英雄で、俺の親友だ。故に名を騙っても多少は許される……筈だ。しかし、そんなことをしてみろ。俺…私は勇者だが、その前に船長だ。自らが前線で切った張った等せず、知恵と勇気で戦う指揮官なのだ。名を騙って前線に出てみろ。すぐ死ぬ。秒殺だ。そんなことになるくらいならば名を騙るよりも真名を伝えたほうが無茶な前線に出されることなく、実力を最も発揮出来る。Win-Winの関係と言うヤツだ」
イアソンは早口に捲し立てる。言っていることは間違いなく事実なのだが、8割が保身の為である。残りの1割は優しさ。最後の1割はまだ理解の及んでいるとは言い難いベルに気を使った形だ。
何度も言うが、もしこれが初召喚のイアソンならば、こうはいかなかっただろう。
ベルは気恥ずかしそうに頬を掻くと、はにかみながら応えた。
「い、いえ、驚いただけです!じ、実は僕…アルゴノーツではイアソン……様が一番好きで…」
「お世辞か?……いや、その顔はただ恥ずかしがってるだけか。何故俺だ?もっとこう、ヘラクレスとか無双の大英雄とか十二の試練を為したヤツなどあるだろ?」
イアソンの言うことはまあ、当たり前の事だ。船長で偉大な勇者だとはいえ、彼は伝承では他の船員達に劣るのだから。
「いや、その…ちょっとだけ言いにくいんですけど…。イアソン様は他の英雄達と違って、自分の功績とかはあまり無いのに、いつも色んな策を思いついたりしてて…。あの凄い人達の中でも、強くは無いのに船長をしていたって考えると、何だか他の英雄譚とは違った感動があって……!」
そのキラキラ輝く尊敬の念の籠もった瞳を向けられたイアソンはたじろぐ。
尚も語ろうとするベルを片手で制したその時、丁度オラリオ行きの馬車が到着した。
「あ、来ましたよイアソン様!」
「ボロ馬車……まあ、アトランティスの時よりはマシだが…。おい、ベル。いい席は私に譲れよな?」
冒険者を夢見る少年と、卑屈で小狡い英雄。
どこか噛み合わないような二人組を乗せた馬車は『迷宮都市オラリオ』へとその足を進めていったのだった。
ま、満足できましたか…?どこか解釈違いとか無いですかね?
ここで言うことじゃないんですけど、ダンまちはゴライアスのとこくらいまでしか知らないんですよね。後はハーメルンの情報だけというね。
ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?
-
文字数もテンポも丁度いい
-
文字数はいいけどテンポが遅い
-
文字数はいいけどテンポが早い
-
テンポはいいけど文字数が多い
-
テンポはいいけど文字数が少ない