ダンジョンでアトランティスが続くのは間違っているだろうか?   作:食卓の英雄

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過去一番の難産でした……。

今日は2月17日
これは両儀式の誕生日!みんなで祝いましょう!


思い込みと勘違い

「つまり…あなたは私の使い魔で、英雄譚に出て来るような人物って事ですか?」

 

 黄昏の館にて、レフィーヤは目の前の男に問う。先程の男の説明通りに、目の前の男との魔力的な繋がりを感じ、どこかシンパシーすらも感じていた。

 

「そうだな。…そうッス。あ、いや、でも俺は英雄とかそんな大仰なモンじゃ無くて…」

 

 マンドリカルドと名乗った男は、何故か余所余所しそうに正座している。女子の部屋の物に勝手に座るのはアレかな、と配慮した結果であった。

 

「えーと、ティオナさん。多分大丈夫ですけど……どうしましょう?」

「うーーん…本当ならロキとかに知らせた方がいいと思うけど…。奥の手にしたら?」

 

 幹部であるティオナに尋ねるも、帰ってくるのは一組織の幹部としては有りえない一言。それに苦言を申するレフィーヤだが、これが混乱を齎すものだと言うことは感覚で理解していた。

 

「ほら、英雄譚の英雄達も実は隠し玉とか持ってるじゃん!スキルじゃないんだから大丈夫だって!」

「…そう、ですよね。これはスキルでも魔法でもありませんし…そう、大丈夫ですよね……」

 

 いつものレフィーヤならば兎も角、急に手に入った新たな力に目が眩んでしまった。

 

「それで…マンドリカルドさん?ですよね?」

「あ、はい。そうッス。…えーと、やっぱり知らないよな?」

 

 「誰?」というのが見透かされていたのか、少しだけ複雑そうな顔で尋ねるマンドリカルド。

 

「ごめんなさい…」

「いやいや!大丈夫だから!自分でもマイナーだって分かってるから!」

 

 知らないのも無理は無い。というか世界が違うのだからマトモに残っている筈も無い。唯一の情報源である英雄譚等は神々が持って来た物なのだから。

 

「えぇと…ど、どんな事で有名な方なんですか?」

「シャルルマーニュ十二勇士……の敵に回った、地味なサーヴァントっす」

「しゃるるまーにゅ……?」

 

 こてん、と首を傾げるレフィーヤ。流石にそれは予想していなかった様でマンドリカルドの目は大きく見開かれる。

 

「…そ、そっスカ。いや、そうッスよね。最近はアーサー王伝説も知らない人は多いって聞きますし……。……そっか、そんなに有名じゃないんだな……」

 

 そう独り言ち、知らぬ間にテンションが下がっていく。お互い聞きたいことはあれど、その気質から沈黙する。

 とうとう屋内にも関わらず「いい天気ですね」と言おうとしたその時

 

「あったーー!」

 

 先程から何処かへ行っていたティオナがバタバタと忙しない様子で部屋に入ってきた。話を続けてくれそうな人物の到来に、目に見えてホッとする二人。

 

「あったっ、て…何がですか?」

 

 レフィーヤが尋ねると、コレコレ!と手にもつ古本を指すティオナ。その付箋だらけの本の表紙には『シャルルマーニュ伝説』と書かれていた。

 その本を「ここでもない」「あそこでもない」とパラパラとめくり、ティオナの手が止まる。

 

「ここじゃない?」

 

 そこは『狂えるオルランド』においてのマンドリカルド登場のシーンであった。

 

「あー……そうッス。それが俺です。……黒歴史が……」

「何か言った?」

「あ、いや、何でも」

 

 そしてレフィーヤは読み進めていくのだが………。

 

―――

 

「最低最低最低最低!最っ――低です!」

「うぐっ」

 

 ヘクトールの鎧を手に入れる所はまだ良かった。しかしその後が問題だった。

 ドラリーチェ姫を「護衛が相応しいか試してやる!」とか言いながら姫を連れ去ったり、ローランの放り出したデュランダルを盗み、それを止めようとした王子ゼルビンの殺害。帰るついでに名馬ブリリアロードまで奪い去ってしまった。さらにはロジェロに喧嘩を吹っ掛け、最後は慢心して殺される。等と、出るわ出るわ黒歴史。

 本人は魔が差したと言っているが、正直魔が差したでは済まない行為の数々である。

 それに粗暴な王だという事もレフィーヤの癇に障った。レフィーヤが教えを請うリヴェリア・リヨス・アールヴは、エルフの王族、ハイエルフであり、知的でその権力を振りかざすことを良しとしない人物である。

 つまりは、生前のマンドリカルドはレフィーヤの嫌いな要素がマシマシな男であったのだ。

 

「あなたのした事は闇派閥のやっている事と大差ありません!!不愉快です!顔も見たくありません!!」

 

 レフィーヤは矢継ぎ早に言うと、怒り心頭と言った様子で乱暴にドアを開けて出ていってしまう。

 

「………」

 

 残されたマンドリカルドは去って行ったドアの方を暫く眺めていると、ティオナが優しく肩に手を置く。

 

「あー、私あんまりそういうの気にしないから大丈夫だよ?」

 

 マンドリカルドは泣いた。

 

◆◆◆

 

「うわあ〜、人がいっぱい居ますよイアソン様」

「ええい、俺に隠れるな!俺まで田舎者だと思われるだろうが!」

 

 時は進み夜。ベルは朝に誘われた飲食店にイアソンと共に訪れていた。

 因みにヘスティアはバイト先の打ち上げでいない。金はあった方がいい、と未だに続けていたのだ。この台詞のせいで辞め時を見失ったとも言う。

 

「あ!来てくださったんですね!」

「は、はい…来ちゃいました…」

 

 声をかけてきたのは銀髪の女店員。シル・フローヴァ。彼女とは朝に出会い、この店の紹介をされた仲である。つまりほぼ他n…

 

「こちらの方は?」

 

 シルがイアソンの方を向き尋ねるが、イアソンは不服そうにまじまじとシルの顔を眺めている。

 

「ちょっとイアソン様!聞かれてますよ!」

「……ん、ああ。俺はこいつのとこの団長をやってるイアソンだ」

 

 少し立ち話をし、席に案内される。

 ベルが料金の高さや量に圧倒される中、イアソンは露骨に顔を歪める。

 それにはとある訳があるのだが、傍から見ると料理に対して不満があるように見える。

 それに従業員はいい顔をしないが、一口食べたイアソンの目が見開かれる。

 

「…美味いな。少なくとも俺がここに来てから最も美味い」

「当然ニャ!なんたってミア母ちゃんの料理だからニャ〜」

 

 イアソンの反応に、ふふん!と得意げな顔をする猫人のアーニャ。仕事をサボるなと怒鳴られ、直ぐにウェイトレス業に戻る。

 ジョッキを置いて見回すと、時間帯もあって店には様々な人間がいた。ワイワイと話に花を咲かせる者や、酒盛りをする者。酒場といえば酒場らしい光景に目を瞬かせる。

 

「…なんだ、随分騒がしい所だな」

「ふふっ、それがいいんじゃないですか」

 

 微笑むシルに胡散臭そうな視線を向けるも、素直に目の前の料理に舌鼓をうつ。

 

「お、おいっ」

「ん?おっ、えれえ上玉揃いで…」

「ウホッ!いい男…」

「馬鹿!あいつらのエンブレムを見ろ!」

「ちくわ大明神」

「あのエンブレムは……」

「誰だ今の」

 

 周囲の客がざわつく。何やら可笑しい言動の者がいるがそれは気にしてはいけない。

 その原因は先程入店してきた集団にあった。

 

「皆!ダンジョン遠征ご苦労さん!今夜は宴や、思う存分、飲めぇ!」

 

「シルさん、アレって…」

「ああ、ロキ・ファミリアの皆さんはウチのお得意様なんです。彼らの主神、ロキ様がここをいたく気に入られたみたいで…」

 

 そこには、昨日助けてもらったアイズさんがいた。どの人も強く、今の僕では歯が立ちそうにもない。

 ちびちびと果実水を飲みながら、件のテーブルへと耳を傾ける。冒険者の大先輩達の会話が気になったのだ。

 すると、狼人の青年がジョッキを叩きつける。

 

「おいアイズ!そろそろ例のあの話、みんなに披露してやろうぜ!」

「あの話……?」

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス。最後の一匹を5階層で始末したろ?」

「……」

 

 ベルはつい昨日の冒険を思い出す。アイズから聞いていた通りで、しかも5階層とくればまずあれに違いないだろう。

 

「そんでほら、そん時にいたトマト野郎。如何にも駆け出しのヒョロくせえガキ。来た頃には血塗れのボロボロでよ、終いにゃアイズのエリクサーまで使わせたんだぜ?」

「…アイズ?僕はそんな事聞いてないよ?」

「………忘れてただけ…」

 

 ここでハッと気づく。チャンスは今しかないのでは?と。実際、アイズに直接会える保証も無いし、アイズが独断で使ったエリクサーも元はファミリアの資産。自分が弱かったせいで使わせてしまったのだからその関係者にも侘びを入れるべきだ、とも。

 

「怪我の上からくっせえ牛の血を浴びてよ、潰れたトマトみたいになっちまったんだよ!」

 

 あれ、僕は魔石を壊したから返り血は……浴びたかな?……浴びてたかも。ってことはそんな汚い状態で膝枕をして貰ってたってことに………も、申し訳無い。

 

「そんでだぜ?そのトマト野郎、アイズと何か言い合った後によ、荷物だけ持って逃げてっちまってよ、ウチの姫様、助けた相手に逃げられてやんの!ハハハハ!情けないったらねえぜ!」

「……何も逃げることは無かったと思います」

「だろ!?」

 

 因みにこれは認識の相違であり、アイズはエリクサーの弁償代金についての事を言っているのだが、気づくはずもない。

 

 その後、ベートを諌めようと会話は進む。

 

「あの、イアソン様…」

「何だ」

「ちょっと弁償用のお金をホームまで取りに帰るので、少しの間だけ保証人として残ってくれませんか?これ、もしもの為のお代です」

「ふむ、この私にそんな扱いをするのか…」

「すみません……でもやっぱりこういうのは早めにしとかないと…」

「まあいいだろう。早くいけ」

「ありがとうございます」

 

 女将に話を通してもらい、店から急いで退出する。

 

「あ……」

 

 それを金の瞳が物悲しそうに見つめているとは知らずに……。

 

 ここには三つの間違いがあった。

 

 まず一つ、ベートはミノタウロスを始末したのがアイズだと思っていること。

 次に二つ、アイズはベルが中傷により逃げたと思ってしまったこと。

 そして三つ、目を離したその際に掴んだジョッキが自分のものだと思いこんでしまったことだ。

 

 この三つの要因のどれか一つでも欠けていればあんな悲劇にはならなかっただろうに……。




やーい、幹也の嫁さん41ー!
40過ぎたらおば/さんだるぉ???

『』

食卓の英雄だったもの

ここまで読んでくれた方へ。この小説の文字数とテンポはどうでしょうか?

  • 文字数もテンポも丁度いい
  • 文字数はいいけどテンポが遅い
  • 文字数はいいけどテンポが早い
  • テンポはいいけど文字数が多い
  • テンポはいいけど文字数が少ない
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