アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
夢結「・・・どういうことかしら?」
音羽「本当に諦めていいのかってことです。」
音羽の言葉に光を失っていた夢結の瞳が揺れる。
夢結「・・・私は諦めてないわ。」
音羽「諦めてる。」
夢結「どうしてそう思うのかしら?」
音羽「貴方は自身のことを『人形』と言いましたよね?」
夢結「・・・ええ、私はそう思っているわ。」
音羽「だとしたらおかしいんですよ。」
音羽はそこまで言うと夢結の周りを回るように歩き始める。
音羽「だって人形ならどうして主の言うことを聞かないのですか?」
夢結「・・・何も言われてないからできないのよ?」
音羽「いいえ言われてますよ?」
夢結「ないわね。・・・彼が私に何も命令出来ないことは貴方も理解しているはずよ?」
音羽「いいえ、言ったはず。」
音羽の言葉に彼女は否定で返す。
しかし音羽はその言葉を聞き流し言葉を並べ続ける。
音羽「あの人は貴方の幸せを願っている。・・・それは間違いはいはず。」
夢結「・・・ええ、そうね、」
音羽「それで貴方は彼の『幸せ』を願っている。」
夢結「そうよ、」
音羽「ならその『願い』も叶えないとダメじゃないの?だって『人形』は造り手の『願い』が込められていることなのだから、」
彼女の言葉を聞いた夢結は目を見開いた。
その反応を見た音羽は細く微笑むとさらに言葉を重ねていった。
音羽「それなのに造り手であるあの人の願いを叶えようとしないなんて・・・本当に人形?」
夢結「私はそうだと信じているわ。」
音羽「怪しい・・・だって、所有物なら主を幸せにすることが最優先なのでは?」
夢結「・・・でも、人形は主の言うことを聞くものよ?だから、命令されなければ、」
音羽「だから『願い』をどうするか聞いてる。」
そこで夢結は口を閉じた。
それを見た音羽は彼女の後ろに行くとその表情を大きく歪
音羽「貴方が言ってることはただの言い訳。」
夢結「そ、そんなわけ、」
音羽「もう辛い思いをしたくない。・・・そう思ってませんか?」
夢結「・・・そんなこと、」
音羽「目を背けたらダメ、貴方はそう思ってる。」
夢結は必死な表情で反論しようとするが、その言葉は全て音羽の一言によりその全てが遮られてしまう。
着々と追い詰めるように言葉を重ね続ける音羽に、夢結は身体を震わせながら両手で顔を隠そうとするがそれは音羽防がれてしまい出来ない。
音羽「だから貴方は助けられない。」
夢結「いや、」
音羽「だから貴方は1人になる。」
夢結「やめて、」
音羽「きっとそれは変わらない。」
夢結「・・・おね、がい。」
音羽「どれだけ考えていても、心が逃げてたら意味がない。」
夢結「・・・もう、やめて、」
背後から囁くように聞こえ続ける声、それに対して必死に耳を塞ごうとするが、両手は掴まれているためそれは叶わない。
そんな夢結はまるで幼子のようにいやいやと首を振る。
それは普段の凛々しい姿とはかけ離れており普段の彼女を知る人が見たら目を疑うだろう。
音羽「ダメ、やめない・・・。」
夢結「・・・どうして、」
音羽「許せないから、」
夢結「・・・それは分かっているわ、私は今でも彼を、」
音羽「自分のことを見えてない貴方に、」
夢結「・・・えっ?」
脅えた表情で必死に逃げようとする夢結は耳を疑う。
今彼女はなんと言ったのか?
自分が見えていない?
・・・誰が?
夢結「私が・・・?」
音羽「そう、貴方は何も見えていない。自分が何なのか、何のために存在するのか、何を思っているのか・・・そして何を願い望んでいるのかを、」
夢結「分かっているわ。」
音羽「そう言ってる時点でわかってない。・・・もう一度聞く、貴方は何を願い何を望む。」
私自身が見えていない。
その言葉が夢結の脳裏を駆け巡る。
しかし彼女は否定した。
それは分かっているからだ。
私は人形、彼に作られた存在し得ない存在。
彼の全てを代価に生まれた歪な存在。
だからこそ私は彼役に立たなくては、意味が無い。
彼がそう思っていなくても、これは私の存在意義であり、目的、奥底にある思いなのだから、
どう言われようとも、それは変わらない。
はずなのだが、彼女の中でこの言葉に違和感を感じる。
それもまるで前提条件が違うかのように明確な、そして致命的な違和感。
その正体を探るために彼女は無意識に思考の海へと潜る。
夢結「・・・。」
音羽「・・・。」
夢結は弱々しい足取りで崖へと向かって歩き出した。
それに気づいた音羽は手を離し、静かに彼女の傍から離れる。
出来の悪い人形のような不安定な足取りで何度も転びそうになる彼女を見守る音羽は彼女に背を向けて歩き出した。
そして音羽が森の奥に消えたその時、夢結は何者かに手を引かれるように崖下へと落ちていった。
茜「・・・お疲れ様。」
音羽「・・・疲れた。」
音羽がしばらく歩いていると頭上から声が聞こえたため声の方へと視線を向けると、そこには茜の姿があった。
茜「随分と声を荒らげていたけど・・・すごく溜まっていたみたいだね。」
音羽「元々出さないから・・・かなり溜まってた、」
茜「それもそうか・・・ありがとうね。ワタシじゃあんなこと言えないからなぁ。」
音羽「性格的に無理なのはわかってる。こういうのは性格的に私の方が向いてる。」
優しい声色で喋る茜に怠そうに頷く音羽、それを見た茜は苦笑すると彼女の隣に飛び降りる。
茜「それでも、ありがとう。」
音羽「どうしたしまして、」
茜「・・・大丈夫かな?」
音羽「それはあの人達次第、」
茜「・・・そうだね。」
音羽「・・・帰ろ。」
茜「・・・うん、」
2人は頷き合うそれぞれが帰る場所へと向かって歩いていった。
夢結「・・・。」
彼女達が帰路に着く中、夢結は真っ白な空間にいた。
そんな彼女の表情は無く、力の抜けた身体で何とか立っている印象を受ける彼女はその髪や服の色から純白の空間に滲む黒い点に見える。
壁も床も、空すらも純白な空間に存在する2つの黒点の内の1人である彼女はその手に握る刃をもう1つの黒点、蓮夜へと向ける。
蓮夜「・・・。」
それを見た彼は一度深呼吸をすると虚空から大鎌を取り出し彼女へと向けると、彼女は弾かれるように彼へと襲いかかった。