アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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ラスバレ1章㊷

梨璃「・・・えっ?」

 

 

彼女達を囲うように群がる少女達の胸から生えた刃、

それは突然の事であり現実離れしたその光景に、唐突な出来事に梨璃は思考を止める。

 

それは細く、薄いしかしその黒く染った刀身は脆そうに見えると共にしっかりとした堅牢さが見て取れる。

 

少女達を貫く刃は全て同じ場所から生えておりそれがより奇妙な光景を作り出していた。胸の中央部より僅かに左に逸れて生えたそれを少女達は気にする様子もなく歩こうとする少女達だが1歩足を踏み出した瞬間少女達は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

 

 

定盛「ひっ!!」

 

叶星「何が起きているの!?!?」

 

二水「・・・背後から刺されてる?」

 

雨嘉「だけど・・・全部違う方向から、」

 

二水「レアスキルで周囲を見ていましたが、人影なんて見えませんでしたよ?」

 

 

倒れた少女達の背中には柄のようなものが生えており刃は背中から貫通する形で生えていることがわかった。

それを見た雨嘉はこの周囲を複数人が囲っているのかと考えるがそれは二水の一言で否定された。

 

 

鶴紗「・・・なんだか、見たことがあるような。」

 

高嶺「・・・奇遇ね、私もよ。」

 

鶴紗「ッ!?」

 

 

その現象に既視感を覚えた鶴紗が首を傾げていると、そこに高嶺が同意する。

彼女の言葉を聞いた鶴紗が動揺を見せる

 

それは鶴紗が・・・一柳隊のみが知っている現象だからだ。

 

動揺の中彼女が思考を巡らせていると、

 

 

一葉「彼女達はどこに!?」

 

瑤「・・・突然消えた。」

 

 

突然の出来事に動揺していた一葉達が倒れた少女達を確認しようとするとそこには少女の姿は無かった。

少女の倒れた場所には何も残っておらず微かに青白い霧が漂っているだけだった。

 

 

夢結「・・・ひとまず、危機は去ったみたいね。」

 

梨璃「お姉様!!」

 

 

周りを見渡した夢結がそう呟くくと、梨璃が彼女へと抱き着いた。

それを左手で受け止めると彼女の頭を撫でる。

 

 

夢結「・・・もう大丈夫よ。。」

 

梨璃「・・・でも、腕が、」

 

夢結「これくらい大したことないわ。」

 

 

梨璃が泣きそうな表情に対して涼しそうな表情で優しそうな笑みを見せていた。

そんな彼女に他の面々が駆け寄る。

 

 

一葉「夢結様、大丈夫ですか!?」

 

叶星「・・・酷い、」

 

 

何も無いような夢結に安堵すると共に、彼女の存在しない右腕に彼女達は絶句する。

 

 

定盛「右腕が・・・。」

 

夢結「梨璃にも言ったけれど大したことないわよ?」

 

瑤「・・・それを見て大したことがないわないと思う。」

 

千香瑠「そうですよ、早く止血しませんと!?」

 

 

肘から先のない右腕、そこからはまだ赤黒い血が止めどなく流れており切断面からは白いモノが見え隠れし引きちぎられたかのように抉れていた。

 

 

神琳「・・・それよりも、夢結様?」

 

夢結「何かしら?」

 

神琳「・・・その、痛みの程は?」

 

夢結「大丈夫よ、支障はないわ。」

 

神琳「ですが・・・普通なら喋れる状態ではないのでは、」

 

夢結「これくらいのことなら慣れているから、」

 

神琳「・・・慣れている?」

 

 

夢結の平然とした姿に異常感を覚えた神琳が彼女に問いかけると、彼女は何も無いかのように返答する。

そして彼女の言葉の違和感に彼女が首を傾げていると、

 

 

藍「・・・特型はどうしたの?」

 

 

藍の言葉に全員の視線が彼女へと向く。

 

 

二水「そうですよ、特型の方が解決していません!」

 

ミリアム「アレを抑えていた夢結様がこちらにいるからのう。・・・早く対処せんと、」

 

叶星「そうね・・・梨璃さん、」

 

梨璃「は、はい、どうしましたか?」

 

叶星「・・・梨璃さんは夢結さんを連れてここを離脱しなさい。」

 

梨璃「・・・でも、」

 

叶星「CHARMのない貴方と、重症の彼女がいてはただの足でまといになるだけよ。」

 

神琳「・・・叶星様の言う通りです。ですので梨璃は早く夢結様を安全な場所に、」

 

梨璃「・・・。」

 

 

叶星の言葉に面を食らった梨璃は反論しようとするがその前に神琳からも同じ言葉をかけられる。

2人の言葉に反論の余地のない彼女が俯いていると、

 

 

夢結「・・・その点は問題ないわ。」

 

瑤「でも、早くしないと逃げるかも、」

 

夢結「だから、大丈夫なのよ。もう、終わっているから、」

 

高嶺「・・・終わっているとは?」

 

 

夢結はそう呟くと視線をある方向へと向ける。それを彼女の言葉に疑問を覚えた高嶺が彼女の視線を追うと大きく目を見開く。

 

そこには地面に付した特型の姿があり、それは胴体部を除き全てが崩れていた。

全身から紫色の液体を流しているそれは動こうと蠢いているがその体は地面にめり込んでおり、身じろぐ事もできない。

そんな特型の上に1つの人影があった。

 

 

茜「・・・。」

 

 

その人影は、ここには居ないはずの茜であり、彼女は特型を見下ろすように佇んでいた。

静かな表情で佇む茜は視線に気づいたのか、こちらへと向くと軽く微笑む。

視線を外し意識を彼女達へと向けた瞬間、

 

 

鶴紗「危ない!!」

 

 

特型の傷口から大量の触手が生え、茜へと襲いかかる。

触手の先端には鋭い針のようなものが着いておりそこからは液状の何かが滴っていた。

 

 

茜「大人しくしてろ・・・、」

 

 

茜は自身に迫る凶刃に目を向けることなく右足をあげると軽く踏みしめた。

 

歩くかのような軽い力しか篭っていないであろうその動作、ただ軽く音が鳴る程度のものであろうそれから鼓膜を揺さぶるような轟音が鳴り響いた。

 

地面が揺れると同時に特型を中心に地面は凹みそこを中心に亀裂が走る。

 

その衝撃に触手が重力に押しつぶされるかのように地面にめり込むと、そこに突如現れた無数のナイフが降り注ぎ固定した。

 

 

???「遊びすぎ・・・早くとどめを刺す。」

 

 

先程の轟音で皆が茜へと視線を向けていると突如森の奥から声が響いた。声のする方を向くとそこにはいつもと変わらぬ無感情な表情をした音羽が姿を現す。

森の奥からゆったりとした足取りで歩いている彼女の両手には大振りのナイフが握られており、その形状は特型に刺さっているものと酷似していた。

 

 

茜「だけど、アタシだと逃げられるかもしれないし抑えてた方がいいんじゃない?」

 

音羽「・・・確かにそうだけど、彼女を抑えるにしてももう少し方法があったはず、」

 

茜「確かにあるけど・・・苦しませたくないじゃん?」

 

 

2人は特型には目もくれず会話を始める。

その様子はいつもの彼女達と変わりなく、この異常な状態では限りなく異質であった。

 

 

茜「そうだ、あの人まだ来ないの?」

 

音羽「・・・後始末に時間がかかってる。」

 

茜「出来れば後始末の前に済ませて欲しいんだけどな・・・。」

 

音羽「時間が経つと隠蔽が困難になる・・・それに原因は茜、」

 

茜「・・・それを言われると何も言えないや。」

 

 

2人の会話する中、内容が理解できない一葉達は彼女達へと近寄る。

 

 

一葉「・・・茜、これはいったい?」

 

茜「見ての通り特型を抑えてるんだけど?」

 

瑤「そうじゃない・・・音羽とはどういう関係なの?」

 

茜「関係って、同じ孤児院で暮らしていて、境遇が似ているだけですよ?」

 

千香瑠「・・・どうして、この状況で平然と会話出来ているのでしょうか?・・・それに彼女とは?」

 

茜「・・・それは、ですね。」

 

 

レギオンメンバーからの言葉に大したことが無いかのように返答する茜だが、千香瑠の一言に声を詰まらせ目を泳がす。

その様子を見ていた音羽がため息をつきながら自身が出てきた森の奥へと視線を向ける。

 

 

音羽「・・・説明なら、あの人がしてくれる。」

 

 

彼女の意味深な言葉に一葉達が彼女の視線を追うと、

 

 

蓮夜「茜、もう少し周囲に気を使え。」

 

 

そこには感情の抜け落ちた、寒気すらも感じさせる表情をした彼の姿があった。


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