アサルトリリィ Abnormal Transition 作:0IN
夢結「・・・落ち着いたかしら?」
蓮夜「・・・うん、もう大丈夫だよ。」
彼が落ち着いたことを確認した彼女は彼から離れこれからの事を考え始めた。
夢結「・・・あのような事を言ってしまったけれど、解決策がないのよね。」
蓮夜「・・・だけどもう決めたんだ。どうにかしよう、」
彼女は考える。
彼のことだ彼の出来ることをやり尽くしたのだろう。
しかしそれでも足りなかったのだ。
彼女にはこの結果に辿り着くまでにどれだけの苦痛を伴ったか計り知れない。
しかしそれが彼の心を折ってしまうほどだった事だけは分かった。
夢結「蓮夜、今まではどうやって凌いでいたのかしら、」
蓮夜「・・・今までは侵食してきた所を切り離して進行を遅らせてた感じかな?」
夢結「・・・侵食?・・・どういう事かしら?」
蓮夜「・・・これは多分こうなった人しか分からないと思うんだけど・・・どんどんと自分じゃ無くなるんだ。感情や感覚器官とかがどんどんと自分のものじゃなくなって行って最後には自身そのものが消えてしまう。・・・それを抑えるにはその侵食された所を切り離して隔離するのが最善策だったんだよ。・・・夢結?」
彼女は彼を再び抱きしめると震え始める。
その力が強く彼が驚いていると彼の耳元から嗚咽が聞こえ始めた。
夢結「・・・辛かったでしょう。ごめんなさい・・・気づいて上げられなくて、」
彼女は涙を流さずにはいられなかった。
何が消えてしまう恐怖は彼女も知っているから、
1回だけでも気の狂いそうになるあの絶望を彼は何回も繰り返しているのだ。
それなのに彼女はそんな彼に気づいてあげることが出来なかった。
彼の事を1番知っているはずなのに、
彼の事を1番わかってあげられるはずなのに、
彼女には抱きしめずにはいられなかった。
彼は今までに多くのものを失っている。
もしかしたら触覚や温感も失っているかもしれない。
そして彼女声も彼には聞こえていないのだ。
だからせめて彼が自身の何かを感じられるように強くって抱きしめる。今まで何も感じることが出来なかったであろう彼に、
夢結「・・・私が辛かった時・・・あの時私と同じく・・・いいえ、私より辛かったのよね。苦しかったのよね。」
蓮夜「・・・大丈夫だよ。今こうして君を感じることが出来ているから、君の温もりを、」
夢結「・・・よかった。」
蓮夜「ありがとうね。心配してくれて、だけど大丈夫だよ。もう怖くないから、」
彼は彼女の頭を撫でながら彼女を抱き締め返す。
彼が撫で続けると彼女が泣き止み彼女はたどたどしい声で言葉を紡ぐ。
夢結「・・・何が・・・足りないのかしら、」
蓮夜「・・・ごめん、それはよく分からないんだ。多分もう僕の侵食を防ぐ為の何かが壊れたからだと思うんだけど、」
夢結「それが直せれば助かるの?」
蓮夜「多分無理だと思うよ。」
夢結「どうしてなの?」
蓮夜「もう侵食されてるから・・・もしもどうにかするには1回侵食された部分ごとこちら側に引っ張り出さないと、」
夢結「・・・引っ張り出せればどうにかなるのね?」
蓮夜「・・・う、うん。そうすればあとは大丈夫だよ。今までは引っ張り出してもそれを収めるものがなかったからどうにもならなかったんだけど、もう殻はできてるから。君のおかげでね。」
夢結「・・・そう、引っ張り出すのには力が足りないのかしら?」
蓮夜「それもあるけどもう僕は能力が使えないんだ。」
夢結「どうして!?」
蓮夜「君を返すようの道に全て使っちゃったから、」
夢結「もしかして力が不安定なことが原因なの?」
蓮夜「違うよ。ただ限界が来ただけなんだ。」
限界が来た。
つまり彼にはもう後がないのだ。
それに気づいた彼女は焦り始める。
もしも彼に力が残っていればどうにかなるかもしれない。
そこで彼女は思いついた。
しかしそれは彼の意識を無視するものであり絶対に言ってはいけない禁句でもある。
夢結「・・・私の心臓を使えないかしら、」
蓮夜「・・・えっ?何を言っているの?」
しかし彼女はその言葉を出してしまった。
彼女は自身胸を抑えながら彼へと真剣な眼差しを向ける。
彼女の考えついた方法・・・それは彼の力の片割れである自身の心臓を彼へと戻すことだった。
夢結「・・・貴方に返すのよ。貴方の瞳を、」
蓮夜「・・・君は何を言っているか分かっているの?」
夢結「・・・分かっているわ。貴方の瞳画元に戻れば再び能力を使うことが出来るはずよ。そうすれば、」
蓮夜「・・・そうしたら君はどうするのさ!」
夢結「・・・私の心臓は直せばいいのよ。」
蓮夜「・・・君だって分かっているんだろう?もしもその心臓が無くなれば君は、」
この方法が禁句だと考えた理由、それはこの方法が彼女自身の命を犠牲にしなければいけないことだ。
今の彼女はこの心臓があるから生きることが出来ている。
もしもそれがなくなってしまえば彼女はすぐにこの世を去ってしまうだろう。
それは彼女も分かっている。
しかし彼女にはこれしか思い浮かばなかったのだ。
夢結「・・・分かっているわよ。・・・だけれど私にはこれしか思い付かないの!」
蓮夜「・・・夢結、君の気持ちは嬉しいよ。だけどそれだとダメなんだよ?分かるでしょう?君がいるから僕は生きることを決めたんだ。それなのに君いなくなったら、」
夢結「・・・ごめんなさい。」
蓮夜「・・・僕もごめん。」
そんな事わかっていた。
この方法では2人とも救われないのだ。
彼は彼女がいなければ生きていけないし、
彼女を犠牲にしなければ彼は救われない、
この矛盾があるからこそ2人はお互いを救えないのだ。
2人とも生ていないと生きられないのにどちらかを犠牲にしなければ助からない。
それならばなにか方法がないか、
彼女は思考の海へと沈む。
何か答えがあるはずだ。
その答えに既に私は辿り着いている。
しかしその答えが分からない。
彼女はさらに深くへと沈む。
・・・私は1回諦めかけた時何を言ったの?
彼女の中でその声が響く。
諦めかけた時?何を言ったのか?
彼女はあの時を思い出す。
力を注ぐ。
鎖で縛る。
離さない。
あの時口にした言葉はこの3つのはずだ。
これが答えになるのか?
・・・私が作り出した力は何?
私が作った力・・・それは、
夢結「・・・分かったわ。」
蓮夜「・・・夢結?どうしたの?」
夢結「・・・分かったのよ!貴方も私も一緒に生きていける方法が!」
蓮夜「・・・本当に?」
夢結「ええ、私に任せて・・・必ず成功させるから、」
彼女の瞳には確かな確信が宿っていた。