アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
お互いに狂う・・・まるで壊れかけの歯車同士が歪みながら回るかのように、
それは壊れては直し続けたがために、他の歯車とは決して噛み合うことがないほどに変形をしてしまった・・・本来なら回るどころか壊れていないことが奇跡とも言える代物。
しかし2人のそれは奇跡的に噛み合っているのだ・・・少しでもズレてしまえば自壊してしまう程紙一重の状態で、
夢結「私の心臓が作られたものである事は理解出来たわね?」
天葉「・・・頭は拒否したいけれど、そうね。」
先程まで突然の崩れ落ちていたはずの夢結は、まるで何事も無かったかのように会話を始める。
夢結「今ある私の心臓・・・それは彼の片瞳が変質したものなのよ。」
依奈「おかしくないかしら?・・・もしも心臓の1日目があるのなら定期的にある健康診断でわかるはずよ?」
夢結「作り替えたのよ・・・見た目や機能を心臓のものに変えて、でもそれだけではダメだったの・・・。」
天葉「・・・ダメって?」
夢結「・・・彼が確認した時には私は蘇生不可の状態まで来ていて心臓があったからってどうこうなる問題ではなかったの、」
天葉「・・・。」
夢結「だから彼はある行動に出た。・・・自身の力の片割れ『壊始』の瞳を私に埋め込むという手段に、」
夢結は1度言葉を区切ると両手を自身の胸・・・心臓の位置で重ねる。
夢結「そうすれば私の『死』を破壊して、生き返ると考えたのでしょうね。・・・そして彼はその賭けに勝ったのよ
・・・重すぎる代償と共に、」
樟美「・・・代償、」
彼が負ってしまった代償、それは少女達にも容易に想像することができた。
それこそが先程の彼の行動そのものであり、2人が狂ってしまった原因なのだから、
夢結「彼の精神に異常をきたしてしまったの、自己意識の希薄化ね、・・・異能は自身の側面の1つであると共に心そのもの、元々覚醒したばかりで不安定だったものを2つに分けてしまったのですもの、まともに機能するわけがないわ。・・・そのせいで彼は自身に対する関心が希薄となってしまった。」
自己意識の希薄化・・・それは自己が存在することを認識することが出来ないことを指す。
地球上の生物・・・その中でも人間にとって、自己の認識は自我を獲得する上で最も重要な役割を担うものであり、それがなければ人は己を認識することが出来ない。
例え鏡に映る自身を見ても、それを自身であると認識することができないのだ。
もしも希薄化してしまえば、自身が誰なのか分からなくなってしまい何もすることの出来ない植物と変わらない存在となるだろう。
夢結「その中で最後に取った行動・・・私を助けることだけは認識出来たのでしょうね、」
そして彼はこの自体に陥ってしまった。
己が誰なのかすら分からずに、何をすればいいのかすら分からない。
その中で
それさえわかってしまえばあとは簡単だ。
もしも人が1つのことしか認識出来なのならどうなるか?
・・・その1つの事のみに注力を注ぐようになる。
まるで縋り付くかのように、
夢結「・・・そのせいで彼は全てを投げ出して1つ目的への行動を取るようになった、他のことをしたとしてもそれは結局目的のための前段階に過ぎない、・・・それのせいで彼の精神はおかしくなってしまった。」
天葉「・・・。」
夢結「完全な消失ではないから時間が経てばある程度自身を認識出来るようにはなってしまうの、・・・でもその時には自身を認識すること自体に違和感を感じてしまい正常を正常と判断できなくなってしまうのよ。」
天葉「・・・。」
夢結「おかしいとわかっているのに気づくことが出来ない。・・・それはどれだけ辛いのでしょうね?その負荷から彼は心の中に新しい自分を作ってしまった。・・・年相応の少年である彼を、」
壱「・・・それは二重人格のことでしょうか?」
夢結「そうね、日常は
天葉「・・・そう、」
あまりにも悲惨過ぎる現実に少女達は夢結に声をかけることが出来ない。
夢結にとって彼に起こっている精神の異常性は全て彼女自身のせいなのだ。
それは耐え難い苦痛であるだろうが、その状態に陥ってしまっている彼はその何倍もの苦痛を味わい続けているのだ。・・・いいや、もしかしたら苦痛という認識すらないのかもしれない。
もしそうだとすれば彼も、彼女も、どちらにも救いがない。
夢結「今は精神も安定し始めて落ち着いているから、そこまで心配することでもないわ。けれど先程見たいに心傷となったことを連想させるものを知覚した場合にああなってしまうの、」
そんな彼女にどうにか声をかけられないかと頭を悩ませる少女達、
その中でも、現状を見れば改善の方向にあることはわかるため少しの安堵感を覚えた。
しかし彼女の次の言葉で、少女達は知ることになる。
夢結「ここまでは精神異常の発生・・・
本当の地獄はまだ始まってすらいないことを、