アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
美鈴『・・・また凄いものを作ってきたね・・・。』
彼女は苦笑いしながら彼に問いかけた。
蓮夜『俺だって大きくするの嫌ですよ、取り回し悪くなりますし・・・。』
そう言いながら彼は自分が握っているものに目を向けた。
彼の手には彼の身長の半分の長さの銃身を持った大型の拳銃が握られておりそのあまりの大きさに本当に使えるのか疑ってしまうほどのものだった。
蓮夜『ですけどこれぐらい無いとろくにダメージを与えられないんですよ。小さくも出来ますがそうすると耐久性に難がありますし・・・。』
美鈴『それはわかっているんだけど・・・本当に使えるのかい?それかなり重いだろう?』
蓮夜『ギリギリ許容範囲内ですね・・・重量は18kgぐらいなんで片手での運用も問題なくできますよ。』
美鈴『僕もそうだけど普通は君みたいに片手で18kgなんて持てないんだよ。』
蓮夜『リリィはあんなに重量があるCHARMを振り回してますし普通じゃないんですか?』
美鈴『CHARMは術式とかで重量軽減や身体強化の補助を受けているから使えるだけで素の身体能力だけだとあんなのはふりまわせないよ・・・そもそも君はリリィじゃないじゃないか。』
彼女は彼の非常識ぶりにため息を吐くと彼は納得いかないのか少し頬を膨らませ、
蓮夜『人を人外みたいに・・・酷くありません?』
美鈴『だってそうだから・・・。』
蓮夜『俺を脳筋かなんかだと思っているみたいですけどこれにも重量軽減や身体強化を付与しいるんですよ!それもCHARM以上に。』
美鈴『ちょっと待って!・・・軽減して18kgって・・・一体どれだけ重いんだい!?』
蓮夜『大体100超えてますね。・・・余裕で、』
美鈴『それって素材は・・・?』
蓮夜『ウルツァイト窒化ヨウ素です。』
美鈴『なんだいそれは?新種の物質?』
蓮夜『グラファイトが混ざった隕石の衝突時に発生する物質ですね。ダイヤモンドの約3倍の硬度を持ちます。』
美鈴『・・・。』
その言葉に彼女は言葉を失う。
世界で一番硬いと言われているダイヤモンドよりも硬いとは?と、
蓮夜『それを物質の密度限界まで圧縮したのでこんな重さに・・・。』
美鈴『本当にチートだよね・・・君の能力は。』
蓮夜『確かにそれは否定できませんけど姐さんも大概ですよ?』
美鈴『確かに!』
2人は顔を見合わせて笑い出す。
彼らはかなりの時間を共にしており、2人が出会った日からもうそろそろ2年が経つのだ。
初めの頃は苗字で読んでいた彼も数ヶ月たった頃に「もう親しい間柄になったのだから苗字呼びは辞めようよ。」と言われ、初めの頃は彼女の言葉を拒否していたが根負けして今は敬語はそのままだが彼女のことを「姐さん」と呼んでいる。
彼らはこの2年間夜になるとここに集まり異能の制御や使用方法などを考えたり近くに現れたヒュージを狩ったりしていた。
その間夢結もただ見ていた訳ではなく異能の制御に精を出しいくつかの派生も完成させている。
そうして美鈴は中等部2年生になり、彼も中学に入学していた。
美鈴『そうだ!蓮夜!』
蓮夜『どうしたんですか?』
美鈴『今年の1年に面白い子がいたんだよ。』
蓮夜『面白い子・・・ですか?』
美鈴『そう!1人だけ妙に大人びていてね。まるで君みたいなんだ!』
蓮夜『随分と珍しいですね・・・俺と同じくらいって相当ですよ?』
美鈴『それで僕、彼女とシュッツエンゲルの誓いをしようと思うんだ。』
蓮夜『シュッツエンゲル?』
夢結「もしかして私!?」
夢結は彼女の言葉に驚愕する。
彼女がシュッツエンゲルを結んだのは夢結1人だけだ。
そして彼女が美鈴とシュッツエンゲルとなった時期と一致している。
つまりここで彼女が言葉が指す人物は自分しかありえない。
だがまだ中等部に入学頃は彼女との交流がなかったはずだ。
それに入学式は明日なので分からないはずなのだが、
美鈴『凄く落ち着いた色をしているんだ。前々からそんな気配は感じてたんだけど今日やっと誰かわかったんだよ。』
彼女は感情を色や形として見れるのだ。
それで他と違う彼女を見つけたのだろう。
蓮夜『確か青色でしたっけ?』
美鈴『そうだよ!だけどその子は特殊で他の色を青で覆っているみたいなんだ。』
蓮夜『つまり本心を隠していると?』
美鈴『そう、大人でも結構少ないのにこの歳でだよ。面白いと思わないかい?』
蓮夜『確かに興味はありますね・・・どんな人生を送ってきたのか。』
美鈴『違う違う!別に無理やり塗りつぶした訳では無いから何か酷い目にあったとかじゃないよ!』
彼が少し悲しげに呟いたため彼女は慌てて訂正をした。
蓮夜『そうなんですか・・・良かった。それでその子ってなんて言うん名前なんですか?』
美鈴『えっとねぇ・・・確か「白井 夢結」だったかな?』
蓮夜『ファッ!!夢結!!』
彼は驚き手に握っていた拳銃を落としてしまう。
それにより ズムン!という思い音と共に地面が凹み銃身が地面にめり込んだ。
美鈴『知り合いなのかい?』
蓮夜『知り合いも何も!幼馴染ですよ!夢結は!』
美鈴『すごい偶然だね・・・。』
蓮夜『本当ですよ・・・世界狭すぎませんか?』
美鈴『クスクス・・・そうかもしれないね?』
彼女は笑いながらそう呟いた。
美鈴『そうだ!夢結って子はどんな子なんだい!?』
彼女は顔を彼に近づけてすごい勢いで彼に問いかけた。
蓮夜『ちょっと姐さん、落ち着いてください!・・・そうですね・・・姐さんが言うように少し大人びていて落ち着いた性格ですけど根は結構な負けず嫌いのそれで優しくて・・・。』
彼は嬉しそうに彼女について語っていく。
まるで自慢しているかのように、
美鈴『君の方が落ち着こうか・・・すごく大切な人なんだね。・・・もしかして好きなのかな?』
蓮夜『えっ!?・・・その好きってlikeの方ですよね?』
彼は顔を赤くしながら慌てるように彼女に確認する。
美鈴『もちろんLoveだよ・・・それでどうなんだい?』
蓮夜『黙秘権を行使します・・・。』
彼はそのまま俯いてしまいそのまま黙り込んでしまった。
だがその顔は先程よりも赤くなっていた。
美鈴『黙った時点でわかるんだけどね・・・。』
蓮夜『分からないんですよ・・・もしかしたら好きなのかもしれませんし、そうじゃないかもしれない。・・・ただ夢結だけは何があっても守りたいとは思います。』
美鈴『まぁ、君の歳だとそうだね。』
蓮夜『そうなんですか?・・・もうかれこれ小3の時からなんですが・・・姐さんはどう思いますか?』
美鈴『僕は何も言えないかな?蓮夜・・・その答えは君自身が見つけるんだ。』
蓮夜『自分で・・・。』
美鈴『そう、それは君の気持ちなんだから君自身で答えを見つけないと意味が無い。じゃないと後悔することになるよ。』
蓮夜『・・・よくわかりませんが肝に銘じておきます。』
そういう彼に彼女は微笑み、
美鈴『いつもは大人顔負けなのにこういう時だけは年相応なんだよね・・・君は。』
蓮夜『からかっているんですか?』
美鈴『いいや、君らしいと思っただけだよ。』
蓮夜『俺らしい?』
美鈴『そう、たまに出てくる子供っぽい君だ。それが多分本当の君なんだ。』
蓮夜『本当の俺ですか?』
美鈴『いつも君は自分自身を押し込んでいるだろう?』
蓮夜『そうですね・・・周りと違いすぎますから・・・。』
美鈴『確かに異能者は精神の成長が早いからね。周りに溶け込めないのはしょうがないかもしれない・・・これが異能者の弊害のひとつなのかもしれないね。』
蓮夜『どうしようもありませんからね・・・慣れましたよ。』
美鈴『その慣れが行けないんだけど・・・君にも心を許せる人はいるだろう?親とか・・・あとは夢結かな?』
蓮夜『そう・・・ですね。父さんと母さん、そして夢結には本心を話せます。・・・もっと子供じみた感じにしていますが、』
美鈴『そういう人たちだけでもいいからそのままでいないとダメだ。そうしないと君の心は耐えられなくなるから・・・』
蓮夜『何か言いましたか?』
美鈴『いいや、特には何も。・・・今何時だろう?』
彼女は誤魔化すように腕時計を確認する。
すると秒針は4時を指しておりそろそろ帰らなければ行けない時間になっていた。
美鈴『もう時間だしそろそろ帰るうかな。』
その言葉に彼も時間を確認する。
蓮夜『そうですね。それではまた明日。』
美鈴『うん、明日ね。』
2人はお互いの帰路に着いた。