ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか? 作:食卓の英雄
「……参った。降参、リザインだ」
それはどちらの声だったか、集中していた観客は判別出来なかった。
「どうした、続けないのか?」
そう応えたのは金髪の男。
――つまり、降参したのはフィン・ディムナだと言うことになる。
「いや、このまま続けてもきっと負けるだろう。僕の推測だと後5手目には僕は何も出来ないはずさ?」
「やってみたら案外抜けられるかもしれないぞ?」
「……いや、無理だね。正真正銘、普通に降参だよ」
「…つまり私の勝ちでいいのだな?」
「ああ」
ここに勝負は決した。フィンは敗北を認め、ヴァリスは男の懐に収まった。勿論、賭けていた人々も阿鼻叫喚の様相だ。大多数はフィン・ディムナに賭けており、負けた悔しさ。イアソンに賭けていた者は勝利の喜びと入る金から。人々の喧騒はより一層熱がこもる。
勝負を終えたフィンは寄って来るティオネを眺めながら先程のチェスを思い返す。まるで未来でも見たかの様な采配。まさか最初に何でもない所に置いたポーンによって拘束されるとは思っていなかった。
「これでもチェスは得意なつもりだったんだけどな…」
「…そうですか団長?結構惜しかったように見えましたけど…」
ポリポリと少年のように頬を掻くショタおっさんに、ティオネは追従するように問う。本当なら今の男を追いかけ回し、愛する団長の顔にゲームとはいえ、泥を塗った事を後悔させたいところだったが、フィンからの評価と世間からの評価に関わる為、今だけは見逃している。
「いや、完敗だよ。彼はあの局面だけを最初から狙っていたように見える。あくまで予想だけどね」
「じゃあ、あの男は団長より…!」
「いや、あくまで遊戯の話さ。……でもまあ、経験を積めば司令塔として……いや、実戦とごちゃまぜになってるね。…取り敢えず、彼は平時の僕より頭の回転が速いって事だね」
いつの間にかイアソンは消えていたが、残っているチェス盤を見る。
そこにはポーンで円状に包囲されかけているキングが残っていた。
「ファミリアに入っていないなら勧誘してみたかったけどね」
「でも恩恵は貰ってないって」
「あくまで恩恵さ。ほら、ギルド職員もファミリアの構成員と言えるけど神の恩恵は刻んでないだろう?それと同じさ。確か……『ヘスティア・ファミリア』と言ってたかな?」
そう言うと、フィンは帰路についた。彼本来の仕事に戻ったのである。頭の中で、先程の勝負を復習しながら…。
◆◆◆
「はあ……」
ロキ・ファミリアのホーム、黄昏の館のある一室、そこにはどんよりとした空気が広がっていた。
山吹色の長髪に、尖った耳を持ち、露出の無い服装をしているという、正に典型的なエルフらしいエルフがいた。
彼女はレフィーヤ・ウィリディス。『
そんな彼女だが、エルフの特徴である尖った耳は絶賛垂れ下がっていた。
彼女はレベル3でありながら、その特異な魔法と、火力だけならレベル5に匹敵する事で、唯一レベル3でありながら深層である59階層への同行を許可されていたのだ。
…しかしその際、活躍するどころか他の足を引っ張ってしまった事深いに負い目を感じていた。
「私がもっとちゃんとしていれば……」
思い出すのは気迫に圧倒され案山子と化した己、その時は助けてもらえたがそのせいで前線の戦力が低下し、その後も挽回の機会は来なかった。
「まあまあ、いきなりはみんなそうなるから。レベル3ならしょうがないよ。私なんかレベル3の時に深層に行ったらすぐ死んじゃうって」
励ますのはアマゾネスの少女ティオナ・ヒリュテ。彼女はロキ・ファミリアの幹部で、『
ちなみにティオネ・ヒリュテとは姉妹で、ある髪の長さと
彼女とその姉、アイズ、レフィーヤは同じファミリアでもよくつるむメンバーだ。
「ティオナさんは前衛だからそうかも知れないですけど…私は後衛で守られていたのにも関わらず…アイズさんの手まで煩わせてしまって……」
ティオナの励ましも効果は無く、気まずい空気が広がる。
「あ〜もう、こんな時にティオネとアイズったら出かけちゃってさ〜!」
自分は魔法を使えないし、聡明でも無いため的確なアドバイスも慰めも出来ない。そんな心境からの言葉だった。
ティオネは愛する団長と共にギルドへの報告、アイズはある少年の所在を知る為ギルドへ。たまたま噛み合わなかったのである。
「ほ、ほら、ステイタス上がってるかもよ!レフィーヤはレベル3なのに深層に潜ったから、レベルアップしてるかも知れないし!」
「…!……そう、ですね。なるべく早めにしてもらいたいです」
ここでレフィーヤの瞳に生気が宿る。それを逃さず、どのようになりたいか等など、話を進めていく。その頃にはすっかりいつものレフィーヤだ。
(ふっふーん。私も中々できるじゃん)
「―――でして!……あの、ティオナさん?」
「あっ、ごめんごめん!…何の話だっけ?」
話を聞いていなかったティオナに、「やっぱり聞いてませんでしたか…」と怒るレフィーヤ。話の内容とはどうなりたいか、だった。
「私が足手まといにならない為には、リヴェリア様の様に並行詠唱を覚えるか、私自身が強くなる事ですが……。どちらも今のままでは難しそうです」
またも顔を沈ませる。これでも彼女なりに努力はしているのだ。現に、彼女はかなり優秀な部類に入るのだが、それでは満足しないらしい。
そこでティオナが「あっ!」と声を上げる。
「どっ、どうしたんですか?」
「私思いついちゃったー!レフィーヤを守るには強い人が必要。でも他の人には任せられない。って事は、使い魔とかがいればいいんだよ!」
ソレはあまりに突飛な発想だった。
「使い魔……ですか?」
「そう!色んな英雄譚とかでも出てくるじゃん!使い魔がいればそれはレフィーヤの力だし、他の戦力を削らないじゃん!」
名案とばかりに顔を輝かせて語るティオナだが、対するレフィーヤは困惑の表情だ。
「あの…ティオナさん?使い魔とか、出来ませんよ?そういうスキルがあれならば兎も角……」
「そっかー、ちょっと見てみたかったけどねぇ。…じゃあスキルでそういうのが出るように祈ったら?神頼みってヤツ」
「あはは……神頼みって…ロキ様にですか…。まあ、確かにそんなスキルがあれば便利ですよね」
「うんうん、じゃあ一回だけ祈ってみようよ!」
そう言うやいなや、レフィーヤの手を取り、祈りのポーズをやたら細かく説明してくる。
「何でそんなに具体的なんですか?」
「えへへ、えっとねー。ある英雄譚で神様に祈りを捧げる人がやってたポーズなんだー」
「……分かりました。やるだけやってみましょう」
レフィーヤは膝を立てると懇願するように手を握り、目を伏せて顔を下げる。
初回にして中々様になっている。少しの間続けたが、何の変化も無かった。当然だ。
「…ふぅ。終わりましたよ」
「どう?何かある?こう、力が湧き上がってくるー!みたいな」
「いえ、別にそんなことは何も………いえ、何か手が熱く……痛っ!」
「っどうしたの!?」
慌てて駆け寄るティオナ。流石にこんなことで何かあるとは思っておらず、少し反省中。
痛みを訴えていた左手を見ると、木と花が絡み合ったような、赤い紋様が浮き上がっていた。
「何コレ……」
「……これから、物凄く高い魔力を感じます」
「レフィーヤ、大丈夫?」
「…はい、痛みはもうありません。それより、これは何でしょうか?」
「うーーーーん。新しいスキル……とか?」
「やっぱり、そうなんで…!?」
突如、部屋の中央に爆発的な魔力の渦が出来る。それにいち早く察したの魔力に長けるレフィーヤ、続いてティオナは、武器こそ無いもののレフィーヤを庇う姿勢に入る。
「嘘…こんな魔力、今まで見た事も…!」
魔力の異常さに気づいた瞬間、その渦の中央が輝き、その光と風によって目を閉じる。
再び目を開けたとき、その渦は消えており、そこには何かが立っていた。
見たところ人型で、防具等も装備しているが、あんな異常な発生をしたのだ。突然変異のモンスターでもおかしくはない。
そう警戒していると、その人型はこちらに剣の様なものを突きつける。
「っ!」
武器を突きつける。即ち敵対的な行動であり、警戒レベルを更に引き上げ――
「サーヴァントライダー、マンドリカルド。問おう、アンタが俺のマスターか?」
「えっ何それ」
「えっ」
「えっ」
「「「…………」」」
なんとも言えない静けさが漂った瞬間だった。
テルスキュラって調べて、テだけ消すと全部ネルスキュラ関連になるの草
こんなことに後書きって使っていいんだろうか?
ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?
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文字数もテンポも丁度いい
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文字数はいいけどテンポが遅い
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文字数はいいけどテンポが早い
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テンポはいいけど文字数が多い
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テンポはいいけど文字数が少ない