アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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過去⑮

蓮夜『・・・大進行!』

 

 

彼女の言葉を聞いた途端彼は声を荒らげて叫ぶ。

 

 

蓮夜『いきなりなんですか?予兆もなしに!?』

 

美鈴『ああ、突然なんだ。・・・政府としての予想では複数のネストがお互いに作用し急激なヒュージの増加が発生したと考えているらしい。』

 

 

すると彼はすぐに顔をある方向に向ける。

 

 

蓮夜『・・・あっちか。』

 

 

彼が見ている方向・・・それは大進行が起きようとしている甲州であった。

 

 

蓮夜『・・・少し見てきます。』

 

 

彼はそうつぶやくと姿を消した。

 

森に静けさが戻る。

 

彼女がしばらく待っていると、

 

 

蓮夜『お待たせしました。』

 

美鈴『・・・おかえり、それでどうだったんだい?』

 

蓮夜『政府の予想はあながち間違ってないですね・・・ただ。』

 

美鈴『・・・ただ?』

 

蓮夜『作用し合っているのがネスト本体じゃないんです。』

 

美鈴『ネスト本体じゃないか・・・まさか!?』

 

蓮夜『・・・アルトラ級が増えているんです。・・・ネスト内に、』

 

美鈴『新しく生まれたということかい?』

 

蓮夜『それで間違いないかと・・・それが原因でネスト内の供給バランスが崩れたことが大進行の原因ですね。』

 

美鈴『そうか・・・増えたアルトラ級の数は?』

 

蓮夜『五体・・・ネストの発生が古い順に5個のネストでアルトラ級が増えています。』

 

美鈴『五体か・・・1、2体なら日本のリリィを総動員すればどうにかなるかもしれないが・・・。』

 

蓮夜『無理でしょうね・・・一般的なアルトラ級の力を考えると2体相手となると被害が計り知れないのに五体なんて話になりませんよ。』

 

美鈴『それも古いということはネスト発生し始めた直後から存在するアルトラ級のはずだ。・・・そうなると、平均的なアルトラ級の戦力で済むかも分からない。』

 

蓮夜『ただリソースの大半はアルトラ級が持ってるためギガント級個体が少ないのは不幸中の幸いですかね。』

 

美鈴『そうだとしてもアルトラ級がいる限り状況は変わらないか・・・。』

 

蓮夜『アルトラ級の厄介な点は硬さと無尽蔵なマギですからね。・・・長期戦は免れません。』

 

美鈴『・・・政府は何を考えているんだ。

 

蓮夜『何かあったんですか?』

 

 

彼女の呟きとその冷静そうに見える中にある怒りの表情に何かあったのかと問いかける。

 

 

美鈴『君には内緒にしていてもすぐバレそうだから話すよ。・・・君はリリィの実戦における規定の中に年齢制限があることは知っているだろう?』

 

蓮夜『はい、確か16・・・と言うよりも高等部以上でしたよね?』

 

美鈴『ああ、そうだ。・・・たが今回の異例の自体に政府は百合ヶ丘女学院にある命令を出したんだ。』

 

蓮夜『もしかして年齢制限の撤廃ですか?』

 

美鈴『少し違うが大体はその考えであって、』

 

蓮夜『ふざけるな!!

 

 

彼から怒声が飛ぶ。

それと同時にさっきから周辺にいた鳥や小動物が一斉に逃げ出した。

 

 

蓮夜『アイツらは子供をなんだと考えているんだ!・・・タダですら高等部・・・16歳から実戦参加でもおかしいんだぞ!子供を守るのは大人の役目じゃないのか!・・・それなのにアイツらは命を懸けて戦う彼女達を見ているだけでのおのおと!』

 

 

彼の口からまるで濁流のような勢いで怒声が吐き出される。

彼の手を見ると血が出るほど強く握られており赤い筋が地面へと伸びていた。

 

 

彼の怒りは最もだと彼女は考える。

確かにヒュージに対抗するにはリリィの力が必要不可欠であろう。

だが、それでも何かできることはあるはずなのだ。

それなのに彼等は何もしない、

ただ遠く離れた場所から見ているだけなのだ。

確かに彼女達のために必死になって努力する人もいるがそのような人は数少ない。

 

これを聞いた時は彼女も彼と同じ内心だったのだ。

だからわかる。

彼が持ってる政府への怒りが、

 

それと同時に彼女はリリィ達のために奮闘する自身の所属する学院のいる例外の1人のことを考えつつ、

 

彼へと悲しみの表情を向けていた。

 

彼の子供と言う言葉に彼自身が入っていないのだ。

 

彼は自分のことを蔑ろにする傾向にある。

最近ではそれも少し良くなっては来たがそれまでだ。

根本は変わっていない。

 

そんな自分自身を否定する彼を見て黙り込んでいると、

 

 

蓮夜『少し違うって言っていましたけど・・・何かあるんですか?』

 

美鈴『あ、ああ・・・学院にはリリィのとこを大切にする人がいてね。その人・・・理事長代行がどうにか説得して1レギオンのみの出撃となったんだ。』

 

蓮夜『・・・その中に姐さんが入っているということですか?』

 

美鈴『ああ、これを聞かされた時は理事長代行はすごく悔しそうな表情をしていたよ。・・・あの時はさすがの僕でも驚いたな・・・なんせ僕達が部屋に入った瞬間にいきなり頭を下げたんだからね。』

 

蓮夜『・・・そういう人もいるんですね。』

 

美鈴『ああ、あの人はいつもリリィのことを第一に考えてくれる人だ・・・いつもならあの手この手を使って政府を抑えるんだけど、』

 

蓮夜『それが通用しなかったと、』

 

美鈴『その通りさ、多分だけど。』

 

蓮夜『・・・確実G.E.H.E.N.A.でしょうね。』

 

美鈴『あそことは仲が悪いからね・・・嫌がらせなんだろうけど。』

 

蓮夜『それに子供を使うのはおかしいでしょう。・・・やっぱり、1回潰した方が良さそうですね。』

 

美鈴『一旦落ち着いて、それが問題じゃないんだ。』

 

蓮夜『他に問題があるんですか?』

 

美鈴『ああ・・・今回の大規模作戦・・・甲州撤退戦に参加するレギオン「アールヴヘイム」に僕を含めて13名が所属しているんだ。その中の2人は高等部なんだけどあとは中等部3年なんだよ。』

 

蓮夜『・・・3年・・・!?』

 

 

そこで彼は彼女の言おうとしていることに気づく。

彼の表情が蒼白となり冷や汗がとめどなく流れ身体が震え始めた。

 

 

美鈴『君の考え通り・・・夢結も入っているんだ。』

 

蓮夜『・・・。』

 

 

彼は口が塞がらず放心状態になった。

彼女は動かなくなった彼を声をかけながら揺さぶる。

 

 

美鈴『蓮夜・・・君の気持ちはよくわかる。・・・だから1回戻ってきてくれ!』

 

 

彼女の必死の呼び掛けに彼はすぐに正気を取り戻した。

 

 

蓮夜『すいません。・・・急に夢結が戦場に出るっていう空耳が聞こえて、』

 

美鈴『済まないけど・・・それは、空耳じゃないんだ。夢結が甲州撤退戦に参加するんだよ。』

 

蓮夜『ですよね。・・・空耳じゃないですよね。・・・嘘でしょう?』

 

美鈴『現実逃避は良くないよ。・・・話を戻すけど夢結を含めて11人の3年生が参加することになったんだ。』

 

蓮夜『G.E.H.E.N.A.潰しに行っていいですか?』

 

美鈴『やめなさい。』

 

 

彼が物騒なことを言ったので口にしたため彼女は彼を止めに入る。

 

 

蓮夜『・・・「アールヴヘイム」の夢結の役割はなんですか?』

 

 

彼が真剣な表情に戻った。

 

 

美鈴『主に後方支援だけど前線が押された時は遊撃に入る感じかな?』

 

蓮夜『つまり危険になったら前に出ろと・・・。』

 

美鈴『そういうことだね。』

 

蓮夜『・・・その場所は山梨だったりしますか?』

 

美鈴『そうだけど・・・。』

 

 

それを聞くと彼は厳しい表情になった。

それを見て彼女は警戒心をあげる。

 

 

蓮夜『山梨にある2つのネスト・・・2つともアルトラ級の成長速度が早いんです。』

 

美鈴『成長が早い?』

 

蓮夜『はい、今にもネストに入り切らないくらいに、』

 

美鈴『・・・まさか。』

 

 

彼女の表情が引き攣る。

これから彼の言う言葉が何かわかるからだ。

できることならこの予感が外れることを願う。

 

だが、

 

 

蓮夜『アルトラ級がネスト外に出現する可能性があります。・・・それも最大クラスの個体が、』

 

美鈴『まさに死地だね。』

 

 

さすがに異能者の彼女であってもアルトラ級を1人で相手するのは厳しいのだ。

それが2体同時となるとほぼ不可能と言ってもいい。

 

彼女は必死に考える。

どうしたらレギオンの皆を救えるのかを、

 

だが、彼女には手がない。

いいや、ない訳では無いがリスクが大きすぎるのだ。

能力を使えば皆を生き残らせることは可能だ。

だが、異能がバレる訳には行かない。

そして、能力を行使し続ければ獣に堕ちてしまう可能性も高まり返って彼女達に危険を及ぼす可能性があるのだ。

 

能力がバレる事なく皆を救える方法を・・・何かの突破口がないかと考える。

 

その時、

 

 

蓮夜『・・・俺も参加します。』

 

 

静まり返った森の中彼の声だけが鮮明に響いた。

 

 

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