アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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ラスバレ1章73

希望・・・その言葉を聞いた夢結は混乱の中にいた。

彼女は『希望』と言う単語が理解出来ないのだ。

漢字2文字、平仮名だとしても3文字しかない言葉、そんな単純な意味しかないこの単語を今の彼女には理解することが出来ない。

 

 

夢結「・・・希望?」

 

音羽「そうだよ!私にとっては唯一の・・・ね!」

 

夢結「・・・どういう意味かしら?」

 

音羽「・・・へっ?」

 

 

首を傾げながら疑問を口にする夢結の姿に音羽は一瞬惚けるが、すぐさま冷静さを取り戻した音羽はある違和感を覚えた。

 

・・・どうして《どういう『意味』》といったのかと、

 

どうしてその答えに至ったのかを問いただす《どうして》や《なぜ》ならわかる、しかし彼女は《意味》と言った。

それは、言葉に対して理解出来ないことがある場合に用いられる言葉だ。

たしかに抽象的であったがそれでも彼女になら理解出来るはず、それなのに彼女は《意味》を理解出来ていない。

 

 

音羽「意味って、そんなこッ!?」

 

夢結「・・・?」

 

 

なぜ理解出来ないのか、それを確かめるために音羽は彼女の顔を目を見た口篭る。

 

夢結の瞳に光がなかったのだ。

そこで音羽は一つの可能性にたどり着いた。それは理解出来ないのではなく、理解したくないと言うこと。

 

彼女は理解しないために心を閉ざしてしまっている。

それを見た音羽は険しい表情をし、

 

 

音羽「逃げるな!!

 

 

夢結の頬を殴り抜いた。

 

 

音羽「ふざけるな!なんで逃げるんだよ!!」

 

夢結「・・・どうしたの?」

 

音羽「どうしたのじゃない!ふざけるのも大概にしろ!!」

 

夢結「そう言われても本当に意味がわからないのよ。」

 

音羽「何も難しいことを言ってないだろ!」

 

夢結「それはわかるわ。でもわからないのよ?どうして私なんかを『希望』と言うのか、」

 

音羽「・・・ッ!?」

 

 

激昂のままに言葉をぶつける音羽に対して、やはり首を傾げながら穏やかな表情で返す夢結、そんな彼女をもう一度殴ろうと拳を握りこんだ時、夢結はとある言葉を紡ぐ。

それを聞いた瞬間、音羽は全てを理解した。

 

なぜ理解出来ていないのか、

それなのになぜわかるというのか、

そしてなぜ夢結は微かに震えながら涙を流しているのか、

 

 

音羽「・・・罪悪感、」

 

夢結「!?!?」

 

 

音羽の放った一言に夢結は微かに反応を示す。

それを見て彼女は理解した。

彼女が理解出来ない理由、いいや理解したくない理由は今も膨らみ続けている罪悪感にあったのだ。

 

 

音羽「・・・あの人に対して少し距離があるように感じてたけど・・・それが理由?」

 

夢結「だってそうでしょう?私は本来生きては行けない存在なのよ?それを彼の人生を対価にして生きている。」

 

音羽「・・・。」

 

夢結「この身体も、この記憶も、この思いも、この温もりも、本当なら全部私の持つべきものじゃなかった。・・・本来なら彼自身が持つべきものだったのよ。」

 

音羽「・・・。」

 

夢結「それを私は奪ってしまったのよ。・・・そのせいで彼は今も苦しみ続けている。そのような存在が『希望』なんて言えるのかしら?」

 

音羽「・・・。」

 

夢結「それに悲しむから彼に言えてないけれど、私は私自身のことを人形だと思っているわ。彼の思うがままに動き続ける人形、もしも望むなら私は自身の命すら平然と捨てられる。」

 

音羽「・・・。」

 

夢結「人形、壊れるまで主人の命令のままに動く物、そもそも私は人ですらないのよ。・・・それなのに人ですらないのに彼を救おうなんて私には言えないわ。」

 

 

どんどんと闇の深くなる夢結の瞳、それを見て理解は核心へと変わった。

 

 

音羽「あの人と同じなんだ・・・。」

 

 

同じなのだ・・・2人とも、

お互いにお互いのことを壊してしまった。

だからお互いに罪悪感が根付いている。

それが2人を狂わせているのだ。

 

それを知って音羽は笑う。

その笑みから見える感情、それは喜びだった。

彼女は今まで方法が分からなかったため苦しみ続けていた。

助けたい人がいる、しかし自身には助ける手段がない。

それでも彼女はもがき続けた。

 

 

音羽「・・・だからか、

 

 

・・・笑って欲しかったから、救ってもらった時の自身がしたように、

 

彼がいるから私は今を生きていけている。

だから恩返しがしたかった。

それが彼の望んでいないことだとしても、それがただの自己満足であったとしても、

あの日の彼のように、今度は彼を救いたかった。

だからこそ今、彼女は笑う。

 

どれだけ考えても、どれだけ行動に移しても、決して彼に響くことはなかった。

 

それでも諦めきれず様々な手段を模索した。

そのために必要なことは全て実行した。

それでも足りない。

 

力も、知識も、思いも、自身の持ち得る全てを用いても、その全てが失敗に終わる。

・・・足りないのだ。

一つだけ足りないパズルのように、

何か大切なものが足りない。

それを理解した彼女は、その足りないものを探した。

 

そして見つけたのが目の前の少女(白井 夢結)だった。

唯一彼が心を許せる存在、彼を救うための鍵に、

そして彼女に触れる事で遂に答えを発見した。

遂に得たのだ。

彼女の中でカチリと最後のピースがハマる音が聞こえる。

 

あとは実行に移すだけだ。

そのためには闇に沈んだ夢結をどうにかしなければならない。

完全に壊れていると確信出来る彼女の心をどうにかしなければならない、本来ならお手上げあるだろうこの事態だが彼女には関係なかった。

確信したからこそ取れる手段があるのだから、

 

 

音羽「夢結様・・・。」

 

夢結「・・・何かしら?」

 

音羽「・・・それでいいの?」

 

 

ピースは得た。

だからこそ音羽は一言呟く、実行に移すための鍵を開けるために、

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