アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
夢結「・・・。」
二水「ゆ、夢結様?」
夢結「・・・。」
梅「おーい!聞こえてるか?」
夢結「・・・。」
ミリアム「ダメじゃ・・・完全に沈んでおるぞ。」
密会の翌日、彼女達はロッジにいた。
休憩中なのかソファーに座る面々、その中で1人テーブルに突っ伏しながら暗い雰囲気をかもちだしていた。
そんな彼女・・・夢結が心配な一柳隊の面々が彼女に声をかけるが反応を示さない。
梨璃「お姉様?・・・何かあったのですか?」
夢結「・・・何がいけないのかしら?」
神琳「やっと反応を示しましたが・・・よく分かりませんね。」
しばらく経ちようやく反応を示した夢結、しかし返された言葉は意図が分からないため梨璃達の悩みはより深くなってしまった。
楓「・・・この感じは黒鉄さんでしょうか?」
神琳「それ以外に要因が思いつきませんからね。・・・あの人ちょうど今いませんし。」
ミリアム「じゃが、なにが原因なのかのう?」
雨嘉「・・・梨璃、何か夢結様から聞けない?」
梨璃「えっと・・・お姉様?昨日黒鉄さんと何かあったのですか?」
それぞれの考えの元に夢結がこうなっている原因であろう人物を予想した彼女達、そんな中で唯一夢結が反応を示す梨璃が彼女に対して質問する。
夢結「・・・私って本当に彼に返せるのかしらね。不器用で頭も固くて、戦闘でも足でまといで、そういえば私も普通の子供ってどういうことかよくわかっていないのよね。・・・こんなことなら交友関係もしっかりとしておけば良かったわ。・・・ふふっ無理ね。だって私が出来なかったから彼はああなってしまったのよ。」
ミリアム「・・・悪化しおった!?」
鶴紗「・・・逆効果だったか?」
神琳「・・・その可能性は否定できませんが情報も出てきましたね。」
雨嘉「色々と言ってるけど半分くらい聞いちゃいけないもののような・・・。」
二水「それ、まずくないですか?」
神琳「ふーみんさん、言って見てください。」
二水「ふぇ!?なんで私なんですか!?」
神琳「私達の中で1番聞き取りに慣れているのは貴方ですかなね。・・・それに得意でしょう、地雷を踏み抜くのは?」
楓「確かに適任ですわね。行きなさい梨璃さんのために!!」
ミリアム「・・・まるで生贄扱いじゃな。」
鶴紗「普段の行いじゃないか?」
突然のことに涙目になる二水と、それに詰寄る神琳と楓、そんな二人をみてミリアム達が遠い目をする中、夢結は重々しく顔を上げた。
夢結「自覚はあるけれどそこまで酷いかしら・・・。」
神琳「夢結様お気づきになられましたか、それでどうしたのでしょうか?」
夢結「・・・無視なのね。」
自信の扱いに不満を覚えた夢結だが神琳は彼女の言葉を受け流しながら質問を投げかける。
その様子に彼女の雰囲気がより暗くなるが、自覚はあるのか特に反論をすることなく先日の出来事を話始めた。
夢結「・・・その足りない何かが分からなければ参加させられないらしいのよ。」
二水「・・・ただ夢結様が危険な目にあって欲しくないだけじゃないですか?」
夢結「それも考えたわ。・・・けれど彼、嘘をついていなかったのよ。」
神琳「・・・繋がりですか?」
夢結「ええ、今の私は彼と繋がっているからお互いの感情くらいなら簡単に理解できるのよ。でも彼には罪悪感みたいな嘘をつく時の感情がなかったわ。」
楓「でしたら他にあの人は何か言っていませんでして?」
夢結「・・・あるとするなら『実力があったら、梨璃さんと天葉なら参加させても良かったかもしれない』ね。」
梨璃「わ、私ですか!?」
雨嘉「質問のことかな?」
神琳「それなら、最後に取った行動の意図が分かりませんね。」
二水「動揺してしまったからじゃないですか?瞬時に判断しないといけないと仰っていますし。」
神琳「でしたら心臓・・・は無理ですが腎臓などの急所でも良かったはずです。それなのに腹部、それも話からして鳩尾でもない場所では刺された程度ならどうとでもなりますから、」
茜「あの人実戦派の現実主義だから絶対に急所ねらいますよ。」
音羽「なんなら毒まで仕込んでくるまでがデフォ。」
梨璃「茜さんに音羽さん!どうしてこちらに?」
茜「様子見ですよ。アタシも音羽も作戦時別行動なんで連携とかの見直しで邪魔になりますし、やることありませんから。」
音羽「それにあんな空気が漏れ出てたら気になる。」
夢結「ごめんなさいね。」
茜「いえいえ、ちょっと外から聞いてましたけど先輩と何かあったんですか?なんだったら聞きますよ。」
音羽「助けになるか分かりませんが・・・。」
夢結「・・・お願いできるかしら。」
二人の言葉に悩ましい表情をする夢結、彼女は数秒考え込むと彼女達に目を向け先程の内容を伝えた。
それを聞いた二人は少し考えると彼女へと質問を投げかける。
茜「・・・今回戦闘に関しては何も言われてないんですね?」
夢結「ええ、そうよ。」
音羽「なら、殺しに対する感情とかは?」
夢結「聞かれてないわ。そもそもヒュージと戦っている時点で覚悟出来ているもの。」
茜「ですよね。なら刺され位置は本当に鳩尾じゃなかったんですか?」
夢結「ええ、近いけれど少し下ね。」
音羽「・・・茜、」
茜「・・・アレかな。」
梨璃「お二人とも何かわかったんですか!?」
茜「わかったけど・・・これは本当に誰かに教えて貰っちゃダメなやつだ。」
音羽「教えてもらった時点であの人なら戦闘すらさせて貰えない。」
夢結「・・・それほど大切という事ね。」
茜「はい、あの人はわかったんでしょうね。貴方を大切に思っているからこそ。」
音羽「多分、あの人が1番精神的に参ってるはず。もしかして今発狂してるかも・・・。」
二水「そんなにですか!?」
神琳「確かにあの人は夢結様至上主義ですけれどそこまでは・・・。」
夢結「・・・。」
ミリアム「・・・まさか、」
夢結「なっている可能性が高いわ。先程から彼の感情が読めないから、」
茜「だから先輩はいないんですよ。」
音羽「それに美鈴様?もそっち言ってるみたいだからフォローしてる。」
夢結「わかるの?」
音羽「あの人の性格は昨日把握したから、あと一つだけヒントを言える。」
夢結「・・・何かしら?」
音羽「1度あの人の全力と戦うこと。」
梨璃「それはいつもしてもらってますよ。確かに手加減はされてるますけど、1度だけ危険性を教えて貰った時に、」
音羽「それでも傷つけないように細心の注意を払ってやってる。私が言いたいのはそれじゃない。」
梨璃「どういうことですか?」
音羽「夢結様・・・貴方には黒鉄さんと殺し合いをしてもらう。」
音羽の放った一言、その意味にそして彼女の放つ異様な気配によって部屋の中を凍えるような冷たい冷気が撫でた。
夢結の元に2人が訪れる少し前蓮夜は1人訓練室にいた。
蓮夜「・・・!!」
周囲のビルを無差別に壊す彼、その動きにはいつもの洗練されたものではなくただ荒々しくおおよそ訓練と呼べるものではない。
蓮夜「・・・ァァァあああ!!」
それは八つ当たりのようであり、彼の感情を表すかのようにビルの破片は縦横無尽に辺りに飛び散り近くのビルを傷つけていく。
蓮夜「他にも方法はあっただろ!・・・でも夢結自信が気づかないと、でもよりにもよってなんであんな手を取った!!」
2転3転と変わりゆく感情、それに
蓮夜「夢結が無理をするのはわかってる・・・だから僕は、僕は、僕はッ!?!?」
頭を抑えて呻く彼の首に一筋の線が入る。
それは黒から次第に赤へと変わり線が完全に赤く染まった時彼の頭は宙を舞った。
切断面から吹き出る鮮血が空を彩る中彼の首は地面を転がる。そこに表情は無くただ虚無をのみを映す瞳を持つそれはゆっくりと地面を進み続けると何かにぶつかる事でその動きを止めた。
美鈴「・・・落ち着いたかい?」
蓮夜「・・・ありがとうございます。」
彼の首を止めた正体は美鈴の足であり彼女は悲しげな表情をしながら彼を見下ろしていた。
それを認識した彼は一言礼を入れるとその頭を結晶へと変えて姿を消した。
蓮夜「どうして俺は傷つけることしか出来ないんですかね?」
美鈴「それは皆同じだと思うよ。人は傷つけながらでなければ生きていけない。」
蓮夜「わかってますよ。・・・でも考えるんです。もっと夢結を傷つけないで済む方法があったんじゃないかって。」
美鈴「・・・はぁぁぁ。」
声の方を向くと先程まで首のなかった彼の胴体に首が繋がっており、悔しそうに震える彼の姿があった。
そんな彼を見た美鈴は1度ため息を吐くと彼へと近づき、
美鈴「1回全力でやろうか。」
彼の首へと刃を添えた。
夢結「殺し合い・・・ですって、」
音羽「そう相手の命を奪うまで行かなくてもその直前まで行く本当の致命傷まで、」
梨璃「どうしてそんなこと!」
音羽「つらいかもしれないけど必要。それに死ぬことは絶対にない。」
神琳「・・・殺し合いなのにですか?」
音羽「そうまずあの人は獣にでもならない限り基本死なない。」
夢結「・・・そうね。でも私はそうではないわ。」
音羽「わかってる。でも大丈夫・・・あの人は絶対に殺せない。・・・少し違う、あの人は異能者が相手なら絶対に殺せない。」
夢結「・・・殺せない?」
音羽「そう、だってあの人は、」
蓮夜「本気で言ってますか?」
美鈴「もちろん、最後までいこうか。」
蓮夜「でも姐さんでは俺は殺せませんよからいいですけど、俺は姐さんを殺せます。もし何かあれば、」
美鈴「それがないことは君が1番理解しているはずじゃないかい?」
蓮夜「・・・。」
美鈴「確かに君の力は強大だろう。汎用性、攻撃性、防御性、全てにおいて異能者としても逸脱している。そして君の異能者への最大の強みであるアレは異能者同士の戦いで絶対的なアドバンテージだろう。」
蓮夜「・・・。」
美鈴「確かに無力化なら勝負にならないだろうけど、殺し合いなら状況が違う、だって君は、」
別々の場所で語られる言葉、それは偶然かそれとも必然なのか一つに重なる。
音羽・美鈴「「その力は異能者の中で最も異能者を殺すことに向かない力なのだから、」」
1字1句変わらぬ2つの言葉は2つの場所で同時に響いた。