アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
今回は少し見ずらい表現があります。
読みずらい部分があると思われますが大切な表現であるためご理解の程をよろしくお願いいたします。
蓮夜?『・・・えっ?』
彼は世界が止まったかのような感覚に陥る。
言葉を文字として認識する。
この現象に前例がなく彼は困惑してしまった。
彼は自身の視覚に異常が起きた可能性を考え、すぐに周りを見渡す。
《 ザワザワ 》
草木が風に揺れる音が、
《 ザッザッ 》
靴が草を踏みしめるこ音が、
《 ギュウギュウ 》
この森に住む動物の鳴き声が、
全てが文字と色として認識させられた。
それと同時に彼はあることに気付く。
蓮夜?(・・・音がない?)
音が聞こえないのだ。
現在聞こえていなければおかしい彼女の声すらも・・・、
静寂な世界でただ文字だけが彼の視界を支配する。
蓮夜(まさか・・・音を文字として認識しているのか?)
彼にはこの事象の原因はそうとしか思えなかった。
彼の視界に異常があるのではなく、彼の聴覚に異常が起こっているのだ。
この文字は聞こえなくなった音を視界から得られる波長などの情報から再現しただけに過ぎないと彼は予測を立てた。
蓮夜?(・・・まさかさっきの影響か?)
何が原因かそれはある程度の予想は出来ている。
しかし、それが事実だとした場合、
蓮夜?(・・・だとすると俺は、)
彼は最悪の事態を想像してしまう。
彼がその現実に直面しようとしたその時、
美鈴『・・・どうしたんだい、顔色が悪いみたいだけど?』
蓮夜?『大丈夫ですよ。たださっきまで連戦続きだったので少し疲れただけです。・・・!?』
彼は彼女を心配させない為に軽い笑みを浮かべようとする。
しかし、思ったように表情が動かず表情が硬直する。
これに彼は目を見開き慌てて自身の身体の異変を確認した。
蓮夜?(・・・異変はないな。・・・ならどうして?)
再び直面する自身の異常に対して彼は思考を深める。
筋肉にも、骨格にも、神経にも以上はなくそれでいて確かに疲労はあるが身体的異常を起こす程ではない。
それならばこの異常の原因はどこにあるのか?
その可能性を彼は考える。
先程の結果から身体的な異常はない。
ヒュージの血液による汚染も先程の結果から考えられない。
それならば精神的な負担が問題かと考えるが、それも先程は不安定であったが現在は安定している。
それならば聴覚の異常と同じものが原因だと考えられるが、この場合も先程否定した物が候補に上がってしまう。
原因の見えない現象に不安感を感じながらも彼は正解を導き出すために思考する。
美鈴『・・・蓮夜?』
蓮夜?『・・・。』
美鈴『蓮夜!!』
蓮夜?『!?』
思考の海に沈んでいた彼を彼女は彼の肩を揺らすことで引っ張り上げる。
蓮夜?『すいません・・・思ったよりも疲れが溜まっているみたいで、』
美鈴『・・・本当にそうなのかい?』
蓮夜?『はい、大丈夫です。さすがに2日間連続で戦い続けたのは良くなかったのかもしれません。』
美鈴『2日間続けって・・・無理は禁物だからね。』
蓮夜?『再生で疲労は取れるので大丈夫かと思ったんですけど。』
美鈴『・・・君はいつも無茶をするからね・・・心配なんだよ。』
蓮夜?『・・・すいません。』
彼女は彼を心配そうな表情で見る。
彼女の表情からは本当に自身を心配しているということが分かるくらいにその感情が滲み出ていた。
それに彼は作り笑みで返す。
蓮夜?(・・・作り笑みは出来るのか、)
彼はこの現象を身体への異常ではないと確信を得た。
蓮夜?(・・・なら、なんで俺は笑えなかったんだ?)
作り笑みは出来るが、本当には笑えない。
もしも笑えないのであればどちらも出来ないことが当たり前であるはずのこの現象、
蓮夜?(作り笑みと笑顔の違いはなんだ?)
本物か偽物か?
無意識に出るか意識的に出しているか?
彼の感覚がその考えを否定する。
蓮夜?(本当に何が原因なんだ?・・・意識的なものでも無いとすると・・・!)
そこで彼はある可能性へと至った。
蓮夜?(もしかして・・・感情か?)
感情・・・それは人間と他の生物との1番の違いとすら言われる精神的な事象でありそれがなければ人間ではないとすら言う学者がいるとされている。
生物に感情がないとは言ったがそれは正しくはない。
人間以外の生物にも感情という物は存在する。
それなのに人間が他の生物と違うと言われる所以、
それは感情の種類と量だ。
自然界の生物にも感情は存在するがそれは威嚇などの生存本能から現れるものでありその目的以外ではその感情は顕にされない。
しかし人間の場合は自由に感情を表すことで相手へと情読を伝えることが出来るのだ。
人間の感情は大きく分けて『喜』『怒』『哀』『楽』の四種類に分かれている。
これだけでも生物として多いのだが人間はこの四大感情からさらに細分化して感情を制御することが出来るのだ。
この生物としては特殊なコミュニケーション能力こそが人間をここまで発展させたとすら言われる感情・・・、
もしも、この感情が欠如しているのだとすれば、
それは、人間と呼べるのだろうか?
蓮夜?(・・・。)
彼はこの可能性に至った時一瞬動転したがすぐに冷静な思考へと戻る。
彼の中で何が抜け落ちる音が響いた。
しかし彼の内心は穏やかであり、
それはまるで悩み続けていた問題の答えが分かったかのような清々しさまで感じるものだった。
蓮夜?『姐さん、これを、』
ふと彼は自身のポケットへと手を入れてあるものを彼女へと投げ渡す。
美鈴『これは・・・腕輪かな?』
彼女の手には水色のリングが握られており月の光を浴びて淡く輝いていた。
蓮夜?『・・・お守りみたいなものです。何かあった時はきっと力になってくれます。』
美鈴『・・・そうか、大事にさせてもらうよ。』
彼女は微笑むと自身の右腕にリングを嵌めた。
するとリングは霧のように霧散してその姿を消してしまう。
一瞬彼女は驚くがすぐにその仕組みを理解したのか自身の右腕を前へとかざした。
すると彼女の右腕に霧が集まると先程のリングが現れる。
美鈴『霊体にも変換出来るんだね。』
蓮夜?『姐さんの場合はその方が都合がいいですからな。・・・それでは俺はもう行きます。』
美鈴『・・・そうか、夢結に会わなくてもいいのかい?今は眠っていると思うけど・・・。』
蓮夜?『・・・大丈夫です。今は休ませて上げたいですから、』
美鈴『顔を見るくらいならいいと思うけどね。』
蓮夜?『気持ちだけ貰っておきます。』
美鈴『・・・そうだ、ご両親は無事だったんだろう。・・・本当に良かったよ。』
蓮夜?『はい、今は・・・避難所にいると思います。分身も居るので確認も出来ますし、』
美鈴『なら、絶対に無茶をしてはダメだからね。・・・私達以外だけじゃなくてご両親も悲しんでしまうから。』
蓮夜?『分かっていますよ。・・・大丈夫です無茶はしません。それでは、行きます。』
彼は先程来た方向へと走り出した。
そして木の上へと登ると森の奥へと進んでいく。
ふと思い、彼女のいる方向へと振り向く。
そこにはこちらに手を振る彼女の姿がありその笑顔は輝いているように感じた。