アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
これは自身の願望が生み出した幻影なのだろうか?
彼は目の前にいる存在が偽物であると信じこもうとする。
そうしなければ彼は耐えられないからだ。
しかし、ここに彼女がいるのなら今までの計画が全て無駄になってしまう。
そうなれば
しかしこの状況に歓喜する自身もいるのだ。
たとえそれが自身の存在理由から反していたとしても、彼も
蓮夜「・・・なんで帰らないんだよ、お前には会いたくないんだよ。・・・さっきも言っただろう俺はお前が憎いんだよ。」
夢結「・・・蓮夜、私が憎いのならなんでそんなにも悲しそうな表情をしているのかしら・・・」
蓮夜「・・・まだ生きたかったからだよ。・・・お前と出会わなければ俺はこんな目に会わなかったんだ。それなのに俺はお前と出会ったがばっかりに、」
夢結「・・・声が震えているわよ?・・・それに、」
彼女は彼の腕を引き彼の首筋から
そして俯いた彼にそっと近寄り優しく包み込むように抱きしめる。
夢結「・・・涙を流している貴方を1人には出来ないわ。」
蓮夜「・・・どうして1人にしてくれないんだ。」
彼は顔を上げて彼女へと目を向けた。
その彼の瞳には恐怖を宿っていた。
夢結「・・・知っているもの、貴方が寂しがり屋さんなとこも怖がりなことも、それに・・・他人のために立ち向かう強くて優しいことも。」
蓮夜「もしかして記憶が・・・。」
夢結「・・・ええ、思い出したわ・・・全てを、」
彼女の力が強まる。
まるで怯えているかのように震える彼を安心させるために、
凍えてしまっている彼の心を解かせるように、
蓮夜「・・・なら分かっているでしょう?もう僕がどうにもならないことも、そしてあと少してここも消えてしまうことも、」
夢結「・・・ええ、わかっているわ。」
蓮夜「・・・ならなんで!」
夢結「貴方を1人にしたくないからよ。・・・もしも貴方が消えてしまうのなら私も一緒に行くわ。そうすれば少しは寂しさも和らぐでしょうから、」
蓮夜「・・・ダメだよ。そんなこと、それじゃ彼が報われない。僕は幸せになれないんだ。・・・僕は人じゃないから、」
彼の必死の抵抗として放った一言を聞き彼女は優しく笑う。
夢結「・・・人じゃないのだと言うのなら私もそうよ。貴方が言ったのよ?私は人形だって、だから貴方がそうなら私も幸せになれないわ。」
蓮夜「それは・・・!」
彼の言葉が止まる。
彼女を説得する方法を考えている彼を見ながら彼女は言葉を紡いでいく。
夢結「人形でも、私はいいのよ。貴方との繋がりを感じられるから、」
蓮夜「・・・でも、」
夢結「・・・それに貴方は私の幸せと言うけれど、貴方がいないと私は幸せになれないのよ?」
蓮夜「・・・璃梨さんは?それに一柳隊の皆もいるのに・・・なんで僕なの?」
夢結「あの日に貴方はこう言ったわよね。『ずっと一緒にいてください』って、それなのに貴方が私を置いて行くの?」
蓮夜「・・・それは、」
彼は再び彼女から目を背けた。
まるで彼女のことを見る資格がないと言わんばかりに、
夢結「私は貴方と生きていきたいの、もしもそれが叶わないなら私は生きていく意味がないのよ!」
蓮夜「・・・!?」
生きていく意味がない。
その言葉が彼の中で響く。
『意味がない』その言葉は彼には身近なものだからだ。
その言葉は彼が自身に言い聞かせて来た言葉であり、彼の存在する理由でもある。
彼の存在理由・・・それは彼女が幸せを手に入れるまで彼女を守り抜くこと、
それが出来なければ彼は存在する意味がないのだ。
この言葉は彼を縛り付ける鎖であると同時に彼が彼である為の命綱でもあるのだ。
蓮夜「・・・意味がないなんて・・・そんなの僕と、」
夢結「同じよ。貴方と私は同じなの、お互いが幸せにならなければ存在する意味がない・・・それが私達なのよ。」
彼女は何かを決意したのか彼の頬を両手で包み彼女の方へと向かせる。
そして目を合わせると彼の頭を抱くように彼へと覆い被さった。
蓮夜「・・・夢結!なにを!?」
夢結「・・・聞こえるでしょう?」
《トクン、トクン》
心臓の鼓動聞こえる。
その音色は彼の心に安らぎを与え満たすように彼の中へと浸透していく。
夢結「・・・私が生きているのは貴方がいるから、だから私は貴方の人形でもいいの・・・貴方が一緒に居てくれるのなら、」
蓮夜「・・・夢結、」
夢結「・・・素直になってもいいのよ。貴方は今まで頑張って来たのだから、」
蓮夜「・・・そんな事言わないでよ。・・・そんな事言われたらもう、」
彼の中で何が溢れ出した。
まるでダムが決壊し今まで堰き止めていたものが濁流となって流れ出すかのように、
もう彼には我慢出来なかった。
一度流れ出したものが戻ってこないように溢れかえったものは彼の残された感情を拾い集める。
蓮夜「・・・僕だって・・・僕だって一緒に居たいよ。まだやりたいこともあるんだ。君と生きたいよ。」
夢結「・・・蓮夜、」
蓮夜「だけどダメなんだ。僕はもう負けたから、一度呑まれたら戻って来れないから、だから楽になりたかったのに、もう苦しみたくなかったのに。なんで君は僕を1人にしてくれないんだよ!」
夢結「・・・。」
これが彼の抱える闇なのだ。
苦しみ続けたがために苦しみたくない。
存在するだけで苦しむのなら楽になりたい。
彼女はそこで気づく、
彼が死に場所を求めていることに、
もしも本当彼のことを思うのなら彼の願いどうりにすることが1番であろう。
しかし、彼女はそれを認められなかった。
夢結「・・・貴方だけ楽になるつもりかしら?」
蓮夜「・・・もう辛いんだ。存在すること事態が、」
夢結「・・・私はどうするの?」
蓮夜「・・・えっ?」
夢結「・・・置いて行かれる私はどうすればいいのよ?私は生きて行けないわ。もう失いたくないもの、だから貴方が居なくなるなら私も一緒よ。」
蓮夜「・・・夢結、」
彼を1人にしない・・・そして1人にならないこと、
彼と同じくもう
そのためならば命すらも断つ。
これが彼女の答えだった。
夢結「・・・だから私を1人にしないで・・・。」
蓮夜「・・・。」
彼も気づく、
もう寂しい思いをしたくない。
だから何も失いたくない。
それが彼女の幸せであると、
彼女を幸せにするのが彼の願いだ。
そして彼女が幸せになるには彼が必要でありもしもこの願いが叶わないのなら彼女は苦しむことになる。
ならば答えは簡単だ。
蓮夜「・・・わかったよ。」
夢結「・・・蓮夜!?」
彼は彼女を抱き上げると彼女を強く抱きしめる。
いきなりの行動に彼女は驚くがすぐに身体の力を抜き彼へと身を委ねる。
蓮夜「・・・夢結、君が僕がいないと幸せになれないんだったら僕は君のために生きて続けるよ。たとえ・・・それが苦難の道であっても、」
夢結「・・・なら、私は貴方を幸せにするわ。貴方が苦しみ続けるのならその苦しみ以上の幸せにしてあげる。それが私の幸せでもあるのだから、」
彼の瞳に光が宿る。
それは過去の彼が持っていた輝きでありそれは彼の決意を表すものでもあった。
それを見た彼女は微笑みながら自身の唇をそっと彼の唇へと触れさせた。