アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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過去⑫

2人は森の中を進む。

先程までと異なり静まり返った森の中を無言のまま駆け抜ける。

しばらくすると戦闘前までいた場所に着いた。

すると2人は周りを確認するとそれぞれ木にもたれ掛かるように座った。

 

 

蓮夜『・・・お疲れ様でした。』

 

美鈴『ああ、お疲れ様。』

 

 

息を着くと2人の口が開いた。

お互いに慰労の言葉をかける2人はだが、いつもと変わらない雰囲気を出す彼女とは違い彼の表情は暗くなっている。

 

 

蓮夜『・・・姐さん。』

 

美鈴『どうしたんだい?』

 

蓮夜『どうして無茶したんですか?』

 

美鈴『それは早く決着をつけるためだよ。』

 

蓮夜『あの敵なら少しづつ削っていけば安全に勝てたはずです。・・・なのにどうして、』

 

美鈴『そうすると君に掛かる負担が大きすぎるからね。』

 

蓮夜『俺よりも姐さんの方が危ないでしょう!まだ俺は休み(インターバル)を作れるから余裕がありますけど、常時発動型の姐さんにはそれがないもう姐さんには余裕が無いはずだ。』

 

美鈴『そうだね。・・・最近はよく引きずり込まれそうになることが多くなった。・・・あと持って数年かな?』

 

蓮夜『分かっているならなぜ・・・。』

 

美鈴『君なら分かるはずだ。・・・僕達は大人(20歳)になる前に死んで(人ではなくなって)しまう。』

 

蓮夜『・・・。』

 

 

その言葉を聞いた彼は黙ってしまう。

分かるのだ彼女の言葉の意味が、

だからこそ彼は何も言えなくなっている。

 

 

美鈴『僕達の運命は理性のない獣に堕ちるかそれに抗い超越者(人ならざるもの)になるかの2つだ。』

 

蓮夜『・・・。』

 

美鈴『たとえ獣に堕なかったとしても超越者になってしまった時点で人ではなくなってしまう。・・・超越者は獣に堕ちることなく理性を持った・・・理性のある獣だからね。・・・僕は思うんだ人では無くなるということは「死」と同じなんじゃないかってね。』

 

蓮夜『・・・。』

 

 

彼女の顔に影が落ちる。

彼女はいつものように振舞っているのだろうがその笑顔にも曇りがあり彼女の心の内を表しているかのように感じる。

 

 

美鈴『だから、後悔をしたくないんだ・・・。』

 

 

彼女は彼に向かって真剣な眼差しを向ける。

その表情には迷いはなかった。

 

 

美鈴『今を全力で生き抜く・・・それが僕のやるべき事だと思っている。』

 

蓮夜『・・・やるべき事。』

 

 

彼女の言葉を聞き彼も無意識につぶやく。

その表情は何かに迷っているかのようで、真っ直ぐな彼女の瞳を見ないように目を逸らしていた。

 

 

美鈴『そして僕達(・・)には守るものがある。・・・違うかい?』

 

蓮夜『・・・夢結。』

 

美鈴『そう、夢結だ。僕にはシュッツエンゲルとして彼女を守る義務がある。・・・そして君もだろう?』

 

蓮夜『・・・はい。』

 

美鈴『そして僕たちのうち長く夢結の傍に入れるのは・・・おそらく君だ。』

 

蓮夜『・・・だからって。』

 

美鈴『だからこそだよ。・・・さっき言ったけど夢結は異能者である可能性があるんだ。だから彼女の傍で支える存在は必要不可欠なんだよ。なんせ異能者は精神が不安定になるだけで呑まれる可能性があるからね。』

 

蓮夜『それで俺なんですね・・・。』

 

美鈴『そう、君の方が確実に僕よりも長く人のままでいられる。』

 

蓮夜『もしも超越者になったとしてもどのような影響があるかも分かりませんから・・・。』

 

美鈴『もしかしたら感情がなくなっているかもしれない。そうなったら彼女を支えるのは不可能に近い・・・だって、考えていることが分からなくなるのだからね。そしてそれが彼女に気付かれてしまったら・・・。』

 

蓮夜『確実に怒りますね・・・夢結なら、』

 

美鈴『そして悲しむ・・・。』

 

蓮夜『・・・だから悟られる訳にはいかない。』

 

美鈴『僕の場合は任務中に戦死としてどうにか姿を消すこともできるけど・・・君はそうも行かないからね。』

 

蓮夜『一般人ですからね・・・一応。』

 

美鈴『なんで君みたいな一般人がいるんだろう?』

 

蓮夜『リリィじゃないからでしょう?』

 

美鈴『・・・性転換してみるかい?』

 

蓮夜『・・・遠慮します。』

 

美鈴『まあ、そうだろうね。』

 

 

2人は突然笑い始める。

今までの暗い雰囲気が嘘かのような状況に違和感を感じずにいられない。

 

 

蓮夜『あはは・・・こんな話して笑えるなんて・・・本当におかしくなってますね。・・・俺達。』

 

美鈴『そうだね・・・もう僕達の感性は壊れてるんだ。・・・時々自分自身が怖く感じるよ。』

 

蓮夜『俺も同じです。・・・どんどんと周りとかけ離れていく・・・「本当にここにいていいのか?」って考えることも多いです。』

 

美鈴『僕もだよ。人間ともリリィとも違う・・・そう考えると怖くてたまらない・・・今僕が僕でいられるのは蓮夜・・・君と夢結のおかげなんだ。』

 

蓮夜『俺は同じ異能者だからだとして夢結もなんですね。』

 

美鈴『そう、夢結は僕の心を救ってくれた。いつもそばで支えてくれるからね。・・・彼女は僕に取って1番の宝物なんだよ。』

 

蓮夜『そうですね。俺も何回助けられたか・・・多分夢結がいなければ俺はもう獣になっていますよ。』

 

美鈴『その夢結が今一番危険なのはわかるだろう?』

 

蓮夜『はい、本当に夢結が異能者になるのだとしたら、ならなった直後・・・特にこの真実を知った時に・・・。』

 

美鈴『ああ、絶対に心が壊れる。・・・夢結はああ見えて結構繊細だからね。』

 

蓮夜『それは俺が1番わかっていますよ。・・・夢結はいつもそうなんですよ。周りのが不安にならないようにいつも本心を押し殺して・・・優しいんですよ、本当に・・・。』

 

美鈴『だから君の存在が必要なんだ。彼女が本当に心を許している君じゃないと・・・。』

 

蓮夜『・・・姐さんじゃダメなんですか?』

 

美鈴『・・・ダメだね。』

 

蓮夜『どうしてです?姐さんになら夢結も気を許しているはずです。』

 

美鈴『確かに気を許してくれているのは事実だ。だけど心までは行っていない。』

 

蓮夜『・・・それは数年でどうにかなるのでは?』

 

美鈴『蓮夜・・・さっきからどうしたんだい?言動がおかしくなっているようだが、まるで自分自身を否定しているような・・・。』

 

蓮夜『どうもしていませんよ?・・・ただ。』

 

美鈴『・・・ただ?』

 

蓮夜『ただ、どうして俺なのかって思うんですよ・・・。もっと姐さんとか適任な人がいるはずなのに・・・。』

 

美鈴『・・・蓮夜?』

 

 

突然彼の雰囲気が普通ではなくなる。

どんどんと彼の周りに暗く重い何かが包むような息苦しい雰囲気が広がる。

この異常事態に彼女は慌てて彼の表情を確認すると、

 

そこには何も感情がない生気を失ったかのような表情をした彼の顔があった。

 

 

美鈴『蓮夜!しっかりするんだ!』

 

 

彼女は彼の状況を確認するとすぐさま彼の肩を掴み揺さぶる。

そうすると彼は我に返ったかのように顔を上げて辺りを確認する。

 

 

蓮夜『・・・すいません。堕ちかけました。』

 

美鈴『すいませんって・・・まあ、大丈夫ならもんないないのかな?・・・それでどうして君は自分に自信がないんだい。・・・辛いのなら言わなくてもいい・・・だけど聞いておかないといけないことなんだ。』

 

蓮夜『・・・弱いんです。』

 

美鈴『弱い?・・・君がかい?僕にはそうは見えないけど・・・。』

 

蓮夜『いいえ、弱いんですよ。どうしようもなく・・・だからすぐに呑まれかける。』

 

美鈴『すぐにって良くなっているのかい!』

 

蓮夜『はい、軽い感じですけど2日に1回ほど・・・自力では戻って来れるんですが・・・。』

 

美鈴『確かに危険だね・・・。』

 

 

彼の言葉に彼女は考え始める。

確かに獣になる可能性が高いなら期限があるがそれまではなる可能性がほとんどない自分が残った方がいいと考えたのだろうか、

 

 

美鈴『・・・それならぼくが残った方がいいのかもしれない。』

 

蓮夜『それなら、』

 

美鈴『だけど君に負担をかけられない。』

 

 

そこで彼の言葉は止められる。

彼は言葉を失ってしまう。

 

どうしてなのか?

 

どうして彼女ではなく自分が?

 

残るのは彼女の方がいいはずだ。

 

彼はそう思っているのだろう。

 

それなのに彼女は彼を選んだ。

一拍置いて彼女の口が再び開く。

 

 

美鈴『蓮夜、君にしか出来ないんだよ。』

 

蓮夜『どうしてですか!こんな不安定な俺よりも姐さんの方がいいはずだ!それなのにどうして・・・。』

 

 

彼の表情が悲痛に染まる。

今の彼は自分自身を完全に否定しているのだ。

幼い()に大人の思考力(中身)そんな矛盾を持つ彼の精神は息を吹きかけてしまえば吹き飛んでしまうほどに脆い。

だからころ自分を信用出来ないのだろう。

 

 

美鈴『どうして・・・か、それは言えない。・・・なぜなら、その理由は君自身が見つけないと行けない事だからね。』

 

 

そんな彼の心の内を分かっているのか彼女は彼の頭を撫でながら優しい声色で語りかける。

 

 

蓮夜『理由を見つける・・・。』

 

美鈴『焦らなくてもいいんだ。ゆっくりと考えればいい。』

 

蓮夜『・・・本当に俺でいいんですか?』

 

美鈴『ああ・・・僕でも他の誰でもない君だけなんだよ。・・・本当の意味で救えるのは。

 

蓮夜『今なんて言ったんですか?』

 

美鈴『いいや何も言ってないよ。』

 

 

彼女は年相応に首を傾げる彼の頭を再び撫でた。

そのとき木々の隙間から漏れた月明かりが2人をそっと包み込んだ。

 

 




ただいまアサルトリリィラストバレットで私が所属しているレギオン「蒼き焔」でメンバー募集をしています。
本レギオンは同じくハーメルンに投稿されている「アサルトリリィ-蒼焔のリリィ」作者であるレリさんが隊長をしているレギオンです。
ただいま後衛(回復、支援、妨害)を2名募集しております。
レギオンマッチは週3回(水曜、土曜、日曜)の22:00です。
積極的に参加可能な人はぜひ入隊をよろしくお願いいたします。
入隊はレギオン「蒼き焔」隊長の蒼月 焔さんまでよろしくお願いします。

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