アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
天葉「・・・冗談だとしても、流石に笑えないわよ?」
夢結「いいえ、事実よ。」
笑えない冗談だと言う天葉に、夢結のその言葉を曲げずに言葉を紡ぎ続ける。
夢結「・・・7年前にね。正確に言うと、『死』という自称自体を破壊されていると言えばいいかしら?」
天葉「・・・依奈私は中等部からだから初等部は知らないけどその頃夢結に変化はあったの?」
依奈「いいえ、今と比べると活発なくらいで大きな変化はないわ。」
夢結「・・・それもそうよ、覚えてなかったのだもの、」
天葉「覚えてないって・・・ならなんで知ってるのよ。」
夢結「・・・彼の記憶を辿ったのよ。」
樟美「・・・記憶を辿るですか?」
夢結「ええ、詳しいことは言えないのだけれど彼の力が不安定になってしまって、それを治すために彼の記憶に入り込み辿る必要があったのよ。」
壱「記憶に入り込む・・・ですか、」
夢結「・・・入るのに使ったのは、お姉様の力よ。そして見てしまったのよ・・・私がどれだけ愚かで救いようがないかをね。」
まるで自身を罵るような言葉を聞いた少女達は夢結から今までとは別の感情が出ていることに気づく、
それは暗く重い・・・自己嫌悪とでも言うべきものでありその中には明確な怒りが混ざっていた。
夢結「ここからは少し独り言になるわ。・・・その日私は彼を連れて家の近くの森に来ていたの、そこは一般的には立ち入り禁止区域だったけれど、ここ数年ヒュージなどの発見報告がなくて初等部のリリィの地形把握訓練に用いられていたわ。」
依奈「・・・あっ、」
それを聞いた依奈は思い当たる点があるのか声を上げる。
天葉「どうしたの?」
依奈「夢結の言っている森のことを思い出したのよ。・・・確かあそこは私達の訓練に使われて以来使用されてないのよ。」
樟美「そうなのですか?」
依奈「ええ、私達の訓練が終わってからしばらくしてヒュージの発見報告があってね。・・・だけどその報告を終いに発見報告も消えてしまったのよ、」
夢結「そして訓練中に景色のいい場所を見つけて、彼にそれを見せたくて連れて行ったのよ。・・・ちょうどその報告が届いた前日に、」
天葉「・・・まさか!!」
夢結「本当に馬鹿だったわ。どうして行ってしまったのかしら?・・・彼はあれ程に止めてくれていたのに、」
天葉「・・・。」
夢結「そんな私への罰なのでしょうね。・・・私達はヒュージに遭遇してしまったのよ。・・・その時の私には自衛手段がなく彼も気づいていなくて、どうすればいいのか考えていた時ヒュージは彼を標的にしたのよ。・・・私はただ彼を助けたくって彼を突き飛びしたわ。・・・まぁ、そのせいで彼は崖から転落して大怪我を負ってしまったのだけれど、」
言葉を紡ぐごとに大きくなっていく怒り、
それはまるで重力が何倍にもかかっているかのような重圧を感じさせながらも少女達には恐怖を与えていなかった。
夢結「そして最後に見たのは胸から刃が生える自分の姿、・・・この時に私の命は終わってしまったのよ。」
天葉「それなら今の貴方は誰なの?」
夢結「・・・そうね、例えるならば
天葉「・・・。」
夢結「きっと信じられなかったのでしょうね。・・・あの頃の彼は幼くて現実を理解することが出来ずに行動したのでしょうけれど、本当なら私なんかのために使ってはいけないものなのに、」
彼女の抱くもの・・・それは自身への怒り、
彼の全てを奪ってしまい、何も知らずに日常を生きてきた自分自身に、何よりも苦しむ彼に気づいてあげられなかった自分自身に、
夢結「それにこの力も本来私の持つべきものではないのよ。・・・こんなものがあるから彼は!!」
依奈「ちょっと夢結、落ち着きなさい!!」
怒りの籠った声は次第に悲痛なものへと変わり、苦しそうな表情を浮かべながら左手を胸の前で握った。
明らかに様子のおかしい彼女に依奈は声をかけるがそれは彼女には届かない。
夢結「彼も彼よ!なんで力を私なんかに分け与えたの!・・・そんなことをしたら自身もタダでは済まないことくらいわかっていたはずなのに、」
天葉「・・・夢結、」
夢結「私が貴方に何をしてあげたって言うのよ!・・・ただ私は貴方に貰ってばっかりじゃない!!今も、昔も、それに命までも、・・・なんで貴方はいつも自分勝手なの!」
まるで壊れた人形のように崩れ落ちる彼女、その表情を見ることは出来ないが、その声色から彼女が今出している言葉は彼女の本心そのものであり最も辛いものであることがわかる。
夢結「・・・何も教えずにずっと、自身を削りながら、・・・そんなに私に優しくしないで、本当なら憎むべきなのに、なんで貴方は謝るの。」
きっと彼女は彼の前ではこの気持ちを隠しているのだろう。
今の言葉を聞く限り彼は、彼女のためならどんな事でもしてしまう。それが彼女には1番辛いのだ・・・自身のせいで彼が傷つくことが、
いくら声を変えようが気持ちを伝えようが、それでも彼は止まらないのだろう。
夢結「もういいの、お願いよ・・・お願いだからもう休んで、これ以上壊れる貴方を見たくないの。・・・やっと本当の貴方に出会えたのに、」
これまでの言葉から少女達は彼の不安定さは、目の前の彼女が関係していることと、彼女本人が自身を責めている事を理解した。
夢結「・・・どうして世界は貴方を苦しめるの、もう十分苦しんで来たのに、やっと歩き出せたのに、・・・そんなに彼を苦しめるなら代わりに私を苦しめなさいよ!」
どれだけ言葉を並べても過去を変えることは出来ない。
しかし叫ぶしかないのだ。この理不尽な世界に、彼を苦しめ続ける全てに、そして何よりも、
夢結「・・・私なんて、私なんて生まれてこ・・・ッ!!」
彼を苦しめ続ける元凶である自分自身に、
彼を苦しめ続てることしか出来ないのなら生まれて来なければよかった。
彼女がそう叫ぼうとした時、突如彼女の叫びは止まる。
夢結「それではまた同じよ、いつまで引きずっているのよ。こんな気の持ちようではダメよ、心をしっかり持たないと、・・・それに私が居なくなったら彼はもう生きていけないのよ。そんな無責任なことをしてはいけない。」
ここで少女達は確信する・・・白井 夢結は狂っていると、
いいやこの言葉は正しくない。
きっと彼女は、彼女達は、
夢結「・・・ごめんなさい、話が逸れたわね。・・・続きをしましょう。」
お互いに狂い合っているのだから、