アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
蓮夜『うん!久しぶりだね!』
ゆゆ『うん、春休み以来かしら?』
蓮夜『そうだよ!』
今まで大人のようだった彼の口調は年相応に戻っていた。
そして彼女が玄関をくぐると2人はリビングへと向かう。
リビングにあるソファーに彼女が腰掛けると、
蓮夜『ちょっと待っててね!』
彼はリビングから飛び出していく。
しばらくすると彼がトレイを持って戻ってきた。
そのトレイには先程作っていたクッキーと電気ケトル、そしてティーポットとティーカップが乗っていた。
それをテーブルに置くと近くにあるコンセントにケトルのプラグを差し込みお湯を沸かし始める。
お湯はすぐに沸いた。
そのお湯をポットに入れてしばらくすると紅茶のいい香りが部屋全体に立ち込める。
蓮夜『ゆゆ、何か楽しいことあった?』
ゆゆ『変わらないよ?れんやは?』
蓮夜『僕も何も無いよ?』
そこから2人のたわいのない会話が始まった。
2人はお互いの学校などの出来事を話し合う。
夢結「こう見ると昨日のことが嘘みたいね。」
その光景を見て彼女は微笑んでいた。
その光景に懐かしさを感じる。
夢結「昔はよく2人でこのような会話をしていたわね。」
少し子供っぽく無いかもしれないがこれが2人の当たり前だったのだ。
彼女が学院の休みになると彼を家へと行きお互いの思い出を語り合う。
その話に面白いものがなくても2人にはどうでもよかったのだ。
ただ2人で話しているだけでよかった。
お互いに何かと人から距離を置く性格をしていたため友達と言える人が少ない2人はこうしてただ気の許せる相手と話しが出来るだけで嬉しかったのだ。
夢結「もうしばらくしていないわね・・・。」
彼女の表情に影が落ちる。
最後にこのような会話をしたのは2年以上前だ。
それからは彼女は一方的に彼を拒絶していたため電話で彼と話すことはあったがそれはただの生存確認のようなものになっていた。
彼がこの話を持ちかけようとした時いつも彼女が電話を切ってしまっていたから・・・。
多分彼はこの日常が心の拠り所だったのだろう。
あの地獄のような環境で戦い傷つき続ける彼にとってこの日常こそが全てだったのだ。
もしかしたら彼が学院に入った理由はこの日常を取り戻したかったからかもしれない。
確かに彼は彼女を守りたいと言う意思で学院に来たのだろうがそれだけならば誰にも見つからないように影から見守れば良かったのだ。
そうすれば彼はここまで追い詰められることはなかったはずなのだから。
なのに彼は彼女の傍へとやってきた。
彼はきっと誰かとの関わりに飢えているのだ。
けれど彼は本当に気を許した人としか関わる方法を知らない。だから彼は回りくどい真似をして学院に入ったのだろう。
でなければ彼が一般のリリィに見つかることなんてないはずだから。
彼女が思い吹けていると彼がポットを手に取り中に入っている紅茶をカップに注ぎゆゆへと渡した。
蓮夜『どうぞ。』
ゆゆ『ありがとう。』
2人は一旦会話をやめて一息つける。
紅茶を飲んでいると彼が顔を顰めた。
ゆゆ『れんや・・・あなたは紅茶苦手でしょう?どうして飲んでいるの?』
蓮夜『・・・ゆゆが飲めるのに僕が飲めないのが悔しいから・・・。』
ゆゆ『ふふっ、変なところに意地を張って・・・子供っぽいわよ?』
蓮夜『まだ子供なんだからいいんだよ・・・。』
彼はいじける様に顔を逸らす。
夢結「こういうところはまだ子供みたいね。」
まだ彼に子供みたいな感情がある事に彼女は喜ぶ。
もしかしたら自分が見ていた彼は作り物なのではと考えてしまったが今の彼を見るとその考えは吹き飛んだ。
蓮夜『そう言うゆゆはコーヒー飲めないでしょう?』
ゆゆ『・・・苦いのは・・・苦手なの・・・。』
彼の言葉にゆゆも頬を膨らめせて顔を逸らした。
それを見た彼はくすりと笑い。
蓮夜『そう言うゆゆも子供でしょ?』
ゆゆは顔を俯かせ肩を震わせ始めた。
蓮夜『ゆゆ?・・・大丈夫?』
それを見た彼は心配そうに彼女に声をかける。
すると彼女ががばりと顔を上げて彼に飛びかかる。
その顔は真っ赤になっており目頭には涙が溜まっていた。
ゆゆ『バカ!バカ!バカ!バカ!』
蓮夜『ちょっ!痛いって!』
彼女は彼の胸を殴り始めた。
だがそれはポカポカと擬音が聞こえそうなほどに弱いもので彼は痛がっているが顔を見ると笑っており痛みを感じていない。
蓮夜『ごめん!ごめんってば!』
彼が謝ると彼女の動きが止まった。
すると少し恥ずかしそうに自身が座っていた席に戻り紅茶に口をつけた。
ゆゆ『・・・分かればいいの・・・。』
蓮夜『・・・やっぱり子供っぽい。』
ゆゆ『何か言った?』
蓮夜『なんにも言ってないよ?』
このような子供っぽいことを挟みながら二人の会話は盛り上がった。
2人から笑みは絶えずその光景を見た夢結は後悔したような表情になる。
本当に楽しかった。
思い出すだけで笑みが出るこの記憶。
この微笑ましい光景を壊したのは自分なのだ。
あの時拒絶した時に終わってしまったこの時間が懐かしく思える。
また彼とこの光景みたいな会話をしたい。
その想いが強くなる。
こうして話していればこの2年間自身の心の殻に閉じこもらなかったかもしれない。
こうして話していれば彼は・・・。
そう考えていると、
ゆゆ『もうこんな時間・・・れんや、わたし帰らないと・・・。』
蓮夜『・・・本当だ!もうこんな時間・・・そうだね。また今度話そう!』
ゆゆ『うん!』
すると2人は立ち上がり玄関に向かった。
蓮夜『今度はいつ帰って来るの?』
ゆゆ『・・・多分夏休みかしら?』
蓮夜『夏休みか・・・結構長いね。』
2人は会話をしながら玄関を出て彼女の家へと向かった。
2人の家は徒歩数秒・・・向い隣なので目の前なのだか彼が彼女を送っていくのは2人の普通だった。
そして彼女の家の玄関先に着き。
蓮夜『またね!』
ゆゆ『うん!またね!』
お互いに手を振りながら彼は自身の家へ彼女はそのまま玄関を開けて彼女の家へと入っていった。
それからしばらく平日は学校に行き休日は森で武器の生成や訓練を、
夜になるとヒュージを狩りに森の奥へ、
そのサイクルを続ける。
その中で彼女は色々のことがわかった。
彼の異能・・・その中でも壊始と生成にはデメリットがあり使いすぎると目に負担がかかり災厄の場合力が暴走して眼球が破裂してしまうこと。
そして彼の今持っている瞳は2つ以外に「再生」「指定」「幻覚」「解析」があること。
この中の4つの瞳は彼が初めの2つの瞳を改変させて作ったものであること。
「指定」「幻覚」「解析」は彼から聞いたことの無い瞳だが能力的におそらく「操作」「幻界」「情読」の瞳の原点だろうと考えた。
その時に彼女自身もこの世界で異能が使えること。
そして異能が使えるとわかったため彼女は彼の使い方を見ながら異能の扱い方を学び始めた。
前に彼から聞いた話では異能は系統によって制御の仕方が全く違うため自分の制御方法だと上手く扱えないだろうと、
だが、その言葉とは反対に彼女は彼の制御方法で異能を上手く制御出来るようになり始めていた。
あまりに馴染むため初めの頃は困惑していたがこれを好機だと考え異能制御に精を出した。
彼が学校にいる時は異能の制御を練習して待ちそれ以外の時は彼に着いていき彼を救う方法を模索する。
それは数ヶ月繰り返し夏休みまであと1週間ほどになったある日、
彼がいつものようにヒュージを狩るために夜の森を駆けていると、
蓮夜『・・・。』
ふと彼が足を止めて周りを見渡す。
蓮夜『そこにいるのはわかってる!』
彼が突如拳銃を取り出して彼の前方にある木へと銃口を向けた。
彼の眼光を鋭く彼の身体を殺気が覆い始める。
???『ごめんごめん、僕は別に君に危害を加えるつもりはないんだ。』
そう言いながら木の影から人影が姿を現した。
その人影の正体は彼よりも少し年上程度の少女だった。
その少女は百合ケ丘の制服を着ておりその顔には優しそうな笑みを浮かべていた。
夢結「・・・・えっ?」
その顔を見た時彼女の顔は驚愕に染まり身体の動きが止まる。
彼女にはその少女に見覚えがあった。
その少女は彼女の大切な人でありその名は・・・
???『私は川添 美鈴。同類さ。』
彼女のシュッツエンゲル・・・川添 美鈴がそこにいた。