アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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過去⑪

2人へと放たれたヒュージの猛攻、

それは豪雨のように降り注ぎ2人の命を狩り取ろうとする。

 

時に躱し、時に弾き、時に逸らす、

触手の雨を最低限の動きで凌ぎヒュージに向かって駆け抜ける。

その動きに隙はなくその滑らかな動きはまるで踊っていると思ってしまうほどだ。

 

ヒュージが触手を数本束ね地面スレスレを薙ぎ払う。

それを跳躍で躱すとすぐ下を暴風が通り過ぎた。

その風で少し体勢を崩してしまった2人を再度触手が襲う。

それは足場のない空中にいるため身動きの取れない2人では躱すことが不可能なタイミングで襲いかかる。

触手の到達まであと数秒、それではさすがの彼でも足場を展開するには時間が足りない。

 

そして触手が2人の身体を貫く寸前、

 

 

蓮夜『姐さん!!』

 

美鈴『ああ!』

 

 

2人は得物をお互いに向かって振るった。

刃がお互いの身体へと迫る。

振るった刃の沿線上にお互いの得物が重なりぶつかる。

その勢いを利用して2人は左右に身体をずらし迫り来る触手を躱す。

2人は身体を回転させることで勢いを殺し着地、再びヒュージへと迫る。

ヒュージの懐に入ることに成功した2人を触手が襲いかかるがその量は先程の猛攻と比べるまでもなく余裕を持って躱せるほどにまで減っていた。

余裕ができた2人は相手の手数を減らすために触手を切り裂く。

美鈴の切断した触手はすぐに再生したが蓮夜が切断した触手は一向に再生する気配を見せず徐々に手数を減らしていく。

 

 

美鈴『これは修復じゃなく再生で間違いなさそうだ!』

 

蓮夜『ですね!再構成までの速度が早すぎますし、それに「線」を切ったら治りませんから!』

 

 

2人は先程のお返しとばかりに猛攻をヒュージへと浴びせる。

ヒュージの体に傷が増えていき触手が初めの半分程になった頃、

 

 

蓮夜『見つけた!』

 

 

彼がそう叫ぶと太刀を鞘に収めて手を前に向ける。

すると彼の手に槍が現れた。

槍を両手で持ち直し構えるとその勢いのままヒュージへと突撃する。

ほとんどの触手は美鈴や彼のいた場所を狙っておりヒュージの胴体はがら空きになっていた。

槍がヒュージを貫く寸前、

 

 

蓮夜『!?』

 

 

まるで新たな触手が生えてきたかのように現れた触手が彼に襲いかかった。

それをどうにか槍を引き戻し防ぐが勢いを殺しきれず弾き飛ばられる。

 

 

美鈴『蓮夜!?』

 

 

その光景を見た彼女はヒュージの隙をつき後退、彼へと駆け寄る。

 

 

美鈴『大丈夫かい!』

 

蓮夜『大丈夫です。』

 

 

幸い彼に怪我はなくすぐさま立ち上がった。

 

 

 

 

夢結『・・・良かった。』

 

 

夢結は胸を撫で下ろし大きく息を吐く、

どうにか立ち直った彼女の息は荒くかなり消耗していることが見て取れた。

彼女は少し安心した表情で2人を見る。

詳しくは分からないが2人が優勢なことはわかっていた。

だがら心配する必要はないだろうと、

 

だが、2人の表情からは焦りが顔を覗かせていた。

 

 

 

蓮夜『まずいですね・・・。』

 

美鈴『ああ・・・再生している。』

 

 

先程彼を襲った触手の出現部を探すとそこはちょうど彼が切断した再生しないはずの触手(・・・・・・・・・・)だったのだ。

 

 

美鈴『ちゃんと目は使っていたんだろう?』

 

蓮夜『間違いなく・・・しばらく再生していませんでしたし確実かと・・・。』

 

美鈴『あれは時間経過で消えるのもでもないはず・・・つまり何か仕掛けがあるみたいだね。』

 

蓮夜『そうですね。・・・特にギガント級でも珍しい再生能力持ちですし何か持ってますよこれは・・・。』

 

美鈴『もしかして・・・。』

 

蓮夜『何か思い当たる節が?』

 

美鈴『ああ・・・予想だが、異能者を取り込んでいるかもしれない・・・。』

 

 

彼は彼女の言葉に動揺するがすぐに冷静さを取り戻した。

だがその表情は歪んでおり得物を握る手に力がこもる。

確かにその可能性は話し合っていた。

G.E.H.E.N.A.のように人間がヒュージの力を利用するならその逆もあり得ると、

しかしその可能性を間近で見てしまうと会話していた時のようには行かない。

 

怒りが込上げる、

 

すぐにでも飛び出してしまいそうな感情を必死に抑える。

 

 

蓮夜『・・・考えたくありませんが、その可能性はありますね。』

 

美鈴『・・・僕も考えたくないさ。だが、君の概念付与が無効化されているんだ・・・その可能性が1番高い。』

 

蓮夜『概念を付与するものだから逆に上から付与されれば効果が消える・・・それが当たり前ですからね。』

 

美鈴『これはあくまで可能性だがもしも・・・もしもそれが現実だった場合・・・。』

 

蓮夜『・・・。』

 

 

その場合中にまだ行きた人間がいるのかもしれない。

異能者の能力は異能者本人が死亡してしまうと消えてしまう。

なのでもしもこのヒュージが異能者を取り込みその能力を利用しているなら異能者本人が生きている可能性があるのだ。

 

だが、それは同時に恐怖心を煽った。

仮に生きていたとしよう。

生命活動に支障がない、それは間違いない。

しかし、それはただ生きている(・・・・・・・)だけの可能性もあるのだ。

もしも救出に成功しても後遺症がある可能性もある。

最悪の場合は・・・

 

 

美鈴『蓮夜!!』

 

蓮夜『!?』

 

 

思考の底に潜りそうになった彼は彼女の声で彼も浮上させた。

 

 

美鈴『考えるのはあとだ!今は目の前に集中するよ!』

 

蓮夜『・・・わかりました。』

 

 

2人はヒュージの攻撃を捌きながら会話を続ける。

その表情には焦りが生じているがまだ少し余裕が見て取れた。

彼がもう一度触手を切断した時、

 

 

蓮夜『姐さん!あれ!!』

 

 

彼が叫んだため彼女が彼の目線を追うと、

そこには触手を自ら切り離しその切り離した部分から新たな触手が生えて来る光景があった。

 

 

美鈴『なるほど!トカゲの尻尾切りと同じか!』

 

蓮夜『なら!取り込まれている可能性も低いですね!』

 

 

2人の表情に安堵が浮かぶ、

これで最悪の事態では無い可能性が高まる。

もしも取り込まれているなら救出を視野に入れなくてはいない。

そうすると過剰な攻撃をしてしまえば取り込まれている人にまで危険が及ぶ可能性があるのだ。

だがその可能性が低いということは最低限の注意だけで大丈夫ということになる。

これなら戦闘もかなりしやすくなる。

 

そう思った瞬間ヒュージが新たな動きを見せた。

 

 

ヒュージは自身の体に触手を巻き付け始める。

それにより攻撃してくる触手量が数本になったが体全体を覆うように巻きついた触手はまるで鎧のようにヒュージの体を隠した。

 

 

蓮夜『ヒュージって思考能力ないはずでは?』

 

美鈴『これも生存本能なんだろう・・・それよりもヤバいんじゃないかな?』

 

蓮夜『ですね・・・。』

 

 

2人の表情が曇り冷や汗が流れる。

 

 

美鈴『「核心」は見つかったんだよね?』

 

蓮夜『・・・はい・・・。』

 

美鈴『これ・・・届くかな?』

 

蓮夜『・・・無理です。』

 

 

彼が見つけたヒュージの「核心」・・・壊始の条件である「線」の起点、

そこへと攻撃を当てることが出来れば対策がなければ確実に倒すことができる全てのものに存在する最大の弱点、

それに攻撃が届けさせられないのだ。

 

 

美鈴『「核心」の場所は?』

 

蓮夜『胸部の中央です。』

 

美鈴『胸部ね・・・。』

 

 

彼女はヒュージを見上げながら、

 

 

蓮夜『触手がなければ届くんですが・・・。』

 

美鈴『触手をどうにかすればいいんだね?』

 

蓮夜『はい!・・・ですが、どうやって?』

 

美鈴『簡単だよ・・・人数(・・)で押せばいい。』

 

蓮夜『人数でって・・・まさか!!』

 

 

彼女の糸を察せた彼はすぐに止めようとするが時すでに遅く彼女はヒュージへと駆け出した。

 

 

蓮夜『ああ!もう!』

 

 

彼も急いで彼女を追ってかけ出す。

 

攻撃の密度が減ったことで余裕ができた彼女は一気にヒュージへと接近する。

彼女がヒュージの胴体へと跳躍する。

そして彼女がヒュージの胸部まで飛び上がると彼女の姿がぶれ始めた。

すると彼女が5人に増える。

 

 

美鈴『『『『『はぁぁぁあ』』』』』

 

 

5人の美鈴は同時にCHARMを振り抜いた。

その斬撃はヒュージを守る触手の鎧を切り裂き中の本体を顕にさせる。

 

 

美鈴『今だ!!』

 

蓮夜『・・・ぁぁぁぁあああ

 

 

彼女が開いた突破口に彼が飛び込む。

そして彼は再び槍を取り出して胴体に突き刺した。

その槍はヒュージの胴体に吸い込まれるかのように深々と突き刺さり槍の持ち手すらも埋まってしまったそのとき、

 

 

『ピシリ!』

 

 

乾いた音が辺りに響きヒュージの動きが止まる。

 

そして2人が着地すると再びヒュージ画触手を振りあげようと持ち上げる。

 

だが振り下ろす寸前にヒュージの動きが鈍くなりまるで力が抜けたかのようにゆっくりと触手を地面に下ろした。

 

その後もしばらく動いていたヒュージだが次第にその動きは遅くなりついに止まってしまった。

 

 

美鈴『倒せたかな?』

 

蓮夜『はい、生体反応は消えました。』

 

蓮夜・美鈴『『・・・。』』

 

 

2人はしばらく無言になるがすぐに顔を合わせる。

すると2人は森の奥へと消えて行った。

 

 

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