アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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ラスバレ1章58

夢結「甲州撤退戦時にリリィ以外に前線で戦っていた人がいることは知っているわね?」

 

天葉「・・・ええ、『死神』でしょう?」

 

夢結「そう、そして『死神』の正体は彼よ。」

 

依奈「それ本当なの・・・。」

 

夢結「ええ、その頃には面識があったお姉様から私参加する情報を聞いたみたいでね。・・・これは他言無用にしてほしいのだけれど、甲州撤退戦の原因となったヒュージの進行はネストの異常変異により生まれた2体目のアルトラ級・・・それにより容量を超えたネストからヒュージが溢れ出したことが原因らしいわ。」

 

天葉「2体目!?それ本当にマズイじゃない!!」

 

 

何事もないかなように飛び出した彼女の言葉に、少女達は焦りの表情を見せる。

本来アルトラ級とはネストに一体のみ存在する規格外な個体でありアルトラ級を撃破することでネスト自体が崩壊すると言われている。しかしその逆でネストが崩壊してしまえば巣なしのアルトラと呼ばれるとても凶暴な個体へと変質してしまうのだ。それを阻止するためにネスト攻略はアルトラ級の撃破が最大目標となっておりその間決してネストを崩壊させてはならない。

 

この特性からアルトラ級はネストがあれば外部に危険を与えないが、同じネストに2体目のアルトラ級が産まれればどうなるか、実例がないため想像でしかないが夢結の言葉からネストが存在する状態でアルトラ級が外へと出てしまう可能性が出てしまうのだ。そうなってしまった場合の被害は計り知れない。

 

このことから天葉達は慌てて出すが、それを夢結は宥める。

 

 

夢結「それは彼が間引いたから問題ないわ。そもそも彼が参加した理由がアルトラ級の間引きとネストの安定化よ?」

 

天葉「・・・間引きって、」

 

夢結「そもそも、甲州撤退戦から2年間経っているのよ。放置されていたら既に現れているわ。」

 

依奈「・・・そう、」

 

 

どうにか天葉達を宥めることに成功したが納得いかない表情をする少女達、しかし夢結は気にする素振りもなく話しを続けている。

 

 

夢結「間引きを終えたあと彼は増えすぎたヒュージを撃破しながら情報操作をしていたらしいわ。アルトラ級の撃破で調査結果が変化する可能性を考えたのでしょう。」

 

天葉「その頃から暗躍していたの?」

 

夢結「暗躍って・・・。まあいいわ、問題はその後よ。」

 

壱「その後ですか・・・まさか!」

 

依奈「何かわかったの?」

 

壱「甲州撤退戦時に鎌倉府近辺でケイブが発生したのは覚えていますか?」

 

天葉「ええ、すぐに殲滅出来たのよね・・・でも確か数名の行方不明者がって、そういうこと・・・。」

 

夢結「そう行方不明者の中に彼のご両親もいたのよ。・・・彼もケイブの発生を聞いて急いで戻ったらしいわ、でも間に合わなかった。」

 

樟美「・・・間に合わなかった?」

 

夢結「・・・彼の目の前で・・・ね。」

 

 

ここに来て初めて彼女は口を噤むいだ。

まるでそこから先の出来事を認めたくないかのように、

それでも少女達には彼女の言いたいことは理解出来た。

 

 

夢結「・・・その瞬間、彼は堕ちて(壊れて)しまったのよ。」

 

樟美「・・・堕ちる、ですか?」

 

夢結「・・・そうよ、『獣』にね。貴方達も聞いたでしょう・・・異能者の末路を、」

 

 

『獣』・・・それは異能者の末路であり、人の根源の1つであり、どれだけ拒絶しようが、それは決して否定出来ない本質である。

 

人は皆全て『獣』であり、抗うことの出来ない真実

 

この思想はかなり根深く、とある経典には、

『ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は666である。』

と書かれている。

 

このように古来より『人』と『獣』は密接な関係にある。

人は知性を持つがそれと同じく獣性を内包する。

 

そして獣性は強い意志()を持つものほど強まり、強ければ強いほど1度堕ちてしまっては自身の力では戻ることが出来ないことを示す。

 

一般的な人達でも獣を宿すのだ、それよりも強い(意志)を持つ異能者ではどうなるか、

 

本能のままに(全てを)生きる(壊し尽くす)獣になってしまうのだ。暴れてしまえば目につくものを全て壊してしまう。

そして1度落ちてしまえば、2度と戻ることが出来ない。

 

 

天葉「・・・それじゃもしかして彼は、」

 

夢結「堕ちているわ。」

 

依奈「・・・ならなんで彼は人として暮らせているの?」

 

夢結「完全には堕ちていなかったからよ。」

 

依奈「でも堕ちたって・・・、」

 

夢結「獣になる時徐々に堕ちて行くのよ、まるで侵食されていくかのようにね。だから完全に堕ちる前に必要最低限のものだけを切り離して保護したのよ。」

 

天葉「・・・。」

 

夢結「感情を、記憶を、心を、生きるために、目的を達成するために、必要最低限のものだけを残すことで無理矢理超越者になったのよ。」

 

天葉「無理矢理・・・、」

 

夢結「無理矢理よ。だから彼は超越者であると同時に獣でもあったのよ。・・・これは私も体感した事があるからわかるわ、どこまでも暗くて冷たい誰もいない場所に引きずり込まれてしまうの、・・・寂しくて、怖くて、」

 

 

その時のことを思い出しのか彼女は身体を震わせた。

 

 

夢結「そこからは先程彼が話した通り・・・人の負の部分を見続けて来たから過剰に反応してしまうのよ。」

 

 

そこまで言い終わると彼女席へと戻り腰かける。

 

 

夢結「・・・私が言えるのはここまでね、これでよかったかしら?」

 

天葉「ええ、むしろこれ以上聞かされたら頭パンクしてたわ、ありがとう。」

 

夢結「どういたしまして、」

 

 

天葉達からの質問が終わったことを確認した夢結は1度深呼吸をすると普段の雰囲気へと戻り、たわいのない会話を花咲かせ始めた。

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