アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

41 / 150
過去②

夢結「ウッ・・・!」

 

 

夢結は激しい痛みを感じ膝をついた。

痛みが走る右目は熱を帯びたかのように暑くなり、

彼女にはただ耐えることしか出来ない。

 

額から汗が滲み出る。

 

だんだんとその痛みは全身へと広がり息が出来なくなり、ついには自重を支えられなくなり地面に倒れたまま自身の身体を抱きしめながら蹲ることしかできなくなっていた。

 

 

そのまま彼女が蹲ること数分、

 

 

夢結「ハァ・・・ハァ・・・。」

 

身体に走っていた痛みが薄れ息出来るようになったため深呼吸を繰り返しどうにか息を整える。

 

震える身体に家を鞭を打ちどうにか立ち上がった時、

 

 

蓮夜『やっぱり潰れたか・・・最近無理なとこばっかりしてたからな・・・。』

 

 

彼が涼しいそうな顔でそのような言葉を言い放った。

 

 

夢結「・・・何を言っているの?」

 

 

彼女には何を言っているかわからず彼の顔を覗きこんだ。

彼の顔はやはり痛みを感じているようには見えず何も無かったかのような表情をしているが右目だけは違った。

 

その右目は閉じているが、そこからは大量の血液が流れており眼球があるはずの場所が凹んでいた。

 

 

蓮夜『とにかく直すか・・・。』

 

 

彼がそうつぶやくと彼の左眼に太陽の模様が浮かび上がる。

 

そして彼が右目を開くと、

 

 

夢結「!?」

 

 

彼の右目にはそこにあるはずの眼球が無くなっておりそこには赤黒い空洞だけが広がっていた。

 

そこに結晶が生えてきてそれは球状に形を帰ると結晶が砕けそこから新しい瞳が現れた。

 

 

蓮夜『最近は慣れてきて潰れないようになってきたんだが・・・やっぱり使い過ぎて消耗している時にこの瞳は無理か・・・するとあっちもダメだな。』

 

夢結「慣れて・・・きた?」

 

 

彼女にはその言葉が分からなかった。

 

いいや、分かりたくなかった。

これが彼女の考えているものならば彼は地獄のような苦しみを味わい続けていたということだからだ。

 

 

蓮夜『途中で止まったってことは・・・。』

 

 

彼が足元を見たのでそちらを見ると1本の刀があった。

先程まで持っていなかったので今作り出したのだろうか。

 

見た時はどこからか取り出したのかと考えたが先程彼が言った「この瞳」と「あっちも」という言葉から彼の持つ瞳の中で負担が大きい『壊始』と『生成』のことを言っているのだろう。

 

そして何より、

 

 

蓮夜『・・・やっぱり中途半端だな。』

 

 

彼が刀を鞘から抜くとそこからは今にも崩れだしそうな程ボロボロな刀身が覗いていた。

 

その刀身は時間経過や刀身への負担、整備の不十分などによる傷みではなく元々そこになかったかのようにパズルのピースが欠けているように見えた。

 

彼はその刀を頭上に投げた。

刀は投げた衝撃だけで鞘や柄の端が崩れだす。

 

回転する刀は彼の目の前に落下してくる。

刀が彼の目線まで落ちてきたその時に、

 

彼が右手を横向きに薙ぐ。

 

掌が刀に当たったその瞬間、

 

『パリーンッ!』

 

刀がまるで硝子のような音を立てて崩れた。

 

蓮夜『作り直しだな。』

 

彼はまた右目を閉じて集中し始める。

そしてまた目を開くとそこには幾重にも重なった歯車のような模様が浮かび上がった。

 

その後彼は右腕を前に出すと掌の前に結晶が発生する。

その結晶は増殖し波打つようなに形を変えていく。

結晶が彼の身長程まで大きくなり変形が止まった。

 

その結晶を彼が掴むと結晶が飛び散りその中から1本の刀が姿を現した。

 

その刀は先程のものに似ているが鞘の長さが先程よりも長くなっており先程の刀は1mぐらいだったのに対して新しく作りだした刀は1.5mぐらいの長さにまで伸びていた。

 

鍔がないその刀は全てが黒く光沢があり太陽光を反射して鈍く光っていた。

 

彼が刀を両手で持つと鞘から刀身を抜き出すと、

そこから鈍い銀色の刀身が現れた。

 

彼はその出来に納得したように頷き。

 

 

蓮夜『・・・まぁ、80点くらいかな?・・・これなら大丈夫か。』

 

 

そのまま彼は素振りを開始した。

その素振りはやはり子供が遊びのようなものでなく剣道の上級者のような鋭さのあるものだった。

 

 

夢結「・・・。」

 

 

その光景に彼女はまた固まってしまった。

彼は自分のように学園などで訓練を受けている訳では無いなのにその動きは自身が同じ年齢だった時よりも洗礼とされているように感じた。

 

これも異能の恩恵なのか?

そう考えていると彼が素振りをやめる。

 

すると彼は1回刀を鞘に戻し身体を前に倒す要領で体勢を低くして、

 

一気に前へと駆け出す。

 

その先には大きめの樹木がそびえ立っておりあと数瞬でぶつかりそうになる。

 

 

夢結「危ない!?」

 

 

夢結が慌てて手を伸ばそうとすると、

彼は後転飛びの要領で飛び上がるとそのまま前の木に足を付けてそのまま壁を蹴るように走り出した。

 

数歩上へと走ると他の木へと飛び移りまた別の木へと飛び移る。

それを繰り返しながら彼は近くにある枝を切り飛ばす。

 

切り飛ばされた枝が中を舞う。

 

重力に従って落ちるはずの枝が、その法則を無視するかのように枝が浮かび上がり彼と同じくらいの高度で動きを止めた。

 

その枝を足場にしながら彼は離れた木へと移動しそのまま木に刀を突き立てて身体を固定すると枝が彼の周りに集まり始めた。

 

その不規則に動き続ける枝を飛び移り続ける彼の動きは予測しずらく彼女が目で追うことがやっとだった。

 

しばらく続けると彼が地面へと降りてくる。

 

彼が右手を横に出すと木に刺さった刀が彼に向かって飛んで行き彼の右手に収まった。

 

刀を鞘に戻すと枝がまるで糸の切れたあやつり人形のように彼の周りに落ちる。

それを確認すると彼は脱力しながら目を閉じた。

 

すると切った枝がまた浮き上がりまるで元々切られていなかったかのように元通りに戻った。

 

 

蓮夜『・・・ふぅ、身体に不調はないな。』

 

 

すると彼は木にもたれかかるように座ると彼は再び目を閉じた。

 

数秒後目を開きすると先程刀を作りだした時と同じ模様が左眼に本のような模様が右眼に浮かび上がる。

 

その後彼が両手を前に出すと掌の間で結晶が生成される。

 

その結晶は掌よりも少し大きいサイズまで膨張をしその姿を変えた。

 

すると彼の掌には硝子のような結晶質のマガジンがあった。

そのマガジンは大きさや形状からハンドガンのものだろう。

 

それを地面に置くと再び両手を前に出しすると次は6つの結晶が生成される。

その結晶は先程のマガジンと比べて小さく指と変わらない大きさのものだった。

その結晶が砕けると中から銃弾が出てきた。

 

彼はそれをマガジンに詰める。

 

その後も彼はこの作業を繰り返し続けた。

 

マガジンの数が20を超えた辺りで彼が立ち上がるとその左手には一丁の拳銃が握られておりその拳銃に先程作ったマガジンをひとつ装填した。

 

彼は前方にある木へと銃の照準を合わせて引き金を引き絞った。

 

すると銃口から軽い音と共に銃弾が飛び出した。

 

それは木を貫通しその後ろの木にめり込んだ。

そのことを気にせずマガジンが空になるまで打ち続けた彼はからのマガジンを取り出した投げ捨てる。

 

マガジンが地面に当たると砕け散りその破片すら消えてしまった。

 

それを確認した彼は他のマガジンと拳銃、刀をどこかに消して森の入口へと足を向けた。

 

上空を見ると空が赤らんでおりもう夕方なのだろう。

 

その後彼は家へと一直線に帰って行った。

 

 

 

夢結「・・・ずっとあのようなことを続けていたのかしら。」

 

 

彼女は彼の家の近くで壁に背を預けて考え込んでいた。

あの時の痛みを思い出すと震えが止まらなくなり今は痛くないはずの右目が痛くなったかのように感じた。

 

あの時美鈴と話している時に彼が言っていた「慣れた」とはこれのことを指していたのだろうか?

 

そう考えると彼のことを抱きしめたくなる。

このような辛いことを続けていたのかと怒りたくなる。

そしてその事に気が付かなかった自分自身に怒りが湧いた。

そして自分に話してくれなかったことが悲しかった。

 

 

夢結「なんで無理をするの・・・。」

 

 

その思いだけが頭の中を支配し彼女は泣きそうになってしまうが、

 

 

夢結「泣くのはあとよ・・・とにかく彼を見つけないと。」

 

 

そう目の前にいるのは彼ではないのだ。

 

厳密に言うと過去の彼であって彼女が探している現在の彼ではない。

それは直感的に分かった。

昔からだが彼が近くにいる時なら彼がどこにいるかなんとなくだがわかるのだ。

 

何の彼を見てもその感覚がないためこれはただの映像のようなものだと分かった。

 

 

夢結「どうすれば彼を見られるかしら。」

 

 

彼女が考えていると、

 

 

『ガラガラ!』

 

 

彼女の上から窓の開く音が聞こえた。

 

音の方を確認するとそこには彼がおり窓から飛び出し隣の家の屋根へと飛び移る。

 

そのまま家の屋根伝いに彼が移動を開始した。

今の深夜であり道に人通りはなく静まり返っている中彼の小さな足音だけが響く。

 

急いで彼を追うと着いた先は先程までいた森の前で彼はそのまま奥へと入っていく。

 

それを見た彼女は再び森へと足を踏み入れた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。