アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
蓮夜「夢結・・・俺は君とは付き合えない。」
彼はそう言いながらその場を去ろうとする。
夢結「待って!」
その腕を彼女が掴み、
夢結「・・・どうしてなの?」
蓮夜「・・・一緒に入れないからだよ。・・・もし付き合ったらお前が辛い想いをする・・・。」
夢結「あの瞳のこと・・・?それなら、」
蓮夜「そんな簡単なことじゃないんだよ・・・。」
彼は彼女の腕を強引に振り払い再びその場を去ろうとする。
夢結「!?」
彼女が見たその表情は、
悲しみを宿した悲痛なものだった。
夢結(その顔は・・・あなたもそうなのね。)
彼女にはその表情に見覚えがあった。
それは彼女自信がよく知る、自身のことを呪い他者を拒絶する。彼女がこの2年間ずっと抱えていたものだったものだから、
理由は分からないが彼も己を呪っているのだろう、
夢結(今度は私が支えてあげたい)
彼女がそう思うと身体が自然と動く、
気づいた時には彼の背中に抱きついていて、
夢結「お願い・・・教えて、どうして一緒にいられないの?」
蓮夜「・・・。」
夢結「あなたのことを支えたいの!あなたが私にしてくれたように!」
蓮夜「・・・。」
夢結「あの瞳が原因なら方法がないか一緒に考えましょう!絶対に方法があるはずよ!」
蓮夜「何も知らないのに・・・」
夢結「えっ?」
蓮夜「何も知らないのに、そんなことを言うな!!」
夢結「!?」
蓮夜「俺の気持ちも分からないでそんなことを言わないでくれ!方法を考えましょう?もう手は尽くしたよ!どうにも出来ないんだよ!俺だってどうにかしたいさ・・・だけど無理なんだよ・・・頼むからこれ以上俺を苦しませないでくれ・・・。」
その言葉には彼の強い思いが篭っていた。
それを聞いた夢結の顔が歪む、
これは自分が抱えていたものなんかよりもより重いものだ、そう直感させる。
だが、
夢結「お願いよ・・・どうしてなの・・・?」
彼女は諦めなかった。
その彼女の思いが届いたのか、
蓮夜「・・・歳を取らないんだ・・・。」
夢結「・・・えっ?」
蓮夜「正確にはあと数年で俺は肉体の変化が止まる。」
夢結「どういうことなの・・・?」
蓮夜「寿命がないんだよ。外的な要因がないと俺は死なない。・・・その外的な要因でも身体が再生するから死ねない。」
夢結「・・・。」
蓮夜「どんどんと周りの人はいなくなり俺だけが残る。寿命がないんだから当たり前だ・・・もしもお前のことを好きになっちまったら俺はお前がいなくなった時、きっと耐えられなくなる。」
夢結「・・・。」
蓮夜「よく不死になりたいとか言うやつがいるだろ・・・だけど不死っていうのは生易しいものじゃない。・・・訪れるのは孤独だ・・・俺にはそれが耐えられない。」
夢結「・・・。」
蓮夜「だから俺のことはほっといてくれ・・・お前にだって俺みたいなやつよりも相応しいやつが現れるさ。」
彼の言葉を黙って聞く、
この言葉が真実ならそれは本当に地獄なのだろう。
親しい人達がいなくなり1人になる、そんなこと自分には耐えられない。
彼を助けることはできないのか、
考えるが思い浮かばない。
絶望感が彼女を埋め尽くす。
自分の好きな人にこれから待ち受ける地獄を想像すると震えが止まらない。
蓮夜「だから俺みたいな化け物ほっといてくれ。」
『パーン』
その瞬間彼の頬に痛みが走る。
彼女が頬を叩いたのだ。
夢結「そんな事言わないで!」
蓮夜「!?」
夢結「あなたは化け物じゃないわ!」
彼女は怒っていた。
彼の言葉に、この現実に、
そして何より自身の不甲斐なさに、
夢結「あなたが抱えているものはわかったわ!」
彼女の両手に、頬に模様が走る。
夢結「私にはそれはどれだけ辛いかは想像もできない・・・。」
彼女の身体を黒と白のオーラのようなものが覆う。
夢結「だけど・・・。」
彼女の額にモヤのようなものでできた黒い角が、彼女の背中に白い光の翼が現れる。
夢結「あなたが化け物だと言うことだけは絶対に認めない!」
まるで今の彼女の感情を表すかのようにオーラの勢いがます、
その光景に彼は焦り始めた。
蓮夜「やめろ!お前はその力がどんなものか知っているのか!それ以上使ったら呑まれるぞ!」
夢結「分からないわ・・・ただ、あなたを苦しめているものと同種なのだけはわかる。」
蓮夜「後戻り出来なくなる!だからやめてくれ!・・・頼む・・・お前には普通の人として幸せになって欲しいんだ・・・頼む。」
夢結「ふふ、あなたは優しいわね、いつも。・・・だけどごめんなさい、あなたの言うことは聞けないわ。」
彼の瞳に模様が現れる。
すぐに彼は困惑する。
私のことを止めようとしているのだろう。
だけど意味が無い。
彼女にはわかった。
この力を使っている間、自分から受け入れなければどのようなものでも非物理的干渉なら無効化できる。
彼女は直感的にそう感じとった。
説明された訳では無い。
頭に入ってくるのだ、この力の名前もその使い方もそして危険性も、
この力の名は『異能』
その力を使う人達の名は『異能者』
リリィが生まれる前から、人類が生まれた時からある異常な力。
過去にいた英雄や魔女などの伝説の人物は異能の力を持っていた。
そしてこの力を使いすぎると異能そのものに呑まれてしまう。そうなると自我を失い本物の化け物になる。
だが異能に呑まれても自我を保つ者がいる。
そのものは異能の多大な恩恵と共に呪いを受ける。
そうなったものを『超越者』という。
これらの情報が頭の中に入ってくる。
彼も超越者になってしまったのだろう。
そのせいで苦しんでいる。
どうすれば彼の側にいられるのか、
簡単だ、自分も超越者になればいい。
呪いがどのようなものになるか分からないしそもそも超越者になれずに呑まれてしまうかもしれない。
もし私が化け物になったら彼は悲しむだろう。
夢結(だけど・・・。)
諦めたくなかった。
彼の悲しむ顔を見たくない。
ならば成功させるしかない。
決意を決めたその時、彼女の周りが暗くなった。
彼女の瞳から光がなくなり表情を失われていく。
蓮夜「夢結!!」
倒れそうになった彼女の体を支える。
彼はこの現象に覚えがあった。
蓮夜「まだ覚醒したばかりなのになんで・・・。」
異能に呑み込まれる時の現象だった。
震える彼女を彼は抱きしめる。
彼は彼女からのあの告白に本当は答えたかった。
だが2人の生きる時間が違いすぎる。
もし彼女の思いに答えてしまっては、いずれ彼女を悲しませてしまう。
いいや、違うそれはただの言い訳だ。
ただ彼がこれ以上の関係になり失うことを恐れているだけだ。
そのせいで彼女は苦しんでいる。
全て自分のせいだ。
彼は絶望感に襲われる。
もしも彼女が完全に呑まれてしまい自我を失ってしまったら彼は彼女を殺さなければいけない。
もし異能に呑まれた者が暴れてしまったら、学院だけではなくこの日本自体が滅びる可能性がある。
それほどに異能の暴走は危険なのだ。
彼女の手を血に染めさせないためにも、
本当にそんなことができるのだろうか?
彼女を傷つけることができるのだろうか、
いいや、無理だ。
できるはずがない、
彼も彼女に恋心を持っているのだ。
蓮夜「頼む・・・夢結・・・戻ってきてくれ・・・。」
彼は祈るしかなかった。
自分の無力さに怒りを覚える。
俺が居なければ、
彼の中でこの言葉が繰り返される。
蓮夜(やはり俺はは化け物なんだ、大切なものを傷つけずにはいられない。)
無意識に彼女を抱きしめる力が強まる。
目の前が暗くなり、何かに引きずり込まれる感覚に襲われる。
超越者も精神状態によっては飲まれる事がある。
今の彼はまさにその状態に陥っていた。
大切な人を失い、唯一の支えであった彼女がいなくなるかもしれない、その絶望感に蝕まれる。
このまま落ちてしまった方が楽なのかもしれない。
そう思ってしまうほどに彼の心は消耗してしまった。
夢結『すぐに隣まで行くから!』
彼女の声で彼の意識が浮上した。
すると彼女の瞳に光が宿り、
周りが次第に暗くなったように感じる。
何かに呑まれて深くて暗いどこかへと飲み込まれるような感覚に襲われる。
怖い・・・この言葉が自分を埋め尽くす。
夢結(誰か助けて・・・。)
自分が自分ではなくなるような感覚に恐怖を感じ、助けを求める。
夢結(助けて!)
彼の名前を叫ぼうとしたが、
夢結(助けて・・・。彼に助けを求めてどうするの!彼を助けたい・・・一緒にいたいから私はここにいるんでしょう!)
彼女は自分の目的を思い出した。
その時目の前に光が差し込む。
その形は扉のようでその中には彼の後ろ姿があった。
夢結(あれがあなたのいる世界なのね・・・。)
彼女は光へと向かって進む。
その歩みに迷いわない。
夢結(待っていなさい!すぐに隣まで行くから!)
彼女は走り出した。
そして光の中に入ると、
蓮夜「なんて無茶なことをしたんだ!」
彼が自分のことを抱きしめていた。
その顔は今にも泣きそうになっており、
彼の力が強まる。
夢結「心配かけてしまったわね・・・ごめんなさい。」
怖かったのだろう。
もし私が化け物になったらと考えて、
彼女は罪悪感に襲われるがそれよりも強い喜びを感じていた。
自分の超越者になった代償・・・呪いが頭の中に入ってくる。
それは、彼女が求めた不死であった。
彼女が受けた呪いは不死だった。
これは彼女にとって呪いではなく祝福だ。
彼女は賭けに勝ち、己の欲しいものを手に入れた。
夢結「だけどこれであなたのことを化け物とは言わせないわよ!」
彼女は満面の笑みでそう言い放った。
蓮夜「ごめん・・・俺のせいで・・・やっぱり君と一緒にいたら行けないんだ・・・だから、」
もう君に合わない。
彼の言葉が遮られる。
彼女が自身の唇で彼の唇を塞いだからだ。
蓮夜「!?」
彼の彼女の行動に驚き彼女から距離を取ろうとするが、彼女が彼に抱きつき彼の動きを止める。
彼女が唇を離すと、
夢結「あなたのせいでは無いわ。私が自分の意思で、あなたの一緒にいたいからやったのよ。」
彼女はこちらに真剣な顔を向けて言った。
蓮夜「だけど・・・。」
夢結「だけどではありません!そこまで責任を感じいるのだったら・・・責任を取って私と一緒にいなさい・・・私もあなたと同じ不死になってしまったのだから、」
まさか自分のためにここまでするとは彼は思っていなかった。
彼女と一緒にいることはできない、
彼だけが取り残されていつかいなくなる。
彼の隣を歩き続けてくれるものなんていない。
彼はこの呪いを受けてからずっとそう考えていた。
だが彼女はただ一緒にいたいという気持ちだけで人間をやめて自分の隣まで来てくれた。
彼女なら一緒に歩き続けてくれる。
殻の中に閉じこもり諦めて彼の心を彼女は救い出したのだ。
蓮夜(やっぱり君には敵わないや・・・。)
彼は彼女を見つめながら、
蓮夜「夢結・・・。」
夢結「何かしら?」
蓮夜「さっきはあんな事を言ってしまったけど・・・もし君が許してくれるのだったら。」
もう迷わない。
蓮夜「ずっと一緒にいてくれませんか。」
これが彼の思いの全てだ。
誰とも一緒にいることができないと思っていた彼の全てがこの言葉に詰まっている。
彼は彼女の答えを待つ。
もしかしたら・・・と、考えてしまう。
そして彼女から帰ってきた言葉は、
夢結「もちろん!ずっと一緒よ!」
彼女は涙を流しながら、今までで一番の笑顔でそう答えた。
2人の顔が近づき、お互いの唇を重ねた。