アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
蓮夜「・・・詰めが甘かったね。」
夢結「・・・むぅ、」
蓮夜「ほらほら、不貞腐れない。最初と比べてかなり成長したよ。」
夢結「・・・でも、」
蓮夜「最初なんて3手で終わってたんだから、それに比べたら10分まで伸びたのは成長でしょう。」
夢結「その言い方少し傷つくわ・・・。」
蓮夜「ご、ごめん!?」
見るからに落ち込む夢結に慌てた様子で視線を右往左往させる蓮夜にクスリと笑う彼女、それを見た彼はジト目を向ける。
蓮夜「・・・。」
夢結「私が言うのもなんだけれど不貞腐れるのをやめなさい。」
蓮夜「・・・心配してるんだよ。」
夢結「はいはい、ありがとうね。」
不機嫌そうに視線を逸らす彼、それを笑みを浮かべながら回り込む彼女はつま先立ちするとそっと彼の頭を撫でる。
夢結「貴方には感謝しているわ。こうやって私に付き合ってくれてるもの。」
蓮夜「それは僕のエゴもあるんだ。感謝されることでもないよ。・・・それに僕も君に感謝しているんだ。君のおかげで僕は僕でいられる。」
夢結「そう思えるようになってくれたなら嬉しいわ。」
蓮夜「・・・こうやって過ごすこと、ずっと諦めていたんだ。」
夢結「・・・そうよね。」
蓮夜「何も感じなくて何も思えなくて、その中でも唯一君のまもることだけしか考えされなくて、だからそれだけのために生きてきた。」
夢結「・・・。」
蓮夜「どんな手を使っても、どれだけ手を汚してでも、唯一残っているそれだけはどうしても手放したくなくって、自分のことなんてどうでもいいと思ってた。」
夢結「・・・。」
蓮夜「たぶんこれも僕が無意識に生きたいと思ってたからなんだろうね。・・・何も残ってなくても、いいや残ってないからこそ昔持っていた幻想に縋り続けた。」
夢結「・・・もう幻想ではないわ。」
蓮夜「・・・そうだね。」
夢結「確かに貴方は今まで全てを捨てていたわ。でも今は違うでしょう?」
蓮夜「そうだね。・・・君が居てくれるなら僕はもう諦めない。」
夢結「わかっているわ、だって蓮夜・・・貴方の心からその気持ちが私にも流れ込んでくるのだもの。だからこそ私も言わせてもらうわね。どんなことがあろうと貴方を1人にしないわ・・・決してね。」
蓮夜「・・・ありがとう。」
彼は優しげな表情をしながら自身の頭を撫でる手を握ると自身の胸に寄せる。
そして深呼吸とともに目を閉じるとその雰囲気は真剣なものへと変化した。
蓮夜「本当に君は優しいね。・・・だからこそ君を連れて行くことは出来ない。」
夢結「・・・なんのことかしら?」
蓮夜「しらばっくれないでいいよ。・・・君も出る気だったんだよね。彼女との戦いに・・・言わなくてもわかるよ。君が僕を心配してくれていることはよくわかっているから、僕はトラウマが多いもんね。」
夢結「なら・・・それがわかっているならどうして、」
蓮夜「ひとつ問題をいいかな。」
夢結「急にどうしたのかしら?」
表情を影に落とす彼を心配そうに見つめる夢結、そんな彼女に彼はひとつの問いを投げかけた。
蓮夜「まず初めにこの問題に正解は存在しない。これだけは覚えておいて、」
夢結「え、ええ。」
蓮夜「じゃあ問題です。
『貴方は今2択の選択肢に迫られています。
1つは自身の守るべきもの、君の場合は梨璃さんだね。
そしてもう1つは親しいもの、これは一柳隊の皆としよう。
君の目の前でこの2組が危機的状況に晒されている。そんな中で後者なら確実に救うことが出来るがそうすると前者は救うことが出来ない。逆に前者を助ける場合その人を救える可能性は5割、そして後者が助かる可能性が1割になってしまう。
この状況で君は前者と後者、どちらを選ぶ?』」
夢結「梨璃かレギオンの皆・・・。」
蓮夜「やっぱり悩むよね。・・・でもそれじゃダメなんだ。」
夢結「・・・え?」
蓮夜「この問題夢結以外にも梨璃さんと天葉、依奈、そして理事長代行にしたんだよ。」
夢結「なんで!?」
彼の口から出たないように夢結は彼に掴みかかる。
彼はそれを抵抗することなく受け入れると、胸倉を捕まれその身体は宙に浮くが、気にする様子もなくそのままの状態で話を続けた。
蓮夜「これに対して僕の望んだ答えを出したのは梨璃さんと天葉だった。」
夢結「・・・どういうこと?」
蓮夜「その時の梨璃さんの答えはこうだ『私は前者を救います。どれだけ大変でも諦めなければどうとでもなりますから!それに皆なら大丈夫ですよ。むしろ私が行くとかえって邪魔になりそうですし、』って即答だったよ。」
夢結「・・・。」
蓮夜「ついでに天葉は『楠美に決まってるでしょう!!依奈達ならいいのよ!どうせ自分達でどうにかするでしょうから』・・・こっちも即答だったね。」
夢結「・・・すぐに決定できる判断力がないってことかしら?」
蓮夜「・・・次に依奈だけど、彼女は君と同じ感じだったから割愛するよ。そして代行だけどあの人は『・・・後者を選ぶ、例え可能性があるとしても彼女達を危険な目には・・・。』あの人も即答ではあった。」
夢結「何が違うの?」
蓮夜「迷っていたんだよ。あの人は・・・多分全員救いたいんだと思うよ。でも現実的に考えてそんなリスクを背負わせる訳には行かない。だからこそ自分の気持ちを押さえ込んで確実な方を選んだ。」
夢結「けれどそれも大切なことじゃ・・・。」
蓮夜「確かに大切だね。・・・だけど刹那の時間で状況が変わる異能者の戦いでは気持ちを押さえ込むことすらも隙になってしまうんだ。」
夢結「・・・。」
蓮夜「特に僕みたいに搦手が得意なタイプは少しでも隙を見せるとその瞬間に何もかもがひっくり返される。」
彼は彼女から数歩離れると先程まで何も持っていなかった手にナイフが握られておりそれは彼がそっと手を離すと重力に従い下へと落ちていった。
それは地面に接触すると吸い込まれるように地面に突き刺さり・・・。
蓮夜「・・・こんな感じでね。」
夢結「ッ!?!?」
蓮夜「・・・大丈夫、そのままじっとしてて、」
むき出しになった刀身が彼女の腹部から生えていた。
それに気づいた夢結は慌てたそれを引き抜こうとするがその瞬間彼女の首筋にナイフが添えられる。
蓮夜「大丈夫、それは君の服の上から生えてるだけだから君に傷はつかないよ。」
夢結「そ、そうなのね・・・良かったわ。」
蓮夜「・・・でも、やっぱりそうなんだね。」
夢結「どうしたの?」
彼の言葉と同時に消えたナイフを見てほっとする彼女、けれどそれを見た彼は視線を下げ寂しそうな表情をすると彼女ことを抱きしめた。
蓮夜「やっぱり君を連れて行くことは出来ない。」
不意なことであったがその温もりに力を抜く夢結、しかし彼返ってきた言葉は彼女にとって残酷なものであった。