アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
いつもなら賑わっているはずの街の中、しかし今はその賑やかさが嘘かのように静まり返っていた。
まるで忽然と人が消えてしまったかのように感じるこの静寂の世界でただ一つだけ動きを見せるものがあった。
夢結「・・・。」
静まり返った街をただ歩き続ける彼女の瞳には何も写っておらず瞳に宿る輝きも存在せずその場所には虚空のみが存在した。
静かの世界を進む彼女の歩は遅くその動きにはまるで生気を感じることが出来ない。
まるで意識が存在せず肉体のみが動き続ける人形のように、
・・・私は人形・・・そうよね。人形なのだから・・・人としての幸せなんて訪れるはずがないのよ。
彼女の中で彼の一言が反響し続ける。
その音は次第に大きくなり彼女の心を侵食する。
・・・奪ったのよ。・・・私は全てを、
彼女の中で生まれた闇が彼女そのものを食い潰そうと牙をむく。
その牙は鋭く彼女の
・・・お姉様の人生を、・・・彼の幸せを、
しかし彼女にはどうでもよかった。
・・・これからも私は奪ってしまう。・・・誰かといるだけでその人の全てを、
彼女の中で1つの願望が生まれる。
・・・消えてしまいたい。
このような
そうすれば犠牲者も減るのだろうと、
・・・けれどもそれは出来ないのよね。
彼女なら自身を消すことなら異能を使用すれば問題なく可能だ。
しかし彼女にそれが出来なかった。
・・・私は、人形だから
造り手・・・黒鉄 蓮夜の人形、それが彼女なのだ。
人形は造り手に逆らってはならない。
それが存在意義であるから、
・・・人形としても不良品の私を壊さないなんて・・・まだ私には利用価値があるのかしら?
彼女は僅かに残った意識を用いて考える。
何故彼は自身ではなく人形を選んだのかを、
・・・私にもっと苦しめということかしらね。・・・彼が苦しんだように、
それが罰となるならば、
そう考えると何故か彼女は身体が軽く感じた。
まるで自身にかかる重圧が減ったかのように、
・・・彼は恨んでいるのかしら?・・・恨んでいるでしょうね。私のせいで全てが狂ってしまったのだから、
この
彼と同じ苦しみを味わいながら生活する。それがどれだけの苦痛か彼女には想像することが出来なかったが想像を遥かに超える苦しみであることだけは分かった。
思考を深める彼女の前に光が現れる。
彼女はそれに気づくと前方へと視線を向けた。
そこには光で出来た扉が存在しその向こう側には彼女がここに入る前にいた彼の部屋が映し出されていた。
夢結「・・・ここが出口?」
彼女は一度動きを止めるがすぐにまた歩き始める。
迷うことなく彼女が手を扉へと伸ばしたその時、
・・・本当にいいの?
誰かの声が響き渡った。
夢結「・・・誰なの?」
・・・本当に置いていくの?
その声は背後から聞こえた。
彼女は無視をしようと考えるが身体が無意識に動き背後へと視界を向けた。
そこには、
・・・1人にしちゃうの?
幼い頃の彼女の姿があった。
夢結「・・・わたし?」
・・・また泣いちゃうよ?
夢結「・・・また、泣く・・・どういうことなの?」
・・・可哀想だよ?
夢結「・・・だから、誰が可哀想なのよ!」
・・・思い出して、
夢結「・・・思い出すって何を、」
・・・彼を思い出して、
夢結「・・・彼って蓮夜のこと?」
・・・本当のれんやを思い出して、
夢結「・・・本当の蓮夜?」
何を言っているのか彼女には理解できなかった。
本当の彼とは何を指しているのか?
記憶を失う前の彼なのか?
それとも狂い始める前の彼なのか?
彼女には分からなかった。
夢結「本当と言われても・・・彼は何も変わっていないわよ。・・・いつも冷静で、心が強くって、頼りにな・・・る?」
本当にそうだっただろうか?
自身の抱いている彼に違和感を感じる。
まるで何かが決定的に間違って以下のように、
夢結「・・・なんなの、この違和感は、」
まるで自身の中の彼が偽りであるように、
???『ゆ〜ゆ〜。』
???『どうしたの?』
???「いなくなっちゃうから・・・。」
???『ほんとうにこわがりね。』
???「ゆゆ?」
???『だいじょうぶよ。わたしがついているからだからなかないで?』
???『うん!』
夢結「・・・寂しがり屋で、怖がりで、だけど優しい。それが彼だった。」
違和感の正体はこれだ。
自身の持つ彼への印象が違っていたのだ。
夢結「・・・だけど人一番我慢強くて・・・何かあると1人で抱え込んでしまう、」
・・・そうだよ。やっと気づいてくれたね。
夢結「・・・ありがとう、やっと目が覚めたわ。」
・・・なら急いで、間に合わなくなる前に、
そう言うと幼い頃の彼女は微笑みながらその姿を消した。
夢結「・・・急がないと、」
彼女は走り出した。
その方向は先程彼女が通ってきた方角ではないがこっちに彼がいると彼女には分かった。
それが何故かは分からないが彼女は迷うことなく進む。
夢結「・・・色がない、」
そして気がつく。
世界に色が無いことを、
これが彼女の足を早めさせた。
夢結「・・・お願い、間に合って、」
彼女が走り続けると彼女の向かう先には彼が毎日来ていた森がありそこからは微かに彼の気配を感じ取れた。
夢結「・・・あと少し、」
木々の隙間から縫うように進む。
流れるように変わる景色の中彼女はとある光景を見つけた。
蓮夜?『・・・記憶を消す前に、』
それは過去の彼であった。
彼は自身両手を自身の前方へと出すと手を合わせる。
そこから光の粒子が溢れ出し辺り全体を埋めつくした。
その光が一際強くなると彼は手を広げてその光を集めた。
その光は1つに集まりその光量を強め弾ける。
すると光は2つに別れて彼の両手に一つづつ収まった。
そして光が収まるとそこには、
蓮夜『・・・《夜桜》に《輪菊》か・・・彼女を頼むぞ。』
そう呟き彼は倒れた。
彼女はその横を通りながらさらに森の奥へと進む。
しばらく走ると彼女の目の前に森の切れ目が姿を現した。
森の切れ目を抜けた先、そこには傷だらけの彼がおり自身の首へと十字架のような形をした武器を当てていた。
その刃は彼の首筋にくい込んでおりもう彼の首を切断する寸前であり、それを抑えるては震えている。
蓮夜「・・・わかってくれよ
・・・手遅れではないわ。
彼は決意を決めたのか再び刃を動かす。
蓮夜「・・・だけど良かった。・・・これなら夢結は外に出てるな。」
・・・絶対に傷つけさせない。
彼は涙を流す。
蓮夜「・・・まだ涙を流せたんだ。」
・・・貴方の人形でもいい。
彼女は彼へと向かって駆け出す。
蓮夜「・・・あと一押し、」
・・・だから、
蓮夜「・・・君に出会えて本当に幸せだった。・・・夢結、さような、」
・・・そんなことを言わないで!!
???「言わせないわよ!」
・・・やっと本当の意味で掴めた。
彼女は彼の手を掴んだ
蓮夜「嘘だよね。・・・どうして、」
・・・貴方の手を、
彼はゆっくりと目を開く。
彼女は歪んだ表情をする彼へと微笑みながら、
蓮夜「なんでいるんだよ。・・・夢結!」
・・・もう決して離さないから、・・・だから、
繋いだ手を強く握り、
夢結「言わせないわ・・・絶対にその言葉だけは、」
・・・一緒に幸せを掴みましょう。
自身の心をさらけ出した。