アサルトリリィ Abnormal Transition   作:0IN

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過去⑱

刃と刃がぶつかり合うような甲高い音が辺りに鳴り響く。

何も無い真っ白な空間で一人の少年とビルの何倍もの大きさの異形がお互いの得物で相手を狙う。

異形はその大きさにそぐわない圧倒的な大きさを持った刃を振り下ろし少年はその刃・・・大針をその手持つ大鎌でいなす。

その体格差から確実に潰されてしまいそうな細々とした身体を回して相手の力を利用して攻撃を防ぐが、大針が地面にあたる度に地面が揺れ轟音が響き渡りその風圧で少年の身体は木の葉のように舞い上がる。

少年が空中に投げ出されたことを好機と見たのか異形はその大針で少年を貫こうとする。

大針が少年を刺し貫くその時、

 

彼の姿が消えた。

 

大針が先程少年のいた場所を通り過ぎた瞬間、少年が異形の尻尾の上に姿を現した。

そのまま少年は身体を捻りその勢いを利用して球体同士の付け根に大鎌を叩きつけた。

 

少年の振り下ろした刃はまるで抵抗がないかのように吸い込まれていきその刃渡りよりも太い尻尾を一振のもと切断した。

支えを失った大針は重力に従い大きな音を立てながら地面へと落下する。

 

 

蓮夜『・・・そこまで見ずらくないな。』

 

 

少年・・・蓮夜はそう呟きながら再び姿を消す。

異形は彼を探すように頭部を動かしていたが見つけられなかったようでその動きを止めた。

異形は自身の尻尾を前方に構える。

すると尻尾はその断面が蠢き出し再生を始めた。

しばらく経ち大針が再生仕切る間際、

 

 

蓮夜『再生能力は高いな・・・。』

 

 

異形の背後から彼の声が聞こえた直後、

 

『シャン!』

 

という音と共に再生した尻尾は根元から再び地面へと落下する。

 

 

蓮夜『けど速度はそこまでだな。』

 

 

彼は音を立てずに着地すると大鎌を横へと薙ぎ払った。

 

その直後異形の全身に無数の切傷が刻まれた。

それにより青い液体を全身から吹き出す異形はすぐさまその場を離れようとするが、再び彼が大針を振ると切傷が増えると共にまるで何かに押し潰されるかのように地面に落下した。

その衝撃で地面が揺れるが彼はそれを気にせず倒れた異形へと駆け出した。

 

異形へと近づいた彼は飛び上がり身体を捻って回転する。

 

 

蓮夜『これで・・・ッ!』

 

 

遠心力を利用した渾身の一撃が異形へと叩き込まれる寸前彼は空中を蹴り身体を捻りながら大鎌を自身の前へと引き寄せた瞬間、

 

彼をとてつもない衝撃が襲った。

勢いを殺し切れず吹き飛ばされるが彼はバク宙の要領で体勢を整えて地面に大鎌の刃を突き立てた。

地面が壮絶な音を立てながら削れて行くが彼の勢いが収まっていき彼は足をバネのようにして着地する。

しかし、それだけでは勢いを殺し切れずに地面を転がり異形から1km程離れたところでようやく止まることに成功した。

 

 

蓮夜『・・・。』

 

 

彼はすぐに起き上がるがその身体はボロボロになっていた。

左腕はありえない方向に曲がり右足は根元から無くなっており大鎌を握る右腕も血が上がれておりその肌は真っ青に腫れ上がっていた。

 

彼はそのことを気にせずに異形のいる方向を睨む。

 

するとそこには先程よりも大ぶりの針を持ち傷一つない異形の姿があった。

 

 

蓮夜『なんで傷が消えてるんだ?』

 

 

彼が異形を凝視すると異形の下には何か巨大なものがあった。

それは砂のように崩れてその姿を消していく。

 

 

蓮夜『もしかして脱皮か?』

 

 

彼は異形が蠍に形が酷似しているため昆虫の特徴の1つである脱皮ではないかと予測する。

 

 

蓮夜『そう考えると・・・まずいな。』

 

 

彼はその可能性から最悪の場合を想定した。

生物には脱皮を繰り返すことで大きく強靭な身体へと成長して行くものも存在する。

もしも、傷つく度に脱皮するなら・・・。

もしも、脱皮する度に成長するなら・・・。

 

この異形は短期間で恐ろしい程強化していくヒュージであるということになるのだ。

 

 

蓮夜『早く倒さないと!』

 

 

そうなると短期戦をしなければ余計に時間がかかってしまい相手の力を高めてしまうかもしれない。

そのため短期決戦を仕掛けなければ行けない。

 

そう確信した彼は一気に接近した。

すると異形は大針を薙ぎ払う。

その大針は先程とは比べられないほどの速度で彼へと襲いかかりそれを彼は大鎌の刃で逸らし、その勢いを利用してさらに接近する。

 

彼は異形の胴体に張り付くと自身の身体を軸に縦横無尽に大鎌の刃を走らせる。

 

それにより異形は再び深々とした傷が刻まれる。

彼が再び切りつけようとした時、後ろから大針が迫ってくる。

彼は大針に気づいていないのか異形の傷を増やしていく。

そして、大針が彼に届く寸前彼の姿が消えた。

異形は大針の勢いを止めきれずに自身の胴体を貫いた。

 

彼は異形の背後・・・自信を貫いた大針の上に現れてそのまま異形の背部を切り裂く。

 

異形はすぐに大針を引き抜こうとするが大針は引き抜けない。

大針には鎖が巻き付けられておりそれは異形の背部と繋がっており大針の動きを阻害する。

 

しかし異形を縛る鎖は徐々とヒビが入っていきあと数秒で壊れるだろう。

彼はそれを感じ取るとすぐさま大針から飛び降りる。

 

そのまま彼は反転した世界で彼は上方を切り払った。

するとその刃は尻尾へと吸い込まれ、

その刃は通り過ぎざまに尻尾を再び両断した。

 

それにより異形は自身を貫く大針を抜けなくなりその傷口から青い液体を垂れ流しにしている。

 

そのまま彼は異形の周りを回りながら大鎌を振るい続ける。

それにより再び異形の全身に切傷が刻み込まれる。

 

異形はそれを阻止しようと尻尾を再生されようとするが彼が先端を切り裂き再生を阻害する。

 

巨体を利用して推し潰そうとすると一瞬で背後に現れてより深い傷を与える。

 

体を振り回し彼を振り落とそうとすると鎖で動きを停められて端からその体を切り刻む。

 

異形がどう動いても彼はすぐに対応し決定的な一打を与え続けその巨体はどんどんと小さくなって行った。

 

そして異形の体積が半分になったその時、

 

異形の背中が開いた。

 

そこからは傷のない小さな異形が姿を現した。

だがその瞬間彼が後退すると球体状の炎の塊が異形へと降り注いだ。

 

その炎は燃え続けその熱で異形の表面が溶ける。

しばらくして異形に付いた炎が消えると全身が溶け焦げた悲惨な状態になっていた。

 

そこへ彼が接近し再び異形を切り刻み始める。

 

異形の体に先程とは比べ物にならない勢いで傷が刻まれていき、

 

 

蓮夜『・・・見つけた!!』

 

 

彼は何かを見つけながら空気を蹴り瞬時に異形の右横に回り込んだ。

そして、大鎌を振りかぶり、

 

全力で異形へと叩き込んだ。

 

その刃は先程までの切り裂く感覚とは異なりまるでまるで鍵穴に鍵を差し込むように・・・まるでそこが空洞であるかのように刃が突き立てられた。

 

そして全ての刃が差し込まれたその時、

 

異形の動きが止まる。

 

今まで活発に動いていたとは思えない程に硬直しその体は静かに下へと落下する。

 

そして異形が地面に接触したその時、

 

異形の体が崩れ始めた。

 

砂のように崩れる異形の体は再生する気配を見せずその形を失っていく。

 

 

蓮夜『・・・終わったか。』

 

 

彼はそう呟くと振り返る。

 

すると空間を光が包んだ。

光が収まるとそこは先程までいたネストの中であり目の前にはもう一体のアルトラ級の姿があった。

 

しかし彼はそのアルトラ級に見られることなく姿を消した。

 

 

 

 

姿を消した彼はしばらくするとネストの外に姿を現した。

そして近くに木を見つけるとそこへと歩み寄り木に背を預けて座り込む。

彼の息は荒くなっておりその様子から彼が疲弊していることは明白であった。

 

 

蓮夜『・・・次は、』

 

 

彼が次の目的地を確認するために端末を確認すると、

 

 

蓮夜『・・・姐さんか?』

 

 

そこにはびっしりと並んだ美鈴からの着信履歴があった。

彼はそれを見て寒気を襲う。

疲弊していることを忘れた彼は急いで彼女に連絡を取ると、

 

 

蓮夜『姐さん!どうしたんですか!』

 

美鈴『れ、蓮夜!今までどうしていたんだい!?』

 

蓮夜『アルトラ級と戦ってました。』

 

美鈴『蓮夜・・・落ち着いて聞いてくれ。』

 

 

端末越しに彼女から安堵の声が聞こえたがすぐにその声は真剣なものに切り替わる。

その変化に彼の中で警鐘が鳴り響く、

 

 

蓮夜『・・・どうしたんですか?』

 

美鈴『先程報告があったんだが・・・。』

 

 

彼女の言葉が止まる。

そして何かを覚悟するかのような深呼吸をする音が聞こえる。

そして、

 

 

美鈴『鎌倉府にヒュージの大群が現れた。』

 

 

彼の中で何かが壊れる音が聞こえた。

 

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