アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
音羽「あの人にしては変・・・。」
叶星「・・・どうしたの?」
時を同じくとある一室で音羽は叶星達と共に居た。
その部屋は古い洋館にあるであろうアンティークを意識した造りとなっており少々の目新しさと、落ち着いたをかもちだしていた。
音羽「・・・あの人が不安定なのは元々だけど今日のは酷すぎる。」
高嶺「確かに、あの豹変具合は異常ね。」
音羽「豹変はいつものことです。」
高嶺「・・・そう、」
音羽「私が問題にしているのは、簡単に表に出したこと、いつものあの人なら絶対にあんなミスしない。・・・きっと何かあったはず、です。」
高嶺「・・・原因はわかるのかしら?」
音羽「・・・きっと夢結様、」
高嶺「・・・彼女が?」
音羽「彼女といる時だけあの人の雰囲気が少し違う。それに無自覚だろうけど微かに表情に出てるし、」
高嶺「なら危険なのかしら?」
音羽「それはない、です。」
高嶺「・・・どうしてなの?」
音羽「最後のあの人の瞳・・・彼女の声で穏やかな瞳になったから、」
予想外の返答に高嶺が動けないでいると、隣にいる叶星が笑い出す。
叶星「随分彼のこと知っているのね。」
音羽「・・・裏では1番付き合いが長いので、美鈴様以外と、」
高嶺「そうだとしてもよ、それほど心配なのかしら?」
音羽「・・・当たり前、私はあの人のお陰で今を生きてる。・・・命の恩人を助けるのは当然、」
音羽は冷淡に言葉を並べていくが、叶星はその中に微かに熱を感じた。
それは小さくあるが強く決して消えない炎、それを灯した存在はすぐに予想がついた。
音羽「・・・それにあの人には全てをもらった。」
叶星「・・・全てを?」
音羽「はい・・・住む場所も、生きる術も、生きる意味も、・・・そして大切な家族を、あの人は気にしてないだろうけど、貰った分の恩は必ず返す・・・それが私の恩返し、」
高嶺「・・・言葉そのままね。」
音羽「だけど事実です。・・・そしてこれは曲げない。」
固い意思の元紡がれる言葉、どれだけ膨大で困難であろうとも絶対に返しきる。
彼女自身もこれがただの自己満足であると分かっているだろうが、それでいいのだろう。
それがきっと彼女の・・・、
叶星「暗い話はこれで終わり!明るい話題にしましょう!!」
高嶺「・・・そうね。」
灯莉「賛〜成〜!!」
紅巴「ですね、土岐はこれ以上お話についていけません・・・。」
定森「そうですね。ストレスはお肌の天敵ですしアイドルであるものストレス管理はしっかりとしないと!」
1人ズレた返答をするものもいるが皆が賛成したため音羽は席を立ち棚へとからお茶類を取り出しテーブルへと並べ始めた。
蓮夜「僕も未熟だな。」
1人そう呟く彼は草原の上に座っていた。
辺り一面緑が生い茂るそこには均等に並べられた石板が無数に配置されておりそれを包むように赤い花が咲き誇っていた。
美鈴「それは成長だと思うけどね。」
蓮夜「・・・姐さん、」
美鈴「やっぱりここにいたか、」
蓮夜「はい、少し思う所がありまして、」
1人しかいないはずの空間に新たな声が響いたため、声の方へと視線を向けるとそこには美鈴の姿があった。
蓮夜「天葉達はいいんですか?」
美鈴「夢結がいるから大丈夫さ、それで君の方は落ち着いたかい?」
蓮夜「はい、ただ・・・。」
美鈴「・・・ただ?」
蓮夜「ただ思うんです。・・・もっと上手く立ち回れていれば助けられる命はまだあったんじゃないかって、」
美鈴「それは慢心が過ぎると思うよ。」
蓮夜「そうですかね?」
美鈴「・・・おや?今日は素直じゃないか、昔はよく噛み付いて来たのに。」
蓮夜「・・・もう子供じゃないんですから、そこら辺の区別は着いているつもりです。」
美鈴「本当にそうかな?・・・さっきの言葉が出る時点でまだ引き攣っているみたいだけど、」
彼女の返しに反論できないのか、苦笑いで返す彼の横に彼女は座る。
美鈴「ここ、百合ケ丘よりも凄いんじゃないかな?」
蓮夜「かもですね。・・・多すぎて狭いかも、」
美鈴「そうかな?逆に喜んでいるかもよ。」
蓮夜「ならいいですけど、」
美鈴「そういえば僕のはあるのかい?」
蓮夜「あるわけないでしょう。今ここにいるんですから、」
美鈴「それもそうか、」
そこからしばらくお互いに言葉が思い浮かばないのか沈黙が続く。
ただ進み続ける時の中、草原に吹くそよ風と擦れる草花の音だけが響く中2人は静かに眺め続けた。
そしていくらか時が経った時、彼の端末から着信音が響く。気づいた彼が端末を確認するとゆっくりと立ち上がり背伸びをした。
蓮夜「皆落ち着いたみたいですから行きましょう。かなり時間も掛かってしまいまし、」
美鈴「そうだね、行こうか、」
彼の言葉を聞いた美鈴も立ち上がるとこの部屋を後にする。
それをみたい彼は1度目の前の石板へと近寄ると近くに合った花を手折り石板の前に置いた。
その花は茎に6つ程の花円状に外へと向かって咲いており、花弁は細長く放射状に広がり鮮やかな深紅に染まっていた。
蓮夜「また来ますからね、お姉さん。」
彼はそう呟くと彼女の後を追うようにこの部屋を後にした。