アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
蓮夜「夢結!」
彼は仕留めた生物の確認もせずに武器を投げ捨てて彼女の元へと駆け寄る。
彼は彼女の元へとたどり着くとすぐに手を握る。
彼女の手は冷たくなっており先程まであった温かさは存在しない。
蓮夜「・・・。」
彼はすぐに新しく得た知識から手探りで彼女の首元に指を当てる。
彼はどうしても認めたくなかった。
だが、現実は残酷であり非情であった。
彼女の冷たくなった首筋からは彼女の
そして彼は彼女心臓のあるはずの場所・・・胸元をに目を向ける。
これを見てしまってはいけないという感覚が全身を襲う。
けれど彼は目を向けた。
わかってはいた。
けれど認めたくなかった。
今彼は特殊な視覚を持っている。
自身を中心に辺り全体を森の全てを木々が、見に見えないほどに微細な塵が、肉眼では認識することが出来ない風の流れまで感じ取ることが出来る。
そのような異常な視覚持っていながら彼は彼女の状態を確認出来なかった。
いいや違う・・・あえて見てなかっただけだ。
もしも彼女の安否が心配なのだとしたら真っ先に
けれど彼は見なかった。
既にわかっているから。
それを認めたくなかった。
ただそれだけ、
諦めきれなかったのだ。
もしかしたら、彼女が起きるのではないかと、
諦めないと言えば聞こえがいいかもしれないが、それはただの
たしかに彼はまだ幼い。
そんな彼が、このような残酷な現実を認められずに
だが、それは幼い精神での話だ。
彼は特異な力に目覚めた時に起こった大量の情報の脳が無理矢理処理をしてしまった影響で先程までの歳相応の精神から無理矢理大人と同等の精神へと
この成長は早熟などという現実的な域を超えておりこれは既に
今までに持っていた
その状態の彼をあらゆる
もしも、すぐに駆け寄っていたら彼女のことを救えたかもしれない。
もしも、あの生物に手間取って居なければ彼女を救えたかもしれない。
もしも、彼が崖上であの生物に気づいていれば彼女は傷つかなかったかもしれない。
もしも、森に来る前に彼女を引き止められていればそもそもあの生物に合わなかったかもしれない。
もしも・・・もしも、この力を早く手に入れていれば彼女を守れていたかもしれない。
・・・そう、この力があれば、
蓮夜「・・・そうだ。」
まだ可能性はあるかもしれない。
たしかに今の自身は無力だ。
しかし、今の彼には力がある。
彼が手に入れた力・・・異能には因果に干渉する力がある。その力は現実すらも捻じ曲げて使用者の思う通りにしてしまうほどだ。
しかし、そのような力でも万能ではない。
異能には、その使用者に応じた干渉出来る因果が存在する。自身の干渉出来る因果以外にはいくら現実を捻じ曲げることの出来る異能であっても無意味なのだ。
しかし、これを皮肉と言うべきか、彼の干渉出来る因果は今彼の望むものではなかった。
力があるのに意味が無い。
ならば、その力に意味があるのだろうか?
答えは否、
どんなに強力な力でも使えなければただの飾りも同然だ。
だが、彼の異能はこの状況を打開出来る
蓮夜「俺の本質は・・・。」
新たなものを生み出す『創造』
そしてあらゆるものを無に帰す『消滅』
この対となる2つの力を相反するものと定義しながら同一のものとして内包する『矛盾』に対して干渉する力だ。
『創造』とは、何かにを創り出す力であり、『消滅』とは、何かを消し去る力だ。
これだけを聞いたのならば対になっている思われるだろうが、実際は違う。
『創造』は、「
『消滅』は、「
たしかに
先程から使用している
彼の異能の本質、それは・・・
《因果や事象を
それが彼に宿った力だった。
たしかにこの力には『癒す』力はない。
ならばどうすればいい。
簡単だ。
蓮夜「さっき見たいに・・・作ればいい。」
そう新たに作り出すのだ。
蓮夜「まずは、俺が『癒す』力を使えないと言う
彼の中で何かが砕かれるような音が鳴り響いた。
しかし周囲にはその音は響いていない。
聞こえないが聞こえる音が彼の中を駆け巡る。
彼は苦しそうな表情をしながら歯を食いしばる。
音が静まり出したその時、彼の身体に異変が起きた。
左瞳が輝きだしまるで充血したかのように紅く染まる。
目の端からは鮮血が涙のように溢れ出し、光が一際強くなった瞬間、
彼の左瞳が弾け飛んだ。
鮮血が火花のように迸る。
その勢いで彼の身体が後ろに仰け反り倒れる寸前、
蓮夜「『癒す』の力が使えるように
倒れる寸前だった彼の身体は重力を無視して元の態勢へと戻り先程迸った血液が彼の左瞳へと集まり出す。
そして彼の左瞳へと戻った血液は球状の形へと集まり、彼の左瞳を形成した。
その左瞳には先程はなかった太陽のような模様が映し出されており点滅するように淡く輝いていた。
蓮夜「構築完了・・・『再生』完成・・・」
彼は望んだ力・・・『癒す』事象を改変し元へと戻す『再生』が生み出された。
そして彼は再び彼女へと向き直り、
蓮夜「まだ、足りない・・・」
そうつぶやくと彼は自身の右瞳へと手を伸ばし、右瞳が1度強く輝いた直後、
蓮夜「・・・!!!」
右瞳を引き抜いた。
痛みも流れる鮮血も気にせずに彼は抜き取った右瞳を両掌の上に乗せて包む。
両掌を彼女の心臓のある位置まで持っていくと左瞳が今までにないほど輝きだしそれに共鳴して彼の両掌・・・その中に入っているものが輝き出す。
光が強くなりつつある中、彼の左瞳から再び鮮血が流れ出した。
蓮夜「夢結・・・ごめんね。」
さらに光が強まり彼の両掌を焼き始める。
蓮夜「僕が・・・何も出来なかったから・・・痛かったでしょう。」
両掌が灰となって崩れ始める。
蓮夜「もう君が死ぬ姿なんて見たくない。」
両掌と言う支えの無くなった光は浮遊しながらその光が輝きを強くしながら収縮を始める。
蓮夜「だから・・・。」
〈トクン・・・トクン・・・〉
光から鼓動が鳴り響く。
蓮夜「君を守るよ・・・。」
光が彼女に吸い込まれるように落ちる。
蓮夜「たとえ・・・」
2人を激しい光が包んだ瞬間彼の意識は暗転した。
夢結「・・・今のは・・・なんなの?」
彼女が再び目を開くとそこはあの崖の上だった。
周りを見ると隣でまだ彼が苦しそうに唸っている。
夢結「・・・もしも、あの出来事が本当に起きたことだとしたら、」
彼女の身体から血の気が引く、
夢結「・・・私は、」
身体が震えはじめそれを止めようと身体を抱くが震えは止まらない。
身体が本能がこの先を言うなと訴えかける。
しかし、彼女の意志とは反対に唇は言葉を紡ぐ。
夢結「・・・私は、」
・・・なんで生きているの?
心の中で彼女が呟いたその時、
???「何かが干渉していると思ったら・・・お前か・・・。」
夢結「・・・えっ?」
突如背後から声が聞こえた。
その声は酷く冷たく何も感情が篭ってないかのように静かだった。
聞いたことのある声なのに、聞いたことの無い声・・・
その声に恐怖を感じながら彼女は後ろへと振り向く。
振り向いたら後悔するそう思いながらも振り向かずにはいられなかった。
この声は、
夢結「・・・蓮夜・・・なの?」
彼女の探し続けていた人の声だったから、
蓮夜「・・・」
そして彼女の視線の先にはボロボロになった黒いロングコートを着た彼がいた。