アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
木々の生い茂る森の中、
生命が彩る緑の世界を赤と青の雨が穢す。
まるで全てを染めようとする意思があるかのように赤と青がその場を侵略していた。
自然現象では決して有り得るはずのないその現象の中、金属と金属がぶつかり合うような甲高い音が辺りに響き渡っていた。
その音は次第に大きく早くなっていき辺り一帯の空間から他の音を消し去った。
蓮夜?『・・・。』
その中、彼は異形の生物・・・ヒュージへと向かって己の刃を振りかざす。
それによりまた新たな青が生まれると同時に彼からも赤が生まれた。
彼は木々を足場に変幻自在に動き回りヒュージの群れを刈り取る。
彼が一太刀振るう度に新たの青が生まれ、それと同じ数だけ赤も生まれた。
蓮夜?『・・・。』
彼は表情を変えることなく近くにいるヒュージを切りつける。
彼が新たな標的を見つけ切りかかろうとした時、
背後から一振りの凶刃が彼へと迫る。
それを彼は認識するが、まるで無関係と言わんばかりに標的へと向かった。
凶刃は彼の肌へと触れ鈍い音を立てながらからの左腕を肩先から切断した。
しかし彼は、声ひとつ出さずに標的へと迫り一太刀にて標的を切り裂く。
標的の確認をすることなく彼は振り返り新たな標的を定めた。
そして彼が踵を浮かした瞬間、
新たな標的の目の前に現れ自身の手に収まる刃を振り落ろす。
振り下ろした刃は右手を離したのか地面に突き刺さり彼の動きが一瞬止まった。
それをチャンスと見たか一体のヒュージが彼へと遅いかかる。しかし、それは彼に読まれていたのかすぐさま左手で刃を掴んだ彼はそれを横薙ぎに振るいヒュージを両断した。
しかし、ヒュージの背後にはもう一体の別個体がおり先の一振で体勢を崩した彼へと横薙ぎの一撃が襲いかかる。彼の頭部に凶刃が当たる寸前、彼の身体が急激に下へと動きその攻撃を躱した。
躱されたことを理解したヒュージは再び彼へと凶刃を振りかざそうとするが、行動を起こす前にヒュージの頭部が割れることでその身体は停止した。
蓮夜?『・・・静かだな。』
彼は体勢整えると前方へと駆け出す。
駆け出す勢いをそのままに彼が刃を振るうと、刃の軌道上に木々の間からヒュージが姿を現した。
切断したヒュージを踏み台に彼はさらに前へと森の奥へと進む。
蓮夜「・・・。」
過去の自身の軌跡を眺める人影は彼の通り過ぎた場所を見た。
彼の通り過ぎた後には数え切れないほどのヒュージの残骸と人間の死体が埋めつくされており静けさと癒しを与えるはずの森を死と狂気が支配する場所へと変貌していた。
ヒュージの残骸は全て一太刀のとも両断されたものばかりだが、人体の折損は酷く、
腕しかないもの、
脚のみのもの、
上半身のないもの、
首から上・・・頭部が半分しかないもの
などとヒュージよりも悲惨な最後を遂げたものしか存在しなかった。
その中の1つ・・・頭部が半分しかない死体に彼は近づきその顔を確認する。
するとそこには、
幼い時と彼・・・先程までこの場で戦っていた《黒鉄 蓮夜》の顔があった。
蓮夜?『・・・この辺りか、』
彼は暗い森を進む。
木々が月の光を遮るため数メートル先すらも視認することが出来なくなっていた。
しかし、その中を彼は迷うことなく進む。
そしてしばらく進むと木々の隙間から光が差し込んできた。
そこはこの深い森の中で唯一月の光が入り込む程の大きな穴が空いており空を見上げると星々が空を彩っていた。
蓮夜?『あと少しだ、』
彼の言葉が止まる。
彼はふらつきながら後ずさると背後にある木を支えに座り込む。
蓮夜?『早い・・・。』
彼は左手で頭を抑えると右手を前方へと突き出す。
右手を突き出すと光の粒子が生まれ前方へと集まりだした。
その光は生物のように動き出し脈動を始める。
光は脈動する毎に光量を強めその輝きを増していく。
蓮夜?『グッ・・・ギィッ!・・・、』
彼が呻き声を上げると粒子の動きが早まり徐々に形を生み出す。
光はリングに集まりその光をさらに強めるが、一定の光量になると点滅を初め粒子が拡散し形を崩し始める。
集まっては拡散する、それをしばらく続けた光を彼は力強く掴んだ。
すると光が収まり最後に淡く光ると輝きを失った。
蓮夜?『・・・ハァハァ、』
彼は息を落ち着かせると右手を目の前に移動させその手に握られているものを確認した。
蓮夜?『・・・。』
そこには薄い水色のリングがあった。
そのリングには深い水色の宝石が一定間隔で配置されておりそれが月の光に照らされて輝いていた。
蓮夜?『・・・《無霧》・・・か、』
彼は呟くと立ち上がる。
そしてそのリングをポケットに入れると森の奥へと目を向ける。
すると彼の視線の先から人影が1つ現れた。
その人影は音を立てずにこちらへと近づいてくる。
正体不明の存在の出現、
しかし彼は警戒もせずに人影が来ることを待つ。
そして人影が木々を抜け森を出てくると月の光に照らされてその姿を現した。
光に照らされた人物は彼の信頼している人物である川添 美鈴であった。
彼女はこちらに気がつくと足を早めこちらへと近づく。
彼は彼女に対して手を振りながら声をかけた。
蓮夜?『姐さん・・・お久しぶりです。』
簡潔であるが挨拶をすると彼女から帰ってきたのは、
美鈴『本当に久しぶりだね。蓮夜、』
彼女の声ではなく空中に浮かぶ文字であった。