アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
茜「彼女は抑えときましたよ。」
蓮夜「それは助かるんだが、もう少し周囲のこと考えてくれないか?・・・被害が大きいと時間かかるから、」
茜「・・・すいません。」
蓮夜「延焼しないように考えてたみたいだからいいが、俺がいない時は気をつけな、お前らだと隠蔽しにくいんだからさ。」
茜「了解です!」
音羽「お疲れ様です。」
蓮夜「ああ、そっちもな、」
彼の小言を聞いた茜はバツの悪いのか居心地悪そうに顔を背ける。
それを見た彼は彼女が抑えている特型へと近づいて行った。
蓮夜「・・・まさか特型に憑いてるとはな、」
音羽「他の反応は?」
蓮夜「ない、デコイは全て破壊したからコレが最後のはずだ。多分デコイを作って、自身の反応を偽装してたんだろう。」
茜「なら、早く楽にしてあげましょうよ。」
蓮夜「・・・そうだな。」
茜が特型に悲しげな視線を送っていると、彼が自身のCHARMである大太刀を取り出す。
蓮夜「俺はこれくらいしかしてやれない・・・。」
彼はそう呟くと刃を上段に構える。
その刃は光を浴び透き通るよう輝き出した。
蓮夜「・・・せめてこれ以上、苦しまないように、」
特型を見つめていた彼は右瞳を閉じて静かに振り下ろした。
ゆっくりとした速度で特型へと迫る刃、それは特型の表皮を裂き奥へと進んでいく。
蓮夜「次の目覚めが・・・良きものであり、・・・ッ!!」
その刃が特型の中心を通り抜けようとした時、彼は唐突に刃を引き抜き振り返った。
彼の先程の行動に首を傾げていた面々はいきなりのことに驚いていると、
背後から不気味な気配が襲いかかる。
彼女達が慌てて背後を向くと、
そこには先程の少女達がおりそれぞれがCHARMを振り下ろそうとしていた。
定盛「またなの!?」
千香瑠「いつの間に!!」
それに気づいた彼女達はすぐに対応するためにCHARMを構えるが、次の瞬間には意味をなくしていた。
瑤「・・・えっ?」
叶星「今度は何が起きているの!?」
彼女達に迫る少女達、その尽くが活動を停止したのだ。
あるものは胸部に風穴を開けられ、
あるものは胸部から脇にかけて切り裂かれ、
あるものは胴体部を消し飛ばされ、
明らかに致命傷であるその傷、
それを見た彼女達は恐怖に支配される。
夢結「・・・梨璃、危ないわよ?」
梨璃「・・・お姉様、」
その中で夢結だけは冷静さを保っていた。
まるであやすように梨璃を抱きしめる彼女、その右手にはCHARMが握られておりその切先は梨璃を背後から襲おうとしていた少女へと突き刺さっている。
蓮夜「・・・やられた、」
彼の小さいが鮮明に聞こえる言葉に我に返った彼女達はその声の主へと視線を変える。
そこには太刀を振り抜いた姿勢の彼がおり、その背後には音羽と地面に突き刺さるナイフだけが存在しており茜の姿がない。
音羽「生存本能が高い・・・。」
蓮夜「それだけ生への欲求が強いってことだ。」
音羽「・・・可哀想、」
彼等は悲しげな口調で会話を始めると再び特型へと視線を向ける。
そこには先程までこの場から抜け出そうともがいていた特型の姿はなくただその場に横たわるだけの存在へと変わっていた。
茜「・・・すいません。」
蓮夜「いいや、お前のせいじゃない。今回は彼女が一枚上手だっただけだ。」
茜「・・・でも、」
音羽「・・・幸い特定方法はわかった。だから、大丈夫、」
茜「わかった・・・、」
何を言っているのか理解出来ずに彼等を凝視していた一葉達の横を通って茜が姿を表した。
その表情は暗く、普段の彼女を知る一葉は心配そうに駆け寄ろうとすると、音羽が彼女へと近寄り慰める。
夢結「・・・どういう状況なのかしら?」
蓮夜「単刀直入に言うと逃げられたな。」
音羽「茜の性格を逆手に取られた・・・」
蓮夜「・・・高い生存本能と加虐的性質が合わさった結果だろうな。」
夢結「加虐的となると早く対処しないと行けないんじゃないかしら、最悪の場合関東圏が崩壊するわよ?」
蓮夜「一応霊格に損傷は与えたからな、それを修復するまで身を潜めているだろう。だから、そこまで焦らなくていいはずだ。」
夢結「それなら良かったわ。」
音羽「・・・だけど元々霊的事象への干渉を得意としているみたいだから急がないと、」
蓮夜「こっちはそこら辺得意なのがいないからな。」
茜「申し訳ないです。」
蓮夜「・・・気にするなとは言えないが、そこまで気負わなくていい。」
音羽「そう、今回のは私達も責任がある。」
蓮夜「とにかく、一旦退却して彼女達の安全確保が最優先だ。」
夢結が加わり内容がより奇妙なものとなる中、彼は手早く話を済ませ、彼女達へと視線を向けた。
彼女達は現状理解の出来ていないようで視線を右往左往しているが彼からの視線に気づき彼等の元へも集まり出す。
一葉「黒鉄さん・・・先程のはいったい?」
叶星「貴方は何か知っているみたいだから説明をお願いしたいのだけど、それに音羽ちゃんも茜ちゃんもね?」
瑤「・・・夢結も何か知っているの?」
蓮夜「・・・ここでは言えないな。」
高嶺「・・・ここでは?」
蓮夜「ああ、今は対策してあるから見られてないが、いつ勘づかれるか分からない。」
定盛「勘づかれるって誰に・・・、」
一葉「それよりも早く夢結様を病院に・・・?」
彼女達の質問に彼は意味深な言葉を返す。それを聞いた定盛が解いた出そうとした時、一葉は夢結の怪我を思い出した。
夢結本人が平然とした表情でその場にいるが、彼女右腕の欠損という重症を負ってしまっている。
そんな彼女を病院へと送らなければならないと一葉は彼女に駆け寄ろうとするが、そこで彼女の失っているはずの右腕であることに気がついた。
一葉「・・・右腕がある?」
定盛「・・・えっ?でもさっき確かに彼女達に・・・、」
夢結「だから言ったでしょう、大丈夫って、」
蓮夜「とにかくここから離れるぞ・・・奴等が来る前に、」
定盛「だから何が・・・!?」
立て続けに起こる理解の出来ない現象に定盛が声を荒らげながら叫ぶと彼女の背後から金属音がなる。
彼女がそれ音に驚きながら背後を見るとそこにはCHARMを振り下ろす少女達とその一撃を左手のナイフだけで受け止める音羽の姿があった。大振りであるとは言えナイフの範疇にある大きさの刃だけで複数のCHARMを抑える左腕はビクともしない。
音羽「・・・もう来た。」
蓮夜「・・・行くぞ。」
それを見た彼は表情一つ変えずに森の奥へと進んで行く。
音羽は彼の行動を見ると、すぐさま右手に持つナイフを下へ投げる。
砕けたコンクリート片以外何も無い地面、微かな傷を残して弾かれるであろうナイフはまるで水に入るかのように音も立てずにその刀身を潜り込ませた。
それと同時に少女達の体が後方へと倒れる。
音羽は倒れた少女達に目も向けず振り返るとそのまま彼の進んだ方へと歩き始めた。
音羽「・・・また来る前に、早く。」
叶星「え、ええ・・・。」
普段通りの筈なのに氷の様な冷たさを内包した音羽の声に、ただ言われるがままに叶星達は彼女のあとを追う。
茜「アタシ達も行きましょう。」
一葉「行きましょうってどこに?」
茜「来れば分かりますよ。・・・それよりも早く、また来られたら大変ですから。」
音羽とは打って変わって茜は一葉達を促すように背中を押す。
そんな彼女に内容も理解できないまま森の奥へと進んでいくと茜は1度足を止め。
茜「・・・今度は絶対に、」
倒れ伏した特型へと視線を向け何かを呟くと、彼女達のあとを追っていった。