アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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閑話⑪

蓮夜「・・・これだと・・・。」

 

 

彼は皆と別れた後自身の部屋に戻りPCと睨み合っていた。

 

先程彼女達が決めた武器のデータを見ながらそれをCHARMに作り替えるプランを考えているのだが、

 

 

蓮夜「やっぱり、変形機構がな・・・。」

 

 

元々彼の作る武器は一つの形に固定することでそのパフォーマンスを最大限生かすコンセプトで出来ている。

 

だが、CHARMは近接形態と射撃形態を切り替えることで距離に縛られず扱うことをコンセプトとしていた。

 

 

前者はその一つの形に固定することで必要な機能だけを付けることができるため武器のコンセプトとあっている戦い方の時にその性能を発揮する。

 

そして後者は、2種類または3種類の形態を持つことで汎用性が高くどのような状況でも機能するようになっている。

その代わりに多くの機能を付けなくては行けないため前者に比べると総合的な性能は変わらないが1つのことに関しては絶対に敵わないという欠点がある。

 

欠点は前者にもありそれは、状況によって発揮出来る性能の差が激しいことだ。

 

 

彼が悩んでいるのは変形機構による機能の制限である。

 

 

蓮夜「機能を付けすぎると変形機構使用時に不備が出るからな・・・だけど機能付けないと行けないし・・・。」

 

 

機能を付けると変形機構が付けられず逆に変形機構を外すとCHARMとしての汎用性を失ってしまう。

 

特化か汎用性・・・この2つのを矛盾を両立させようと考えているのだ。

 

 

蓮夜「だけど一番の問題は・・・。」

 

 

彼がラックに固定されている「夜桜」「輪菊」「黄昏」を見る。

 

 

蓮夜「これをどうやってCHARMに落とし込むかな・・・。」

 

 

原初シリーズは元々彼自身が自らの意思で生成したものではなく超越者になる時に暴走し漏れた力が形になったものだ。

 

暴走した異能の力・・・つまり彼の獣としての力でもあるのだ。

 

そのため未知数の部分が多く相性などがあるため彼本人でも使えばするがまともに使えるのは「新月(大太刀)」と「三日月(大鎌)」、「光導(ナイフ)」の3つだけだ。

 

 

これをCHARMという形に落とし込みつつその特性を最大限以上に発揮出来るようになったのは3つの特性が奇跡的に噛み合ったからだ。

 

「干渉」が全ての機能や特性、性質に干渉し「変化」がそれらを1つの方向に合わせそして「分裂」の個別制御能力によりそれらを制御する。

 

この組み合わせだからこそ、このCHARM『極夜』はあの戦いの直前・・・3日で完成させられたのだ。

 

逆にこれらの特性を持たないあのものではCHARMへと落とし込むことすら不可能に近いのである。

 

 

彼がこの難題に頭を悩ましていると、

 

 

夢結『蓮夜・・・いるかしら?』

 

 

扉をノックする音と共に夢結の声が聞こえる。

 

 

蓮夜「・・・どうしたんだろ?」

 

 

時間が遅いため不思議に思いながらドアを開けると、

 

そこには暗い表情をした夢結がいた。

 

 

夢結「今・・・大丈夫かしら?」

 

蓮夜「ああ、問題ないぞ。」

 

 

彼は夢結を部屋へと招き入れ椅子に座らせる。

 

彼が反対側に座ると彼の手にはポットやカップが乗ったトレーがありカップを彼女の前に置くとポットに入っていた紅茶を注いだ。

 

 

夢結「こういうこともできるのね・・・。」

 

蓮夜「まあな、伊達に使い続けてないからな最初の2つ・・・『壊始』と『生成』以外ならリスクなく使えるぐらいには慣れてるよ。」

 

夢結「今作ったのではないの?」

 

蓮夜「時間が止まった空間に保管していたんだよ。・・・簡単に言うと作り置きだな。」

 

 

そう言いながら彼は他のポットを手に取り自身のカップにコーヒーを注いでいる。

 

 

蓮夜「・・・それでどうしたんだ?」

 

夢結「・・・それは。」

 

 

彼女の言葉が一瞬止まる、

 

だが、

 

 

夢結「・・・今日あなたが見せてくれたあの戦いのことよ。」

 

蓮夜「かなり悲惨だったからな・・・やっぱりキツかったか・・・だけど。」

 

夢結「わかっているわ・・・これは私が選んだ道よ。覚悟はしているわ。」

 

蓮夜「そうか・・・。」

 

夢結「私が聞きたいのはそこではないの・・・あの時の獣になっていた彼女の表情・・・あの感情の無いような表情は獣の特徴でもあるの?」

 

蓮夜「・・・ああ、獣は何も感じない・・・喜びも悲しみも怒りも・・・だから表情も出せないんだ。」

 

夢結「・・・やはりそうなのね。」

 

 

彼女の表情がさらに暗くなる、

 

部屋を静寂が包み彼は何かを悟ったかのような表情になる中彼女は顔を上げ、

 

 

夢結「・・・あなたが見せてくれた未来の映像・・・あれは獣になったあなたなのね。」

 

 

彼は真剣な表情で彼女を見ながら、

 

 

蓮夜「ああ・・・そうだ。」

 

 

彼の答えで彼女の予想は確信に変わった。

 

未来の彼は絶望したのだ。

1人だけ取り残される悲しさに潰されて、

 

人は1人では生きていけない。

 

よくある言葉だが、それは的をえている。

 

人は孤独を感じる生き物だ。

 

例え超越者でもそれは変えられない。

 

孤独とは時が経てば経つほどより深く重くなっていく。

終わりがわかっていれば耐えられるかもしれない

 

 

だが彼には終わりがないのだ。

 

 

彼は必ず親しいものに置いてしまう。

 

特に大切な人を・・・両親を失っている彼には何にも変えられないほどに辛い事のはずだ。

 

 

蓮夜「夢結?」

 

夢結「・・・何かしら?」

 

 

彼女は紅茶を一口含む、

 

紅茶の香りとは裏腹に塩気を感じ疑問に思い視線を紅茶へと落とすと、

 

 

蓮夜「・・・涙出てるけど・・・大丈夫か?」

 

 

そこには涙を流す自分自身が映し出されていた。

 

 

夢結「あら?・・・どうしてかしら?」

 

 

彼女はハンカチを取り出し涙を拭くが、

 

 

夢結「・・・おかしいわね・・・涙が止まらないわ。」

 

 

その涙は止まることはなく勢いをました。

 

どうにか止めようと必死になっている彼女の頭に何が触れた。

 

彼女が上を見ると蓮夜が彼女に近づき頭を撫でていた。

それに気がつくと涙が止まり安心したのか彼女の表情は穏やかなものになった。

 

 

蓮夜「・・・ごめんな、悲しいことを想像させちゃったみたいだな。」

 

夢結「あなたのせいでは無いわ・・・ただ思い出したら・・・。」

 

蓮夜「やっぱり優しいな夢結は・・・本当に君にはどれだけ救われてきたことか・・・

 

夢結「何か言ったかしら?」

 

蓮夜「いいや、なんにも・・・とにかく大丈夫だから・・・最近はあの映像はほとんど見なくなったし。」

 

夢結「完全では無いのね?」

 

蓮夜「まあ、未来は不確定だからな・・・絶対なんて有り得ないしな。」

 

夢結「そう・・・。」

 

 

彼女はまたしても悩んでいるような表情になる。

 

 

多分だが彼のあの未来が完全に消えていないのは私が居なくなる未来があるからだ。

 

それだけは確信がある。

 

一般的に見れば彼女は強く彼女を知るほとんどの人はそう口にするだろう。

 

だが異能者・・・特に超越者としては彼女は弱い。

異能に目覚めてすぐに超越者になったのだまだ体に能力が馴染んでいないしそもそも使い方もろくに分からない。

 

 

彼の前にはこれからも苦難が続くだろう。

それを後ろから見ていることなんて彼女には考えたくなかった。

 

だが現実は彼の後ろ姿すら見ることが出来ないほどに差がある。

 

それは実力だけではない意志の強さもだ。

 

彼に追いつかねば支えるなんて夢のまた夢だ。

 

そうしなければ彼女が彼を悲しませてまで超越者になった意味がない。

 

彼女は自身を抱きしめて涙を流す彼の姿を思い出した。

 

痛いとすら思うほどに強く抱き締めていた彼の表情、

それは彼が今までに見せたどのような表情よりも暗く悲しみに塗れていた。

 

もしも自身が居なくなれば彼は自分自身を怨み獣へと落ちてしまうだろう。

 

自惚れていると思われるだろうが彼女には確信があった。

 

 

『・・・俺が本当の意味で心を許せたのは両親と夢結・・・お前だけだったんだ。だから両親が居なくなってお前しかいなかったからな・・・絶対にお前だけは守らないとと思ってな。そうしないと自分自身がおかしくなる・・・』

 

 

初めてこの部屋を訪れた時に彼が口に出した言葉、

 

この言葉から彼が本当の意味で大切だと思う人は夢結だけなのだろう。

 

彼は自身の呪いにより大切な人を作らないようにしていた。

 

だからこそ確信が持てたのだ。

 

彼は夢結が思っているよりもずっと弱いのだ。

 

確かに実力は圧倒的であり意志の強さも常人とは比べ物にならないだろうがそれは彼が努力し無理やり作り上げてきたものなのだ。

 

もしもその殻が破れてしまえば彼はすぐに壊れてしまう。

 

だからこそ支えてあげなければ行けないのだ。

 

失うことの悲しみを知る人が、

 

彼のことを一番知っている私が、

 

ならばどうする。

 

どうすれば彼に追いつける。

 

答えは簡単だ。

 

 

 

夢結「蓮夜・・・お願いがあるの。」

 

答えは目の前にある。

 

 

蓮夜「お願い?」

 

 

彼女は彼の目を真剣な表情で見ると、

 

 

夢結「私に異能の使い方を教えて欲しいの。」

 

 

そう、その答えとは・・・彼に鍛えてもらうことだった。

 

 

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