アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
蓮夜「鍛えて欲しい?・・・元々夢結と梨璃さんには異能の使い方とかは教える気だけど。」
夢結「使えるだけじゃダメなの・・・それだけじゃ。」
蓮夜「もしかしてアレを見たからか?・・・それならやめておけ・・・あれらの相手は俺がするから。」
夢結「私が無理やりに超越者になった理由・・・あなたは知っているでしょう?」
蓮夜「夢結が教えてくれたからな・・・俺を支えたいだったよな?」
夢結「ええ、そうよ。・・・そのためには強くならないと行けないの。」
蓮夜「強くなるって、支えるって言ったって色々あるんだぞ?別に獣と戦わなくても・・・。」
夢結「・・・傷つくのを見たくないのよ。」
蓮夜「・・・夢結、どうしたんだ?」
夢結が何かを呟くが彼はなんと言っているか聞こえず彼女にたずねる。
夢結「あなたが傷つくのを見たくないのよ!!」
蓮夜「!?」
普段なら有り得ない夢結の叫びに彼は動けなくなるが彼女はそんなこと気にせず言葉を続ける。
夢結「これ以上大切な人を失いたくないの!大切な人が戦っているのに私は後ろで蹲っているだけなんて絶対に・・・いや。」
蓮夜「・・・。」
夢結「だから私は強くなりたいの・・・あなたに背中を預けて貰えるように・・・。」
蓮夜「・・・。」
彼の本心としては夢結に異能の制御以外教える気はない。
もし戦いに参加してしまったらと考えると手が震えてしまう。
彼は今まで目の前にいる人を守れなかったことが多くある。
自分が未熟なせいで助けられたはずの人を助けられなかった。
彼が違法施設に侵入して潰して回ったのも自分勝手な罪滅ぼしの一環だった。
そうしないと自分を保てなかったからだ。
彼はそのエゴに縋るしか無かった。
依存症のようなものだ鎮静剤や抗不安薬のように自分が作った誓い・・・エゴに縋るしかない。
なければ不安に押し潰されてしまう。
それが怖くてまた求めてしまう。
それが今の彼なのだ。
誰にも気づかれないように隠そうとしているが果たしていつまで持つかも分からない。
彼自身が言った通り自分勝手なのだ。
自分が自分であるために彼女を戦いから離したかった。
彼女の意志を考えずに、
彼女が傷つかない事が彼女の幸せだと信じて・・・いいや、違う・・・言い聞かせているのだ。
もし彼女が傷つきもしも居なくなってしまったら今度こそ彼は獣になってしまう。
その結末を知っている・・・知ってしまったから。
彼はそれを恐れるのだ。
そのために彼女を利用しようとしている。
最低な人間だ。
自分自身を罵倒する。
結局自分のためじゃないか・・・そんなどうしようもない事のために利用しようとしている。
そう考えると吐き気がする。
彼女は自身の未来すらも賭けて自分の傍にいようとしてくれている。
それなのに自分はどうだ?
自問自答が始まる。
やっぱり彼女の傍に居てはいけないのでは?
自分と出会わなければ彼女はとっくに幸せを手に入れていたのではないか?
そもそも自分がいなければ彼女が傷つくことがなかったのではないか?
自分がいなければ・・・この言葉が脳裏を埋めつくしそれしか考えられなくなる。
やり直せたら・・・時間が戻れたらとすら思えてくる。
そして彼女と会わないようにする。
もしくは自分自身という存在を消してしまう。
それが彼女のためなのではないか?
周りが暗く感じる。
何回も味わった感覚だ。
呑まれかけているのだろう。
自己否定をしているのだから当たり前だ。
獣と同じ深度にいながら自我を保つ存在。
超越者は奇跡的なバランスで精神を保った獣だ。
それが何らかの影響で精神のバランスを崩してしまえば簡単に堕ちたしまう。
もう堕ちた方が楽なのではないだろうか?
獣に堕ちたとしても対策をしてあるから周囲への被害はない。
それなら堕ちてしまって消えてしまえば苦しまずに済むのではないか?
今彼に残っている誓いは夢結が幸せを掴むまで見守ることだ。
彼女には梨璃さんも皆もそして姐さんいる。
自分一人いなくても彼女は幸せになれるだろう。
俺が居なくても・・・。
逆に不要なのだ。
自分がいるから不幸になる。
ならこのまま・・・。
夢結「・・・蓮夜、どうしたの?」
彼が俯き言葉を発さなくなり彼女が不思議に思い彼に呼びかける。
蓮夜「・・・。」
だが、返事が来ない。
おかしいと思い彼の顔を覗くと、
夢結「!?」
放心したような状態で涙を流していた。
夢結「蓮夜!?」
彼女が慌てて彼の方を揺さぶるのだが、
蓮夜「・・・。」
彼は全く反応を示さない。
彼女の中で不安が積もる。
彼女にはこの現象に思い当たる節があった。
なんせ数日前に彼女はこれを体験したからだ。
そうでないことを願うが現実とは非情である。
彼の顔から表情が完全に無くなり涙も止まる。
彼の瞳からも光が消えてしまう。
彼女の予想が最悪な形で現実になってしまったのだ。
夢結「嘘よね?・・・どうしていきなり・・・蓮夜!しっかりしなさい!」
彼女が必死に呼びかけるがやはり反応がない。
彼がしてくれたように抱きしめながら呼びかける。
どうにかして彼を引き戻そうとするが、
夢結「お願い・・・戻ってきて・・・。」
状況は悪くなる一方だった。
彼から不気味なオーラが漏れ出す。
それを浴びた彼女をとてつもない寒気が襲いはじめる。
まるでここが極寒の地ではないかと思うほどの寒気に凍えてしまうのではないかと思ってしまう、
逃げろ!
本能が彼女に訴えかける。
だが、彼女は彼のことを離さない。
話す訳には行かない。
もし話してしまえば彼が居なくなってしまう、
彼女の心がそう訴えかけているからだ。
彼女が必死に抵抗していると、
美鈴「夢結!蓮夜!」
美鈴が姿を表した。
彼女は夢結に頼まれて彼女の傍を離れていたのだがこの尋常でない雰囲気に気がつき駆けつけたのだ。
夢結「お姉様!蓮夜が・・・蓮夜が!」
美鈴「落ち着くんだ!そうしなければ助けられるものも助けられない!」
夢結「・・・!」
美鈴の言葉に彼女は冷静さを取り戻した。
美鈴が彼の額に手を添えると、
美鈴「・・・堕ちかけているね。」
夢結「はい、ですがどうしてなのか分からないんです!」
美鈴「・・・多分だけど限界が来たんだよ。」
夢結「・・・限界?」
美鈴「ああ、僕もそうだけど精神が潰れてしまったんだ・・・。」
夢結「どうしていきなり?」
美鈴「何か彼の心に負担をかけることがあったのかもしれない・・・何か思い当たる節はないかい?」
夢結は先程の会話から何かそれらしきものがないか探す。
夢結「もしかして・・・。」
美鈴「何かあったんだね。」
夢結「はい、彼がこうなる前に私強くなりたい、あなたの背中を預けて貰えるようになりたいって言ったんです・・・そうしたら彼が俯いて・・・。」
その言葉に美鈴は彼がこうなった理由を察した。
美鈴「
夢結「誓い・・・ですか?」
美鈴「異能者は獣に堕ちないために強い意志を持ってないといけない・・・そのために自分自身に誓いを立ていたらしいんだ。」
夢結「立てると堕ちなくなるのですか?」
美鈴「ほとんど堕ちることはないらしい。そしてこの誓いというのは自分の存在する理由・・・存在意義でもある。だからこれを失うと簡単に落ちてしまうんだ。」
夢結「そうだとすると彼は・・・。」
美鈴「それが喪失したみたいだね。・・・幾つか立てていたらしいけど多分この2年間でそのほとんどを喪失していたのだろう。そして今最後の1つが無くなった。」
夢結「どうしたら彼は助かるんですか?」
美鈴「誓いがないとなるともう・・・。」
夢結「そんな・・・。」
夢結は彼に凭れ掛かるように膝をついた。
こんなに自分は無力なのか、
彼に相談しなければ、
彼女が自問自答をしていると、
美鈴「確か彼は・・・もしかして、夢結!」
夢結「・・・はい。」
美鈴「どうにかなるかもしれない。」
夢結「!?」
夢結の中で希望が生まれる。
美鈴「多分だけど彼に残っていた最後の誓いは夢結・・・君を守ることだ。」
夢結「私を・・・。」
美鈴「夢結には話していなかったけど、甲州撤退戦の時に彼と会っていたんだ。その時には彼は超越者になっていた。その時に彼は『夢結を守る』って言っていたんだ。」
夢結「・・・。」
美鈴「もしもそうなら彼の隣で君が戦う。つまり守る対象ではなく共に戦う人になってしまう。それを想像してしまったんだろう。だから自分の存在意義・・・彼の場合は存在価値を失ってしまった。」
夢結「・・・。」
美鈴「それにおかしいと思わないかい?」
夢結「・・・おかしいとは?」
美鈴「彼の作り出した原初シリーズ・・・あれは超越者になった時に暴走が起きてその力が形になった物と言っていただろう。・・・それなら私にそして君にも同じことが起きてもおかしくないんだ。」
夢結「!!」
そう、おかしいのだ。
超越者とは獣と同じ深度にいながら自我を保ち続ける存在だ。
つまり一回は必ず獣に堕ちかけるはずなのだ。
その時に絶対に暴走が起こる。
今の彼がその状態だ。
暴走した異能が異能者を覆い存在そのものが書き換えられる。
だとすると自分達にも何らかの現象が起きても不思議ではない。
だとすると、
美鈴「彼は一回獣に堕ちている。そこから這い上がって来たんだ。・・・その時に生まれた獣の力が、」
夢結「あの原初シリーズになった・・・。」
それなら輪菊の時の現象も納得がいく。
意識はないだろうが本能はあったのだ。
そして彼が作り出したのに使いこなせないものがあるのは彼がその力を・・・獣を拒絶したのだろう。
美鈴「だとすると可能性がある。もう一度こちらに引っ張って来ればいいんだ。」
夢結「簡単に言いますが本当にできるのですか?」
美鈴「できるか分からない・・・だから可能性と言ったんだ。あまり時間がないから手短に説明するよ。」
夢結は彼女の言葉を一字一句聞き逃さいないように集中する。
美鈴「まず私の能力で彼の存在・・・心に干渉する。普段なら無理だが心が不安定な今なら可能だ。そしてそこに君の心を意識と共に繋げる。そのあとは彼の心の奥・・・深層で彼を探して連れて帰ってくるんだ・・・これは夢結にしかできない。」
夢結「お姉様では出来ないのですか?・・・私なんかよりお姉様の方が向いているはずでは・・・。」
美鈴「・・・絶対に無理だね・・・僕に心を開いていないからね・・・と言うよりも夢結以外にかな?・・・だから唯一彼が心を開いている夢結にしか出来ないんだ。」
夢結「・・・私に出来るのでしょうか?」
夢結は不安そうな顔をしておりそれを見た美鈴が微笑みながら、
美鈴「大丈夫・・・夢結なら出来るさ。彼を支えたいんだろ?多分だけどこれから君が見るものは彼の苦しみの根源に近いものだ。これをどうにかしないと彼はこれからも苦しみ続けることになるんだよ。」
夢結の超越者としての始まりは苦しんでいる彼を支えたいからだ。
もしかするとこれは好機かもしれないと気づくと、
夢結「やります!」
美鈴「そう言ってくれると思ったよ。」
夢結は漏れ出すオーラが強まる彼を強く抱きしめながら答えた。
それ表情は決意に満ちており決して諦めないと言う意思がこもっていた。
すると美鈴は彼の額に置いている手とは逆の手を夢結の額に置いた。
美鈴「彼がどこにいるか分からないし君を辛い思いをすると思う・・・だけど絶対に挫けてはダメだよ。そうなったら君も戻って来れなくなる。」
夢結「わかりました。絶対に彼を連れて帰ってきます。」
美鈴が能力を発動させると2人を光が包む。
光が収まると夢結は意識を失い彼に凭れ掛かるように倒れた。
美鈴はすぐに自身の分身を作り出した夢結を支えると大きく息を吐き、
美鈴「頼んだよ夢結・・・。」
美鈴は彼女の無事を祈りながら2人の心を繋げることに集中した。
一瞬視界が黒くなるがすぐに周りが明るくなった。
夢結「ここは・・・。」
夢結の目の前に広がっていた光景は、
彼女のそして彼の家がある鎌倉府の町だった。
次回から新章として彼の過去を書いていきたいと考えています。
更新まで少し空きができてしまうかもしれませんが一週間以内には投稿をする予定です。
これからも本作をよろしくお願いいたします。